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うろほろぞ
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アトスとアラミスが銃士の仕事をしていた時。
「あ・・・」
「ん?どうかしたか?アラミス」
アトスの体から少し見えた傷――
「この傷・・・やっぱり残ったんだ。」
「ああ、けれど別に後悔していない。」
しかしアラミスはつらかった。
それは自分が作ったのには変わりはなかったのだから・・・――



少し前のこと・・・――――
ダルタニャン、アトス、ポルトス、アラミスはトレヴィル隊長に仕事を任されたのだ。
その途中どこかわからない賊はアラミスに銃を向けて撃ってきたのだ。
『アラミス!!危ない!』
その時アトスがかばったのだ。
『ぐあッ・・・・・・・!!』
『『『アトス!!』』』
3人が声を上げた。
そしてポルトスとダルタニャンが賊を追い払った。
『アトス!大丈夫か?』
ダルタニャンが声をかけた。
しかしアトスは危険な状態だった。
3人は急いで次の町を目指し、宿をとった。
医者が言うには急所は外れたが跡が残るかもしれないと言われたのだ。
3人は少し黙り込んでしまった。


アトスの体にある傷はその時のものだった。
「ごめん・・・」
アラミスは謝った。
「なぜお前が謝る?お前のせいじゃない。あの時の賊が悪いんだ。気にするな。」
「だけど・・・!!」
アラミスが話そうとした時アトスがアラミスに抱きついた。
「ア、アトスッ・・・」
「だからお前が気にすることじゃない。それにこれはお前を守った証だ。」
アトスが笑った。
そしてアラミスにキスをする。
深く長いキス・・・――
「んッ・・・・・」
そしてそのままアラミスを押し倒す。
「ア、アトス待って!今仕事中だろ?!それに誰かに見られたら!」
ジタバタしてアトスをどかそうとする。
しかし男の力だけあって無理だった。
「お前のその顔、瞳を見たら、いてもたってもいられない。見られても私はかまわない。」
アトスの目はもう違った。
「私が困る・・・。」
アラミスの言葉もなしにアトスはアラミスのボタンをひとつひとつ外していく。
「あッ・・・・」
アラミスの上半身はもう裸になってしまった。
「アラミス・・・きれいだ」
「・・・・・アトス。傷が見えて少しセクシーかな。」
「そうか・・・」
「あッ!」
アラミスの中にアトスの手が入ってきた。
「もう濡れてる。早いな。。。」
「だ、誰のせいだ・・・んッ!」
アラミスがよがる。
しかしアトスはいろいろなところを攻める。
「あッ・・・もう・・・ダ・・・メ・・・」
「早いなアラミス。」
アトスはアラミスの中に自分のモノを入れた。
「あッやッ・・・ん・・・はぁ」
アラミスの瞳に涙が・・・――
「もうちょ、ちょっとだ・・・くッ」
「あ!も、もうダメッ!イッイク!」
「いっしょに・・・・はッ」
「あ、ああああああ!!」
アラミスとアトスはいっしょにイった。

そしてその10分後ダルタニャンとポルトスが仕事から帰ってきた。
「ただいま。仕事終わった?」
「って・・・ダルタニャンまだみたいだな^^;」
「みたい。行く前より少し減っただけ・・・」
「うるさい!アトスのせいなんだよ!」
ダルタニャンとポルトスの言葉にアラミスが怒鳴った。
「わかったよ。アラミス。あ、アトス、その傷。」
「やっぱ残ったのか・・・」
ダルタニャンとポルトスもしみじみあのことを思い出した。
「だからもう気にするな!」
「でも2人とも仕事どうするの?」
ダルタニャンの問いにアトスが答える。
「あ、徹夜してでもアラミスと片付けるからダルタニャンとポルトスは帰っていいぞ」
「そう?じゃあがんばってね!」
そしてダルタニャンとポルトスは帰っていった。
「なんで帰らすのさ!?手伝ってもらえばいいじゃないか?!」
「なんで?そしたら仕事終わった後なにもできないじゃないか?」
「はぁ~!?フザけるな!!!」
「うッ!傷に響く」
アラミスの怒鳴りにアトスが胸をあてる。
「うそつけ!」
アトスに蹴りを入れる。

長い夜がまた続く・・・
仕事で徹夜という名のものが・・・・


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初めての夜


――ノワージ・ル・セック村――
「あ・・・」
フランソワの部屋にルネとフランソワがいた。「やッ!ん・・・」
「ルネ・・・愛してる。」
「フランソワ・・・あたしも・・・!あ・・・」
ルネは16歳、フランソワは32歳。
しかし、この2人は心の底から愛し合っていたのだ。
「あいかわらず、ここが弱いな。」
フランソワはルネの弱い部分、胸を触る。
「ち・・・違うもん。ハァ、フランソワだから感じるの・・・」
「そうか・・・かわいいな。」
「あ!ハァ、、、あ・・・ん」
フランソワはルネを攻めまくる。
「だいぶ、濡れてきたな。そろそろいいか?」
「ん・・・あ、、、ちょっと怖いけど。。。いいよ。」
フランソワのものをルネの中に入れる。
「あ!痛ッ・・・痛い!・・・・!!くッ」
「まぁ初めてだからな。けれどすぐに良くなる」
「あ・・・う・・・ん、あ・・・ああ!!!」
フランソワはゆっくりと動いた。
「あ!あ・・・やッああ!つッ!!やだぁ・・・!!」
「くッ・・・・・・」
「・・・・・あ!イ、イく!!んッ・・・」
ルネはフランソワとともにイった。
初めての夜だった。
優しく抱きしめるフランソワ。
2人は笑いあった。


「・・・・・・ミス」
「・・・・・・・・・」
「アラミス!!」
「・・・・ん。。。あ、アトス」
実はセックスの最中にアラミスは眠っていたらしい。
「大丈夫か?疲れてるのか?もしかして。」
「あ、大丈夫。ごめん。眠ってしまって・・・」
「いいや。気にしてないよ。疲れてるみたいだしな。なんか夢見てたのか?笑ってたけど・・・」
「うん。ちょっとね。」
「そうか。。。フランソワのことか?」
「え?!ん、まぁね・・・」
「フッ。ちょっと妬けるなぁ・・・」
「クスクス、妬いてくれるなんて・・・アトスじゃないみたい。」
アトスが少しムッとした。
「続き・・・いいか?」
「ん?かまわないさ」
アラミスのおでこ、口にキスをするアトス。
そしてセックスの続きをする。
長い夜がまた続く。
今のアラミスは幸せだった。
大切な人がそばにいてくれるから・・・・

フランソワも許してくれるかな・・・――


q5
クシャナは自分の部下を、大事に扱うよう心掛けていた。 以前、自分が育て上げた部隊を、父や兄達が
湯水のように使って犬死させた時、そのような無体な仕打ちは決してしないと誓ったのである。 それ故、
クロトワの人権を無視していると己の良心に指摘され、衝撃を受けた。
“私は、いったい… 奴の気持ちに気付かなかったのも、クロトワを一人の人間として認識していないから
だろうか? …だとすれば辻褄が付く。 クロトワはそれを知っていたから… ああする以外、想いを伝える
事ができなかったのか。 想いを寄せている事に気付いてももらえず、辛かったのであろう。 死にたくなる
程、苦しかったのかも知れない…”
部屋に着いた頃にはクシャナの憤りは治まり、反省すると同時に、クロトワの行動の責任を大部分、自分に
負わせていた。 廊下から居間に入り、護衛兵達を外に残して戸を閉めると、一日の疲れが溜息として
零れた。 その素顔は別人のように沈んでいた。
“とにかく、寝よう。”
奥にある別室の寝室に向かって歩き出すと、暖炉際の長椅子から影が起きた。
「姫様、晩かったのですね。 御髪を梳きましょうか?」
「ログダ! まだいたのか。 晩くなるから下がって良いと言った筈だ。」
「ですから尚更に心配で、眠れなかったのです。 平民兵と宴会だと伺いましたので… 姫様の御身に何か
あってはと、ハラハラしておりましたのですよ!」
クシャナはまた溜息をついた。 幼い頃から乳母を務めたログダを手放す事もできず、身の回りの事を
任せていたが、どれほど月日が経とうとも、自分を非力な少女のように扱う彼女の心配性は、時には重荷
でしかなかった。
「ログダ… もういい加減その呼び方は止めてくれ。 私はもう、子供ではない。」
「それは承知しております! 時には姫様ご自身よりも、意識しているのではないかと、それが何より心配
なのです!」
後を追って寝室に入って来たログダに、抵抗する方が疲れると諦めて、クシャナは化粧台の前の椅子に
腰を下ろした。 結い上げられたその髪を慣れた手付きで解くと、優しく梳かしながらログダは続けた。
「姫様はもう何年も、兵士として戦場にまで出向かれていらっしゃるので、ご自分を男同然とお思いになって
おられるのではありませんか? それは、戦法においても、誰にも勝っておいでなのは分かっております。
しかし姫様は女として、ご自分がどれ程お美しく、周囲の男どもにとって魅力的でいらっしゃるかを、お忘れ
がちです。」

目を伏せていたクシャナは、鏡の自分と視線を合わせ、小声で呟いた。
「ログダ… クロトワと同じ事を言うのだな。」
「え? 何ですか、姫様?」
「今日、な… クロトワが同じ事を言っていた。」
「クロトワ、ですか? あぁ、あの薄汚い平民の参謀ですね。 随分とでしゃばった事を言いますんですね!
姫様が甘やかしてらっしゃるから、付け上がるのですよ! あのような男が一番危険です! 粗野で粗暴、
見るからに飢えた狼ではありませんか! 正直申し上げて、なぜあのような者をお側に置かれるのか、
私には理解できかねます。 他に幾らでも優秀な兵士がおりますでしょうに…」
複雑な気持ちでクシャナは聞いていた。 今夜の出来事をログダが知れば、自分の言った事が立証された
と主張するであろう。 いずれは町中、下手をすれば国中に知れ渡る大事件(スキャンダル)。 だがクロトワの
心中を初めて理解したクシャナは、慈悲を持って対処してやりたかった。
「クロトワは、あれでも奇麗好きだぞ。 貧相な雰囲気はしているが、あれは奴の芝居だ。 平民上がり故に
貴族兵の前では腰の低い態度を取らねば、余計敵を作る事になる。 人の心を良く理解している、思慮も
分別もある男だ。 私が側に置いているのも、兵士達の士気を素早く察知できる逸材だからだ。 それに、
もう二度も、私の命を救った…」
「それは私も伺っております。 しかし常日頃、お側近くに置かなくても宜しいのではありません? 姫様の
お美しさを口にするなんて、身の程を弁ていない証拠です! そんな事を考える権利すらない下人の分際
で… 何を想像しているのか考えただけで身の毛が弥立ちますわ。 男など、獣(けだもの)でございますから
ね、姫様!」
「獣だの狼だの言っているが、クロトワは単なる犬だ。 私の飼いならした、番犬だ。 甘える事はあっても、
主に逆らいはしない…。」
「そんな! 姫様、油断してはいけません! 隙を狙って、何をしようとするか――」
ログダが手を止めたので、クシャナは立ち上がり、無造作に服を脱ぎ始めた。
「今日は疲れた。 もう休ませてくれ。」
「…姫様…」
「まぁ、明日になればお前の喜ぶ知らせが聞けるだろう。」
「えっ? 何でございますか?」
ブーツを脱いで振り向きもせず、ベッドの上に敷かれた寝巻きを羽織ながら答えた。
「安心しろ。 もうクロトワは私の側にはいられん。」
「? どういう事です、姫様?」
「…明日になれば分かる。 もう寝る。」
背を向けたままベッドに入ったクシャナに、ログダはしっかりと毛布を掛け直した。 その憂鬱な顔は見え
なかった。
「お休みなさいませ、姫様。」
「…」
そっと扉が閉まると、クシャナは目を瞑り、一日の出来事を忘れようとした。 だが眠ろうとすればする程、
眠れなくなった。
楽な姿勢を探して寝返りを打っていると、ふと生暖かいシーツの端が唇に触れた。 瞬時に蘇る、口付けの
余韻。 毛布に擁かれた温もりも、なぜかクロトワの腕を思い出させた。
“そう言えば… あんな風に抱かれたのは、母上が毒を盛られてから、初めてだな…”
懐かしさと人恋しさに胸を締め付けられ、涙を堪えながら、ようやくクシャナは眠りについた。






その頃、独房の中でクロトワは完全に酔いから醒め、顔の血と涙を袖で拭い、投げ出された床から起き
上がり、ベッド代わりの板の上に座った。
“さて… もうやっちまった事を悔やんでも仕方ねぇや。 問題はこれからどうするか、だ。”
一本の松明に燈された独房を見渡し、溜息を零した。
“もっとも、こうなったら俺のできる事なんざ高が知れてるか… 脱獄できる程チャチには作ってねぇだろう
し、脱走させてくれるような命知らずもいねぇだろうし…。 クシャナがどうするつもりなのかもさっぱり分かん
ねぇや。 本当にこのまま生かしておく気か? でもクレネや将軍連が黙っちゃいねぇだろうな。 どっち道
コルベットが出来あがったら、俺は用無しだ。 遅かれ早かれ、処刑されるだろう。 まぁ、結構長生きした
方だよな… 俺みてぇな陳腐な男にしちゃぁ上出来か。 クシャナの玉の肌にも触れたんだし、もう思い残す
こたぁねぇな!”
クシャナの肌の感触を思い起こし、にんまりと顔が綻んだ。
“ホントにいい女だったなぁ… 滑々してて、ほんの少し香水の匂いがして…。 あ~ぁ… いったい、誰の
女房になるんだか…。 チキショウ! 爵位さえあったら、俺が真っ先に口説いてやったのに! ま、どうせ
突っ撥ねられちまっただろうが、な。 俺より顔も頭もいい奴は、幾らでもいるからな。 でもやっぱり悔しい
ぜ、クシャナ! あんたが他の男のものになるなんて… さっさと処刑されちまう方が、よっぽど楽だ。”
クロトワは、自分の発想に気付き、苦笑した。
“生き延びる事しか考えてなかったこの俺が、『死んだ方がマシだ』なんて、どうかしてるよなぁ。 俺とした
事が、本気でクシャナに惚れちまったらしい…。 馬鹿なもんだなぁ!”
つい、声を出して笑ってしまった。 だが同時に、また涙が頬を濡らしていた。
“情けねぇや… 俺ァなんて無様なんだ! こんな男、クシャナが気に留める筈がねぇよな。 嗚呼、そうさ!
俺なんか、死んじまったら、きっとすぐ忘れちまうだろう。 『あんな馬鹿がいた』って事も、知らねぇ内に忘れ
ちまってるだろう。 チキショウ!”
護衛兵に取り押さえられた時、ベルトにあった銃も剣も没収されたが、クロトワは非常用に、ブーツの踵に
小さな刃を忍ばせていた。 指の長さ程しかないそのナイフの刃を取り出し、初めて自分の手首に当てた。
“せめて、あんたを想って死んで逝った男がいたって事を、覚えててくれよ… 情けねぇけどよぉ、それくらい
しか、俺を思い出してもらえるような事ができねぇんだ。 クシャナ… 戦場であんたを庇って死んだ奴等
みたいに、俺の為にも泣いてくれるか? ほんの二・三滴でも、涙を流してくれるか? それとも、『馬鹿な
奴だ』って、軽蔑するか? …あんたに軽蔑されるのは、やっぱり嫌だなぁ…”
内心、躊躇しながらも、手首には刃を当てたまま、その表面に反射される松明の炎を呆然と見詰めていた。
“もうちょっとマシな覚え方して欲しいもんだよなぁ… なんか、こう、形に残るような… 見る度、俺を思い
出さずにゃぁいられねぇような… チキショウ、どっかに歯型でも付けとくんだったなぁ!”
しかしクシャナの白い肌にくっきりと残る痕を思い浮かべると、さすがのクロトワも良心の呵責を感じた。
“やっぱり、女にンな事してたら、一生恨まれるか。 幾ら男勝りのクシャナだって、女に違いねぇからな…。
そこまで怒らせてたら、コルベットがどうなったって、即座に処刑されただろうな。”
ふと、クロトワは気付いた。 そして刃物を落とす程、驚いた。
“何やってんだ、俺は! コルベットがあるじゃねぇか! 作りかけのあのヤツを目一杯すげぇのにすりゃ、
クシャナも見る度、乗る度、俺の事を思い出すじゃねぇか!”
取り落とした刃を拾い上げ、慌てて元の隠し場所に戻した。
“そうさ! コルベットを完成させる為に、クシャナは俺の処刑を延期したんだ。 あの船は、云わば俺の
忘れ形見になる訳だ。 それを期待して――いや、俺のウデに期待してくれたんじゃねぇか! それに
応えねぇで死んじまったら、男が廃るぜ! こうなったらクシャナの為に、最高の船を拵えてやる! その
後で捨てられたって構やしねぇ。 誰もがアッと驚くような、世界一のコルベットを、あんたの為に作り上げて
見せるぜ!
q4
知らぬ間にクロトワの脇腹を掴んでいたクシャナは、慌てて押し離そうとしたが、さすがに腕力では男に敵う
筈が無い。 怪我を負わせるのも抵抗があったので、説得してみる事にした。
「クロトワ、今放せばこの無礼、すべて水に流してやろう! 他に知る者もいな――」
「チェッ、『無礼』ですか? ま、どーせ俺ぁ生まれ付きの無礼モンですがね… こうなったらトコトン無礼して
さしあげますよ!」
「な・何を――アァッ!」
いきなり首筋を舐めたクロトワに、つい悲鳴を上げてしまった。 するとすぐに扉の向こうから護衛兵の声が
した。
「殿下、どうなさいました? 殿下? 殿下っ!」
ドンドンと戸を叩く兵を無視し、クシャナは必死にクロトワに語り掛けた。
「クロトワ、放せ! 今ならまだ間に合う!」
「嫌ですよぉ、やっと掴まえたのに…」
「何を言ってる! 処刑されても構わんのか?!」
喉元に唇を押し当て、力の限り強く抱き締めてから、クロトワは静かに答えた。
「殿下が人妻になるのを見るよりは、死んだ方がマシですよ。」
その時、堪りかねた護衛兵が一斉に広間に流れ込んで来た。
「殿下っ!」
「アッ、クロトワ殿…」
「な・なんて事を――!」
クシャナを抱え込み、その脚に座り、今また首筋に接吻しているクロトワに、兵達は驚きながらもすぐに飛び
掛かった。
「放さんか、この無礼者!」
「下人の分際で何をする!」
クシャナの背中に回された手を指から剥がそうとする者もいれば、腕や脚をそれぞれ掴んで引っ張る者も
いた。 だが殊の外クロトワの抱擁は強く、手間取っているのを見て、クシャナは仕方なく爪を立て、両脇を
思い切り握った。
「イテテテテッ!」
ようやく緩んだ腕の中から、滑るようにクシャナは抜け出した。
「殿下! お怪我は?!」
「…大事無い。」
「クソ~、放せ! 放しやがれ! チキショウ、クシャナ~!」
今度はクロトワが護衛兵に雁字搦めに掴まれ、無造作に暴れた。 シタバタする足が床に触れる事も無く、
数人に持ち上げられたまま部屋から連れ出されるところであった。
「独房へ抛り込め!」
「ハ?」
クシャナの命令に、兵達は驚いて立ち止まった。 クロトワも騒ぐのを止め、キョトンとして彼女の顔を見た。
「で・殿下… すぐに処刑するのでは――?」
自分でも不思議であったが、クシャナはどうしてもクロトワを庇いたかった。 とっさにその口実を考えた。
「馬鹿者! 今殺したら、製造中のコルベットはどうなる? 情報は全て、担当してきた奴の頭の中にあるの
だぞ!」
「は・はい、畏まりました… では処罰はいかが致しましょう?」
「…明日、それ相応の事を考える。 今日はもう床に付く。」
「ハッ!」
戸へ向かうクシャナの道を開ける為、クロトワを抱えた兵達は壁際へ動いた。 クロトワ本人は通り過ぎて
行くクシャナの冷め切った表情を見て、思った。
“クシャナ…! 『死んだ方がマシだ』って言ったから、ワザと殺さずに、余計苦しめるつもりなのか? それ
とも…”
戸口へ近づくクシャナの背中に、クロトワは最後の言葉を投げ掛けた。
「殿下ぁ! お願いです、殺してくだせぇ!」
ピタッと、クシャナの足が止まった。
「黙れ! 貴様に殿下に懇願する資格など無い!」
黙らせようと護衛兵が頬を殴ったが、めげずにまた声を張り上げた。
「殿下が人妻になるなんて、俺ぁ耐えられねぇ!」
「だ・黙らんか、この身の程知らず!」
反対側からも殴られ、途端に鼻から出血し始めた。 鋭痛に涙も出た。
「一思いに死なせてくだせぇ…」
「え~い、この――」
「止めんか。」
踵を返して向き直ったクシャナは、クロトワの顔に動揺したが、表情は堅く閉ざし通した。
「私の婚礼が死よりも辛いと言うなら、それ以上の刑罰はあるまい。 潔く負う事だ!」
「そんなぁ、残酷な… あんまりですよぉ…」
本格的に泣き出すクロトワを、これ以上見ていると心が揺らぎそうであったので、クシャナは足早に部屋を
出た。 廊下に出ても尚木魂する彼のすすり泣きに、胸が潰れる思いがした。
“すまぬ、クロトワ。 こうするより他に道が無いのだ! お前があの時、諦めてさえいれば、こんな事に
ならずに済んだのに… なぜ私の忠告を聞かなかった?! 処刑は覚悟の上だったのか? あれしきの
事、命と引き換えにする甲斐があったのか?”
無意識に、クシャナの足取りは遅くなっていったが、後ろについていた数名の護衛兵はそれに合わせた。
“お前には、それだけの甲斐があると言うのか? 馬鹿な! 高が口付けの為に命を落とすなど! 元々
死にたかったのならまだしも――”
ハッとして、クシャナは完全に立ち止まってしまった。
「殿下? どうかなさいましたか?」
心配そうに覗き込んだ兵は、クシャナの顔を見て慌てた。
「殿下! しっかりなさいませ! キヤクワ、担架をお持ちしろ!」
「だ・大丈夫だ、必要ない。」
「しかし殿下! お顔の色が――」
「大事無い! 少し疲れただけだ。」
そう言い切ってまた歩き出したが、クシャナの顔はやはり蒼白であった。 それはある説に辿り着いたから
であった。
“そうだ、そうに違いない! 今日決まったばかりだ、偶然ではなかろう…”
クシャナは、ゼストに強いられて自分が結婚すると決定したので、クロトワが自殺を図ったのだと確信した。






「で・殿下ぁ… うっ、うっ… チキショ~!」
「え~い、おとなしくせんかっ!」
牢へ担がれながらもまだ喚いているクロトワに、護衛兵の副隊長は呆れたが、何度殴っても黙らないので
渋々諦めた。
独房に着いて扉を開けてから、「殿下は『抛り込め』とおっしゃったからな」と、部下達にクロトワを文字通り
投げ込むよう指示した。
「イテェ~! クシャナ、うっ、うっ…」
床に叩き付けられた状態のまま、クロトワは泣き伏した。
“チキショウ、バカな事しちまったよなぁ… クシャナの膝枕で寝られただけで満足してりゃぁいいものを、
なんであんな欲出しちまったんだ? いくら酒が入ってるったって、あそこまでしたら誰だって起きるよなぁ。
あ~ぁ、俺は世界一の大馬鹿野郎だ…。”






“まったく、お前は世界一の大馬鹿者だ! 欲しい女が手に入らないと言うだけで、死のうとするとは… 
死んでいったい何になる? 世間の笑い種になるだけではないか!”
部屋へ行く途中、自分でも説明し切れない動揺に翻弄されながら、クシャナは心の中でクロトワをなじって
いた。 まだ蒼褪めていた顔の表情は険しく、無意識に下唇を噛み締めていた。
“第一、お前と私の立場の差を考えてみろ! 元より叶う筈も無い相手と分かっていそうなものを… それ
なのに感情に溺れるとは、ほとほと馬鹿な奴だ! 直属の部下である事に満足していれば、何不自由無く
暮らせたのに、その地位も、命までも捨てて、何を得ると言うのだ? 高が口付けのために… 馬鹿馬鹿
しい事この上ない!”
酔いが醒めるのに苛立ちが拍車を掛けた。
“私の恋人になりたいだと?! 自惚れも程々にしろ! 平民上がりが、生意気な。 兵士としての腕を
買ってやっただけなのに、思い上がるな! こんな事くらいで立場を忘れるようでは、その資格も結局は
無いな。 役立たずめッ! 中古のコルベットの方がよっぽど使える――”
『殿下にとっちゃぁ、俺なんか男の部類に入ってねぇ… 戦車やコルベットとおんなじ、道具に過ぎねぇ…』
再び急に立ち止まったクシャナに、護衛兵達が慌てて止まった。 それに気付き、すぐまた歩き出したが、
クシャナの足取りは重くなっていた。
“私はやはり、クロトワを道具か、物体としてしか考えてはいないのか? 奴の言う通り、機械とさほど変わ
らぬ立場に置いていたのだろうか?”

q3

クシャナが笑っている隙に、クロトワはまた少し近付いた。 もう足元に座っていた。
「良く見ると犬の頭に見えなくも無いな。 長毛の雑種か?」
「ワン!」
そう答えてから、クロトワは思い切って顔をクシャナの膝の上に乗せた。 案の定、酔いが回ったクシャナは
気にもせず、平然と彼の頭を撫でた。
「犬は何より飼い主に忠実だと言うが、お前も私に忠義を尽くすなら、可愛がってやろう。」
「そりゃありがてぇ…」
「こら、犬が喋るな! ハハハッ」
すっかりご機嫌の主に甘え、クロトワはクシャナの膝に頬擦りして、溜息をつくとそのまま寄り掛かった。 
引っ張られて歪む彼の顔がおかしくて、クシャナはまた笑った。 そしてゆっくりと髪を撫でてやった。
「父の飼っていた犬が数匹いたが、どうしたのだろう? まだ城内のどこかにいるのだろうが… 欲しい者が
いれば売った方が良いかも知れぬな…」
独り言のように囁きながら、指でクロトワの髪を梳かした。
「お前以外の犬は、要らぬからな。 …? クロトワ?」
答えず目を閉じたままのクロトワに、クシャナは何回か呼びかけたが、歪んで間の抜けた顔は反応せず、
暫らくすると鼾を立て始めた。

「…なんだ、寝てしまったのか。 困った奴だな。」
そう言いながらも起こさないようにそっと頭を撫で続けていた。 終いにはクシャナも、王座の背凭れに寄り
掛かったまま、静かな寝息を立て始めた。






クシャナは奇妙な夢を見た。
以前、母が手入れをしていた城内の花園で、子供の自分が父の猟犬の群れと遊んでいた。 どの犬も妙に
見覚えのある顔で、長い茶色い毛をしていた。 群れの中で揉まれている内、次第に自分が小さくなったの
か、それとも犬達が巨大化したのか、辺りの景色が見えなくなるほど茶色い毛並みが広がり、犬の固体が
識別できなくなった。 あっと言う間に毛むくじゃらの壁に囲まれてしまい、途方に暮れていると、壁の向こう
から微かに自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
『クシャナ… 可愛いクシャナ…』
“お母様だわ! お母様!”
叫ぼうとしたが、声が出なかった。 囲んでいた毛の壁が、柔らかく、しかし逃れようも無く、八方から押し
寄せて、口を塞いでいた。 それに気付いた瞬間、息もできない事に気が付き、胸の苦しさに加えて心臓の
鼓動も高まった。
“お母様、助けて! 誰か、お願い!”
途端に息ができるようになり、安心した為か体中から力が抜けた。 視界一杯に広がる茶色い毛並みに
包まれていると、クシャナはその柔らかさと暖かさに溶け込みそうな気がした。 だがそれはとても心地よく
幸せな事に思えた。
『クシャナ~! 嗚呼、俺の可愛いクシャナ…』
今度ははっきりと声がした。 母ではなく、男の声だった。
“エッ? お父様? …じゃぁ、無いわ…”
深く考える間も無く、また少し息苦しくなった。 だが今度は口元を毛で押さえられたのではなく、濡れた布で
触れられているような感触がした。 不思議に安らかな気持ちになっていたクシャナは、思考能力が鈍って
いたが、暫らくしてそれが犬の舌だと分かった。
“私、犬に、食べられてるんだわ…”
それでも慌てず、ぼんやりと考えていた。
“食べられてしまったら、私はどうなるのかしら? ヴァルハラへ行くのかしら? それとも… 消化されて、
犬の一部になるのかしら?”
食べられる事よりもその後の行方が気になり、クシャナは必死で考えようとした。 何か大切な事を忘れて
いるような気もした。
“そうだわ! 食べられているのに、痛くない――きっと歯も無い老犬なんだわ。”
しかしまだ何か引っ掛かっていた。 いつしか暗くなっていた視界に、クシャナは自分を蝕んでいる老犬の
顔さえ見えれば、何か思い出せるような気がして、目を凝らした。 暖かな毛皮に包まれ、努力など何も
せずに休みたいと、体も眼球も抵抗したが、思い立ったらやり通すクシャナである。 目を凝らすだけか
瞼も大きく広げようとした。 すると急に暗闇の中に光と色が入って来た。 その眩しさに驚き、すぐ眼を
閉じてしまったが、また目を開けようとすると瞼が鉛のように重かった。
“どうしてこんなに大変なのかしら? でも今、確かに何か見えたわ。”
やっとの思いで目を開けると、そこにはもう一番いの瞼があった。
“あぁ、あの目も開けないと見えないのかしら?”
寝ぼけてそう考えたクシャナが、現状を把握するまで、ほんの一瞬が経過した。 そしてその直後――
「クロトワッ!」
――と怒鳴ろうとした。 だが『ク』と言った時、口の中まで侵入していたクロトワの舌を噛んだので、事態が
一変した。
噛まれたクロトワは慌てて退却し、その急な反応に、彼の腕に抱き上げられていたクシャナも翻弄された。
そのため王座の背凭れに後頭部を打ち、二重のショックのあまり言葉を失った。 ただ目を大きく見開いた
まま唖然とクロトワを見詰めた。
まだ腕の中にいるクシャナに、現行犯で捕まったクロトワは、焦りながらも必死で考えた。
“今さら出来心だったなんて言ったって、刑が軽くなる訳でもねぇよなぁ。 婿候補にもなれねぇ俺が、こんな
事しちまって… 嗚呼、もうすぐクシャナが人妻になるんだ… いっそここらで、派手に華を咲かせて、散って
みるのもい~か!”
意を決し、クシャナをしっかりと抱え直した。
「殿下、俺はもう我慢できねぇ! 殿下がムリヤリ結婚しろって言われて腹立てんのは当然だがよ、俺だっ
て、俺だって腸煮えくり返る思いなんだ! 何でどっかの青二才にあんたを盗られなきゃなんねぇんだ、チッ
キショウ! 傍で指銜えて見てろってのか? ふざけんじゃねぇ!」
捲くし立てるクロトワに、クシャナはあんぐり口を開いて驚いた。
「クシャナッ! 俺の可愛いクシャナ! 誰にも渡しゃしねぇ! 渡したかぁねぇのによぉ… チキショウ! 
俺ぁ今まで一度だって平民に生まれたのを悔やんだ事なんて無かったんだ。 あんたの側にいられんなら、
それだけでいーんだって、自分に言い聞かせてきたんだ! なのによぉ…」
いっそう腕に力を込めて抱き締めるクロトワに、ようやくクシャナも対策を考え出した。 腕を両脇に押さえ
付けられたまま抱かれていたので、目や喉等の急所は狙えないものの、爪を立ててクロトワの脇腹を抉る
事なら可能であった。 それで気を逸らして脱出し、他の方法で止めを刺せば良い。 第一段階を実行する
準備として、クシャナはゆっくりとクロトワの両脇に手を上げた。
「クシャナ~! こんなイ~女を、なんも分かっちゃいねぇ若造にやるなんて、もったいねぇ!」
脇腹を抉ろうとしていたクシャナは、ふと動きを止めた。 自分でも理解できぬ程、クロトワの言葉に動揺
したのである。
当のクロトワは、身に迫る危険も知らずに、クシャナの頬から顎にかけて口付けを施していた。
「クシャナ!… 嗚呼、なんて綺麗なんだ!… あんたはトルメキヤ一、いやぁ…世界一のべっぴんだぜ!」
顔を近づけられる度に髭にくすぐられるので、避けようとして頭を引くと、今度は喉にも接吻された。
「色白で…真珠みてぇで…なんて柔らかい肌なんだ…食っちまいて~!」
さっきの夢が一瞬、頭を過ぎり、クシャナは慌てて答えた。
「クッ・食うな!」
自分でも驚くほど震えて、か細い声だった。 それにクロトワは笑わずにはいられなかった。
「フッフッフッ… 可愛いぜ、クシャナ。 本当に食うわけねぇだろう? あんたぁ俺の宝モンなんだ。 でも、
できる事なら…」
少し顔を離して、彼女の瞳を覗き込みながら、クロトワは囁いた。
「…あんたを攫って、コルベットで誰もいねぇ所へ逃げてぇ…。」
クシャナは馬鹿にされた事に少なからず腹を立て、気を取り直して計画を実行するところであった。 だが
自分を見詰めるクロトワの目があまりにも悲しく、どんな言葉より彼の想いと切なさを伝えた。
決断に戸惑うクシャナを静かに抱き寄せ、クロトワは残された時間――護衛兵が呼ばれるまでの短い間を
満喫するようにクシャナの肌を接吻で埋め尽くし始めた。
クシャナは胸が締め付けられる思いがした。 それはクロトワの抱擁だけによるものではなかった。
“なぜ気が付かなかったのだろう? これほど身近にいる者の気持ちも酌んでやれないとは、上に立つ者と
して失格だな… 今までずっと隠そうとしていたのだろうか? それとも、私が鈍かっただけか?”
答えが気になったが、プライドもあるので、クシャナは少し回りくどい方法で訊いてみた。
「なぜ、隠していた?」
「フフッ。 そりゃぁ、殿下。 殿下にとっちゃぁ、俺なんか男の部類に入ってねぇでしょ? どーせ戦車やコル
ベットとおんなじ、道具に過ぎねぇって事は、十分肝に銘じてますよ。」
「そ・それは違う! 私は一度たりともそのような… お前は大事な部下だ!」
「ヘヘッ。 そりゃ、機械よりはちっとばかり上かも知れませんがね。 『部下』じゃどう逆立ちしても、『恋人』
にゃぁなれねぇ。 どっちでも同じでさぁ。」

さすがのクシャナも、それには返す言葉が無かった。 だがその気持ちを察してか、クロトワは優しく背中を
擦り、耳朶に口付けしてから呟いた。
「それ以前に、殿下御自身、自分がどれだけ魅力的な女だか、忘れてますぜ。」
ドキッと、クシャナの心臓は一瞬、激しく動悸を打った。
“エッ?! 何だ、いったい?”
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