心象風景
「私、真島のおじさん好きだな」
遥がいきなりそんなことを言い出したのは、桐生と食後のお茶を飲んでいるときだった。
渋めに煎れた緑茶をお揃いの湯飲みで飲んでいた桐生は吹き出し、むせて胸を叩く。
「は…はるか…!?」
慌てる桐生を横目に、遥は微笑んだ。
「初めは怖い人だと思ってたけど優しいし、よく遊んでくれるもん。誕生日とか、イベント事のときは絶対忘れずに来てくれるし…ほら、このブレスレット、真島のおじさんが買ってくれたの」
そう言って遥が上げた腕には、きらりとシルバーのブレスレットが光った。いつの間に買い与えたのか…桐生の目が鋭く光る。
遥は、続けた。
「それにね、可愛いっていつも言ってくれるし。女の子ってそういう風に言ってくれる男の人が好きなんだよ」
「………遥」
「真島のおじさん、お付き合いしてる人っているのかなぁ?」
おじさん、知ってる?
そう聞かれ、桐生は言葉に詰まる。肩を震わせ、握る湯飲みにはヒビが入り…
パキッ…と、乾いた音がした。
『それで、桐生のやつ飛び出してったのか?』
「うん…!ほんと、おじさんって可愛いよね!」
ウププ、と笑いを堪えている遥に、これまた笑いを堪えている伊達はそうだなと肯定した。
桐生と真島が密かに付き合っていることを、二人は知っていて。
時々、こうやってわざと波風をたててやる。
それは初め、桐生を持っていった真島に対する意地悪のつもりだったのだが…最近じゃあ、趣味に近くなっていた。
わざわざ電話して、お互いに結果報告をするくらいに。
二人して、いまごろ遥に嫉妬した桐生にはり倒されているであろう真島を想像し、吹き出した。
『どうせすぐ、イチャつきだすんだろうけどな』
「まぁ、ね」
これでも、意地悪+少しだけの応援なんです。
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