忍者ブログ
Admin*Write*Comment
うろほろぞ
[264]  [263]  [262]  [261]  [260]  [259]  [258]  [257]  [256]  [255]  [254
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。





昼間は、暇だったりする。
沙耶は学校。
かといって無職連中と同じ様に公園でぼんやりするのも、自宅でぼんやりするのもつまらない。
伊達はもてあました暇をどうしたものか…と、コートをはおった。

こういう時、向かう場所は決まっている。

「桐生でもからかいにいくか…」

桐生を遥がらみの事でからかう事が、生きがいになりつつあることを、まだ本人は気づいていない。





最近がたがきはじめている車を転がして、桐生の家に向かう途中…商店街の一角に見慣れた姿を見つけた。


「遥!」

常時から声のでかい伊達だ。
遥だけでなく、通りすがりの通行人までが驚いて歩みを止める。
だが伊達はそれらを無視して、遥の隣に車を寄せた。

「あ、伊達のおじさん」

「よう、今帰りか?」

真っ赤なランドセルを揺らし、にこにことする様子はごく普通の小学生だ。
当たり前のことだが、伊達はほっとした。

「これからお前ん家に行くんだ。乗せってやろうか?」

「ほんと!?乗る!」

遥は後部座席ではなく、助手席に回り込む。
いかにも慣れた仕草に、アクセルを踏みながら伊達はいぶかしむ。
桐生は車を持っておらず、いつも自分の車を使っていた。その時は遥と桐生、並んで後部座席に座るから助手席には乗せたことがない。

「桐生の奴、車買ったのか?」

「ううん?買ってないけど?」

「の、わりにはなんか慣れてねぇか?」





「ああ、真島のおじさんによく乗せてもらってるから」






思わず、アクセルとブレーキを踏み間違えた。
ガクンと車が揺れ、後ろからクラクションが鳴った。

「おじさん?」

「い、いや、すまん。ていうか真島の奴と交流があるのか?!お前!」

声が荒くなる。
刑事の性だ。

「うん、よく遊びに来るの。桐生のおじさんが好きなんだよね、真島のおじさん」

へらへらと笑う遥は、緊張感の欠片もない。
だが伊達としては心中穏やかではなかった。
なにせ、真島組構成員に撃たれた過去があるくらいだ。
それに遥は真島に拐われたはず。



それなのに、よく平然と…前から思っていたことだが、遥は神経が図太い。

「桐生は…何も言わないんだな?」

「うん。まだ苦手みたいだけどね」

「……なら、いいか」

少なくとも、桐生は危険を感じていない。なら放っておこう。
薮蛇は、避けれるなら避けるにこしたことはない。

「あ、晩ご飯の買い物しなくちゃいけないから、途中でスーパー寄ってね」

「あ?あ、ああ。そうか、家事は遥がやってるんだったな」

「おじさん、苦手だからね。適材適所、だよ」

下手に大人びた言葉とその中に込められた皮肉に、伊達は吹き出した。

「あいつの適所ってどこだよ」

「喧嘩くらいしかないよねぇ、やっぱり」

「違いねぇ」

この子は、きっと化ける。
今はまだ道端のすみれのような少女だが、きっと今に大輪の華を咲かせるだろう。
優しく、大人びた彼女が化けた時…桐生はいったいどんな反応を示すだろうか。

それを思うと、笑いがこみあげてくる。



喉の奥で笑う伊達に、スーパーへの道を示していた遥きょとん、と首を傾げた。






PR
tytyy * HOME * tdtdt
  • ABOUT
うろほらぞ
Copyright © うろほろぞ All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]