ユウジ君を忘れて
セルバンテスのおじさんと仲良くなって
お父さんが三つ目のロボを作り始めて
・・・そしてボクはここに来たときよりも大きくなった。
相変わらずボクの生活は『ふくめんの人』がお世話してくれてて食事もふくめんの担当の人が作ってくれて、服も用意してくれるんだ。あ、でも最近ボクは洗濯機の使い方おぼえたから自分で洗えるよ。干すのは・・・背がとどかないからやっぱりふくめんの人がやってくれてるけど。
それにいつもはふくめんの人だけどセルバンテスのおじさんもたまにボクに勉強を教えてくれるんだ。おじさんは学校の先生よりもずっとていねいに教えてくれるからボクは苦手だった算数が得意になった。だってロボットつくる人になるためには算数もできないといけないもんね。九九だって何も見ずにちゃんと言えるようになったもん。
ボクはこの生活は嫌いじゃないけど・・・うん、嫌いじゃないんだ、でもおじさんがいない間はずっとボクひとりだ。お世話してくれるふくめんの人はなんだか必要なことだけしかしゃべってくれないし遊んでくれないんだ。ゲームはあるけど毎日じゃあきちゃうしさ。おじさんがいるとすっごく楽しいのに、ボクひとりでいるのがなんだかとっても・・・さびしく感じるようになった。
「おじさん・・・ボク・・・ともだちが・・・」
ほしいって・・・言ってみようかな・・・。どうしようおじさん困らないかな。でもおじさん『大丈夫じゃないときはおじさんに言ってくれたまえ』って笑ってたから・・・言ってもいいんだよね?
「お友達が欲しいのかい?」
「・・・うん・・・・」
「おじさんだけじゃあダメかなぁ」
「え?・・・おじさんもボクのともだちだけど・・・」
「いやいや、ははは!冗談だよ大作君。近い年の子じゃないとね。うん、そうだねぇよし、毎日遊ぶことはできなくってもたまにで良ければ・・・なんとかしてあげよう」
「本当!?やったあ!」
「やっぱり独りじゃあ寂しいものね、おじさんもわかるよ」
ボクはうれしくって飛びはねちゃったよ。だってダメだと思ってたから。おじさんに言ってみてよかった・・・。
それから一週間してまたセルバンテスのおじさんがひょっこりボクに会いに来てくれた。
おじさんはいつもよりニコニコ笑っててうれしそうにしてるんだ。
「大作君、君とお友達になりたいって子を連れてきたよ・・・ふふふ、女の子なんだけど会ってくれるかい?」
え・・・えええ!えー!女の子ぉ・・・ボク、男の子だと思ってたのに・・・。べ、べつに嫌じゃないけどさ、ボクがまだ学校に行ってた時は女の子と遊んだことなんか無いんだもん。だって女の子とどうやって遊んでいいのかわかんないし・・・・。
「とっても可愛いんだよ?大作君に会えるのを楽しみにしてくれてたんだよ?」
・・・どうしようなんだかとってもきんちょうしてきた・・・。
「うん・・・・いいよ・・・」
そう言ったらおじさんがニッコリ笑って頭からかぶってるクフィーヤってやつを広げたら中から・・・女の子が出てきた。
「・・・こん・・・にちは・・・・サニー・・・です」
うっわー・・・・すっごく・・・その・・・かわいい・・・。お人形さんみたいな女の子だぁ・・・学校でもこんなにかわいい子いなかったよ?外国の人みたいに髪がふわっふわで色がキラキラしてて、目が大きくって・・・ボク初めて見たけど赤い色してる、ふしぎだなぁ。
「ようし、じゃああっちで遊んでおいで、もちろん仲良くだ」
「ボク・・・大作って言うんだ」
「・・・・・」
サニー・・・ちゃん、さっきからとってもはずかしそうにモジモジしてる。ボクもとってもはずかしいんだけど・・・どうしよう何しゃべっていいのかわかんないや。女の子だからゲームとかやんないだろうし、どうやって遊べばいいんだろ・・・。
「あ・・・あれさ・・・ボクが描いた絵なんだ」
たまたま目に付いた去年描いたボクの「かぞくの絵」を見せてあげたんだ。
「このすみっこの・・・セルバンテスのおじさまね?」
「うん!」
ゴーグルかけて真っ白い布かぶってて、長くてへんなヒゲだからすぐにわかるよね。サニーちゃんも知ってる人だからうれしそうに笑ってる。サニーちゃんフツーにしてるときもかわいいけど・・・笑ってるともっとかわいいなぁ。
「これなぁに?」
これ?ロボだよ、ボクお父さんが作ってるとってもとっても大きなロボットなんだ。
「ロボットが家族なの?」
そうだよ、おかしい?って聞いたらサニーちゃんは「ううん」って言ってくれた。
それをきっかけにボクはサニーちゃんといろいろお話したんだ、サニーちゃんもボクとおんなじでお母さん小さい頃に死んじゃっていないんだって。そしてお父さんとはなれて暮らしててやっぱりふくめんの人に囲まれてお世話してもらってるんだって。
ボクはなんだかうれしくなった。だってお母さんがいなくって仕事がいそがしいお父さんとあんまし一緒にいられないなんて・・・ボクと・・・似てるよね?
「サニーちゃんも何か描く?」
ボクはサニーちゃんとお絵かきして遊ぶことにした。この前セルバンテスのおじさんに買ってもらった36色もあるとっておきの色鉛筆をはじめて使ったんだよ。ボクは画用紙いっぱいにロボを描いてたんだけどサニーちゃんはたくさん人を描いてた、これだれ?ってきいたら「サニーのおじ様たちよ」って言うんだ。
セルバンテスのおじさんはすぐにわかったけど・・・他はわかんない、だれなんだろう。
「これはカワラザキのおじい様に幽鬼様、そしてこっちが怒鬼様に十常寺様に・・・」
すごい・・・サニーちゃんてこんなにおじさんがいるんだ・・・。ねぇこのピンク色の人はだれ?かみがすっごく長いの。
「樊瑞のおじ様よ、とってもおやさしくってサニーは大好きなの」
へぇ・・・いいなぁサニーちゃんこんなにたくさんおじさんがいて。ボクのおじさんはセルバンテスのおじさんしかいないもん。うらやましいなぁ・・・
「でも・・・サニーは大作君がいいなぁって思うの。だってパパといっしょに暮らしてるんでしょ?サニーは樊瑞のおじ様と一緒に暮らしてるけど・・・パパとは一緒に暮らしてないの」
なんで?やっぱりお仕事がとってもいそがしいから?
「たぶんそうだと思うんだけど・・・・サニーよく・・・わかんない・・・『おやこのえん』を切ってるからだろってレッド様が言ってたけど・・・ねぇ大作君、おやこのえんってなぁに?」
わかんない、なんだろう・・・。それ切ってるからサニーちゃんと暮らせないんだったら切ったのひっつければいいんじゃないかなぁ。ボクが持ってる工作用の接着剤でひっつくんだったら貸してあげてもいいよ?
ボクは机の引き出しから黄色いチューブに入った接着剤を取り出してサニーちゃんに貸してあげた。すぐにひっつかないんだったらセロテープで止めておけばいいんだ、しばらくすればたぶんしっかりひっつくよ。
「そうなんだ・・・サニーパパにお願いしてみるわ、ありがとう大作君」
「ひっつくといいね」
「うん」
ボクたちは絵を描きながらもっとお話をした。サニーちゃんはたくさんいるおじさんたちのことやちょっとこわいけど大好きなお父さんのこと。ボクは去年やった家出のこと話したらサニーちゃんすっごくおどろいてた、えへへ、家出やったからねサニーちゃんよりちょっと大人だよボクは。そうだ、サニーちゃんも家出やってみるといいよ?だってお父さんがきっと心配してサニーちゃんを探してくれるよきっと。
サニーちゃんまたわらった。
ボクはサニーちゃんはわらってるのがぜったいにいいと思う。
それから天気がいいから外に出て遊ぶことになってボクはサニーちゃんとふたりで原っぱへ行ったんだ。原っぱって言ってもボクの家、おじさんが「基地」って呼ぶ建物のすぐそばにあるんだ。でもそこで遊ぶときはいっつもふくめんの人が2、3人付いてきちゃうんだよ、なんでだろ。
真ん中におおきな木があってボクはそれにのぼれるんだよ?すごいでしょ・・・って・・・ええ!サニーちゃんすごい・・・のぼっちゃった・・・。
ボクはびっくりした、だって女の子って木登りしないって思ってたから。
「大作君もはやく!」
「うん、ちょっとまってて!」
いつものようにボクは木に足をかけてしがみつくように登っていったんだ
サニーちゃんが手を伸ばしてくれて、ボクはその手をにぎろうとした
その時、ボクは足をすべらせちゃって・・・
空にあるおおきな太陽が・・・・見えた
「きゃあー!!大作君!!!!」
サニーちゃんがボクの名前をよんでさけんでるのが聞こえて
その時目の前が・・・ピカーってまっかっかになったんだ・・・
いたい・・・・・・・
足が・・・いたい・・・・いたいよぉ・・・お父さぁん・・・・
「貴様ぁ!サニー様に何をした!!!サニー様!おい救護班を呼べ!」
頭もいたい・・・・おじさぁん・・・・いたいよぉ・・・
「大・・・君・・・」
「サニー様!おい早くしろっそんな小僧はどうでもいい!!」
「だいさく・・・くん・・・ごめんなさい・・・」
サニーちゃん・・・・・・・・・
ボクが気づいたとき空に太陽は無くって・・・上は真っ白いてんじょうだった。
「大丈夫かい?大作君・・・」
おじさんだ、セルバンテスのおじさんだ。
おじさん、ボクどうしたの?サニーちゃんは?
「木から落ちちゃって足の骨を折っちゃったんだよ、まだ痛むかい?」
ほんとだ、ボクの左足がほうたいでグルグル巻きになってる。ううん、もう痛くないよ。それよりオデコがなんだかヒリヒリするんだ・・・ぶつけちゃったのかなぁ。でもおじさん、サニーちゃんは大丈夫?だって・・・ふくめんの人がすっごく・・・さけんでて・・・ボク・・・。
怖かった・・・
赤い光がピカーって光って・・・それになにかとんでも無い事をしちゃったのかなって、ふくめんの人がボクのことどうでもいい!ってさけんでる声聞いててすごく怖かったんだ。怖かったんだおじさん・・・。
「どうでもよくないから、大作君が謝ることはないんだよ、おじさんが・・・一番悪かったんだ・・・済まなかったね」
ボクは初めておじさんがためいきするの見た・・・どうしておじさんが悪いんだろう、悪いのボクなのに、足をすべらせて・・・きっとサニーちゃんも落ちちゃったんだ・・・そうだ、サニーちゃんは?ケガしてない?
「・・・・・大丈夫だよ、ちょっとお熱が・・・出てね、先にお家に帰ったんだよ。大作君のことをとても心配してて『ごめんね』って言ってたよ・・・・」
どうして・・・・どうしてサニーちゃんがあやまるの?おじさんがあやまるの?ボクもあやまって・・・なんだか変だよ。みんながあやまって変だよ。
「そうだね、変だね・・・」
絶対に・・・変だよ・・・・。
それから・・・二日たってセルバンテスのおじさんがボクがいる病室にやってきた。
「大作君、実はサニーちゃん、お父さんの仕事の都合で遠くへお引越しすることになったんだよ」
「・・・・そっか・・・・サニーちゃん・・・おともだちになれるって思ってたのに」
「・・・・・・・・・・・・・」
そうだ、ねぇおじさんこの前サニーちゃんに貸した接着剤、あげるよって言っといて欲しいんだけど。ボクはもう一個持ってるし。
「接着剤??」
うん、サニーちゃんがさ、切った『おやこのえん』っていうのをくっつけるのに使うから貸してあげたんだ。うまくひっつくといいんだけど・・・あれ紙と木の接着剤だから、プラモデル用のやつにすれば良かったかなぁ。ねぇおじさんはどう思う?
「いや、それでひっつくと思うよ・・・・」
おじさん、ボクを抱きよせてくれた。
そうだよ、ひっついてサニーちゃんはお父さんと一緒に暮らせるようになるといいんだ。
だよね、サニーちゃん。
バイバイ・・・サニーちゃん・・・。
バイバイ・・・・・・・・・・・。
ボクの左足についてた白いかたまりがとれて・・・
ボクは歩けるようになってからあの原っぱに行ってみた。
原っぱにあったはずの大きな木が無くなってた。
ううん、無くなってはなかったんだ。
上半分が無くなって根元がボロボロになって
雷が・・・落ちたいみたいに・・・なってた・・・。
オデコのヒリヒリはもう無くなったのに、またヒリヒリしだして・・・
あの赤い光を思い出した。
怖い、って思ってボクはもうその原っぱに行かなくなったんだ。
END
「きゃあー!!!大作君!!!!」
そのとき自分でもなにがどうなったのかってわからなかったの。
すっごく頭が熱くなって目の前が赤くなって・・・・
ドーンって大きな音がして・・・登ってた木が・・・
私が・・・サニーがしたの・・・・
ただ落ちそうになった大作君の手をつかんであげようって思ったのに
助けてあげようって思っただけなのに・・・・・・・・
「おい!救護班こっちだ!!サニー様を!小僧などどうでもいいっ」
「うわっだめだ、まだトランス状態で近寄れない!!」
「仕方ないっセルバンテス様をお呼びしろ早く!」
どうしたの?・・・どうしてみんな・・・・頭がいたい・・・いたい・・・パパぁ・・・
大作君・・・頭から血が・・・サニーが・・・サニーがしたの・・・・
「申し訳ございませんセルバンテス様!!少し目を離した隙にっ」
「こ、これはいかん!!サニー!!」
「セルバンテス様近づくと危険です!!」
「どけ!お前たちは下がっていろ!!」
おじ様・・・サニーどうしたの?
「こんなことになるとは・・・サニー!私の目を見なさいっ」
目・・・?おじ様・・・の?
おじ様の目・・・色が・・・・・・・・・・・・・
「そうだ私の目だけ見ていなさい、さあ大丈夫だから目だけを・・・」
なんだか身体が・・・
頭が・・・・軽く・・・・
「さあ早く運べっ、いいかレベル5の遮蔽治療室を使いVS03=Y型を5ml血液注射しろ。後で私もすぐに行く!・・・おい!何をやっている大作君も怪我をしているじゃないか!早く運ぶんだっ!!!」
だいさくくん・・・ごめんね・・・・・・・・・
サニー、夢をみたの
パパ・・・赤ちゃん抱きかかえて走ってる・・・・
まわりはこわれたたてものばっかりで
明かりがなくってまっくらで、火事なのかな、燃えてる火だけが明るいの
車も、電車もこわれてうごいてないの
人も・・・うごいてない人が多くって・・・・
たくさんたくさんうごいてない人がいて・・・
パパはその中を・・・サニーを抱きかかえて走ってるの・・・・
「サニーちゃん、気がついたかい?」
パ・・・・おじ様・・・うん・・・ここはどこ?病院?
「そうだよ、サニーちゃんちょっと熱がでただけなんだ。寝ていれば治るから」
・・・・・・そう・・・なの・・・うん、頭がとってもいたかったのにもうなんともなくなってる・・・・あ、おじ様大作君は?大作君ケガしたの、サニーの、サニーのせいでケガしたの!どうしよう!どうしようおじ様!
「違うよ、サニーちゃんのせいじゃあないから安心したまえ」
ううん、サニーがやったの。サニーが大作君にケガさせちゃったの。ほんとうにごめんなさい・・・・ごめんな・・・・さい。
「サニーちゃん・・・・」
おじ様、どうしてうつむくの?
それからサニーは大作君がいる「基地」の病院からいつもくらしている「本部」の「メディカルセンター」っていうところに運ばれたの。
樊瑞のおじ様が泣きそうな顔しておみまいにきてくれた・・・しんぱいかけてごめんなさいおじ様。ううん、もう頭はいたくないの。サニーもう大丈夫お熱下がったみたい。でももう少し寝てなさいってセルバンテスのおじ様が言ったから・・・はい。ありがとうございます樊瑞のおじ様。
それからサニーはひとりでいっぱい考えたの、大作君にあやまらなくっちゃ、血が・・・出てたもん・・・いたいよね・・・サニーをゆるしてくれるかな・・・。またいっしょに遊んでくれるかな・・・。こんど会ったとき大作君に「ごめんね」ってあやまって・・・そうだ、クッキーを持っていこう。チョコがついたクッキーなら大作君も大好きだよね?2人で食べてまたお絵かきしたいな。
「寝ていないのか」
「パパ!」
パパ来てくれたんだ、しんぱいかけてごめんなさい・・・。
「まったく・・・セルバンテスがなにやらコソコソしているかと思ったら・・・お前と、どこぞの子どもとを・・・こうなる可能性もあるのをわかっていながら何を考えているのだあの男はっ!」
パパ、セルバンテスのおじ様を怒らないで。サニーがわがまま言ってお願いしたの、おともだちが欲しいって。それで・・・それでセルバンテスのおじ様が・・・・。サニーが悪いの、ごめんなさい・・・。
「その子どもとどうなったのかは頭に直接見えたからな・・・わかった・・・・わかっている・・・セルバンテスは悪くない、ましてやサニーお前も何も悪くは・・・ない。謝る必要などどこにもない、謝らなくて・・・いい・・・」
パパ?どうしたの?
「本当に悪いのは・・・私だ」
どうして?
「私の子であり血を受け継ぐばかりに・・・」
???
どうして?パパが悪くってあやまるの??
「こんなことになるのなら・・・・・ずっと独りでいればよかったのだ・・・・・」
パパはサニーの横に座ってセルバンテスのおじ様みたいにうつむいたの。
サニーはパパの言葉がわからなかったけどとっても悲しくっなって
悲しくなって・・・
「あのねサニーパパの夢を見たの、パパが赤ちゃんのサニーを抱いて走ってたのよ?」
「夢・・・?・・・私が?」
「パパ、サニーを落とさないようにしっかり抱いてくれてたの、わかったの」
「そ、それは・・・まさか・・・」
「だからサニーは・・・・パパの子で良かったって、思ったの・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
パパ変な顔になっちゃった。でも本当にそう思ったんだもん。
ね、パパ、パパ?・・・まだ変な顔になってる、うふふおかしいの。
あ、そうだあれをパパにわたさなきゃ・・・どこへ・・・あ、机の上にあった。
ねぇパパあれ使ってみて?
「なんだこれは」
「おともだちの子から貸してもらった接着剤、切っちゃった『おやこのえん』をこれでひっつければいいんだって。すぐつかなくってもセロテープで貼り付けておけばしっかりつくかもって、言ってたの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「パパ、これ使ってみてサニー『おやこのえん』ってわかんないから・・・
「・・・・・・・・・・・・そうか」
「ひっつくといいな・・・だってそれが切れてるからサニーはパパといっしょに暮らせないんでしょ?ひっつくとサニーはパパといっしょにいられるもの」
「・・・・・・・・・そう・・・・・・か・・」
パパ?
パパどうしたの?
大作君から借りた接着剤をパパはスーツのポケットにいれて「もう寝ていろ」ってサニーに言って出ていっちゃった。
それから三日たってセルバンテスのおじ様がサニーのおみまいにきてくれたの。もうサニー大丈夫なのに樊瑞のおじ様が「まだ休んでいなさい」って・・・おじ様って心配しすぎなの。
「ふふふ、いいじゃあないかサニーちゃん。でも本当に大丈夫かい?」
はい、セルバンテスのおじ様にも心配かけちゃって・・・
「いやいや、謝らないでくれたまえ。悪かったのはおじ様の方なのだから・・・」
ううん、違うの。パパはおじ様は悪くないって言ってたの。パパがねパパが悪いんだって・・・言ってたの・・・どうして悪いのかな・・・おじ様どうして?
「・・・・・・・・どうして・・・かな、おじ様にもわからない・・・・な・・・」
またおじ様うつむいちゃった・・・。ねぇおじ様大作君は大丈夫?
「ん?あ、ああ大作君は元気にしているよ、ところでね・・・・大作君なんだけど近いうちにお父さんのお仕事の都合で遠くへ引っ越すことになったんだよ・・・・」
「え、大作君が?・・・・そうなの・・・おともだちになれると思ったのに・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
あ、そうだ大作君から借りた接着剤返さなきゃ・・・
「ああ、それならね大作君が『あげるよ』って言ってたからサニーちゃん使いたまえ」
「本当?おじ様大作君に『ありがとう』って言ってくれる?」
「もちろんだよ」
「それと・・・『ごめんね』って・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
あれから・・・・・
あれからだいぶたつけどサニーはまだパパといっしょに暮らせないでいて
でも
すぐにひっつかなくってもセロテープで止めておけばそのうちひっつくんだって大作君が言ってたからもう少し時間がかかるんだと思うの。
きっとサニーのパパがセロテープで止めてくれてるから、大丈夫よね?大作君。
END
セルバンテスのおじさんと仲良くなって
お父さんが三つ目のロボを作り始めて
・・・そしてボクはここに来たときよりも大きくなった。
相変わらずボクの生活は『ふくめんの人』がお世話してくれてて食事もふくめんの担当の人が作ってくれて、服も用意してくれるんだ。あ、でも最近ボクは洗濯機の使い方おぼえたから自分で洗えるよ。干すのは・・・背がとどかないからやっぱりふくめんの人がやってくれてるけど。
それにいつもはふくめんの人だけどセルバンテスのおじさんもたまにボクに勉強を教えてくれるんだ。おじさんは学校の先生よりもずっとていねいに教えてくれるからボクは苦手だった算数が得意になった。だってロボットつくる人になるためには算数もできないといけないもんね。九九だって何も見ずにちゃんと言えるようになったもん。
ボクはこの生活は嫌いじゃないけど・・・うん、嫌いじゃないんだ、でもおじさんがいない間はずっとボクひとりだ。お世話してくれるふくめんの人はなんだか必要なことだけしかしゃべってくれないし遊んでくれないんだ。ゲームはあるけど毎日じゃあきちゃうしさ。おじさんがいるとすっごく楽しいのに、ボクひとりでいるのがなんだかとっても・・・さびしく感じるようになった。
「おじさん・・・ボク・・・ともだちが・・・」
ほしいって・・・言ってみようかな・・・。どうしようおじさん困らないかな。でもおじさん『大丈夫じゃないときはおじさんに言ってくれたまえ』って笑ってたから・・・言ってもいいんだよね?
「お友達が欲しいのかい?」
「・・・うん・・・・」
「おじさんだけじゃあダメかなぁ」
「え?・・・おじさんもボクのともだちだけど・・・」
「いやいや、ははは!冗談だよ大作君。近い年の子じゃないとね。うん、そうだねぇよし、毎日遊ぶことはできなくってもたまにで良ければ・・・なんとかしてあげよう」
「本当!?やったあ!」
「やっぱり独りじゃあ寂しいものね、おじさんもわかるよ」
ボクはうれしくって飛びはねちゃったよ。だってダメだと思ってたから。おじさんに言ってみてよかった・・・。
それから一週間してまたセルバンテスのおじさんがひょっこりボクに会いに来てくれた。
おじさんはいつもよりニコニコ笑っててうれしそうにしてるんだ。
「大作君、君とお友達になりたいって子を連れてきたよ・・・ふふふ、女の子なんだけど会ってくれるかい?」
え・・・えええ!えー!女の子ぉ・・・ボク、男の子だと思ってたのに・・・。べ、べつに嫌じゃないけどさ、ボクがまだ学校に行ってた時は女の子と遊んだことなんか無いんだもん。だって女の子とどうやって遊んでいいのかわかんないし・・・・。
「とっても可愛いんだよ?大作君に会えるのを楽しみにしてくれてたんだよ?」
・・・どうしようなんだかとってもきんちょうしてきた・・・。
「うん・・・・いいよ・・・」
そう言ったらおじさんがニッコリ笑って頭からかぶってるクフィーヤってやつを広げたら中から・・・女の子が出てきた。
「・・・こん・・・にちは・・・・サニー・・・です」
うっわー・・・・すっごく・・・その・・・かわいい・・・。お人形さんみたいな女の子だぁ・・・学校でもこんなにかわいい子いなかったよ?外国の人みたいに髪がふわっふわで色がキラキラしてて、目が大きくって・・・ボク初めて見たけど赤い色してる、ふしぎだなぁ。
「ようし、じゃああっちで遊んでおいで、もちろん仲良くだ」
「ボク・・・大作って言うんだ」
「・・・・・」
サニー・・・ちゃん、さっきからとってもはずかしそうにモジモジしてる。ボクもとってもはずかしいんだけど・・・どうしよう何しゃべっていいのかわかんないや。女の子だからゲームとかやんないだろうし、どうやって遊べばいいんだろ・・・。
「あ・・・あれさ・・・ボクが描いた絵なんだ」
たまたま目に付いた去年描いたボクの「かぞくの絵」を見せてあげたんだ。
「このすみっこの・・・セルバンテスのおじさまね?」
「うん!」
ゴーグルかけて真っ白い布かぶってて、長くてへんなヒゲだからすぐにわかるよね。サニーちゃんも知ってる人だからうれしそうに笑ってる。サニーちゃんフツーにしてるときもかわいいけど・・・笑ってるともっとかわいいなぁ。
「これなぁに?」
これ?ロボだよ、ボクお父さんが作ってるとってもとっても大きなロボットなんだ。
「ロボットが家族なの?」
そうだよ、おかしい?って聞いたらサニーちゃんは「ううん」って言ってくれた。
それをきっかけにボクはサニーちゃんといろいろお話したんだ、サニーちゃんもボクとおんなじでお母さん小さい頃に死んじゃっていないんだって。そしてお父さんとはなれて暮らしててやっぱりふくめんの人に囲まれてお世話してもらってるんだって。
ボクはなんだかうれしくなった。だってお母さんがいなくって仕事がいそがしいお父さんとあんまし一緒にいられないなんて・・・ボクと・・・似てるよね?
「サニーちゃんも何か描く?」
ボクはサニーちゃんとお絵かきして遊ぶことにした。この前セルバンテスのおじさんに買ってもらった36色もあるとっておきの色鉛筆をはじめて使ったんだよ。ボクは画用紙いっぱいにロボを描いてたんだけどサニーちゃんはたくさん人を描いてた、これだれ?ってきいたら「サニーのおじ様たちよ」って言うんだ。
セルバンテスのおじさんはすぐにわかったけど・・・他はわかんない、だれなんだろう。
「これはカワラザキのおじい様に幽鬼様、そしてこっちが怒鬼様に十常寺様に・・・」
すごい・・・サニーちゃんてこんなにおじさんがいるんだ・・・。ねぇこのピンク色の人はだれ?かみがすっごく長いの。
「樊瑞のおじ様よ、とってもおやさしくってサニーは大好きなの」
へぇ・・・いいなぁサニーちゃんこんなにたくさんおじさんがいて。ボクのおじさんはセルバンテスのおじさんしかいないもん。うらやましいなぁ・・・
「でも・・・サニーは大作君がいいなぁって思うの。だってパパといっしょに暮らしてるんでしょ?サニーは樊瑞のおじ様と一緒に暮らしてるけど・・・パパとは一緒に暮らしてないの」
なんで?やっぱりお仕事がとってもいそがしいから?
「たぶんそうだと思うんだけど・・・・サニーよく・・・わかんない・・・『おやこのえん』を切ってるからだろってレッド様が言ってたけど・・・ねぇ大作君、おやこのえんってなぁに?」
わかんない、なんだろう・・・。それ切ってるからサニーちゃんと暮らせないんだったら切ったのひっつければいいんじゃないかなぁ。ボクが持ってる工作用の接着剤でひっつくんだったら貸してあげてもいいよ?
ボクは机の引き出しから黄色いチューブに入った接着剤を取り出してサニーちゃんに貸してあげた。すぐにひっつかないんだったらセロテープで止めておけばいいんだ、しばらくすればたぶんしっかりひっつくよ。
「そうなんだ・・・サニーパパにお願いしてみるわ、ありがとう大作君」
「ひっつくといいね」
「うん」
ボクたちは絵を描きながらもっとお話をした。サニーちゃんはたくさんいるおじさんたちのことやちょっとこわいけど大好きなお父さんのこと。ボクは去年やった家出のこと話したらサニーちゃんすっごくおどろいてた、えへへ、家出やったからねサニーちゃんよりちょっと大人だよボクは。そうだ、サニーちゃんも家出やってみるといいよ?だってお父さんがきっと心配してサニーちゃんを探してくれるよきっと。
サニーちゃんまたわらった。
ボクはサニーちゃんはわらってるのがぜったいにいいと思う。
それから天気がいいから外に出て遊ぶことになってボクはサニーちゃんとふたりで原っぱへ行ったんだ。原っぱって言ってもボクの家、おじさんが「基地」って呼ぶ建物のすぐそばにあるんだ。でもそこで遊ぶときはいっつもふくめんの人が2、3人付いてきちゃうんだよ、なんでだろ。
真ん中におおきな木があってボクはそれにのぼれるんだよ?すごいでしょ・・・って・・・ええ!サニーちゃんすごい・・・のぼっちゃった・・・。
ボクはびっくりした、だって女の子って木登りしないって思ってたから。
「大作君もはやく!」
「うん、ちょっとまってて!」
いつものようにボクは木に足をかけてしがみつくように登っていったんだ
サニーちゃんが手を伸ばしてくれて、ボクはその手をにぎろうとした
その時、ボクは足をすべらせちゃって・・・
空にあるおおきな太陽が・・・・見えた
「きゃあー!!大作君!!!!」
サニーちゃんがボクの名前をよんでさけんでるのが聞こえて
その時目の前が・・・ピカーってまっかっかになったんだ・・・
いたい・・・・・・・
足が・・・いたい・・・・いたいよぉ・・・お父さぁん・・・・
「貴様ぁ!サニー様に何をした!!!サニー様!おい救護班を呼べ!」
頭もいたい・・・・おじさぁん・・・・いたいよぉ・・・
「大・・・君・・・」
「サニー様!おい早くしろっそんな小僧はどうでもいい!!」
「だいさく・・・くん・・・ごめんなさい・・・」
サニーちゃん・・・・・・・・・
ボクが気づいたとき空に太陽は無くって・・・上は真っ白いてんじょうだった。
「大丈夫かい?大作君・・・」
おじさんだ、セルバンテスのおじさんだ。
おじさん、ボクどうしたの?サニーちゃんは?
「木から落ちちゃって足の骨を折っちゃったんだよ、まだ痛むかい?」
ほんとだ、ボクの左足がほうたいでグルグル巻きになってる。ううん、もう痛くないよ。それよりオデコがなんだかヒリヒリするんだ・・・ぶつけちゃったのかなぁ。でもおじさん、サニーちゃんは大丈夫?だって・・・ふくめんの人がすっごく・・・さけんでて・・・ボク・・・。
怖かった・・・
赤い光がピカーって光って・・・それになにかとんでも無い事をしちゃったのかなって、ふくめんの人がボクのことどうでもいい!ってさけんでる声聞いててすごく怖かったんだ。怖かったんだおじさん・・・。
「どうでもよくないから、大作君が謝ることはないんだよ、おじさんが・・・一番悪かったんだ・・・済まなかったね」
ボクは初めておじさんがためいきするの見た・・・どうしておじさんが悪いんだろう、悪いのボクなのに、足をすべらせて・・・きっとサニーちゃんも落ちちゃったんだ・・・そうだ、サニーちゃんは?ケガしてない?
「・・・・・大丈夫だよ、ちょっとお熱が・・・出てね、先にお家に帰ったんだよ。大作君のことをとても心配してて『ごめんね』って言ってたよ・・・・」
どうして・・・・どうしてサニーちゃんがあやまるの?おじさんがあやまるの?ボクもあやまって・・・なんだか変だよ。みんながあやまって変だよ。
「そうだね、変だね・・・」
絶対に・・・変だよ・・・・。
それから・・・二日たってセルバンテスのおじさんがボクがいる病室にやってきた。
「大作君、実はサニーちゃん、お父さんの仕事の都合で遠くへお引越しすることになったんだよ」
「・・・・そっか・・・・サニーちゃん・・・おともだちになれるって思ってたのに」
「・・・・・・・・・・・・・」
そうだ、ねぇおじさんこの前サニーちゃんに貸した接着剤、あげるよって言っといて欲しいんだけど。ボクはもう一個持ってるし。
「接着剤??」
うん、サニーちゃんがさ、切った『おやこのえん』っていうのをくっつけるのに使うから貸してあげたんだ。うまくひっつくといいんだけど・・・あれ紙と木の接着剤だから、プラモデル用のやつにすれば良かったかなぁ。ねぇおじさんはどう思う?
「いや、それでひっつくと思うよ・・・・」
おじさん、ボクを抱きよせてくれた。
そうだよ、ひっついてサニーちゃんはお父さんと一緒に暮らせるようになるといいんだ。
だよね、サニーちゃん。
バイバイ・・・サニーちゃん・・・。
バイバイ・・・・・・・・・・・。
ボクの左足についてた白いかたまりがとれて・・・
ボクは歩けるようになってからあの原っぱに行ってみた。
原っぱにあったはずの大きな木が無くなってた。
ううん、無くなってはなかったんだ。
上半分が無くなって根元がボロボロになって
雷が・・・落ちたいみたいに・・・なってた・・・。
オデコのヒリヒリはもう無くなったのに、またヒリヒリしだして・・・
あの赤い光を思い出した。
怖い、って思ってボクはもうその原っぱに行かなくなったんだ。
END
「きゃあー!!!大作君!!!!」
そのとき自分でもなにがどうなったのかってわからなかったの。
すっごく頭が熱くなって目の前が赤くなって・・・・
ドーンって大きな音がして・・・登ってた木が・・・
私が・・・サニーがしたの・・・・
ただ落ちそうになった大作君の手をつかんであげようって思ったのに
助けてあげようって思っただけなのに・・・・・・・・
「おい!救護班こっちだ!!サニー様を!小僧などどうでもいいっ」
「うわっだめだ、まだトランス状態で近寄れない!!」
「仕方ないっセルバンテス様をお呼びしろ早く!」
どうしたの?・・・どうしてみんな・・・・頭がいたい・・・いたい・・・パパぁ・・・
大作君・・・頭から血が・・・サニーが・・・サニーがしたの・・・・
「申し訳ございませんセルバンテス様!!少し目を離した隙にっ」
「こ、これはいかん!!サニー!!」
「セルバンテス様近づくと危険です!!」
「どけ!お前たちは下がっていろ!!」
おじ様・・・サニーどうしたの?
「こんなことになるとは・・・サニー!私の目を見なさいっ」
目・・・?おじ様・・・の?
おじ様の目・・・色が・・・・・・・・・・・・・
「そうだ私の目だけ見ていなさい、さあ大丈夫だから目だけを・・・」
なんだか身体が・・・
頭が・・・・軽く・・・・
「さあ早く運べっ、いいかレベル5の遮蔽治療室を使いVS03=Y型を5ml血液注射しろ。後で私もすぐに行く!・・・おい!何をやっている大作君も怪我をしているじゃないか!早く運ぶんだっ!!!」
だいさくくん・・・ごめんね・・・・・・・・・
サニー、夢をみたの
パパ・・・赤ちゃん抱きかかえて走ってる・・・・
まわりはこわれたたてものばっかりで
明かりがなくってまっくらで、火事なのかな、燃えてる火だけが明るいの
車も、電車もこわれてうごいてないの
人も・・・うごいてない人が多くって・・・・
たくさんたくさんうごいてない人がいて・・・
パパはその中を・・・サニーを抱きかかえて走ってるの・・・・
「サニーちゃん、気がついたかい?」
パ・・・・おじ様・・・うん・・・ここはどこ?病院?
「そうだよ、サニーちゃんちょっと熱がでただけなんだ。寝ていれば治るから」
・・・・・・そう・・・なの・・・うん、頭がとってもいたかったのにもうなんともなくなってる・・・・あ、おじ様大作君は?大作君ケガしたの、サニーの、サニーのせいでケガしたの!どうしよう!どうしようおじ様!
「違うよ、サニーちゃんのせいじゃあないから安心したまえ」
ううん、サニーがやったの。サニーが大作君にケガさせちゃったの。ほんとうにごめんなさい・・・・ごめんな・・・・さい。
「サニーちゃん・・・・」
おじ様、どうしてうつむくの?
それからサニーは大作君がいる「基地」の病院からいつもくらしている「本部」の「メディカルセンター」っていうところに運ばれたの。
樊瑞のおじ様が泣きそうな顔しておみまいにきてくれた・・・しんぱいかけてごめんなさいおじ様。ううん、もう頭はいたくないの。サニーもう大丈夫お熱下がったみたい。でももう少し寝てなさいってセルバンテスのおじ様が言ったから・・・はい。ありがとうございます樊瑞のおじ様。
それからサニーはひとりでいっぱい考えたの、大作君にあやまらなくっちゃ、血が・・・出てたもん・・・いたいよね・・・サニーをゆるしてくれるかな・・・。またいっしょに遊んでくれるかな・・・。こんど会ったとき大作君に「ごめんね」ってあやまって・・・そうだ、クッキーを持っていこう。チョコがついたクッキーなら大作君も大好きだよね?2人で食べてまたお絵かきしたいな。
「寝ていないのか」
「パパ!」
パパ来てくれたんだ、しんぱいかけてごめんなさい・・・。
「まったく・・・セルバンテスがなにやらコソコソしているかと思ったら・・・お前と、どこぞの子どもとを・・・こうなる可能性もあるのをわかっていながら何を考えているのだあの男はっ!」
パパ、セルバンテスのおじ様を怒らないで。サニーがわがまま言ってお願いしたの、おともだちが欲しいって。それで・・・それでセルバンテスのおじ様が・・・・。サニーが悪いの、ごめんなさい・・・。
「その子どもとどうなったのかは頭に直接見えたからな・・・わかった・・・・わかっている・・・セルバンテスは悪くない、ましてやサニーお前も何も悪くは・・・ない。謝る必要などどこにもない、謝らなくて・・・いい・・・」
パパ?どうしたの?
「本当に悪いのは・・・私だ」
どうして?
「私の子であり血を受け継ぐばかりに・・・」
???
どうして?パパが悪くってあやまるの??
「こんなことになるのなら・・・・・ずっと独りでいればよかったのだ・・・・・」
パパはサニーの横に座ってセルバンテスのおじ様みたいにうつむいたの。
サニーはパパの言葉がわからなかったけどとっても悲しくっなって
悲しくなって・・・
「あのねサニーパパの夢を見たの、パパが赤ちゃんのサニーを抱いて走ってたのよ?」
「夢・・・?・・・私が?」
「パパ、サニーを落とさないようにしっかり抱いてくれてたの、わかったの」
「そ、それは・・・まさか・・・」
「だからサニーは・・・・パパの子で良かったって、思ったの・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
パパ変な顔になっちゃった。でも本当にそう思ったんだもん。
ね、パパ、パパ?・・・まだ変な顔になってる、うふふおかしいの。
あ、そうだあれをパパにわたさなきゃ・・・どこへ・・・あ、机の上にあった。
ねぇパパあれ使ってみて?
「なんだこれは」
「おともだちの子から貸してもらった接着剤、切っちゃった『おやこのえん』をこれでひっつければいいんだって。すぐつかなくってもセロテープで貼り付けておけばしっかりつくかもって、言ってたの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「パパ、これ使ってみてサニー『おやこのえん』ってわかんないから・・・
「・・・・・・・・・・・・そうか」
「ひっつくといいな・・・だってそれが切れてるからサニーはパパといっしょに暮らせないんでしょ?ひっつくとサニーはパパといっしょにいられるもの」
「・・・・・・・・・そう・・・・・・か・・」
パパ?
パパどうしたの?
大作君から借りた接着剤をパパはスーツのポケットにいれて「もう寝ていろ」ってサニーに言って出ていっちゃった。
それから三日たってセルバンテスのおじ様がサニーのおみまいにきてくれたの。もうサニー大丈夫なのに樊瑞のおじ様が「まだ休んでいなさい」って・・・おじ様って心配しすぎなの。
「ふふふ、いいじゃあないかサニーちゃん。でも本当に大丈夫かい?」
はい、セルバンテスのおじ様にも心配かけちゃって・・・
「いやいや、謝らないでくれたまえ。悪かったのはおじ様の方なのだから・・・」
ううん、違うの。パパはおじ様は悪くないって言ってたの。パパがねパパが悪いんだって・・・言ってたの・・・どうして悪いのかな・・・おじ様どうして?
「・・・・・・・・どうして・・・かな、おじ様にもわからない・・・・な・・・」
またおじ様うつむいちゃった・・・。ねぇおじ様大作君は大丈夫?
「ん?あ、ああ大作君は元気にしているよ、ところでね・・・・大作君なんだけど近いうちにお父さんのお仕事の都合で遠くへ引っ越すことになったんだよ・・・・」
「え、大作君が?・・・・そうなの・・・おともだちになれると思ったのに・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
あ、そうだ大作君から借りた接着剤返さなきゃ・・・
「ああ、それならね大作君が『あげるよ』って言ってたからサニーちゃん使いたまえ」
「本当?おじ様大作君に『ありがとう』って言ってくれる?」
「もちろんだよ」
「それと・・・『ごめんね』って・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
あれから・・・・・
あれからだいぶたつけどサニーはまだパパといっしょに暮らせないでいて
でも
すぐにひっつかなくってもセロテープで止めておけばそのうちひっつくんだって大作君が言ってたからもう少し時間がかかるんだと思うの。
きっとサニーのパパがセロテープで止めてくれてるから、大丈夫よね?大作君。
END
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