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「アルベルト!!セルバンテス!!!」

「うっひゃわ、な!?ああああー!!!」



突如現れた我らがリーダーによってひっくり返された白と黒の駒に、素っ頓狂な声を上げたのはセルバンテスだった。

「お主らはなんとも思わぬのか!!」

「ちょ・・・・何をするのかね!!せっかく一発逆転の一手を打とうと言う時に・・・ああ・・・オセロでアルベルトに勝てると思ったのに・・・」

ナマズ髭をさらに下げてセルバンテスは肩を落とすが、テーブルを挟んだ向かい側のアルベルトはというと「ざまぁみろ」と言わんばかりの態度で葉巻を盛大に吹かしていた。

「私はね、自慢じゃないがオセロでアルベルトに勝ったためしが無いのだよ?チェスやポーカーでは勝率は上だというのに・・・何故かオセロだけはどーしても勝てないのだよ。そんな私があと一歩で初勝利だというところへ・・・樊瑞!どうしてく」

「そんな場合ではない!!!!!」

本当に自慢にならないことを言うセルバンテスの剣幕を、さらに上回る剣幕で樊瑞はさらに詰め寄った。

「サニーが、私の全てである可愛いサニーがあの覆面男の餌食にぃ!」

「は?」




少々混乱している樊瑞を正気づかせるために、アルベルトは軽く(アルベルト的に)彼のみぞおちに衝撃波付きの一撃を見舞った。




「もう少し落ち着いて説明しろ、うるさくて敵わん」

「いや随分と静かになったが、大丈夫かねぇ」

セルバンテスに鼻を摘み上げられる樊瑞に反応は無かった。





息を吹き返すのに20分を要した樊瑞が涙ながらに語るにはこうだった。

サニーは最近は時間があればほとんど残月の元、つまり彼の執務室へ足を運ぶようになったらしい。残月とて多忙を常とする十傑集であるため、いつもそこにいるわけではないがサニーの方が残月がいる時は必ず訪れるようになったのだ。そしてそれがかれこれ二ヶ月もずっと続いているという。

「それで、どうしてサニーちゃんが残月の餌食になるのかよくわからないのだが」

「何を言うか、今までは時間があればこの私とのんびりとお茶を楽しんだり散歩をしたり・・・とにかく私と過ごしていたというのに・・・それがどうしたことだ!『明日は残月様は本部勤務でいらっしゃるのでしょうかおじ様』『残月様は今度いつお戻りになられるのですか?』『残月様のところへ遊びにいってきます』って・・・・残月残月残月と・・・・奴の元に通うのを楽しみにし、そわそわと待ち焦がれるサニーのあの顔!!うううあああ!!!」

「おいおい、あの残月だよ?あの残月がサニーちゃんをどうこうする男だとは思わないがねぇ、アルベルトもそう思うだろ?」

「少なくとも樊瑞よりかはな」

馬鹿馬鹿しいと言いたげな顔でアルベルトは紫煙をあさっての方向に吐き出した。娘をこの男に預けた責任をちょっとだけ感じたがそれは顔には出さなかった。

「あの男・・・我々の中でもちょーっと一番若いからといって、ちょーっとデキる男だといって、ちょーっとイイ男だからといって・・・きっとサニーは奴に弄ばれておるのだ!!」

「も、弄ばれているっていうのはちょっと考えすぎなんじゃあ・・・っていうか私には想像付かないんだけど」

完全に何かを見失っている樊瑞に2人はため息を漏らすが、私怨(というか嫉妬)を含んだ怒りをあらわに樊瑞はテーブルに拳を叩きつけた。分厚いそれは綺麗に二つに割れてしまったがそれを気にする者は誰もいない。

「イイ男かどうかは・・・覆面被ってるのだからわかんないけどまぁ一番は確実にこの私だとして、若いのは確かだし、彼の仕事の丁寧さは私も認めるところだけど。いいんじゃあないのかねぇ、サニーちゃん本人が楽しければ私は別に問題だとは思わないけどなぁ」

「私にとっては大問題だ!!!今日も残月の元へ行くなどと・・・うううサニー~」

「やれやれ付き合いきれん」

アルベルトは再び溜め息混じりの紫煙を吐いてから立ち去っていった。

「あ、おいアルベルト、もう一回オセロやろう!君が勝ったらモルジブの別荘あげるからさぁもちろんあの島丸ごとだよ!」

一人残ったのは勝手に盛り上がり頭を抱える樊瑞だけだった。













「十常寺から取って置きの茶葉をもらってな、今日は私とお茶を・・・」

「残月様のところへ行く約束をしているの、ごめんなさいおじ様。あ、今日は帰りが夕方になりますね、ちゃんと門限の5時までには戻りますので」

「・・・・・・・・・・・・・」





「サニー、今日もまた残月の元へ・・・」

「残月様今日は一時間しかいらっしゃらないそうなので・・・いけない急がなきゃ。それでは行ってきます」

「あ、ちょっと待ちなさい、サニー!」






あの・・・あの覆面男め・・・・・

渦巻く怨念(というか嫉妬)を背に乗せて樊瑞はその二つ名のとおりの形相を見せる。混世魔王ここに降臨!といった様相。彼の脳内劇場ではサニーの肩を引き寄せ下品な笑みを浮かべる残月の姿。アテレコはきっちり樊瑞によって行われ何も知らない純真無垢なサニーが残月の口車に乗せられてしまって騙されようとしている。子うさぎに牙を剥こうとする狼が忍び寄る!危うし!サニー!・・・・とまぁとにかく盛り上がって(勝手に)いた。

盛り上がりすぎて花嫁姿のサニーの隣に残月が立ったものだからさぁ大変。

全米ではなく樊瑞が泣いたその脳内劇場、ついにいても立ってもいられず気づけば残月の執務室のドアの前で仁王立ちとなっていた。


「残月ー!!私は許さんぞぉーーー!!」

ノックも無しに蹴破るや否や、マントより生み出された無数の古銭の弾丸が執務室のデスクに座っている残月に向かって高速飛来。

「な!!!!?」

「おじ様!?」

残月はさすが十傑集という動きで突如の攻撃にも関わらず全てをかわしたが・・・デスクの上に山高く積まれていた十傑集の決済を必要とする書類全てが古銭攻撃を受け、彼の目の前でまるで粉雪のように細かく飛び散っていった。

「なんてことをしてくれたのだ・・・今日中に各支部に送らねばならぬのに・・・」

「サニー!退いていなさい!!。残月貴様、何も知らぬのをいいことに私のサニーに無理やりチューを迫るとは・・・許さん!!この品性下劣な変態エロ覆面め!!!」

「きゃあ残月様あぶない!おじ様おやめください!!」

再び古銭の攻撃を放ったが・・・無数の古銭は全て同じ数の無数の鋼の針によって一瞬にして壁や書棚に縫い付けられてしまった。

「何をする樊瑞!!」

「おじ様!残月様はそんなことはなさりません!!私はただご本をこちらで読まさせて頂いていただけです!」

前に立ちはだかったサニーにやっと我に返った樊瑞。
彼がが目にしたのは・・・

来客用のテーブルに積まれている全18巻の大長編の恋愛小説。

泣きそうなサニーの手にあるのはその11巻目。
夢中になり先が楽しみで仕方が無い本を・・・しっかり握っていた。

「私がこの本を読むために残月様にお願いしてこちらへ通わせて頂いていたのです」

「え?は?・・・・いやそれなら何故借りるなどしない、今までそうしていたであろう」

「ですが・・・・おじ様は・・・こういう本を私が読むのを・・・」

「樊瑞、お主がうるさいからサニーも借りて帰ることができんのだ。だから彼女から頼まれて私がいる間はここで読まさせていた」

静かにおとなしく読書をしているだけなので自分も仕事に専念できる、たまにお茶を入れてもらったり気分転換にちょっとした話し相手になるので悪くは無い。サニーもまた読む時間は限られるが小うるさい後見人に気兼ねすることなく本を楽しめるし、残月はこころよく話し相手になってくれるので居心地がいい。

「そ・・・・そうだったのか・・・・そうか・・・はは・・・良かった・・・」

「私は良くは無い」

やはり勝手に安堵している樊瑞だったが、覆面越しにでもわかる大きな青筋を額に浮かべて残月は勤めて冷静に愛用する煙管に火を点けた。

「それで?山のような書類を片付けるのに汗を流す私が何をしていたと?」

「いや、あの・・・ゲホゲホ」

まるで樊瑞の顔にあてつけるかのように紫煙が細く吐き出される。

「誰が・・・品性下劣で・・・変態エロ覆面・・・だと?」

「その・・・」

残月はこの状況にどうしていいかわからないサニーに穏やかに言う。

「サニー、済まないが席を外してもらってもよいだろうか?」




一転、樊瑞に向き直れば嵐の前の静けさを含んだ声のトーンで




「『樊瑞のおじ様』と少々込み入った・・・話があるのでな」










END





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合掌。



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