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ある、日曜日

朝、桐生は遥に激しく揺らされて起きた。
日曜日だから昼まで寝ていようと思っていた桐生は泣きたくなったが、遥が片目を押さえていることに不審に思って飛び起きる。

「どうした、遥。左目がどうかしたか?」

遥は押さえていない右目に涙を溜め、頷いた。
桐生は遥を膝に乗せて隠された左目を確認しようと手に触れるが…遥の手はぴくりとも動かなかった。
よく見れば、遥は手がはずれないよう力を込めている。

「…離してくれないと、見れないだろ?」

「………あのね、おじさんは見ないで、お医者さんにだけ連れて行って欲しいの」

かなり無茶なお願いだ。
娘が病院にいくのに、父親代わりの自分が病状を知らないわけにはいかない。
遥だってそれくらいは理解しているだろうが、この子は由美に似て頑固だ。
一度言い出したら、桐生の言うことをきこうとしない。

「遥」

「嫌」

「見せてみろ」

「病院に連れてって」

「…今日は日曜だ。病院は開いてない」

しまった、と遥の顔が歪む。
通常一般の病院は日曜日は休診で、開いているのは救急病院くらいなものだ。
だが遥はそれを知らないのだろう…悔しそうに顔を歪め、唇を引き結んでいる。

「ほら、だから一応見せてみろ。大変な病気だったらどうするんだ」

「…………やっぱり嫌。明日まで待つ。それで学校休んで病院に行く」

そう膝から降りようとする頑固者に、桐生は顔をしかめる。
遥が隠そうとするなら、こっちにも考えがある。

桐生はおもむろに遥の腰を掴むと…くすぐり始めた。
急にくすぐられた事に遥は大声で笑い転げ、ついには左目を封印していた手がはずれた。
あっという間もなく遥の手は押さえられ…







「で、“めばちこ”だったってわけか」

晩、遊びに来ていた伊達は遥の顔を見て苦笑した。
遥の左目につけられているのは可愛らしいピンクのうさぎの眼帯で、遥もまんざらではない様子だ。

「だけどこんな眼帯、どこで見つけたんだ?」

えへへ、と笑う遥はさっきから桐生相手にじゃれている真島を指指す。
まぁ予想はついていたものの…複雑な気持ちだ。


めばちこを見た後、桐生に腫れあがった目を見られたくなかったと泣きだす遥に慌てた桐生は市販の眼帯をあてがった。
しかし今度は可愛くないと泣かれてしまい…眼帯には詳しそうな真島に聞いてみたのだ。
真島はすぐにいくつもの変わり種眼帯を買ってきてくれ…結局、うさぎの眼帯で遥の機嫌は直った。

「明日は病院行くし、この眼帯可愛いし、真島のおじさんとお揃いだから楽しいよ」

「そうか…ま、良かったな」

「うん!そうだ、伊達のおじさんも付けてみる?せっかくだから皆でお揃いにしよう!」

髑髏のプリントの入った眼帯をつけさせられそうになった伊達はそれを丁重に断り、真島に同じような事をされている桐生に哀れみの視線を向けた。
遥のものとは違う怪しいタイプのそれを桐生につけさせようとして、さっきから部屋の隅で暴れているのだ。



「桐生ちゃん、ええかげんに観念せぇ!」

「嫌に決まってるだろうが!」

敬語も忘れて抵抗する桐生に、心底楽しそうに眼帯をつけさせようとする真島。
そして真島を楽しそうに応援する、うさぎ眼帯の遥。

「シュールだな…」

傍観を決めこんだ伊達にはそうしか、言えなかった。

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