「サニーのママは?」
---ほらきた、樊瑞は心の中で舌打ちした。
いつかはこの幼女からこんな言葉が吐き出されるのではないかと私は予想はしていたし、覚悟はしていた。そして今それが現実のものとなった。わかっていたのだ、そうだ、わかっていたはずだ。しかし同時に「ママ」などと教えてもいない単語をどこのどいつが吹き込んだのか・・・ええい腹が立つ。
「ママは?」
さて、どうしたものか。予想はしていて覚悟はしていたのだが実際にこの事態に直面した場合どう対処するかなど考えていなかった。いや、考えたが思いつかなかっただけだ。こんな時は何て言えばよいのだ?
「あー・・・サニーのママはお買い物に行っているから、そのうち戻る」
馬鹿か私は、なんだその「お買い物」というのは、ここはBF団本部だぞ。どこへ買い物に行くというのだ。もう少し気の利いたことが言えんのか。そうだ「サニーのママはお星様になったんだよ」とか、うむ、こう言えば良かったのだ。非常に夢を感じさせて子ども向けではないか。
「いつもどるの?」
いつ?いつと言われても。どう言えばいい?
「そのうちだ」
そうだ、これしかない。これで乗り切ろう。お、サニーも納得したのか積み木遊びを始めたぞ、よしとりあえずは逃げ切った。
---しかし、胸をなでおろす樊瑞だったがサニーの問いはその後も続いた。
---「いつもどるの?」「そのうちだ」これが毎日何度も交わされた。
そのうちなんとなく気づいて納得するだろう、そう楽観していた。ところがどうだ自分がなんとなく言ってしまった言葉がこうも自分の首を絞めることになろうとは。今日など「そのうちっていつ?」と鋭い内容に変わってしまった。
いかん、いつのまにか詰んでしまって王手をかけられてしまった。
「というわけなのだ、アルベルト。どうしたらいい?」
「・・・」
くそ、こいつ今あからまさに嫌な顔をしおった。誰のお陰でこの私が混世魔王たる私がこんな苦労をしていると思っているのだ。本当に無責任な男だ、まったく腹が立つ。
「私はもう親子の縁は切ってある、そんなことは貴様が考えろ」
でた、二言目には「親子の縁は・・・」だもう聞き飽きたわ。まったくその台詞を都合のいい免罪符か何かと思っているのか。ああそのすかした横っつらを殴ってやりたい、こいつは本当に最低だ。父親だけでなく人間としても終わっている。
「縁を切ろうが切るまいが親子であるのは変わりないだろうが、これはもう私の範疇ではない、お主の仕事だ」
そうだ、我ながら正論だ。自分でまいた種を投げ出して押し付けてしまった感じはしないでもないが、我が子を他人に押し付けるよりは遥かにましではないか?違うか?お、随分大きな溜息をついたなこの男。ほら、腹をくくってしまえ向う所敵無しの『衝撃のアルベルト』の名が泣くぞ。
「・・・サニーはどこだ」
「パパぁ!」
サニーも現金な奴だと思う。こんなに私が毎日愛情を注いでいるというのに滅多に顔を合わせない父親が出てきたら途端にこれだ。あーあんなに嬉しそうに足にしがみついて・・・アルベルトも抱きかかえてやればよかろうものを。もっとも奴が娘を抱きかかえているのを見たのは私に預けにきたときだけだったな。
「パパ、サニーのママはいつかえってくるの?」
そら、どうする衝撃のアルベルト。お主ならなんと答える?
「おまえの母親はいない」
「な、おいアルベルト・・・」
「だから帰ってもこない、待つだけ無駄だ」
いきなりそういう事を言うか・・・こいつ・・・。確かに我々は血も涙も無い十傑集だ、しかしこれはいかん、これだけはいかん。酷過ぎる。
「ちがうもん!ママはおかいものにいってるんだもん!!」
「ふん、ならば気が済むまで待っていろ。それが嫌なら自分で探せ」
「ああ!サニー!」
部屋から飛び出して行ってしまった・・・。ここはBF団本部内だ、どこへ行こうというのだ、居もしない母親を探すのか?アルベルト!貴様本当の本当に見下げたやつだ!なんだその目は、何故私を睨む、睨まれるのは貴様の方だ!
「放っておけ」
「・・・」
---樊瑞は殴ってやりたい気持ちを抑え、事の次第を見守ることにした
---しかし時間を追うごとに他の十傑集がやって来るようになった
「おい樊瑞、さっきお嬢ちゃんが私の部屋にきて『ママ見なかった?』などと聞いてきたぞ」
幽鬼・・・すまん、全てはアルベルトが悪い。
「お前のところにも来たのか、私のところにも来てソファの下を覗いていたが」
ヒィッツカラルド・・・
「っち・・・ママ、ママ・・・樊瑞めざわりだ、あんなの縛っておけ」
レッド・・・
「ワシのところにも来て泣きながらデスクの下を覗いていたぞ?」
カワラザキ・・・
「ダメじゃないか樊瑞、サニーちゃんがかわいそうだ」
セルバンテス・・・
「子どもを泣かせて何をやっているのだ魔王」
残月・・・
「衝撃大人が息女の問いに困惑しきり・・・」
十常寺・・・
「・・・」
怒鬼・・・
『樊瑞!!(×8人)』
「・・・すまん・・・」
何故私があやまらねばならんのだ・・・アルベルト貴様、何ふんぞり返って悠長に葉巻なんぞ吹かしている!貴様の分も頭を下げてやっているのだ!!!!8人分だぞ8人分、この混世魔王がだ!せめて半分の4人くらいは貴様が受け持て!
「・・・皆すまんな、だがあれは放っておいてやってくれ」
「・・・」
初めてだった、アルベルトから「すまん」などという言葉を聞いたのは。まぁふんぞり返って葉巻を吹かしている状態での言葉だが。お、連中も互いに顔を見合わせてゾロゾロと帰っていきおった。なんだなんだ、あんな男のあんな態度での謝罪で納得するのか貴様らは。
「まったく・・・」
「樊瑞、貴様もだ・・・すまんな」
「・・・」
私も何も・・・言えなくなってしまった。この男の、母親がいない子供を持つ父親としての罪悪感がそうさせているのだろうか。いや罪悪感などこんな傲慢な男にあるものなのか?わからん・・・。相変わらずの態度で葉巻を吹かしてはいるが、奴はどういう気持ちでいまここにこうしているのか。
そもそも自分は『後見人』という立場であってもサニーの『父親』ではない。もちろん父親代わりのつもりであるし父親としての気持ちで接してきた自負はある・・・しかし本当の父親であるならば、やはりアルベルトと同じ事を娘に言うのだろうか。そしてそれは正しい事で娘にとって最善なことなのだろうか。考え出すとわからなくなってしまった。
---しばらく2人の間で沈黙の時間が流れた
---樊瑞は思考の輪に捕われ、アルベルトは1本の葉巻を最後まで吸いきる
---長いようで短い、そんな時間だった
---そしてサニーが樊瑞の執務室に戻ってきた
サニー・・・随分と走ったのかよろめいて、髪はあちこち跳ねてしまって・・・泣き腫らした顔が真っ赤になって涙でグチャグチャ。どんな想いでいない母親を探していたのかと思うと私にはサニーの今の姿は見るに耐えない。ああ・・・フラフラしながらソファにもたれかかり、母親探しに精根尽き果てたのかそのまま眠ってしまった。
サニーは・・・また明日もこうして母親を探すのだろうか、その時私はどうしたらいい?
「今日は私が預かる」
「なに?あ、おいアルベルト!」
最初にサニーを預かったときは既に奴の腕に抱かれていた状態だったが、アルベルトが自分の手でサニーを、娘を抱き上げたのを見たのはそれが初めてだった。
眠るサニーに手を伸ばし小さい身体を包み込んで自分の大きな胸に寄せている。あのアルベルトがだ、想像もつかなかったはずなのにそれはやはり父親と娘、不思議とあたりまえのような・・・光景だった。
サニーはアルベルトの胸に抱かれて安らかに眠っている。いない母親を探して疲れ果て、父親の胸の中で眠っているのだ。わたしは何故か寂しい気持ちになったがそれ以上に心からの安らぎすら感じた。そしてオロオロするばかりで何もしてやれなかった自分が少し情けなくなってしまった。
「明日には貴様に返す」
そういってアルベルトはサニーを抱いて出ていった。
返す?返すも何も、サニーは・・・お主の娘だろうが・・・。
次の日、サニーが再び私の元に戻ってきた。そして心配していたサニーの「母親探し」は無かった。さらに気のせいかサニーは少し大きくなったようにも思える。幼いながらに自分の中で母親が居ないことを受け入れたのだろうか。
もしあのまま私が曖昧な態度をとっていたらこの子はずっと帰らぬ母親を待ちつづけて・・・サニーもわかってはいたはずなのだ、自分に母親がいないだろうことを。それでも期待させ待たせ続けさせたのは私だ。一番酷だったのは私だったのだ・・・方法が極端であってもやはりアルベルトのとった対処が正しかった・・・のか?
「アルベルト、お主が正しかったということか」
「正しいとか良かったかどうかなど知らんしどうでもいい、それはサニーが決めることだ。それが今でなくてもだ。最終的に本人が納得すればそれでいい。」
この男らしい考えだと思う。自分の信念を貫くのにうらやましいくらいに躊躇いが無い。そして意外だったのが傲慢な男のはずなのに自分が正しいと思っていなかったこと、良し悪しの判断を娘に任せていることだ。なんとなくだがこの男が娘に対してどう考えているのか、少しだけわかったような気がする。
そして私は自分が自分で答えを出そうとしていたのか・・・。
「ふぅー・・・・・・正直サニーを預かることに・・・自信が無くなったぞ」
「面倒な奴だな貴様は。いいか、安心しろ私なぞよりずっと貴様の性根が『父親』だ」
最後の言葉は心から喜べなかった。あんな、「父親のアルベルト」を見てしまったら私などいったい何だというのだ。
「・・・」
「何を小さくなっているんだ、胸を張っていろ混世魔王」
「・・・」
「まったく・・・・・まぁいいサニーは貴様に任せたのだからな」
お父様からお叱りと励ましのお言葉を頂いてしまった。そのやりとりの中サニーは積み木遊びをしている。サニー・・・私はいったい何なのだろうな?お前のお父さんからお父さんだと言われてしまったんだぞ?遊んでないでこの小さな混世魔王に教えてくれないか?
END
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残月はまだ十傑じゃないじゃんとか言うの無し。
---ほらきた、樊瑞は心の中で舌打ちした。
いつかはこの幼女からこんな言葉が吐き出されるのではないかと私は予想はしていたし、覚悟はしていた。そして今それが現実のものとなった。わかっていたのだ、そうだ、わかっていたはずだ。しかし同時に「ママ」などと教えてもいない単語をどこのどいつが吹き込んだのか・・・ええい腹が立つ。
「ママは?」
さて、どうしたものか。予想はしていて覚悟はしていたのだが実際にこの事態に直面した場合どう対処するかなど考えていなかった。いや、考えたが思いつかなかっただけだ。こんな時は何て言えばよいのだ?
「あー・・・サニーのママはお買い物に行っているから、そのうち戻る」
馬鹿か私は、なんだその「お買い物」というのは、ここはBF団本部だぞ。どこへ買い物に行くというのだ。もう少し気の利いたことが言えんのか。そうだ「サニーのママはお星様になったんだよ」とか、うむ、こう言えば良かったのだ。非常に夢を感じさせて子ども向けではないか。
「いつもどるの?」
いつ?いつと言われても。どう言えばいい?
「そのうちだ」
そうだ、これしかない。これで乗り切ろう。お、サニーも納得したのか積み木遊びを始めたぞ、よしとりあえずは逃げ切った。
---しかし、胸をなでおろす樊瑞だったがサニーの問いはその後も続いた。
---「いつもどるの?」「そのうちだ」これが毎日何度も交わされた。
そのうちなんとなく気づいて納得するだろう、そう楽観していた。ところがどうだ自分がなんとなく言ってしまった言葉がこうも自分の首を絞めることになろうとは。今日など「そのうちっていつ?」と鋭い内容に変わってしまった。
いかん、いつのまにか詰んでしまって王手をかけられてしまった。
「というわけなのだ、アルベルト。どうしたらいい?」
「・・・」
くそ、こいつ今あからまさに嫌な顔をしおった。誰のお陰でこの私が混世魔王たる私がこんな苦労をしていると思っているのだ。本当に無責任な男だ、まったく腹が立つ。
「私はもう親子の縁は切ってある、そんなことは貴様が考えろ」
でた、二言目には「親子の縁は・・・」だもう聞き飽きたわ。まったくその台詞を都合のいい免罪符か何かと思っているのか。ああそのすかした横っつらを殴ってやりたい、こいつは本当に最低だ。父親だけでなく人間としても終わっている。
「縁を切ろうが切るまいが親子であるのは変わりないだろうが、これはもう私の範疇ではない、お主の仕事だ」
そうだ、我ながら正論だ。自分でまいた種を投げ出して押し付けてしまった感じはしないでもないが、我が子を他人に押し付けるよりは遥かにましではないか?違うか?お、随分大きな溜息をついたなこの男。ほら、腹をくくってしまえ向う所敵無しの『衝撃のアルベルト』の名が泣くぞ。
「・・・サニーはどこだ」
「パパぁ!」
サニーも現金な奴だと思う。こんなに私が毎日愛情を注いでいるというのに滅多に顔を合わせない父親が出てきたら途端にこれだ。あーあんなに嬉しそうに足にしがみついて・・・アルベルトも抱きかかえてやればよかろうものを。もっとも奴が娘を抱きかかえているのを見たのは私に預けにきたときだけだったな。
「パパ、サニーのママはいつかえってくるの?」
そら、どうする衝撃のアルベルト。お主ならなんと答える?
「おまえの母親はいない」
「な、おいアルベルト・・・」
「だから帰ってもこない、待つだけ無駄だ」
いきなりそういう事を言うか・・・こいつ・・・。確かに我々は血も涙も無い十傑集だ、しかしこれはいかん、これだけはいかん。酷過ぎる。
「ちがうもん!ママはおかいものにいってるんだもん!!」
「ふん、ならば気が済むまで待っていろ。それが嫌なら自分で探せ」
「ああ!サニー!」
部屋から飛び出して行ってしまった・・・。ここはBF団本部内だ、どこへ行こうというのだ、居もしない母親を探すのか?アルベルト!貴様本当の本当に見下げたやつだ!なんだその目は、何故私を睨む、睨まれるのは貴様の方だ!
「放っておけ」
「・・・」
---樊瑞は殴ってやりたい気持ちを抑え、事の次第を見守ることにした
---しかし時間を追うごとに他の十傑集がやって来るようになった
「おい樊瑞、さっきお嬢ちゃんが私の部屋にきて『ママ見なかった?』などと聞いてきたぞ」
幽鬼・・・すまん、全てはアルベルトが悪い。
「お前のところにも来たのか、私のところにも来てソファの下を覗いていたが」
ヒィッツカラルド・・・
「っち・・・ママ、ママ・・・樊瑞めざわりだ、あんなの縛っておけ」
レッド・・・
「ワシのところにも来て泣きながらデスクの下を覗いていたぞ?」
カワラザキ・・・
「ダメじゃないか樊瑞、サニーちゃんがかわいそうだ」
セルバンテス・・・
「子どもを泣かせて何をやっているのだ魔王」
残月・・・
「衝撃大人が息女の問いに困惑しきり・・・」
十常寺・・・
「・・・」
怒鬼・・・
『樊瑞!!(×8人)』
「・・・すまん・・・」
何故私があやまらねばならんのだ・・・アルベルト貴様、何ふんぞり返って悠長に葉巻なんぞ吹かしている!貴様の分も頭を下げてやっているのだ!!!!8人分だぞ8人分、この混世魔王がだ!せめて半分の4人くらいは貴様が受け持て!
「・・・皆すまんな、だがあれは放っておいてやってくれ」
「・・・」
初めてだった、アルベルトから「すまん」などという言葉を聞いたのは。まぁふんぞり返って葉巻を吹かしている状態での言葉だが。お、連中も互いに顔を見合わせてゾロゾロと帰っていきおった。なんだなんだ、あんな男のあんな態度での謝罪で納得するのか貴様らは。
「まったく・・・」
「樊瑞、貴様もだ・・・すまんな」
「・・・」
私も何も・・・言えなくなってしまった。この男の、母親がいない子供を持つ父親としての罪悪感がそうさせているのだろうか。いや罪悪感などこんな傲慢な男にあるものなのか?わからん・・・。相変わらずの態度で葉巻を吹かしてはいるが、奴はどういう気持ちでいまここにこうしているのか。
そもそも自分は『後見人』という立場であってもサニーの『父親』ではない。もちろん父親代わりのつもりであるし父親としての気持ちで接してきた自負はある・・・しかし本当の父親であるならば、やはりアルベルトと同じ事を娘に言うのだろうか。そしてそれは正しい事で娘にとって最善なことなのだろうか。考え出すとわからなくなってしまった。
---しばらく2人の間で沈黙の時間が流れた
---樊瑞は思考の輪に捕われ、アルベルトは1本の葉巻を最後まで吸いきる
---長いようで短い、そんな時間だった
---そしてサニーが樊瑞の執務室に戻ってきた
サニー・・・随分と走ったのかよろめいて、髪はあちこち跳ねてしまって・・・泣き腫らした顔が真っ赤になって涙でグチャグチャ。どんな想いでいない母親を探していたのかと思うと私にはサニーの今の姿は見るに耐えない。ああ・・・フラフラしながらソファにもたれかかり、母親探しに精根尽き果てたのかそのまま眠ってしまった。
サニーは・・・また明日もこうして母親を探すのだろうか、その時私はどうしたらいい?
「今日は私が預かる」
「なに?あ、おいアルベルト!」
最初にサニーを預かったときは既に奴の腕に抱かれていた状態だったが、アルベルトが自分の手でサニーを、娘を抱き上げたのを見たのはそれが初めてだった。
眠るサニーに手を伸ばし小さい身体を包み込んで自分の大きな胸に寄せている。あのアルベルトがだ、想像もつかなかったはずなのにそれはやはり父親と娘、不思議とあたりまえのような・・・光景だった。
サニーはアルベルトの胸に抱かれて安らかに眠っている。いない母親を探して疲れ果て、父親の胸の中で眠っているのだ。わたしは何故か寂しい気持ちになったがそれ以上に心からの安らぎすら感じた。そしてオロオロするばかりで何もしてやれなかった自分が少し情けなくなってしまった。
「明日には貴様に返す」
そういってアルベルトはサニーを抱いて出ていった。
返す?返すも何も、サニーは・・・お主の娘だろうが・・・。
次の日、サニーが再び私の元に戻ってきた。そして心配していたサニーの「母親探し」は無かった。さらに気のせいかサニーは少し大きくなったようにも思える。幼いながらに自分の中で母親が居ないことを受け入れたのだろうか。
もしあのまま私が曖昧な態度をとっていたらこの子はずっと帰らぬ母親を待ちつづけて・・・サニーもわかってはいたはずなのだ、自分に母親がいないだろうことを。それでも期待させ待たせ続けさせたのは私だ。一番酷だったのは私だったのだ・・・方法が極端であってもやはりアルベルトのとった対処が正しかった・・・のか?
「アルベルト、お主が正しかったということか」
「正しいとか良かったかどうかなど知らんしどうでもいい、それはサニーが決めることだ。それが今でなくてもだ。最終的に本人が納得すればそれでいい。」
この男らしい考えだと思う。自分の信念を貫くのにうらやましいくらいに躊躇いが無い。そして意外だったのが傲慢な男のはずなのに自分が正しいと思っていなかったこと、良し悪しの判断を娘に任せていることだ。なんとなくだがこの男が娘に対してどう考えているのか、少しだけわかったような気がする。
そして私は自分が自分で答えを出そうとしていたのか・・・。
「ふぅー・・・・・・正直サニーを預かることに・・・自信が無くなったぞ」
「面倒な奴だな貴様は。いいか、安心しろ私なぞよりずっと貴様の性根が『父親』だ」
最後の言葉は心から喜べなかった。あんな、「父親のアルベルト」を見てしまったら私などいったい何だというのだ。
「・・・」
「何を小さくなっているんだ、胸を張っていろ混世魔王」
「・・・」
「まったく・・・・・まぁいいサニーは貴様に任せたのだからな」
お父様からお叱りと励ましのお言葉を頂いてしまった。そのやりとりの中サニーは積み木遊びをしている。サニー・・・私はいったい何なのだろうな?お前のお父さんからお父さんだと言われてしまったんだぞ?遊んでないでこの小さな混世魔王に教えてくれないか?
END
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残月はまだ十傑じゃないじゃんとか言うの無し。
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