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うろほろぞ
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おじさんとボク (5)






お父さんはロボットを作るのに今までよりももっといっしょうけんめいになった。


ボクもロボが完成するのが楽しみでいつも「あとどれくらいでできるの?」ってお父さんに聞いてるんだ。そんな時お父さんは「あと少しだよ」って決まって言うんだけど・・・

うん、その日は違ってて

「あと少しだよ・・・・そうだこの『GR1』さえ完成すればようやく・・・あの『言葉』に答えられるんだ・・・」

そう言うお父さんの横顔はボクが見た事が無いお父さんだった。










「それじゃあお父さんは一週間ほどお仕事で留守にするけど・・・もうひとりでも大丈夫か?大作」

お父さんはココとは別の『基地』の人たちとお仕事のお話があるんだって。そっか・・・ロボ作るお仕事って大変だなぁ・・・。大丈夫だよ、だってボクは大きくなったんだし男の子だよ?ひとりでも大丈夫だよお父さん。

「そうか、いつのまにかこんなに頼もしくなっていたんだな大作は・・・。じゃあお父さんは行ってくるから、お土産を持って帰るからね」

「うん!」

それからボクはひとりであそんでおとうさんがいないからひとりでごはん食べてひとりでお風呂にはいってひとりで布団に入って・・・

もう三日もそうしてたから大丈夫だったはずなのに、三日目の夜・・・ひとりまっくらな部屋で布団の中からてんじょう見てたら涙が出ちゃったんだ。どうやっても涙が止まんなくってお父さんも誰もいないから布団にもぐって声出してボクは泣いちゃった。





「目が赤いや・・・」

朝おきて鏡を見たら泣いたボクの目が赤くってなんだか・・・はずかしかった。だってさボクもう大きくなったし男の子だから泣くのははずかしいって思うんだ、かっこわるいよ絶対。だから泣いたの人に知られたくなかったから目をたくさんこすって『目にゴミが入ったから赤い』ってことにしようって決めた。

『ふくめんの人』とのお勉強の時間が終わって、家以外のボクが遊んでいい『B区画』っていうところでおじさんがくれた『ちょうごうきんロボット』を組み立てて遊んでいたら・・・

「やあ、大作君。久しぶりだね元気にしていたかね?」

「セルバンテスのおじさん!」

『たんとうしゃ』さんの交代じゃなかったけど1ヶ月ぶりにおじさんがボクに会いに来てくれたんだ。うん、おじさんボクは元気だよ、風邪だってひいてないんだから。

「うん?そうかい?」

おじさん?どうしたの?目が赤いのはゴミが入ったんだ、本当だよ。
ゴーグル取ってボクの顔をしげしげとのぞきこむんだ、あんまし見ないでよ・・・。

それからおじさんはお仕事先で買って食べたら美味しかったからってお土産の「おさかなの形をしたお菓子」をくれた。おじさん知らないの?これ「タイヤキ」って言うんだよ。ボクお父さんに買ってもらって食べたことあるもん。

「え?そうなのかね?へぇ~タイヤキねぇ・・・ふむ」

おじさんってボクに勉強教えてくれたりいろんなこといっぱい知ってるのに、ときどきボクでも知ってること知らないんだ。面白いよね。そういえばカラアゲ弁当だってボクが教えてあげたんだっけ。

「ふふふ、そうだね」

ボクとおじさんは2人ならんでタイヤキを食べてた。
そしたらおじさんが突然こう言ったんだ。

「大作君、私は明日からお仕事が休みでね・・・おとうさんが帰ってくるまで私の家にお泊りしないかね?」











ボクはビックリした。

だっておじさんのお家ってすっごくすっごく大きくって・・・テレビでしか見たことが無いような「世界のお金もちの家」って感じのお家だったんだ。それに庭が広すぎて玄関まで車で行くんだよ?ボクこんなところはじめてだよ。

中に入ると天井が高くってキラキラ光ってる照明で、あちこちツボとか絵とか・・・なんだかボク目がチカチカしてきた・・・。家じゃないよ、もうお城だよここ。

「彼は私の大切なお客様だから、粗相の無いようにしてくれたまえ」

「かしこまりました旦那様」

おじさんが「めしつかい」って呼ぶたくさんの人たちがズラーって並んで頭下げて出迎えてくれた。ボクは「ふくめんの人」には慣れてるけど・・・きんちょうするなぁ。でもおじさんはやっぱりなれてるのかな、まるで誰もいないように普通にふるまってる。

「え、おじさんのお家ってここだけじゃないの?」

「そうだよ、あと30箇所はあったかな?別荘はうーんこの前カナダで購入したのを入れるといくつだっけかなぁ・・・125?いや126?」

ボク・・・ポカーンってしちゃった。
おじさん本当にすっごいお金もちだったんだ・・・。

廊下にあったキンキラにかがやいてる外国のヨロイをながめてたらおじさんが側に来て「欲しかったらあげるよ」って言うんだ。うーん・・・これってかっこいいけどボクの部屋にあったらちょっとこわいかも。

「いらないのかい?全部金だよこれ」

「キラキラしてるのはかっこいいけど・・・これ側にあったらきんちょうして寝れないよぜったい、やっぱりいいやボク」

「ははははは!」

おじさん楽しそうに笑いながらふっかふっかのソファに座ってボクを手まねきして横にすわらせてくれた。

おじさんがパチンって指を鳴らしたら山もりいっぱいのくだものが運ばれて目の前のテーブルに並べられていく。うわぁ・・・すごい!メロンだよメロン。特別な時にしかボク食べたこと無いやつだ。でも・・・メロンもすごいけどおじさんがパチンって指鳴らすのもすごいって思っちゃった。だってボクあれできないもん。

「さあ、大作君好きなだけ召し上が・・・ん?指?」

「うん、おじさんはパチン!ってできるんだ!すっごいね、テレビのドラマで見たことがあるんだよ男の人がパチンって鳴らすとシューてお酒がすべって出てくるの」

ボクは運ばれてきたくだものそっちのけでおじさんに指の鳴らし方聞いてみた。
パチンって鳴らせるのってぜったいかっこいいよね。

「大作君は実に面白い」

「?」

自分でやってみても鳴らなくって頭ひねってたらおじさんまじめな顔して急に言うんだ。そうかな、ボクはおじさんの方が面白いって思うんだけどなぁ。

それから2人でメロンと・・・黄色いフルーツ食べて(後でおじさんに聞いたらまんごーてやつなんだって)せっかく広い庭があるからキャッチボールやろう!っておじさんに言ったら・・・。

「やったことないの?」

「ははは・・・」

ボールとグローブはおじさんがまたパチン!ってするとすぐに用意されたんだけど、おじさんキャッチボールってやたことないんだ・・・。
ボクはお父さんとキャッチボールやったことあるよ。最近は・・・お父さんいそがしくってぜんぜんやってないんだけど・・・。ここに来る前はお父さんがお仕事お休みの日に「かせんしき」ってところでよくやってた。

「おじさんはおじさんのお父さんとキャッチボールやらなかったの?」

「・・・・ああ」

ふうん、おじさんのお父さんもお仕事がいそがしかったのかな?
ボクはグローブはめて思いっきりおじさんにボールを投げた。ちょっとそれちゃったけどおじさん上手くキャッチしてくれたんだ。そしてボクが受け止めやすいようにおじさんが投げてくれたボールを受け止めて、またボクがおじさんに投げてあげる。

うん、ただこれを繰りかえすだけなんだよね

でもボクたちは日が暮れるまでむちゅうになってキャッチボールやったんだ。





夕ご飯はぶあつーいステーキで、ボクはナイフなんかお父さんにレストランに連れて行ってもらった時に一度使っただけだから上手にお肉切れないけど・・・向かい側にすわってるおじさん、上手にナイフでお肉を切ってる・・・。

「大作君、おじさんがお肉を切ってあげようか?」

おじさんにお肉切ってもらっちゃった。

「指も鳴らせるしボール投げるのも受け取るのもうまいし、お肉も上手に切れるなんて、おじさんてやっぱりすごいね」

「ん?・・・ふふふ、そうかい?大作君が言うのだからきっとすごいのかもしれないね」

ボクはおじさんとたくさんおしゃべりしながらごちそうをお腹いっぱい食べた。「じゃあ次は食後のデザートだ」っておじさんが指を鳴らしたらアイスクリームが出てきて・・・アイスクリームっておやつじゃないの?って言ったらまた、おじさん楽しそうに笑ったんだ。




ご飯を食べた後にめしつかいの人に案内されてお風呂に入った。もうさ、お風呂じゃなくってこれプールだよね。だって学校のプールより大きいんだもん。だからボク・・・泳いじゃった。明日はおじさんのゴーグル借りてもぐってみようかな。

お風呂から上がったら真っ白なパジャマが用意されててふかふかだからすっごく気持ちいいんだ。頭をタオルでふきながらまためしつかいの人に案内されておじさんがいる部屋に入った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

てんじょうが高くってすごく広い部屋にひとり

おじさんがボクに背中向ける形でソファにすわってた

背が高くって大きいおじさんなのに、なんでか背中が小さく見えてボクは・・・

声を掛けられなかった。



「ん?・・・やあ大作君、迷子にならずよくここに来れたね、ふふふお風呂はどうだったかね?溺れないかと心配していたんだよ」

おじさんボクに気づいて振り向いてニヤーって笑うんだ。もう!ばかにしないでよね。でも・・・すっごく広い家だからめしつかいの人がいなかったらぜったい迷子になったと思う・・・ないしょだけど。お風呂は・・・学校のプールでいっぺんおぼれかけたことあるけどお風呂じゃおぼれなかったもんね。

「さあ、それじゃあそろそろ寝ようか」

手に持ってた・・・お酒かな、赤いのが入ってるグラスを置いてボクの頭をタオルでゴシゴシふいてくれた。となりが寝室でボク一人で寝るには大きすぎるベッドがあって・・・

「大作君、ひとりで寝れるかい?」

「だ、大丈夫だよ!」

「ふふ、頼もしいね、じゃあおやすみ」

「うん・・・おやすみ・・・」

でも

おじさんが明かりを消して部屋から出て行こうとしたら、なんだか急に怖くなったんだ
ボクひとりになっちゃうって・・・
そう思ったら胸がドキーって・・・痛くなって・・・


「お・・・おじさん!」

「なんだい大作君」

「あの・・・さ。ボクが寝るまでなんかお話して欲しいんだけど」

「ん?ああ、いいとも」

おじさんはあのクフィーヤっていう白い布を初めてボクの前で脱いだ。
そしてボクの隣に寝っころがっていろいろお話してくれた。
そのほとんどが遠い「いこく」のお話で空を飛ぶじゅうたんの話とか願い事がかなうランプとか・・・本当にあったことなのかどうなのかわからないけどとてもワクワクするんだ。四つ目のお話が終わって・・・ボクはおじさんにちょっときいてみた。

「おじさんの家族の人ってどこに住んでるの?」

だってここの家にいなかったもん。お父さんとかお母さんとか、兄弟の人とか。
こんなに広い家なのにめしつかいの人と・・・おじさんひとりだけだもん。

「・・・・・・・・・・・・」

おじさん、固まっちゃった。聞いちゃいけなかったのかなぁ。
どうしようなんだか気まずいや。

「ふふ・・・・・・遠い、とっても遠いところに・・・・住んでいるんだよ」

ふうん、じゃあ・・・おじさん、さみしいでしょ?
って聞いたらおじさんちょっと笑って

「そんなことはないさ、私にはちゃんと友達がいるからね」





それにボクもいるじゃないかって・・・

おじさんニッコリ笑って頭を撫でてくれた。

大きな手だけど、その時は本当に「大きいな」って思った。






次の日もおじさんとキャッチボールして
夕ご飯はおっきなお魚で、おじさんに骨をきれいにとるのを教えてもらって
お風呂に入る時はおじさんのゴーグル借りてもぐって
ぬれた頭をおじさんにタオルでゴシゴシしてもらって
おじさんの「いこく」のお話を聞きながらボクはまた眠った。



そうして四日間のおじさんの家のお泊りが終わって、お父さんが帰ってきてくれた。
お父さんのお土産はしっぽまでアンコが入った「タイヤキ」だったんだよ。
まだちょっとだけあったかいそれをお父さんと2人で食べてたら

「大作、お父さんがいない間ひとりで大丈夫だったか?」


「うん!」



ボクはもう、ひとりで寝るのが怖く無くなったから胸をはってうなずいたんだ。











END






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パパとサニー






「きゃあー!!!大作君!!!!」

そのとき自分でもなにがどうなったのかってわからなかったの。
すっごく頭が熱くなって目の前が赤くなって・・・・

ドーンって大きな音がして・・・登ってた木が・・・

私が・・・サニーがしたの・・・・


ただ落ちそうになった大作君の手をつかんであげようって思ったのに
助けてあげようって思っただけなのに・・・・・・・・


「おい!救護班こっちだ!!サニー様を!小僧などどうでもいいっ」

「うわっだめだ、まだトランス状態で近寄れない!!」

「仕方ないっセルバンテス様をお呼びしろ早く!」

どうしたの?・・・どうしてみんな・・・・頭がいたい・・・いたい・・・パパぁ・・・

大作君・・・頭から血が・・・サニーが・・・サニーがしたの・・・・

「申し訳ございませんセルバンテス様!!少し目を離した隙にっ」

「こ、これはいかん!!サニー!!」

「セルバンテス様近づくと危険です!!」

「どけ!お前たちは下がっていろ!!」

おじ様・・・サニーどうしたの?

「こんなことになるとは・・・サニー!私の目を見なさいっ」

目・・・?おじ様・・・の?
おじ様の目・・・色が・・・・・・・・・・・・・

「そうだ私の目だけ見ていなさい、さあ大丈夫だから目だけを・・・」

なんだか身体が・・・
頭が・・・・軽く・・・・

「さあ早く運べっ、いいかレベル5の遮蔽治療室を使いVS03=Y型を5ml血液注射しろ。後で私もすぐに行く!・・・おい!何をやっている大作君も怪我をしているじゃないか!早く運ぶんだっ!!!」


だいさくくん・・・ごめんね・・・・・・・・・









サニー、夢をみたの



パパ・・・赤ちゃん抱きかかえて走ってる・・・・

まわりはこわれたたてものばっかりで

明かりがなくってまっくらで、火事なのかな、燃えてる火だけが明るいの

車も、電車もこわれてうごいてないの

人も・・・うごいてない人が多くって・・・・

たくさんたくさんうごいてない人がいて・・・

パパはその中を・・・サニーを抱きかかえて走ってるの・・・・










「サニーちゃん、気がついたかい?」

パ・・・・おじ様・・・うん・・・ここはどこ?病院?

「そうだよ、サニーちゃんちょっと熱がでただけなんだ。寝ていれば治るから」

・・・・・・そう・・・なの・・・うん、頭がとってもいたかったのにもうなんともなくなってる・・・・あ、おじ様大作君は?大作君ケガしたの、サニーの、サニーのせいでケガしたの!どうしよう!どうしようおじ様!

「違うよ、サニーちゃんのせいじゃあないから安心したまえ」

ううん、サニーがやったの。サニーが大作君にケガさせちゃったの。ほんとうにごめんなさい・・・・ごめんな・・・・さい。

「サニーちゃん・・・・」

おじ様、どうしてうつむくの?




それからサニーは大作君がいる「基地」の病院からいつもくらしている「本部」の「メディカルセンター」っていうところに運ばれたの。


樊瑞のおじ様が泣きそうな顔しておみまいにきてくれた・・・しんぱいかけてごめんなさいおじ様。ううん、もう頭はいたくないの。サニーもう大丈夫お熱下がったみたい。でももう少し寝てなさいってセルバンテスのおじ様が言ったから・・・はい。ありがとうございます樊瑞のおじ様。


それからサニーはひとりでいっぱい考えたの、大作君にあやまらなくっちゃ、血が・・・出てたもん・・・いたいよね・・・サニーをゆるしてくれるかな・・・。またいっしょに遊んでくれるかな・・・。こんど会ったとき大作君に「ごめんね」ってあやまって・・・そうだ、クッキーを持っていこう。チョコがついたクッキーなら大作君も大好きだよね?2人で食べてまたお絵かきしたいな。


「寝ていないのか」

「パパ!」

パパ来てくれたんだ、しんぱいかけてごめんなさい・・・。

「まったく・・・セルバンテスがなにやらコソコソしているかと思ったら・・・お前と、どこぞの子どもとを・・・こうなる可能性もあるのをわかっていながら何を考えているのだあの男はっ!」

パパ、セルバンテスのおじ様を怒らないで。サニーがわがまま言ってお願いしたの、おともだちが欲しいって。それで・・・それでセルバンテスのおじ様が・・・・。サニーが悪いの、ごめんなさい・・・。

「その子どもとどうなったのかは頭に直接見えたからな・・・わかった・・・・わかっている・・・セルバンテスは悪くない、ましてやサニーお前も何も悪くは・・・ない。謝る必要などどこにもない、謝らなくて・・・いい・・・」

パパ?どうしたの?

「本当に悪いのは・・・私だ」

どうして?

「私の子であり血を受け継ぐばかりに・・・」

???
どうして?パパが悪くってあやまるの??

「こんなことになるのなら・・・・・ずっと独りでいればよかったのだ・・・・・」

パパはサニーの横に座ってセルバンテスのおじ様みたいにうつむいたの。
サニーはパパの言葉がわからなかったけどとっても悲しくっなって

悲しくなって・・・


「あのねサニーパパの夢を見たの、パパが赤ちゃんのサニーを抱いて走ってたのよ?」

「夢・・・?・・・私が?」

「パパ、サニーを落とさないようにしっかり抱いてくれてたの、わかったの」

「そ、それは・・・まさか・・・」

「だからサニーは・・・・パパの子で良かったって、思ったの・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

パパ変な顔になっちゃった。でも本当にそう思ったんだもん。
ね、パパ、パパ?・・・まだ変な顔になってる、うふふおかしいの。

あ、そうだあれをパパにわたさなきゃ・・・どこへ・・・あ、机の上にあった。
ねぇパパあれ使ってみて?


「なんだこれは」

「おともだちの子から貸してもらった接着剤、切っちゃった『おやこのえん』をこれでひっつければいいんだって。すぐつかなくってもセロテープで貼り付けておけばしっかりつくかもって、言ってたの」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「パパ、これ使ってみてサニー『おやこのえん』ってわかんないから・・・

「・・・・・・・・・・・・そうか」

「ひっつくといいな・・・だってそれが切れてるからサニーはパパといっしょに暮らせないんでしょ?ひっつくとサニーはパパといっしょにいられるもの」

「・・・・・・・・・そう・・・・・・か・・」

パパ?

パパどうしたの?

大作君から借りた接着剤をパパはスーツのポケットにいれて「もう寝ていろ」ってサニーに言って出ていっちゃった。






それから三日たってセルバンテスのおじ様がサニーのおみまいにきてくれたの。もうサニー大丈夫なのに樊瑞のおじ様が「まだ休んでいなさい」って・・・おじ様って心配しすぎなの。

「ふふふ、いいじゃあないかサニーちゃん。でも本当に大丈夫かい?」

はい、セルバンテスのおじ様にも心配かけちゃって・・・

「いやいや、謝らないでくれたまえ。悪かったのはおじ様の方なのだから・・・」

ううん、違うの。パパはおじ様は悪くないって言ってたの。パパがねパパが悪いんだって・・・言ってたの・・・どうして悪いのかな・・・おじ様どうして?

「・・・・・・・・どうして・・・かな、おじ様にもわからない・・・・な・・・」

またおじ様うつむいちゃった・・・。ねぇおじ様大作君は大丈夫?

「ん?あ、ああ大作君は元気にしているよ、ところでね・・・・大作君なんだけど近いうちにお父さんのお仕事の都合で遠くへ引っ越すことになったんだよ・・・・」

「え、大作君が?・・・・そうなの・・・おともだちになれると思ったのに・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

あ、そうだ大作君から借りた接着剤返さなきゃ・・・

「ああ、それならね大作君が『あげるよ』って言ってたからサニーちゃん使いたまえ」

「本当?おじ様大作君に『ありがとう』って言ってくれる?」

「もちろんだよ」

「それと・・・『ごめんね』って・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」













あれから・・・・・



あれからだいぶたつけどサニーはまだパパといっしょに暮らせないでいて

でも

すぐにひっつかなくってもセロテープで止めておけばそのうちひっつくんだって大作君が言ってたからもう少し時間がかかるんだと思うの。




きっとサニーのパパがセロテープで止めてくれてるから、大丈夫よね?大作君。






END







おじさんとボク (4)






ユウジ君を忘れて
セルバンテスのおじさんと仲良くなって
お父さんが三つ目のロボを作り始めて

・・・そしてボクはここに来たときよりも大きくなった。




相変わらずボクの生活は『ふくめんの人』がお世話してくれてて食事もふくめんの担当の人が作ってくれて、服も用意してくれるんだ。あ、でも最近ボクは洗濯機の使い方おぼえたから自分で洗えるよ。干すのは・・・背がとどかないからやっぱりふくめんの人がやってくれてるけど。

それにいつもはふくめんの人だけどセルバンテスのおじさんもたまにボクに勉強を教えてくれるんだ。おじさんは学校の先生よりもずっとていねいに教えてくれるからボクは苦手だった算数が得意になった。だってロボットつくる人になるためには算数もできないといけないもんね。九九だって何も見ずにちゃんと言えるようになったもん。

ボクはこの生活は嫌いじゃないけど・・・うん、嫌いじゃないんだ、でもおじさんがいない間はずっとボクひとりだ。お世話してくれるふくめんの人はなんだか必要なことだけしかしゃべってくれないし遊んでくれないんだ。ゲームはあるけど毎日じゃあきちゃうしさ。おじさんがいるとすっごく楽しいのに、ボクひとりでいるのがなんだかとっても・・・さびしく感じるようになった。

「おじさん・・・ボク・・・ともだちが・・・」

ほしいって・・・言ってみようかな・・・。どうしようおじさん困らないかな。でもおじさん『大丈夫じゃないときはおじさんに言ってくれたまえ』って笑ってたから・・・言ってもいいんだよね?


「お友達が欲しいのかい?」

「・・・うん・・・・」

「おじさんだけじゃあダメかなぁ」

「え?・・・おじさんもボクのともだちだけど・・・」

「いやいや、ははは!冗談だよ大作君。近い年の子じゃないとね。うん、そうだねぇよし、毎日遊ぶことはできなくってもたまにで良ければ・・・なんとかしてあげよう」

「本当!?やったあ!」

「やっぱり独りじゃあ寂しいものね、おじさんもわかるよ」

ボクはうれしくって飛びはねちゃったよ。だってダメだと思ってたから。おじさんに言ってみてよかった・・・。





それから一週間してまたセルバンテスのおじさんがひょっこりボクに会いに来てくれた。
おじさんはいつもよりニコニコ笑っててうれしそうにしてるんだ。

「大作君、君とお友達になりたいって子を連れてきたよ・・・ふふふ、女の子なんだけど会ってくれるかい?」

え・・・えええ!えー!女の子ぉ・・・ボク、男の子だと思ってたのに・・・。べ、べつに嫌じゃないけどさ、ボクがまだ学校に行ってた時は女の子と遊んだことなんか無いんだもん。だって女の子とどうやって遊んでいいのかわかんないし・・・・。

「とっても可愛いんだよ?大作君に会えるのを楽しみにしてくれてたんだよ?」

・・・どうしようなんだかとってもきんちょうしてきた・・・。

「うん・・・・いいよ・・・」

そう言ったらおじさんがニッコリ笑って頭からかぶってるクフィーヤってやつを広げたら中から・・・女の子が出てきた。

「・・・こん・・・にちは・・・・サニー・・・です」

うっわー・・・・すっごく・・・その・・・かわいい・・・。お人形さんみたいな女の子だぁ・・・学校でもこんなにかわいい子いなかったよ?外国の人みたいに髪がふわっふわで色がキラキラしてて、目が大きくって・・・ボク初めて見たけど赤い色してる、ふしぎだなぁ。

「ようし、じゃああっちで遊んでおいで、もちろん仲良くだ」









「ボク・・・大作って言うんだ」

「・・・・・」

サニー・・・ちゃん、さっきからとってもはずかしそうにモジモジしてる。ボクもとってもはずかしいんだけど・・・どうしよう何しゃべっていいのかわかんないや。女の子だからゲームとかやんないだろうし、どうやって遊べばいいんだろ・・・。

「あ・・・あれさ・・・ボクが描いた絵なんだ」

たまたま目に付いた去年描いたボクの「かぞくの絵」を見せてあげたんだ。

「このすみっこの・・・セルバンテスのおじさまね?」

「うん!」

ゴーグルかけて真っ白い布かぶってて、長くてへんなヒゲだからすぐにわかるよね。サニーちゃんも知ってる人だからうれしそうに笑ってる。サニーちゃんフツーにしてるときもかわいいけど・・・笑ってるともっとかわいいなぁ。

「これなぁに?」

これ?ロボだよ、ボクお父さんが作ってるとってもとっても大きなロボットなんだ。

「ロボットが家族なの?」

そうだよ、おかしい?って聞いたらサニーちゃんは「ううん」って言ってくれた。


それをきっかけにボクはサニーちゃんといろいろお話したんだ、サニーちゃんもボクとおんなじでお母さん小さい頃に死んじゃっていないんだって。そしてお父さんとはなれて暮らしててやっぱりふくめんの人に囲まれてお世話してもらってるんだって。

ボクはなんだかうれしくなった。だってお母さんがいなくって仕事がいそがしいお父さんとあんまし一緒にいられないなんて・・・ボクと・・・似てるよね?

「サニーちゃんも何か描く?」

ボクはサニーちゃんとお絵かきして遊ぶことにした。この前セルバンテスのおじさんに買ってもらった36色もあるとっておきの色鉛筆をはじめて使ったんだよ。ボクは画用紙いっぱいにロボを描いてたんだけどサニーちゃんはたくさん人を描いてた、これだれ?ってきいたら「サニーのおじ様たちよ」って言うんだ。

セルバンテスのおじさんはすぐにわかったけど・・・他はわかんない、だれなんだろう。

「これはカワラザキのおじい様に幽鬼様、そしてこっちが怒鬼様に十常寺様に・・・」

すごい・・・サニーちゃんてこんなにおじさんがいるんだ・・・。ねぇこのピンク色の人はだれ?かみがすっごく長いの。

「樊瑞のおじ様よ、とってもおやさしくってサニーは大好きなの」

へぇ・・・いいなぁサニーちゃんこんなにたくさんおじさんがいて。ボクのおじさんはセルバンテスのおじさんしかいないもん。うらやましいなぁ・・・

「でも・・・サニーは大作君がいいなぁって思うの。だってパパといっしょに暮らしてるんでしょ?サニーは樊瑞のおじ様と一緒に暮らしてるけど・・・パパとは一緒に暮らしてないの」

なんで?やっぱりお仕事がとってもいそがしいから?

「たぶんそうだと思うんだけど・・・・サニーよく・・・わかんない・・・『おやこのえん』を切ってるからだろってレッド様が言ってたけど・・・ねぇ大作君、おやこのえんってなぁに?」

わかんない、なんだろう・・・。それ切ってるからサニーちゃんと暮らせないんだったら切ったのひっつければいいんじゃないかなぁ。ボクが持ってる工作用の接着剤でひっつくんだったら貸してあげてもいいよ?

ボクは机の引き出しから黄色いチューブに入った接着剤を取り出してサニーちゃんに貸してあげた。すぐにひっつかないんだったらセロテープで止めておけばいいんだ、しばらくすればたぶんしっかりひっつくよ。

「そうなんだ・・・サニーパパにお願いしてみるわ、ありがとう大作君」

「ひっつくといいね」

「うん」

ボクたちは絵を描きながらもっとお話をした。サニーちゃんはたくさんいるおじさんたちのことやちょっとこわいけど大好きなお父さんのこと。ボクは去年やった家出のこと話したらサニーちゃんすっごくおどろいてた、えへへ、家出やったからねサニーちゃんよりちょっと大人だよボクは。そうだ、サニーちゃんも家出やってみるといいよ?だってお父さんがきっと心配してサニーちゃんを探してくれるよきっと。

サニーちゃんまたわらった。

ボクはサニーちゃんはわらってるのがぜったいにいいと思う。


それから天気がいいから外に出て遊ぶことになってボクはサニーちゃんとふたりで原っぱへ行ったんだ。原っぱって言ってもボクの家、おじさんが「基地」って呼ぶ建物のすぐそばにあるんだ。でもそこで遊ぶときはいっつもふくめんの人が2、3人付いてきちゃうんだよ、なんでだろ。

真ん中におおきな木があってボクはそれにのぼれるんだよ?すごいでしょ・・・って・・・ええ!サニーちゃんすごい・・・のぼっちゃった・・・。

ボクはびっくりした、だって女の子って木登りしないって思ってたから。

「大作君もはやく!」

「うん、ちょっとまってて!」

いつものようにボクは木に足をかけてしがみつくように登っていったんだ

サニーちゃんが手を伸ばしてくれて、ボクはその手をにぎろうとした

その時、ボクは足をすべらせちゃって・・・

空にあるおおきな太陽が・・・・見えた



「きゃあー!!大作君!!!!」



サニーちゃんがボクの名前をよんでさけんでるのが聞こえて

その時目の前が・・・ピカーってまっかっかになったんだ・・・



いたい・・・・・・・

足が・・・いたい・・・・いたいよぉ・・・お父さぁん・・・・

「貴様ぁ!サニー様に何をした!!!サニー様!おい救護班を呼べ!」

頭もいたい・・・・おじさぁん・・・・いたいよぉ・・・

「大・・・君・・・」

「サニー様!おい早くしろっそんな小僧はどうでもいい!!」

「だいさく・・・くん・・・ごめんなさい・・・」



サニーちゃん・・・・・・・・・












ボクが気づいたとき空に太陽は無くって・・・上は真っ白いてんじょうだった。

「大丈夫かい?大作君・・・」

おじさんだ、セルバンテスのおじさんだ。
おじさん、ボクどうしたの?サニーちゃんは?

「木から落ちちゃって足の骨を折っちゃったんだよ、まだ痛むかい?」

ほんとだ、ボクの左足がほうたいでグルグル巻きになってる。ううん、もう痛くないよ。それよりオデコがなんだかヒリヒリするんだ・・・ぶつけちゃったのかなぁ。でもおじさん、サニーちゃんは大丈夫?だって・・・ふくめんの人がすっごく・・・さけんでて・・・ボク・・・。

怖かった・・・

赤い光がピカーって光って・・・それになにかとんでも無い事をしちゃったのかなって、ふくめんの人がボクのことどうでもいい!ってさけんでる声聞いててすごく怖かったんだ。怖かったんだおじさん・・・。

「どうでもよくないから、大作君が謝ることはないんだよ、おじさんが・・・一番悪かったんだ・・・済まなかったね」

ボクは初めておじさんがためいきするの見た・・・どうしておじさんが悪いんだろう、悪いのボクなのに、足をすべらせて・・・きっとサニーちゃんも落ちちゃったんだ・・・そうだ、サニーちゃんは?ケガしてない?

「・・・・・大丈夫だよ、ちょっとお熱が・・・出てね、先にお家に帰ったんだよ。大作君のことをとても心配してて『ごめんね』って言ってたよ・・・・」

どうして・・・・どうしてサニーちゃんがあやまるの?おじさんがあやまるの?ボクもあやまって・・・なんだか変だよ。みんながあやまって変だよ。

「そうだね、変だね・・・」

絶対に・・・変だよ・・・・。





それから・・・二日たってセルバンテスのおじさんがボクがいる病室にやってきた。

「大作君、実はサニーちゃん、お父さんの仕事の都合で遠くへお引越しすることになったんだよ」

「・・・・そっか・・・・サニーちゃん・・・おともだちになれるって思ってたのに」

「・・・・・・・・・・・・・」

そうだ、ねぇおじさんこの前サニーちゃんに貸した接着剤、あげるよって言っといて欲しいんだけど。ボクはもう一個持ってるし。

「接着剤??」

うん、サニーちゃんがさ、切った『おやこのえん』っていうのをくっつけるのに使うから貸してあげたんだ。うまくひっつくといいんだけど・・・あれ紙と木の接着剤だから、プラモデル用のやつにすれば良かったかなぁ。ねぇおじさんはどう思う?

「いや、それでひっつくと思うよ・・・・」

おじさん、ボクを抱きよせてくれた。

そうだよ、ひっついてサニーちゃんはお父さんと一緒に暮らせるようになるといいんだ。

だよね、サニーちゃん。


バイバイ・・・サニーちゃん・・・。


バイバイ・・・・・・・・・・・。









ボクの左足についてた白いかたまりがとれて・・・

ボクは歩けるようになってからあの原っぱに行ってみた。



原っぱにあったはずの大きな木が無くなってた。

ううん、無くなってはなかったんだ。

上半分が無くなって根元がボロボロになって

雷が・・・落ちたいみたいに・・・なってた・・・。

オデコのヒリヒリはもう無くなったのに、またヒリヒリしだして・・・

あの赤い光を思い出した。

怖い、って思ってボクはもうその原っぱに行かなくなったんだ。










END





「パパとサニー」へ



おじさんとボク (3)






「お父さんのウソつき!!!」

ボクは泣きながら枕を力いっぱいお父さんに投げつけた。

今日はお休みでボクを遊園地に連れて行ってくれるって言ってくれたのに、またお仕事になってダメになっちゃったんだ。もう一ヶ月も前からやくそくしていたんだよ?その前もお仕事でダメになっちゃったからすっごくすっごく楽しみにしていたんだよ?なのにお父さん

「いい子だから我慢しなさい、また今度遊園地に連れて行ってあげるから」

「・・・・・・・・・・」

この前のお絵かきの時間に描いた「かぞくの絵」をボクはくしゃくしゃにしてゴミ箱に投げつけた。ボクとお父さんの2人が描かれた絵、お父さん忙しくってまだ絵を見せてなかったけどもういらないや。

ガマンはいっつもしてるのに、まだガマンするの?もうボク嫌だよ。こんなのならボクはいい子やめちゃうよ?わるい子になってお父さんを困らせるよ?いいの?

そうだ、家出しよ。家出してお父さんを困らせてやるんだ「大作ー」って探させてやるんだ、探したってボクは出てこないから、お父さんが泣いて頼んでもボクは帰らないからね。

テレビで見たことがあるんだ、こうやってかばんにたくさん服とか食べ物つめ込んで家出するの。でもお金が・・・いいや貯金箱の中に1500円ちょっとあったからあれ持って行こう。お腹すいたらポテチ食べればいいし。うん、これなら一週間は家出できるよきっと。

「よいしょっと」

ここをぬけ出して・・・うーんと、どこへ行こう。ここって車か飛行機が無いと町までいけないんだよ・・・そうだ、たまに荷物と一緒にやってくる貨物の車にこっそり乗っちゃおうっと。


ボクはふくらんだカバンをおぶって誰にも見つからないようにこっそり家・・・といってもお父さんが働く工場、おじさんは「基地」って呼んでる中にある部屋から出た。ドキドキしながら『ふくめんの人』に見つからないように基地の入り口まで来ちゃった。

「おや、大作君どこかへ遠足かい?」

貨物の車の後ろに乗り込もうと思ったら、セルバンテスのおじさんがいつからいたのかボクの後ろにいたんだ。シーッ!ビックリさせないでよもう・・・遠足じゃないよ、家出するんだ。おじさんが止めてもムダだからね、ボクは決めたんだから。

「ほう、家出かね。それじゃあおじさんも大作君と一緒に家出しようかな」

え?本気で言ってるの?って言う前におじさんはボクの手を引いて荷物を降ろして何も無くなった車の後ろに乗り込んじゃった。


車のすきまから基地がどんどん遠くなっていくのが見える。
ボクは本当に家出してるんだって思えてきてなんだかワクワクしちゃう。


車に乗ってる間、どうしてボクが家出するのかおじさんに説明してあげた。

「そりゃ家出したくなるねぇ」

そうでしょ?おじさんもそう思うでしょ?お父さんはボクのことなんかどうでもいいんだ、ロボさえいればいいんだよ。もうロボも大嫌いだ、ロボット作る人になんか絶対なんないよ。

ボクは車の中でおじさんにカバンの中身を見せてあげた。こりゃあ家出の準備ばんたんじゃないか、すごいねぇっておじさんがほめてくれた。えへへ、すごいでしょってボクは得意になったんだ。それからポテチはお腹がへってたから・・・車の中で2人で食べちゃった。

しばらく車に乗ってたらおじさんがいきなり「この辺で降りるかな」ってボクをカバンごと抱きかかえて走ってる車から飛び降りたんだ。そこはどこかの町だった。見たことの無い、まったく知らない町。おじさんも「私も初めてで知らないところだよ」って笑って言ってた。

「でもどうせ家出するなら知らない所の方が気分が盛り上がるだろう?」

「おじさんボクみたいな小さいころに家出したことがあるの?」

「ふふふ、あるよ」

すごいやおじさん、ボクの家出のセンパイだね。
プロと言いたまえって、あはは胸をはって得意になってるよおじさん。

おじさんはどうして家出なんかしたんだろ、ボクと一緒な理由だったのかな。
ボクはおじさんと歩きながらちょっときいてみた。

「さあ・・・どうだったんだろうね、もしかしたら大作君と一緒の理由だったのかもしれないけれど・・・もう昔のことだから・・・・・・・忘れちゃったよ・・・・」

じゃあ、じゃあさ!おじさんが家出した時おじさんのお父さんもお母さんも、そして兄弟の人もきっとみんな大慌てでおじさんを探したんだろうね。

「・・・・私が家出したことに・・・・・・・・・・誰も気づかなかったんだよ」

「・・・・・・・・・・・」

ボクが見たのは先を歩くおじさんの背中で、真っ白いクフィーヤっていう被り物がヒラヒラ風になびいてただけだった。そう言うおじさんの顔は・・・ボクには見えなかった。

「ははは!『ボク家出しまーす』って宣言すれば良かったのにねぇ。でも・・・大作君は内緒で家出してもきっとお父さんがすぐに気づいて必死になって探してくれているよ?「大作ー」ってね、いいじゃあないかたまには心配させてあげるのも必要だと思うけど。うん」

振り向いたおじさんはいつものおじさんでニッコリ笑ってて・・・



「おじさんが家出したら・・・ボクはおじさんを探すよ?」




ボクはおじさんの目を見てそう言った。

だって、本当に探すもの。

おじさんが家出していなくなったらすぐに気づいてボクは探すもの。

見つかるまでずっとずっと探すもの。



おじさんは、ボクの目をしばらく見つめて


「ありがとう」


そう言った。





それからボクとおじさんは知らない町でたくさん遊んだ。
知らない公園でボクはブランコで立ちこぎして、ジャングルジムのてっぺんまで登って、それから持ってた1500円でクレープ買って2人で半分こしながら食べ歩きして、本屋でマンガを立ち読みして、自動はんばいきでコーラ買って、あ、たんさんはお父さんに「歯が溶けるから飲んじゃ駄目」って言われてるけどおじさんが「内緒にしてあげるから」って言うから買って飲んじゃった、うん、ゲップがたくさん出たけどおいしかったよ。そして海まで小石をけりながら歩いて砂浜で貝を拾ったりカピカピにかんそうしたワカメみたいなのをおじさんの頭に乗っけて遊んでそれから、それから・・・

おじさんと夕日を見た。



「じゃあ、帰ろうか」

「うん」



おじさんはスーツのふところから何か取り出して何かしゃべってた。
そしてらすぐに大きなヘリコプターがやってきてそれに2人で乗り込んだんだ。



こうしてボクの最初で最後の家出が終わった。








お父さんは帰ってきたボクを見るなり力いっぱい抱きしめてくれた。
仕事そっちのけでボクを探してたんだって。
それにお父さん、泣いてた。
家出して悪かったなぁって思ったけど、して良かったって・・・思った。





次の日お父さんはとつぜん休みになった。

セルバンテスのおじさんがそうしてくれたんだって。

そしてお父さんはボクを遊園地に連れて行ってくれた。

BF団の人も何人か一緒だったけど、その人は遠くでボクたちを見てるだけだった。

遊園地はすっごく楽しかった、お父さんもすっごく楽しそうで笑ってて、そんなお父さんと2人で一緒に楽しんでるんだって思うとボクは本当に本当にうれしかった。




遊園地から家に帰ったらくしゃくしゃに丸めてのゴミ箱に投げ捨てたはずの「かぞくの絵」が・・・誰かが取り出したのかボクの机の上にあった。

ていねいに広げられたその絵のボクとお父さんはやっぱり笑ってて、ボクはその絵のすみっこにロボを描き加えてみた。


そしてセルバンテスのおじさんも、笑った顔で描き加えたんだ。






END






おじさんとボク (2)






ボクはセルバンテスのおじさんと仲良くなった。


おじさんは一ヶ月くらいずっといっしょにいるときもあるけど他の『しごと』で忙しいときがあるみたいでいっしょにいないときもあるんだ。その時は他の『たんとうしゃ』の人に代わってもらってるみたいなんだけど・・・ボクはその他の人と会ったことがない。みんながみんなおじさんみたいな人じゃないってお父さんは言っていたけど・・・。

でもおじさんはたまにひょっこりあらわれてボクに会いに来てくれる。
ボクもおじさんが会いに来てくれるのを楽しみにしてるんだ。

会いに来てくれるときはいっつも『おみやげ』を手にしてる。
この前はふわっふわのシュークリームだったし、その前は発売されたばかりの『ちょうごうきんの合体ロボ』で必ずボクが喜ぶおみやげを持ってきてくれるんだ。

今日はドーナッツ、ボクは一ヶ月ぶりに会いに来てくれたおじさんといっしょに並んでチョコが付いたやつを食べたんだ。目の前にはお父さんが作ってるとってもおおきなロボット、すごいよね、本当にとっても大きいんだ。けんきゅうしせつも大きいけどそれにいっぱいつまってる感じでロボが入ってる。

けんきゅうしせつには本当は入っちゃいけないんだけどおじさんが「私と一緒にいる時は研究施設に入ってもいいよ」って言ってくれたからボクはこのロボットができていくのが見たくってこうやってながめてる。いつもこうして見れたらいいのに・・・。


「大作君は本当にロボが好きなんだねぇ」

おじさん口のはしっこにチョコつけたままにボクにきいてきた。

「うん、だってかっこいいしおっきいし早くロボが動くの見てみたいなぁって。それにボクのお父さんがこれを作ってるんだもんすごいよね!」

「そうだね、大作君のお父さんはとても凄いねぇ」

おじさんはボクの頭を大きな手でなでながらそう言ってくれた。そうだよ、お父さんがはたらくのを初めて見てボクはわかったんだ、本当にお父さんがすごいって。お父さんがこんな大きなロボを作ってるなんてボクはエッヘンって気持ちになるよ。

「ボクね、大きくなったらお父さんみたいにBF団に入ってロボット作る人になるんだ」

そう言ったらおじさんおどろいてた、だって目を丸くしてたんだもん。おじさんがいつもしてる変なメガネってごーぐるって言うらしいんだけどボクといっしょの時はおじさんは・・・なんでかごーぐるをしなくなった。だからおじさんの目が丸くなったのよくわかったんだ。

「大作君はBF団に・・・入るのかい?」

「うん、ロボよりおっきなロボットつくるよ!おじさんも乗せてあげる!」

「・・・・・・・嬉しいんだけど・・・BF団に入ると毎日早起きしないといけないんだよ?大作君お父さんに起こされなくても一人で起きれるかい?」

え、そうなの?

「好き嫌いもできないよ?牛乳も全部飲んで大作君が大嫌いなピーマンも食べなきゃいけないんだよ?」

えええ!そうなの?・・・えーそうなのー・・・・ひとりで早起きもできないし、ピーマン・・・ボクだいっきらいなんだよな。あれぜったい食べられないよすっごくマズイし。

「じゃあ・・・ボクはお父さんが前いたこくさいけ・・・なんとかってとこでロボット作る人になる。だいじょうぶだよBF団のおじさんものせてあげるから!」

「・・・・・・・・・・・・そうかね、でも国際警察機構もBF団と・・・一緒でね・・・早起きしないといけないし、ピーマンも食べなきゃいけないんだよ?」

ボクはちょっと泣きそうになった、だってこれじゃお父さんみたいになれないってことじゃないか。早起きもピーマンを食べるのもどっちもボクはできるじしん無いもの。でも、でも・・・ボクはお父さんみたいになりたいんだ・・・。

「はははは、別にBF団と国際警察機構に入らなくっても大きなロボットは作れるんだよ?そうだな・・・大作君が大きくなったらおじさんが就職先を探してあげよう。うん大丈夫だきっと大作君はお父さんみたいに立派なロボット博士になれるとも」

セルバンテスのおじさんはそう言って笑うと泣きそうになってるボクを抱きかかえてくれた。

「ほんとう?セルバンテスのおじさん」

「ああ、本当だとも、だからロボットを作ったらおじさんを乗せてくれたまえ」

背のたかいおじさんに抱っこされてロボがもっと良く見えて、ボクはロボを見るのにいちばんの場所をはっけんした。








その日の夜、ボクはお父さんにおじさんに言ったことと同じことを話したんだ。そしたらお父さんもおじさんと同じおどろいた顔になって・・・でもおじさんと違うのは「両方ともやめておきなさい」と言われちゃった。

「どうして?やっぱり早起きしないといけないしピーマンも食べなきゃいけないから?」

お父さんは何も言ってくれなかった。





ボクは大きくなってもやっぱり早起きができなくてピーマンも食べられなかったら、おじさんにおねがいしてロボットを作れるところをさがしてもらうんだ。


そしてそこで大きなロボットをつくってお父さんとおじさんをのせてあげるんだ。







END






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