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うろほろぞ
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「流れ星が見たい」

遥が呟いた。
夕食には少し遅い時間。
近くの松屋で食事中、外を眺めた遥の口から飛び出した言葉。
「流れ星?」
「そう。流れ星が消える前に三回願い事をしたら、その願いが叶うんだって」
キラキラした目で訴える遥に、一馬は苦笑を隠せなかった。
「流れ星なんてそう見れるもんじゃない。見たいと言ったからって必ず見れるとは限らねえんだぞ」
「そんなの分かってる。でも見たいんだもん」
残った料理を口に頬張り、遥がへそを曲げる。
いつもは子供じゃないと言うくせに、こんな所は普通の女の子だ。
「何で流れ星を見たいんだ?」
「それは……内緒」
理由は言わずに希望だけ言ってのける。
小学生で秘密を持つのは少し問題じゃないか?
「彼氏か?」
「違うもんっ」
お、ムキになった。
遥もそういう年頃なのか。
「仕方ない。少しだけ探してみるか」
「うん。おじさん、ありがとう」
パッと花が咲いたように笑う遥。
その笑顔に今までどれだけ救われただろう。
自分が遥にしてやれる事は少ないが、せめて遥を悲しませないように。
出来る限り望みを叶えてやりたい。
金を払って外に出た。

一歩遅れてついてくる遥の歩幅を気にしながら、近くの土手へと向かう。
「うわあ、綺麗だねえ」
空を見上げた遥が感嘆の声を漏らした。
墨を溢したように真っ黒な夜空には満天の星。
小さく大きく光を放ち、瞬いている。
「すごいなあ」
「あんまり見てると首が疲れるぞ」
飽きずに見ている遥に一馬が注意を促す。
目的は流れ星。
見つける前に疲れたのでは話にならない。
「だって綺麗なんだもん。こっちに来てから星なんて見る時間がなかったから」
遥の顔がふと曇る。
母親の由美を思い出したのだろうか。
「すまん」
「ううん。おじさんは悪くないよ。遥のこと、大切にしてくれてるもん。遥こそゴメンね。さ、流れ星探そうっと」
子供ながらに気を遣う、遥の優しさ。
親を亡くした痛みが分かるだけにとても辛い。
「えっと……」
大きな目を動かして、一生懸命探す遥。
その隣で一馬もまた遥の為に流れ星を求める。
「見れるかなあ」
「今日が駄目でも明日がある」
「うん」
探し始めて約一時間。
そろそろ首も痛くなり、諦めかけたその時。
「あ」
「おっ」
二人同時に流れ星を見つけた。
遥がすぐに願いを込める。
それに習って一馬も一つの願い事をした。

「おじさん、何をお願いしたの?」
帰り道、スキップしていた遥がこっちを見た。
「ん?ちょっとな。遥は?」
「駄目だよ、内緒。でも彼氏とかじゃないからね。遥の一番大切な人の事」
「そうか」
何気に答えたら遥の頬がぷっくり膨れた。
「も~、おじさん鈍い」
「ん?どうした」
「何でもないっ」
「おい、遥」
小走りになった遥を一馬が慌てて追い掛ける。
何が悪いか分からない。
女の子の心はとても複雑で、中年男には難しい。
そんな自分でも分かる事は、遥を大切にしてるという事実。
流れ星に祈った願い。

遥の未来が幸せでありますように。



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