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yyy
>> Sweetest on the earth










「♪どぉーっこやろなぁ どっこやろなぁ 可愛い可愛い桐生ちゃん♪」

真島吾朗は、調子外れな童謡の替え歌を口ずさみながら、夜の神室町を徘徊していた
─── 彼の"愛しの"宿敵、桐生一馬を求めて。



いつもは大勢の取り巻きを引き連れている真島が、この日は珍しく一人だった。
だが一人歩きの今日とて、誰一人として彼に絡むような馬鹿者はいなかった。ヘビ柄の服に身を包んだ男の、その恐ろしさを神室町の者全てが熟知しているからだ。

にわかに遠くが騒がしくなったことに気付いた真島は、喜びに胸がザワザワと震えるのを感じ、そちらへ向かって駆け出した。



やはり、真島の野生の勘は当たった。
大きな人だかりをなぎ倒して中心部にたどり着くと、そこで街の雑魚らに囲まれているのは桐生その人であった。


「ビンゴやぁ~♪ きっりゅうちゃ~~ん、相変わらずモテモテやなぁ」

「・・・真島の兄さん」


何者かも知らずに桐生に絡んでいたチンピラたちは、"桐生"と"真島"の名を聞いた途端に震えだす。いままでこの二人に会う機会すら与えられなかった下っ端ヤクザと言えども、彼らの恐ろしい噂は嫌と言うほど耳にしてきた。


「し、失礼致しやした!!!!!」


チンピラの一人がそう一言叫ぶと、仲間の雑魚共や ついでに野次馬たちも、蜘蛛の子を散らすように一斉に立ち去ってしまった。



「あらら、桐生ちゃん、折角モテとったのに悪いなぁ。腕慣らしするとこやったんちゃうん?」

「兄さん、冗談でしょう。また片付けなきゃならないと思っていたから、助かりました。有難うございます」

「んな、お礼なんて言わんといて~。桐生ちゃんにはもっと他のことでお返ししてもらわなアカンねんで」


満面の笑みを浮かべる真島。桐生は不思議そうに首を傾げる。


「? 何のことです?」

「きっりゅうちゃ~~ん!マナー知らずの子ぉは、お行儀悪いねんでぇ。今日は一体なんの日や?」

「?? 今日・・・3月14日・・・。 ・・・・・・ホワイト・デー・・・?」


桐生の顔がみるみるうちに曇りだす。対照的にますます嬉しそうにニヤニヤする真島。


「さあ、お返しもらおかぁ♪ ワシも一ヶ月前、桐生ちゃんにあげたやろ?真島吾朗特製チョコを」

「・・・ええ、”アレ” に塗りたくったチョコを無理矢理 口に突っ込まれましたね・・・」

「ウマかったやろぉ♪ これがホンマのチョコバナナやねん! チョコはワシの熱い愛を込めて、体温で溶かしたんやで~」

「ああ・・・道理で重い・・・。 それはともかく、俺は甘い物は苦手なんです」


(おまけにあの食べさせ方は・・・)と言いたいところを、辛うじて抑えた桐生。


「ほか。ほな、次回はしょっぱいモン塗ろか。まあ、人様の気持ちは有難く受け取っとき。と、言うわけでお返し」


もう 何か受け取らなければ帰らないな、と諦めた桐生は真島に尋ねた。


「・・・兄さんは何が欲しいんですか」

「あま~いモンや。この世で一番甘いモンがええ。ワシぁ甘いモン大好きやさかい」

「うーん。ケーキとか、チョコとか、ですか?俺はよく知りませんが・・・」



桐生はまんまと真島の策に嵌められてしまった。真島の唇がニンマリと最高の笑みを湛える。


「アマアマ、あま~い桐生ちゃん♪ この世界でいっちゃんアマいのは桐生ちゃんや~!
ワシは桐生ちゃんがええ!食べさしてぇな♪♪♪」


桐生は、自分の危機察知能力の甘さに頭を抱えた。





                       * * *





「あ~~~、ウマかった♪ やっぱ桐生ちゃんの味は最高に甘くて美味いわ~。 ご馳走さん♪」



意気揚々と歩き出す真島。対してフラフラと倒れ込みそうな足取りの桐生。
恩を押し売りされた挙句に裏路地に半ば強制的に連れ込まれ、自分の身体で返礼させられた・・・。


桐生にとって、今日は良くも悪くも、最高に「甘い」ホワイト・デーとなった ───。


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