ギラギラと光る太陽。
降り注ぐ紫外線。
陽炎が立ちこめるアスファルト。
止まない蝉時雨。
絵に描いたような真夏日である。
容赦なく照りつける太陽を睨み付けながら、まだ涼しい木陰でアイスを頬張る少女が2人見受けられた。
「あーつーいーよー・・・・・。」
赤い快賊服を身に纏った少女-メイが唸るように言う。
見るからに暑そうな格好である。
ていうか暑い(笑)。
「当たり前アル。この暑いのにそんな黒いタイツなんて履いてたら、涼しくなるモノもならないネ。見てるこっちの方が暑苦しいネ。勘弁して欲しいアル。」
げんなりとした口調で、もう1人の少女-チャイナ服の紗夢がメイを半眼で睨み付けた。
どんどん溶け出すアイスに悪戦苦闘しつつ、メイは紗夢の幾分か涼しげな格好を眺めた。
やはり注目してしまうのは、惜しみもなくさらけ出している短いスカートからスラリと伸びている綺麗な両足。
高い露出なのに下品ではなく、寧ろ至極健全な色気を振りまいていた。
紗夢はかなりの自信家だが、それに見合うモノを持ち得ている。
さんざん某団長にお子様扱いを受けているメイは彼女が羨ましかった。
メイは溜息をつき、独り言のように言う。
「・・・・紗夢みたいにもっと露出の高い服、着よっかなー・・・・。」
「アイヤー、メイみたいなガキンチョが着ても醜いだけアルよ。」
揶揄される。
(・・・・・・・言ってはならないことを・・・・。)
冷静に手に持った溶けかけのアイスを口にくわえる。
精神を集中する。
ガキンチョの言葉にカチンときたメイは、半ば本気でクジラ召還の準備をした。
「・・・・・紗夢、喧嘩売りに来たの?別にボクは買ってあげても良いけど?」
返事次第で本気でぶっ放しますなオーラ全開である。
そんなメイを紗夢はえらく冷めた瞳で見た。
ただでさえ暑いのに、この上何故戦うなどという更に暑くなることをしなければならないのだ。
(だからガキンチョ言われるネ。)
まあ、こんな風に打てば予想通りの対応が返ってくるような少女だから面白いのだが。
このとき紗夢の中で悪戯心がムクムクと音を立てて芽生えていった。
メイも涼しくなる、紗夢は楽しめる、何とも一石二鳥な戯れを。
事態を想像して思わず笑みがこぼれそうになったが、それをメイに悟られない様隠す。
紗夢はメイの額に軽くでこピンを喰らわすと言った。
「違うヨ。ガキンチョはガキンチョのカッコあるネ。任せるヨロシ。ジョニーもいちころのコーディネートしたげるヨ。」
当然の如く、彼女はそれに食らいついてきた。
ジョニーはその日コレクションの中から一本のギターを取りだし弾いていた。
太陽が照りつけようが、熱風が吹こうが彼にはあまり関係がない。
いたって涼しげな表情で弾き続けていた。
「ギブソンのレスポールか・・・。んー、いい音だ。」
ちょっと悦に入ってみたりする。
そこで彼はよく知った気配を感知した。
トラブルメーカーで、我が儘で、子供っぽくて。
幼いころから面倒を見てきた少女の気配・・・・・プラスα。
そして聞こえてくるパタパタという走ってくる靴の音と、
「じょーにーーーーー!!」
聞き慣れた自分の名を呼ぶ声。
引く手を止めてそちらに視線を持っていった、が。
「なっっっっっっっ!?」
思わず手からギターを落とす。
ゴツッと鈍い音ともに足に落ちた気がするが、今はそんなこと全く問題ではない。
いつもの快賊服を着ていた彼女はそこにはいなかった。
代わりにいたのはいつのも快賊帽を脱いで長い髪をポニーテールにし、上半身には真っ白な綿のシャツ。
そして、やはりいつものタイツは履いておらず、代わりに紺のブルマーに白いソックス、そして運動靴。
誰がどう見てもまがうことなき「体操着」にしかみえない。
「なーんてカッコしてるんだ、お前さんは!」
思わず叫ぶジョニーにメイは何も気づいていないのかケロッと答えてくる。
「涼しくて良いよ、このカッコ。」
・・・・・・そおいう問題じゃあないんだよ・・・・・。
涼しいとか、動きやすいとか、ナウなヤングに馬鹿受けとかじゃなくって。
(一部の人間は)泣いて喜ぶ体操着、なのだ。
心拍数が倍ほどに上がった。
「・・・・・・じょにー?」
固まって動かないジョニーをメイは訝しげに下から見上げた。
白いシャツの胸元は微妙に曲線を描いている。
小振りながら形の良い胸が容易に想像できた。
普段は隠されている太股はあくまで白く、付け根から伸びていた。
重い碇を扱う所為か各所はしっかりと引き締まっておりストイックさが滲み出ている。
ジョニーを仰ぎ見るその上目遣いの視線にすら煽られているような気がして。
限界。
クルッと回れ右をするとジョニーは異様な早さで逃げ去っていった。
残されたのは落とされたギターと、地面に落ちた紅い液体。
「・・・・・ジョニーてば、暑さでやられちゃたのかなあ。せっかく着替えたのに・・・。ねえ、紗夢?」
不満顔でメイは紗夢を見たが、彼女は彼女で腹を抱えて笑いすぎで痙攣を起こしていた。
そんな紗夢をやはり不思議そうな顔で見たメイであった。
筆者は別にブルマ好きなわけではありません(笑)。さらに別に「ちち、しり、ふとももー!」と興奮するような奴でもありません(笑)。・・・・鼻血なんてそう簡単に吹き出ないよね。ドリームな話だから起こることだよね。・・・・・・でも鼻血がドリームってのはちょっと嫌。格好悪いジョニーでごめんなさい・・・・・。
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