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□02□ 罰






幼い頃、
わたくしは天使の羽に包まれているように、
柔らかな愛と優しさによって育てられました。
この血の色をした眼に映るものはすべて、
この世の美しいものでした。

今でもそれは私の心に残って、それはそれは美しい幻を見せてくれるのです。

母の記憶は一切ありませんが、
父や、おじ様たちの記憶は今も色鮮やかに残っております。
わたくしはわがままで、
何度となく父やおじ様たちを困らせていたようで・・・。

特に思い出深いのは、
父と一緒に地中海の別荘で晩餐を共にしたことでしょうか。
わたくしは樊瑞のおじ様に連れられて、冬の優しい風と戯れていたのですが、そこへ突然父が来てくれたのです。
父は、たまたま任務地だったので寄っただけだと言っておりましたが・・・。
その日は母との特別な日らしく、
晩餐中にも関わらず、父はまるで懐かしむように母との思い出を語ってくださいました。
ふふ、幼いながらに嬉しかったのでしょうね。
その日の父との会話は、今でも温かな血潮となってわたくしの体をめぐっていますもの。
樊瑞のおじ様も、父の饒舌がもの珍しかったのか、上機嫌でわたくしと父の会話を見守って下さいました。
母の記憶がなくても、わたくしに母という優しい存在が分かるように、理解できるように、父が心を砕いてわたくしに語って下さったかと思うと、その思いだけで心が満たされる気がしました。
父と、
樊瑞のおじ様と、
そして父の語る亡き母との思い出が、
家族の団欒というものをわたくしの心へ届けてくださった晩餐は至上の思い出です。

そしてそれは、最初で最後の団欒でした。

父はわたくしへの愛からか、家族との縁を切って孤独に生きておりました。
その愛が、どれほど深く、どれほど高いかなど貴方には到底理解できないでしょう。
父は崇高な方でした。
わたくしの中の父は、背中姿ばかりで、決して弱いところを見せないのです。
最後の時もそうでしたね。
決して己の誇りを失うようなことはしなかった。
最後まで、父は父の意志を貫き通して散っていったのです。

樊瑞のおじ様もそうでした。
幾度となく仲間の死を体験しながらも、
それでもなお、
わたくしに暗いところをお見せにしようとはしませんでした。
何時でも、
明るく照らしてくれるその内面に、
幼いながらもわたくしは何度も救われました。

わたくしは沢山の形ないものを貰いました。

そして、
わたくしから沢山の形あるものを奪っていったのは、貴方でしたね。

今から父と樊瑞のおじ様のところへ送って差し上げます。
お二人とも、きっとお喜びになる事でしょう。
貴方だって、嬉しいでしょう?

だからどうか、そんな顔をなさらないで。

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