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うろほろぞ
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空は青く晴れ渡り、雲は1つとして見られない。
9月半ば、秋晴れである。
ジェリーフィッシュ快賊団所属メイシップは、今日も快調に大空を往く。
ちょっと前までは猛暑の所為で外に、甲板にすら出る気になれず、部屋の中でアイスをほおばっていたメイであったが、残暑も終わり涼しくなってきた今日この頃再び外に出てくるようになった。
しかしここの所彼女は何かを考えているようで、話し掛けても上の空のことが多い。
見かねたディズィーがその原因を探るべく彼女に近づく。
・・・・・と言ってもメイが考え込む要因など、殆ど1つにすぎない。
半ば事態を予想しつつディズィーはメイに声をかける。
問題のメイは壁を背もたれにしつつ相変わらず考え込んでいた。

「メイ。」

ディズィーの声に反応してメイが顔を上げる。
普段は元気いっぱいの表情なのだが、やはり思い悩んでいる所為か眉間にはくっきりと皺が入ってしまっている。
メイは「やっほー」と簡単に返事を返すと再び下を向き溜め息をついた。

「どうしたんですか?」

そう尋ねると今度は視線だけこちらに寄越し、また溜め息を1つついた。

「お金が無い・・・。」

予想とは違った彼女の答えに少し驚きつつも―――絶対にここの快賊団の団長、ジョニーに関してだと思っていたから―――考えを巡らせる。
ここにいる限り生活は保証されているのだから、それが差し迫った問題であるようには見られなかった。
彼女と接するようになってそんなに長くなるわけではないが、彼女の思考というのは単純明快で至極読みやすい。
その彼女がジョニー以外のことで悩んでいる。
お手上げであった。

「はあ。」

仕方なしにそんな曖昧な答えを返してみたがやはり彼女は気に入らなかったらしく、キッとこちらを睨んでくるが―――可愛らしいだけで怖くも何とも無いのだが―――少しだけ声を荒げて、しかし後の方はやはり小声になって言った。

「はあ、じゃないよ!これは重大なことなんだよ!お金が無いイクォール欲しい物が買えない。」
「ジョニーさんに頼んでみてはいかがでしょうか?」

悩むほど欲しい物があるならば、彼女の保護者でもある団長の彼に頼んでみれば良い問題である。
ジョニーはメイに甘いわけではいが、ここ数日の彼女をみればYESと言うだろう。
・・・・・やはり甘いのかもしれない。
しかしそのディズィーの提案もメイは力なく首を横に振り却下した。

「・・・・ディズィー。それじゃ駄目なんだよ。・・・・・そもそもディズィーが・・・。」
「私が、なんでしょう。」
「賞金首じゃなくなるから・・・。入る予定だったお金が無い!・・・・・・ジョニーの誕生日プレゼントが~(泣)。」
「ああ・・・なるほど。」

なるほど物凄く納得のいく理由だった。
確かに後一ヶ月でジョニーの誕生日である。
ジョニーにここ連れてきてもらった時、彼女がディズィーの賞金について言っていたのもまだ記憶に新しい。
個人的にジョニーにプレゼントをあげるために必要な資金をそれで賄うつもりだったらしい。

「今からディズィーをケーサツに突き出すってのは・・・・。」

わきわきと指を動かしながらにじり寄って来るメイに、身の危険を感じて半歩後ろに下がった。
冗談だとは思うが、目が笑ってないのが怖い。

「メイ(汗)。私は死んだことになってますし、第一賞金は紗夢さんが持っていっちゃいました。」
「うぬぅ、紗夢め。・・・他に良い賞金首、いないかなー。」

あくまで一攫千金思考のメイに適切な助言を与えてみる。
・・・・・・・無駄になるのはなんとなく分かってはいるが。

「と言うよりも、真面目に働いて・・・。」
「いたっ!打って付の奴が!」

やはり全く聞いていなかった。
しかし、どうやら彼女は良い事を思いついたらしくにこやかにディズィーを見た。
その妙に晴れ晴れとした表情があやしい。
ろくでも無い事を思いついた時の彼女の癖だ。
立ち上がり痛いくらいにディズィーの手を握り締め言った。

「ディズィーの協力が絶対に必要なんだよ・・・・・・。協力、してくれるよね?」
「はあ・・・・。」

嫌な予感から曖昧にしか答えられないディズィーの返事も了承の言葉と取り、上目遣いにディズィーを見て笑顔を浮かべた。













「やっぱり駄目です。辞めましょう?ね?」

ある街の警察所の裏。
他の快賊団のメンバーに見つからないようにここまで来た二人であったが、ディズィーは正直もうメイを連れて帰りたかった。
しかしメイはそれを応としない。

「ここまできて何言ってんのさ。大丈夫!ディズィーには迷惑かけないよ。」
「・・・・やはり駄目です。私がジョニーさんに怒られちゃいます~!」

後ろで両手を縛られているメイ、フード+全身を覆い隠すロープを着こんだディズィーは小声でちょっとした言い合いをしていた。
辺りに人の気配はしない。
仲良さげに話しているところを人に見られたら、メイの立てた計画に支障が出るだろう。
しかし今のディズィーは寧ろ人に見つけてもらいたいくらいの気持ちだった。
それで彼女の暴走が止まるのなら。

「ジョニーは誕生日まで帰ってこないから平気だってばv」
「・・・・でも駄目ですよ。自分にかけられた賞金を貰う、なんて。」

メイの考えた計画はこうだった。
義賊、と言えども賊は賊。
ジェリーフィッシュ快賊団団員にもそれなりに賞金はかかっている。
中でもメイはメイシップの事実上の船長であり、何かにつけても率先して動いていると言う事もあり(ジョニー自身には負けるものの)結構な金額がかけられていた。
・・・・という事実を知ったのは何処ぞのヨーヨー使いに会ってからなのだが。
捕まえる手間を省き、更に高額な賞金がかかっているという利点ばかりのメイ自身である。
だったら、自分自身の賞金を貰ってしまえば良いわけで。
1人で警察に赴いても賞金を貰えるわけがないから受取人―――今回はディズィーとなる訳だが――― を作り、メイは何処かに送検される前に逃げ出せば良い。
そして受取人と何処か別の場所で落ち合ってお金を受け取れば良いのだ。
完璧な作戦である。
しかしディズィーは駄目だと止める。
彼女に協力してもらわない事には埒があかないので、メイは説得(又の名を言いくるめ)にはいった。

「何で?ディズィーはボクを捕まえました。ディズィーは賞金を貰いました。ボクは自力で脱出しました。・・・・・何も悪いことなんか無いよ?」

大丈夫!と言わんばかりに満面の笑みを浮かべてみるのだが、ディズィーは複雑な表情を作る。

「計画的犯罪な気がするんですけど・・・・。」

やはり納得してくれていない。
メイは更に押す。

「大丈夫!ディズィーにも一割いくから。」
「それは否応無しに私を共犯にしてるだけじゃ・・・。」

彼女の利益について述べてみても、ディズィーはますます顔を顰めるだけだった。
押すだけでは埒があかない。
メイは1つ嘆息して、一呼吸おいてから改めてディズィーを見る。

「・・・・・・ディズィー?」

なるべく憐れみを誘う声色で呼びかけた。

「・・・・・・何ですか?メイ。」
「愛ってね、辛いものなの。」

見つめる瞳に涙なども溜めてみる。
それにしても世の中良い言葉があるものだ。
押して駄目なら引いてみろ、と。

「はあ。」

そんなメイの様子にディズィーは曖昧な返事を返した。
いきなり話が飛んで対応に困っているのが分かる。
その隙をついてメイはたたみかけるように言葉を出す。

「ボクってばジョニーに振り向いてもらえなくて、すっごく不憫だよね?」
「・・・・・・・ええと・・・。」

その言葉に対して妙にディズィーは何か言いかけだったが、取り敢えず無視をする。
たたみかけるときは一気に、相手に反撃の隙を与えずに、が成功の秘訣だ。

「誕生日プレゼントで他の輩と差をつけて、ジョニーもこれでイチコロvな計画、分かってくれるよね?」
「・・・・・ええと、ジョニーさんは・・・・。」

視線を泳がせて何か言葉を飲みこんでいるディズィー。
彼女の言いたい事が分かれば、メイもこの先厄介事に巻き込まれなくてもすんだであろう。
一方通行の想いと信じきっている彼女には分かれという方が無理な話ではあるのだが。

「言うこと聞いてくれないんなら、ソルんとこいって一緒に賞金稼ぎの仕事してくる。」

そうして最後に切り札の「押し」を出した。

「駄目ですよ、危険です!」

さっきの曖昧な態度は何処へやら、声を荒げてディズィーは止める。
メイはそれを見てしてやったりとほくそ笑んだ。

「・・・・・じゃあ、良いよね?」

ディズィーの完敗である。
と言うか、暴走状態のメイにはなから勝てるとは思えなかったが。
それでも止めなければいけなかった、と後悔するのはまた先の話。

「どうなっても知りませんよ・・・・。」

諦め顔で溜め息など吐きつつ、ディズィーは協力を余儀無くされたのだった。
当のメイは涼しい顔である。
のん気なものだった。

「へーきへーきv」

かくして計画は実行された。
しかし、一週間たっても二週間たってもメイが帰ってくる事は無かったのである。





ジェリーフィッシュ団一のトラブルメーカーがいなくなって3週間がたった。
メイの事だから、と楽観視していた団員たちにも焦りの色が目立ち始める。
特に責任を感じているのは、この事態の発端に深く関わったディズィーであった。
外に行く支度をして皆に告げる。

「これはメイを止められなかった私の責任です。私が責任もって探してきます。」

焦燥しきった表情でそう言った。
そのまま空へと飛び立とうとするのを傍にいたエイプリルが止める。

「まあまあディズィー、そう言わないで。・・・・暴走メイを止められるのなんてこの世で1人しかいないんだから。」
「しかし・・・・・!」
「メイならそのうちケロッと帰ってくるから。それにディズィーが外に出る方がこの状況よりも、危険。」
「・・・っ。」

反撃の余地が無くなりディズィーは俯いた。
確かにディズィーがあまり公に外に出て行動するのは拙いのだ。
死亡したことになっていること。
そして、ギアであること。
メイがいなくなった上にディズィーまで何かに巻き込まれるわけにはいかない。
エイプリルは安心させるように笑うと、団員に向かって言う。

「幸いまだ団長は帰ってこないから時間はあるし。このことに関しては緘口令を敷く。ジュライとオーガスは外で、メイを探して。」
「まかせろ!」
「オッケー!」

二人は踵を返し自室へと向かう。

「あの、私には何が出来ますか?」

ディズィーは両手を胸の前で重ねる。
メイがどんな性格であれ、原因は自分だ。
何もしない訳にはいかない。

「ディズィーは、ここにいて?団長が帰ってくるまでにメイが見つからなかったとき、そのフォローをお願い。・・・・・・団長には知られちゃやっぱ拙いし。」

―――なんせあの団長は彼女を溺愛しているとしか思えないから。
当人目の前にしたらやんわりと否定されそうなことを考え、苦笑したエイプリルであった。
その時だった。
聞きなれた声が上方から聞こえた。

「何が、拙いんだ?」

エンジン音と共に黒い陰が甲板を通る。
反射的に上を見上げると、普段はあまりここには置いていないジョニー専用の小型機が止まっていた。
それを操縦している人物は案の定というか、黒い快賊服を身に纏った我らがジェリーフィッシュ団団長ジョニ―であった。

「団長!」
「ジョニーさん!」

そのまま小型機は甲板に着陸し、ジョニーは操縦席からひらりと飛び降りる。
ジョニーは辺りを見回し、軽く嘆息する。

「メイは、どした?」

ジョイ―の一言に団員に一気に緊張が走る。
―――誤魔化さなければ。
団員の思いは一緒だった。
初めに口を開いたのはやはりエイプリルだった。

「あああああ~、団長。早いお帰りですね~。後1週間は帰ってこないと思ってましたよ。」
「・・・・・・途中でみょーな噂を耳にしてな。」

びきびきびき

更に団員の間で緊張が走った。
それを楽しそうに眺めてジョニーはもう一回同じ台詞を吐く。

「で、メイはどした?」
「えええ~とぉ。」
「エイプリル。」

更に悪あがきを続けるエイプリルを制して、
ディズィーはジョニーの前に一歩踏み出し深々と頭を下げる。

「申し訳無いです、ジョニーさん。メイがいないのは私の所為なんです。」
「ディズィー。君が悪いわけじゃあ無いのは分かってる。だから顔を上げてくれないか。それにそんな顔よりも笑顔も方が似合う。美人が台無しだぜ?」

項垂れているディズィーに苦笑を返し、ジョニーは徐に懐から煙草を取り出し、吸う。
白い煙が空高く上がっていく。
何処までも余裕な態度を崩さないジョニーにディズィーは尋ねた。
――――大事な人が行方不明だというのに。

「心配じゃ、ないんですか?」
「メイにかかった賞金が受け渡された、という噂を聞いた。しかしその当のメイは然るべき場所に送られている様子は無い。逃げた、という話も聞かない。」

ディズィーから視線を外し、空を見ながら煙草をまたひと吸い。

「また、受け渡されてからメイを見かけたという人もいない。もちろんここにも戻ってきていない。さて、この状況を君は如何に捉える?」

楽しそうに言うジョニーに反比例してディズィーは血の気が引いていくのが分かった。
それは今この世にメイという存在が消えている、ということではないか。
まだメイに関して情報収集を何もしていなかったが、ジョニーの言ったことに偽りは無いだろう。
無意識に考えないようにしていた『死』という言葉がリアルに感じられる。
――――彼女はもうこの世には存在していない?
しんと静まりかえった甲板にジョニーのクックッという押し殺した笑い声が響いた。

「ジョニーさん!」

誰よりも彼女のことを想っている、と思ったのは錯覚なのだろうか?
ジョニーを見据えると、ちょうど目が合う。
彼の眼差しに真面目な光が宿るのが分かった。

「メイがこの世から消える、なんてある訳無いだろう?あいつはそんなにヤワじゃ無い。」

しかしそれも一瞬のことで、すぐに元の色に戻る。
片目を瞑り、少しだけ意地の悪い笑みを浮かべて言うのだった。

「こういう場合は、こう捉えるのさ。『メイは厄介事に巻き込まれました』ってな。」









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