「じゃあポルトスは頼んだよ。」
「雨が降りそうだから急ごう。」
戸口を出ると共に駆け出しながら、ボナシュー家を二人の銃士は出て行った。
今日は久し振りに四人の銃士が集まった。一番の若僧の祝福のために。
銃士としての生活も安定してきたことだし、彼は遂に所帯を持つことに決めたとのことで、そのお祝いだった。
幸せそうな微笑を絶やさない彼女と、いくら気をつけても顔がゆるみっ放しの彼と、傍で見ているだけで幸せのお裾分けに十分ありつける。
その幸せに当てられてか、巨漢の銃士は自分の腹を幸せにすることに励み、幸せのあまり動けなくなってしまったので今夜は幸せの帳の中で過ごすことになった。
ボナシュー家を出て数分も経たない内に雨は本降りになって来る。帽子も上着も全く役に立ちはしない。
「お前の家の方が近いだろう。今晩は泊めてくれ。」
年かさの銃士は承諾されるものとして、既にもう一人の家へ向かっていた。
玄関を入った時、既に二人はセーヌ川へ飛び込んだと言っても信じられるほどずぶ濡れだった。
家主は慌てて火を起こし、上着だけ脱ぐと奥の部屋へ引っ込んだ。しばらくして戻って来るが困った顔をしている。
「すまないがアトスが着られるようなサイズの着替えが無いんだ。」
ワイン壜を片手に勝手に一杯やっていた彼は少し目線を上げてから、一口飲んだ。
「そんなことは分かっているさ。シーツの一枚でも貸してもらえたら幸いかな。」
アトスはワインを飲みつつ、着ている物を全て脱いでそこら中の椅子に引っ掛けて、シーツを身にまとった。
その間アラミスは、また奥の部屋で着替えを済ませていたらしい。部屋着姿で髪を拭きながら現れる。
「ああ、冷える。俺にもワインをくれないか。」
春先の夜に浴びた雨はかなり体を冷やしていた。
二人は一本のワインを杯に注がずにそのまま回し飲みしながら火に当たる。
しばらくは若い二人のこれからについて、穏やかではない推測など冗談を交えて語り合った。
「所詮俺達は汚れた大人だよなぁ。」
若い二人には何の過去も無い。やましいことなんて尚更無い。
アラミスはこれから全てが始まるとも言える二人を思いながら、少し妬ましい気持ちを交えて溜息をついた。
「大人には大人の楽しみがあるさ。」
「例えばどんな?」
ここで何も考えていなかったと言えば嘘になる。彼女は十分に承知していた。
これはこれからの行為に対する間接的な賛同の返事。
暖炉の火から顔を上げてアトスを見つめるアラミスに、彼は深く接吻をする。
「悪くないね。」
微笑みながらアラミスが見つめる。どうやら及第点だったらしい。
「どうせなら奥へ行こう。」
軽やかな足取りの彼女に手を引かれて、二人は寝室へ向かう。
さっさと寝台へ潜り込む彼女の姿に少々困惑を感じながらも、彼も後を追って潜り込んだ。
まだ体の冷えは解消されていなかったので、お互いの体温を感じるのが心地良かった。
しばらくはお互いのこういう関係が物珍しくてじゃれ合っていたが、アトスの纏っていたシーツが解けてしまい素っ裸になっていることに気付いた。
これでは不公平だとの穏やかに苦情を申し立てるとアラミスは素直に自分の着ている物を脱いだ。
彼女は素肌を晒しても全く臆する事無く、シーツでアトスを包んでみたりと益々はしゃぎ始める。
「おいおい、大人の楽しみはどうしたんだ?」
彼の予想を裏切る展開に多少動揺しながらも、素肌で抱き締めて拘束する。
アラミスは両手をアトスの首に巻き付けて、妖しく微笑みながら応えた。
長く、深く、たっぷりと彼の口を犯すことで。
―――――――――――――――――――――――
「・・・・・ちょっと意外。」
「何が?」
裸のまま台所からワインを手に戻ってきたアトスに、アラミスは声を掛けた。
「うん、とても良かった。女嫌いで通ってるからさ、すっごい下手だったらどうしようかと思ってた。」
と重ねて言って、自分の言った内容に大笑いしていた。
アトスは口に含んだワインで思わずむせる。
寝台で体を起して髪を手ぐしで整えているアラミスの横に彼は体を添わせながら、
「ほぅ、誰と比べているのかな?」
と、素肌のままの乳房を鷲掴みにする。
彼女は顔をしかめながらも、興味津々な笑みを満面に浮かべて問う。
「なぁ、普段どうしてるんだ?」
「秘密。そっちこそどうなんだ?久し振り・・・・って訳でも無さそうだったが?」
「秘密。俺は誰かさんと違って男嫌いって訳でも無いからね。」
顔を見合わせては自然と笑みがこぼれる。
「汚れた大人ってのも気楽で楽しいよね。」
と声を立てて笑うアラミスに、
「ああ、ダルタニャンが聞いたら卒倒するだろうけどな。」
と答えて二人で更に笑い合った。
恋愛感情なんて無い、只の遊び、気紛れ。朝になって家を出たら今まで通りの関係。
きっと若者達の幸せに当てられてたのだ。約一名の幸せは食べ物に向かったけれど、自分達は自分達でのぼせ上がっていたのだろう。
しかし、たまにはこんな風に過ごすのも悪くない、勿論相手が承諾してくれたら・・・・・だが。
二人とも密かにそう考えてはいたが、口には出さない。出した方が負け。
ひょっとしたら既に何かが動き出しているのかも知れない。
だけどまだ気付かない振り。
だけどもしかしたら・・・・・。
「雨が降りそうだから急ごう。」
戸口を出ると共に駆け出しながら、ボナシュー家を二人の銃士は出て行った。
今日は久し振りに四人の銃士が集まった。一番の若僧の祝福のために。
銃士としての生活も安定してきたことだし、彼は遂に所帯を持つことに決めたとのことで、そのお祝いだった。
幸せそうな微笑を絶やさない彼女と、いくら気をつけても顔がゆるみっ放しの彼と、傍で見ているだけで幸せのお裾分けに十分ありつける。
その幸せに当てられてか、巨漢の銃士は自分の腹を幸せにすることに励み、幸せのあまり動けなくなってしまったので今夜は幸せの帳の中で過ごすことになった。
ボナシュー家を出て数分も経たない内に雨は本降りになって来る。帽子も上着も全く役に立ちはしない。
「お前の家の方が近いだろう。今晩は泊めてくれ。」
年かさの銃士は承諾されるものとして、既にもう一人の家へ向かっていた。
玄関を入った時、既に二人はセーヌ川へ飛び込んだと言っても信じられるほどずぶ濡れだった。
家主は慌てて火を起こし、上着だけ脱ぐと奥の部屋へ引っ込んだ。しばらくして戻って来るが困った顔をしている。
「すまないがアトスが着られるようなサイズの着替えが無いんだ。」
ワイン壜を片手に勝手に一杯やっていた彼は少し目線を上げてから、一口飲んだ。
「そんなことは分かっているさ。シーツの一枚でも貸してもらえたら幸いかな。」
アトスはワインを飲みつつ、着ている物を全て脱いでそこら中の椅子に引っ掛けて、シーツを身にまとった。
その間アラミスは、また奥の部屋で着替えを済ませていたらしい。部屋着姿で髪を拭きながら現れる。
「ああ、冷える。俺にもワインをくれないか。」
春先の夜に浴びた雨はかなり体を冷やしていた。
二人は一本のワインを杯に注がずにそのまま回し飲みしながら火に当たる。
しばらくは若い二人のこれからについて、穏やかではない推測など冗談を交えて語り合った。
「所詮俺達は汚れた大人だよなぁ。」
若い二人には何の過去も無い。やましいことなんて尚更無い。
アラミスはこれから全てが始まるとも言える二人を思いながら、少し妬ましい気持ちを交えて溜息をついた。
「大人には大人の楽しみがあるさ。」
「例えばどんな?」
ここで何も考えていなかったと言えば嘘になる。彼女は十分に承知していた。
これはこれからの行為に対する間接的な賛同の返事。
暖炉の火から顔を上げてアトスを見つめるアラミスに、彼は深く接吻をする。
「悪くないね。」
微笑みながらアラミスが見つめる。どうやら及第点だったらしい。
「どうせなら奥へ行こう。」
軽やかな足取りの彼女に手を引かれて、二人は寝室へ向かう。
さっさと寝台へ潜り込む彼女の姿に少々困惑を感じながらも、彼も後を追って潜り込んだ。
まだ体の冷えは解消されていなかったので、お互いの体温を感じるのが心地良かった。
しばらくはお互いのこういう関係が物珍しくてじゃれ合っていたが、アトスの纏っていたシーツが解けてしまい素っ裸になっていることに気付いた。
これでは不公平だとの穏やかに苦情を申し立てるとアラミスは素直に自分の着ている物を脱いだ。
彼女は素肌を晒しても全く臆する事無く、シーツでアトスを包んでみたりと益々はしゃぎ始める。
「おいおい、大人の楽しみはどうしたんだ?」
彼の予想を裏切る展開に多少動揺しながらも、素肌で抱き締めて拘束する。
アラミスは両手をアトスの首に巻き付けて、妖しく微笑みながら応えた。
長く、深く、たっぷりと彼の口を犯すことで。
―――――――――――――――――――――――
「・・・・・ちょっと意外。」
「何が?」
裸のまま台所からワインを手に戻ってきたアトスに、アラミスは声を掛けた。
「うん、とても良かった。女嫌いで通ってるからさ、すっごい下手だったらどうしようかと思ってた。」
と重ねて言って、自分の言った内容に大笑いしていた。
アトスは口に含んだワインで思わずむせる。
寝台で体を起して髪を手ぐしで整えているアラミスの横に彼は体を添わせながら、
「ほぅ、誰と比べているのかな?」
と、素肌のままの乳房を鷲掴みにする。
彼女は顔をしかめながらも、興味津々な笑みを満面に浮かべて問う。
「なぁ、普段どうしてるんだ?」
「秘密。そっちこそどうなんだ?久し振り・・・・って訳でも無さそうだったが?」
「秘密。俺は誰かさんと違って男嫌いって訳でも無いからね。」
顔を見合わせては自然と笑みがこぼれる。
「汚れた大人ってのも気楽で楽しいよね。」
と声を立てて笑うアラミスに、
「ああ、ダルタニャンが聞いたら卒倒するだろうけどな。」
と答えて二人で更に笑い合った。
恋愛感情なんて無い、只の遊び、気紛れ。朝になって家を出たら今まで通りの関係。
きっと若者達の幸せに当てられてたのだ。約一名の幸せは食べ物に向かったけれど、自分達は自分達でのぼせ上がっていたのだろう。
しかし、たまにはこんな風に過ごすのも悪くない、勿論相手が承諾してくれたら・・・・・だが。
二人とも密かにそう考えてはいたが、口には出さない。出した方が負け。
ひょっとしたら既に何かが動き出しているのかも知れない。
だけどまだ気付かない振り。
だけどもしかしたら・・・・・。
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