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うろほろぞ
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目も覚めるような青白い月の中、買い出し帰りの夜道を歩く。
古い石畳が敷かれた路地に、二人の足音だけが響く。
こんな時間になる予定じゃなかったのに。

必要なモノは、すぐに揃った。でも、久しぶりに船を下りたんだから、遊ばなくっちゃねv
あっちの店やらこっちの店やらひやかして歩いてたら、いつの間にかこんな時間…
こんなに夜の気配が深まって。あんなに高く月が出て。

隣の同行者の方を見ると、ボクと同じ”しまった”って顔をして、帰り道を急いでる。
今日一日、ボクと一緒に街へ出て、はしゃいでたヒト。

あ~あ、どうせ夜道を歩くんだったら、ジョニーと二人きりがよかったのにっ。
それなのに、ジョニーは忙しいって。
じゃあ、一人で行くっていったら、それもダメ。
”ベィビィの一人歩きは、危険だぜ?”だって!!
完全に子供扱いなんだからっ!
それで、この”保護者”がついてきたんだけど…
この保護者、いっつもヘラヘラしてて、てんで頼りないんだから。
こんな、片田舎の町外れ、街灯だってほとんどないところで、何か出てきたらどーすんのよ!
…別に、コワイってわけじゃないよ?
ただ、何があるかわかんないじゃないっ?!
ちょっと、心細いかなって…
こんな、月明かりだけが頼りの夜に。
今日の保護者…アクセルは、ここへ来て、ずっと黙ったまんま。
ま、昼間にあれだけ騒げば疲れるよね。昼間のアクセルはしゃべり詰めしゃべりっぱなし。
ちょっと黙ってれば、イイ男なのにね。
今は、この、月明かりで照らされた風景を楽しむように歩いてる。



静かな夜。
二人分の靴音しかしない。
心細い夜道。
月光凍る青い夜。


…こんな夜、知ってる。
…ひとりぼっちだった夜。


シンと青白く光る帰り道。
ドキドキするぐらい、大きくて明るい月。
胸がギュッとなって苦しいぐらい。……苦しいよ。



 「…月はキライ」


 「…どうして?」



月は眩しすぎて、星が見えにくくなる
まるで、星が消えてしまったみたい

明るく照らす地上には、誰もいなくって、寂しくって、涙がでる
小さい頃、一人だったあの頃を、思い出す



「月は星を吸いとるでしょ?……ボクも吸いとられそうな気がする。吸いとられたのも気づかないで、いつの間にかひとりぼっちになるような気がする」
話してるうちに、いつの間にか涙眼になっていて。それを気づかれないようにするのに必死だった。だから月夜はキライよ。…見られちゃうじゃない。
「…そんなことないよ。だって月夜はね、相手ができる」
アクセルは、急に泣き出しそうになったボクを気にするふうでもなく、そう答えた。
「相手?」
何のことかわからず、キョトンと聞き返す。
「ダンスの相手さ。見てみなよ。ほら」
アクセルが指さすほうを見ると、足下に、長くのびる青い影。
「影?」
「それでは、一曲お願いします」
自分の影にきどって一礼。そしてゆっくりとワルツのステップを踏みだす。
「ワン・ツー・スリー  ワン・ツー・スリー…」
軽く眼を閉じるようにして、大げさな振り付けでニコニコ踊るアクセル。

 トン トン タン  トン トン タン

長い金の髪と赤いバンダナが、体が流れる方向へ、少し遅れてついてくる。

 トン トン タン  トン トン タン…

「あはは、アクセルっておかしいーっ」
思わず笑みがこぼれる。涙はいつの間にか消えていた。
「メイちゃんも踊らない?」
「えっ…」
ふわっと笑いかけられて、一瞬ドキッとしてしまう。
「ボク、踊れないよ…」
クルクル回ってるアクセルが、あんまり楽しそうで、なんだか身体は”踊りたい!”って言ってる。
…でも、自分は踊り方を知らないし、
「こんなに小さいんだもん…」
長い手足で、影も踊ってるようにみえるアクセルに比べて、自分の小さい身体は、なんだか滑稽に見えて。
いつも思ってる。オーガスのように背があれば。ジュンのように可愛くて。セフィーのようにおしとやかで。ディズィーのように素直になって。もっともっと大人なら。…ジョニーは振り向いてくれるんじゃないかなって。
「大丈夫さぁ!こう、まずお辞儀して、キック ターン 右足 左足 ぐるっと回ってさがる 蹴ってさがる かがむ どう、簡単しょ?んじゃ、手をここにおいて…」
ぼんやりと、考え事をしながら見ていたら、急に手を握られた。
アクセルの左手がボクの右手をとって、右手をボクの背中へ。左手は自然とアクセルの腕に置かれた。
「いっくよ~! 足を追いかけてきてねっ」
なに張り切ってるのよっなんて思いながら、あわてて横に出されたアクセルの左足を、ボクの右足が追いかける。
ゆっくり踊りだす、ボクとアクセル。
  トン、   トン タン …
動くたびに、頼りなくフラフラする身体をしっかり支えてくれる、ヒョロッと長い腕。
騒々しくってデリカシーがなくって大きな声で笑って子供っぽいヤツ~なんて思ってたけど、ボクを閉じこめている腕は大人のヒトの腕で。ちょっとだけ、ジョニーに似てる気がして、ドキドキする…
近くなる身体が、なんとなく気恥ずかしくて下を向いていたけど、アクセルが笑ってるような気がして、顔を上げた。そのとたん、澄んだ青空みたいな眼とぶつかった。やっぱり笑ってる。失礼ね。笑わないでよ。…そんな、子供みたいに笑わないでよ…

「これで、君も、レディだね」

…そんなこと言うもんだから、またちょびっと涙がでた。
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