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12月25日

クリスマスの朝、桐生は遥のはしゃいだ声で目が覚めた。
きゃっきゃっとはしゃいで寝ていた桐生の上に飛び乗って、頬を上気させた遥に…自分たちの苦労が報われたな、と桐生は微笑んだ。

「おじさん!おじさんの言ったとおり、サンタさんきたよ!」

そう、掲げてみせるのは桐生が三日前に買ってきたテディベア。全国で三千体の限定テディだったが、裏のコネを使ってなんとか手に入れる事ができた。
多少値がはったが…この笑顔を見る対価としては、安いものだろう。

「そうか、よかったな」

遥は嬉しそうに頷いた。
ただ、ちょっとだけ不思議そうに付け足したのだが。

「でも、ビスケットと牛乳を食べていかなかったのはなんでだろうね?」

「…お腹が一杯だったんじゃないか?」

「そっか!世界中で用意して貰ってるもんね!」

テーブルに用意してあったサンタのおやつを食べておくのを、忘れていた。



夕方、桐生家が賑わいだす時間。

「真島のおじさん!それお塩だよ!」

「ええい!白いねんからいっしょやボケェ!」

「いっしょじゃないから?!冷静になって!」

キッチンにて、奮闘する遥と真島の姿があった。
桐生はまだ仕事で帰ってきておらず、半自由業の真島と遥しかまだ家にいない。
しかし今夜はクリスマスパーティをするため、お客は多くなる予定だった。
そのため、遥と真島はパーティのごちそうを作ろうとはりきってキッチンに立ったのだが…真島ははっきり言って邪魔だった。
砂糖と塩を間違えるという、いまどきなベタなボケをかますのを皮切りに、きちんと計った小麦粉をひっくりかえす、チキンを床に叩きつける…等、遥の足をことごとく引っ張った。

それなのに真島をキッチンに置いておくのには理由がある。
真島は異常なまでに刃物の扱いが上手く、包丁の扱いが天才的だったからだ。そういう面では貴重な人材だったため、キッチンにおいている。


「後は…ケーキのデコレーションだけだね」

遥の並々ならぬ努力の末、なんとか最後の仕上げまで辿りついた料理作りに真島は拍手を送る。
自分が足を引っ張っていた自覚くらいは、ちゃんとある。

「生クリームを泡立てて…」

指示され、真島は力の限り泡立てようとし…遥は泡立て器を取り上げる。何事も加減が重要だが、この男にそれを求めるのは無理だ。

「真島のおじさん、苺を用意!」

「はいな!」

大量の苺が盛られたボウルを冷蔵庫から出し、生クリームの綺麗に塗られた表面に並べていった。

「桐生のおじさんて、以外と苺が好きなんだよ。知ってた?」

「知らんはずないやろ。ワシ、昔はよお桐生ちゃんとケーキバイキング行ってんで」

「へぇーなんか、想像できないよ。おじさんたちがケーキバイキングなんて」

ヤクザ二人がケーキバイキングに行くというおかしな光景を想像して、遥は軽く吹き出した。

「…よし!完成しました!」

「よう無事に完成したわ!」

「あはは!確にね!」

大変なのは、これからだ。
おもに真島がとっちらかしたキッチンが、二人の後ろで待っている。
さながらそれは、ラスボスを前にした光景と似ているような気がすると遥は心の中で苦笑した。



夜になって、桐生家には人が集まりだしてきた。

「こんばんは。遥ちゃん、メリークリスマス」

新幹線で大阪からやってきた狭山は、大きなお菓子の長靴を持ってきた。
狭山にとってクリスマスといえば、お菓子の長靴らしい。
実は貰った事がなかった遥はそのプレゼントに喜び、いそいそとカメラの準備を始める。

「真島のおじさん!撮って撮って!」

長靴を抱え、狭山と腕を組む遥。
真島は娘にデレッとした父親のように写真を撮りまくる。

「やっぱモデルがええと撮りがいがあるわ!」

遥が長靴をツリーの隣に置きにいくのを見計らって、カメラ片手に狭山に笑いかける。

「脱いでくれたらもっとええ写真が…」

馬鹿の顔面に、狭山の左ストレートが決まった。


次にやってきたのは、花屋だった。
花屋は普通のおじさんのようなスラックスに長袖のポロシャツ姿で、まるでカタギだ。

「よう、やってるな」

狭山と真島のプロレスにカラカラと笑い、土産だとシャンパンやワインを遥に渡す。

「嬢ちゃんにはシャンメリーもあるからな」

子供用シャンパンに、遥はうきうきする。
これぞ、クリスマスの定番。

「桐生はまだ仕事か?」

「うん。でももうすぐ帰ってくるんじゃないかな?」

「そうか」

「あと、伊達のおじさんたちがくるんだよ」

言うが早いか、チャイムが鳴った。
やけに賑やかに入ってくるかと思えば、伊達はすこぶる機嫌が悪い。

「もう!お父さん、機嫌直しなよ!」

「……須藤が帰ったらな!」

沙耶の後ろですまなそうに笑っている須藤に、伊達は苛ついた視線を向ける。

「何で須藤までくるんだ?招待されてねぇだろ?」

「私が誘ったの!お父さん、須藤にはお世話になってるでしょ!」

「だからってなぁ!」

「それに遥ちゃんの了解はとってあるの!」

親子の言い合いに、真島と狭山もプロレスを止めて集まってきた。
一人にこにこと笑う遥には、確信犯的な空気がある。

「遥ちゃん、あれなんやの?」

「沙耶さんと須藤さん、伊達のおじさんに隠れてお付き合いしてるの。クリスマスに一緒にいたいけど伊達のおじさんが煩いみたいだから、うちに招待したんだ?」

「なるほどなぁ。大変ね、一人娘は」

「うん、大変」


大人な対応をとる遥に、真島と花屋は顔を見合わせた。
桐生も、さぞかし大人な遥に振り回されていることだろう。




「早くおじさん帰ってこないかなぁ。パーティ始められないよ」

きっと、今年からのクリスマスパーティは今までとは比べ物にならないほど賑やかになるから。

「早く帰ってきてよ、サンタさん」


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