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笑顔の魔法






 見つめてくれる笑顔は、とてもとても優しくて大好きな微笑み。
 でも相手が違うと、こんなにも別の笑顔が溢れる。
 滅多に見ることのできない二人の笑顔。

 多分見られるのは僕だけかもしれないね。



 用事があって驍宗が李斎の官邸に向かったことを知っていた泰麒は、二人のところに行くために懸命に走っていた。走っていてもどこか愛らしく、通りすがる官吏や女官たちの心を和ませる。目が合った者は、花が咲いたような笑顔を見ることができる。それも可愛らしさの一つだった。
 官邸にたどり着き、静かにそっと扉を開ける。


 ――驍宗様だから、気がつかれていると思うけど。


 それでも扉の隙間から、時折見ることのできる驍宗と李斎、二人きりの光景は泰麒にとって一つの楽しみだった。
 本当に優しくて、安堵できる雰囲気が流れていて、邪魔をしてはいけないかな、と思ってしまうけれど。
 小卓を囲んで茶を楽しむ二人の名を呼ぶ。
「驍宗様、李斎!」
「蒿里、どうした?」
「どうなさいましたか、台輔」
 振り向いた二人の笑顔が、またさらに格別なものだった。その笑顔が素敵すぎるから、嬉しくて泰麒も最高の笑みを二人に与える。
「ええと……」
「どうした?」
 駆け寄ってきた泰麒を抱き上げる驍宗。
「あの……怒らないで下さいね」
 恥ずかしそうにもじもじと体を動かして一言。
「二人に会いたかっただけなんです」
「嬉しいお言葉で」

 本当にきさくで、優しい台輔だと李斎は会う度に感じ、それが心地よいことを何度も確認させられる。

「夕餉の刻限でもございますし……主上と台輔がよろしければ、こちらで用意させていただきますが」
「僕は大丈夫です。驍宗様は?」
「付き合おう」

 その返答に李斎と泰麒は笑顔を浮かべる。
 嬉しいと自然と笑顔が溢れて、心地よくて楽しくなってしまう。
 三人は立ち上がり、隣室へと向かう。


 泰麒には驍宗と李斎が、男として女として好きあっているのは何となくわかったけれど、口に出す必要はないということもわかっていた。
 訊ねなくてもわかるぐらい、二人の微笑みは安心できて。



 二人だけの時に見ることのできる笑顔、一瞬しか見ることのできない笑顔だとしても心地よいもので。


 そんな二人の笑顔を大好きだよ、って今夜こそ伝えたいな。


 決意を胸中で秘めながら、まるで父と母のように、二人に手を繋がれながら隣室へと向かうのだった。


  


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