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q13







 

             『地平線の向こうへ』<13>


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「君があの機のパイロットか」





ぺっと血の混じった唾を床に吐き捨て、モンタナは膝立ちになったまま、じろり、とハシード、と名乗った男を睨みつける。
その顔には痣がいくつも付いている上、額の傷も開いている様で、僅かに包帯に血が滲んでいた。


流石に、2対10人近くでは勝負にならない。
カシムが逃げる時間は稼げたが、流石の彼も正面から銃を向けられれば、両手を挙げるしかなかったのだ。


後はお決まりのコース――後ろ手を縛られ、脅され殴られ、尋問。

喋ったら最後、という事は判っているが、――打った肩が、また疼き始めているし、壮年のタラールは既に、まともに口も聞けない状態。
どうするべきか、と考えをめぐらせている時、この男――ハシードが部屋に入って来たのだが。



今まで彼等を痛めつけていた男たちと違い、流暢な英語がその口から漏れる。
着ている物も、やや小奇麗なものを身に纏っていた。

『村長、こいつらしゃべりませんぜ』
「カシムが持っていた品は今までの発掘現場からは見つからなかった。…絶対、タラールが見つけた場所を知っているはず」


「アンタがこの村の村長か」
「そうだ」


言って、ハシードはに、と嫌味たらしく笑った。
悪人は皆似たような笑い方をするのか、と妙な感心をしながら、モンタナはふん、と鼻を鳴らす。


「タラールに教える様に言えば、生きて村を出してやるぞ」
「どーせ、吐いた時点で殺されるんだろ」

「折角永らえた命だ。待っている相手の居る国に帰りたいだろう?」
「…ここで卑怯者になって国に帰っても、待ってる相手に半殺しに合いそうなんでね。そっちの方が怖い」



普通に帰っても、一発や二発殴られそうなのに。

嘯き、彼は苦笑する。
それに、ハシードは顔を歪め、彼の腹に蹴りを入れた。



「…っツ」
「続けろ」

よろめき、モンタナは身体を曲げて地面に顔を擦り付ける羽目になり――





ドンッ!!



地響きと、盛大な爆発音が家の外から聞こえてくる。
それに、その場に居た全員が目を剥いた。

『なっ…!?』
『何だ!』

うろたえている様子から見ると、この音と地響きは男達にとっても予想外の物の様だ。
余りの事に、タラール医師もよろよろ、と顔を上げた。音と振動は、断続的に外からまだ聞こえてきている。
やがて、ばたん、と扉が開き、村人の一人が青い顔をして部屋に駆け込んできた。

『何だ!?どうしたんだ』
『村はずれの岩山の峡谷辺りで、誰かが爆薬を使ってるらしい!』
『何!?』
『あそこは隣の街から近い!盗掘孔も傍だし、見つかったら事だ!止めさせるんだ!』


訳の判らない現地語でなにやら叫び、ハシード以下殆どの人間が部屋を出て行く。
残った2人ほどの男達も、断続的に続く地響きと爆音でどうも落ち着かない様子を見せている。


そして、完全にハシード達の足音が聞こえなくなり――








ドンッ!





『がっ!』

爆音と同時に、モンタナは立ち上がり様、近くに居た男の鳩尾に頭突きを加える。
それに堪らず、男は呻いてその場に崩れ落ちた。


『き、貴様っ』
「――っ!」


続けざま、もう一人の男の脚を払う。どう、と大きな音を立て、男は頭を地面に打ちつけて昏倒した。
モンタナの方もバランスを崩し、壁で背中を打ったが、どうにかぜいぜい、と荒い息を整える。
そして、タラール医師の方に首を巡らせた。


「大丈夫か、先生」
「あ…ああ」

言って、モンタナはベッドサイドにあった果物ナイフの柄を咥え、テーブルの上に器用に突きたてる。
その刃で自分の手を縛っていたロープを斬ると、タラールの腕も解いてやる。そして、彼の腕を取り、どうにか支える形でその場に立たせた。



「今のうちだ。逃げるぞ!」

「いや…そういうわけにも行かないんだ。…今の爆発、どうやら『隠れ家』のある岩山の峡谷で起こったらしい」
「なにぃ?」

それを聞き、彼は眉を寄せる。



「君の飛行機もその付近に置いてある。…どっちにしろ、あの外れの岩山に行かなければ」
「…しゃーねーな。とにかく、ケティがある場所に見つからないように行くか」
「すまない」
「いいって。――カシムと約束したしな」



先生は、俺が守るって。

悪戯っぽく言って、彼はタラールを支え、歩き始める。
それに、タラールは切れた唇を笑みの形に結ぶ。





「しかし全くどこの馬鹿だ、爆薬なんて使い始めたのは…お陰で助かったが」






一人ごち、モンタナは息を吐く。
どかん、とまた景気の良い音が遠くから聞こえた。








 
 

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