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BF団本部は地図にも記載されていない世界のどこかにある絶海の孤島。

そのため周囲は見渡す限りの海に囲まれているのだが、いわゆる『砂浜』とイメージできる場所は無い。外部からの侵入を拒む形で要塞の如く断崖絶壁が海に切立ち、荒い波を受け止めている。孤島の内部には外界に通じる湾も存在するが、潜水艇もしくは海戦用怪ロボが出撃する基地と化しており・・・・


「つまり『スイカ割り』を楽しめる場所がココには無いのだよ」

アイスレモンティーに差し込まれた青いストライプ入りのストローを取り出し、セルバンテスは先を咥え行儀悪くそれを口先で振り回す。
ここは本部の中庭、イギリス庭園風に整えられた一角。
真っ白い大理石のテーブルを挟んで向かいに対する樊瑞の前にはやたら熱い煎茶。
十常寺から貰った茶葉で煎じたそれからは湯気、熱い日に熱い茶が彼のスタイル。

「スイカ割りなどどこでもできよう、ホレ、なんならこの庭で・・・」

「わかってないなぁ君は・・・青い空!もっと青い海!そして白い砂浜!スイカ割りに必須な環境がここには無いのだよ。だいたいオイル臭い基地の中でのスイカ割りにテンションが上がるかね?楽しいはずないだろ?」

「・・・セルバンテス、よくわからんのだが何故『スイカ割り』なのだ」







「うわぁ!!おっきい~!」

サニーは大きな瞳をさらに大きく広げ、初めて見る超特大サイズのスイカにおおはしゃぎ。サニーの頭5つ分はあるだろうかその大きさもさることながら、これぞスイカと言わんばかりの緑と黒の縞模様が均一な比率で描かれ美しく、温室に入り込む陽光を浴びて艶々と光ってなかなかの風格だ。

「おー・・・・これはさすがに凄いな」

横にいるカワラザキも滅多にお目にかかれない代物に唸り・・・

「そうなんだ、まさかこんなスイカができるとは思わなかった」

自身の温室で作り上げた幽鬼本人も思わず唸る。
これ以外にスイカは何玉か育っているのだが、一体全体どうしたことかこの一玉だけ超特大になってしまった。きっと喜ぶだろうと思い、忙しい任務の合間サニーを呼んでこうして見せているというわけでそのサニーは期待通りにスイカを撫で回して大喜びである。

「もう食べごろだろう。爺様、早速切って食べてみるか?」

「ふむ、これだけ見事だと思い切って海で『スイカ割り』といきたいところよ」

「??おじい様『すいかわり』ってなんですか?」







特異な環境にあるサニーには少しでも一般の子どもと同じような体験をさせてやりたいと、常日頃から願っているセルバンテス。サニーから遠慮がちに「一度『すいかわり』っていうのやってみたい・・・」と聞けばそれを望みどおりに叶えるのは彼の役目だ。

「私のプライベートビーチがタヒチにあるのだけど、今度の休暇そこで皆一緒で『スイカ割り』やろうってサニーちゃんと約束したんだよ。我々2、3人だけよりもどうせなら大勢の方がサニーちゃんも喜ぶだろ?」

「休暇・・・?皆一緒??今月いっぱいは我々十傑は誰一人休みは入って無いはずだが。今日とてあと10分もすればお互いにここを出立せねばなるまい」

「うん・・・まぁついでに言えば先月も来月も無いんだけどねぇ」

ストローをアイスレモンティーに突っ込んで一気に吸い上げる。
ズズっという音とともに琥珀色の飲み物は消えてなくなり、氷だけが残った。

「しかしこれだけ馬馬車の如く働いているのだから、たまには我々総がかりで『わがまま』言ってもいいんじゃないのかな?策士殿が許さなくても・・・ビッグファイア様がゆるしてくれると思うがね・・・それじゃあご馳走様」

セルバンテスは両の口角を上げ、そして腰も上げた。






それから2日後の孔明と十傑集による戦略会議。

孔明が徹夜して練りに練った作戦の概要を説明しようとしたその時・・・十傑集が口をそろえて3日間の休暇宣言をしたのである。中にはしぶしぶ宣言した者もいたが見事に全員口をそろえて「明日から3日間休む」と言い放ち、いったい何が起こったのか理解できないまま呆然とするばかりの孔明の目の前で1人、2人と席を蹴ってしまった。

最後にセルバンテスが「じゃあそういうことで、ビッグファイア様によろしく伝えてくれたまえ策士殿(はぁと)」と孔明の肩を軽やかに叩き

そして誰もいなくなった。

「・・・・・・・・・・・」

しん・・・と静まり返る場に孔明の長い溜め息、そして眉間の皺とこめかみに浮き上がった青筋。10人同時のボイコット宣言にさすがの策士もなす術無い。「あんのナマズ髭め」と浮き上がる般若の形相を冷静に押し込んだがうっかり歯ぎしりが漏れてしまった。


働きづめにいい加減嫌気がさしていた他の連中をセルバンテスが説き伏せ、口裏あわせ・・・というのは言うまでも無く。








「ほうらサニーちゃん下を見てみたまえ、海の色が違うだろ?」

「はい、とっても青くってきれい・・・・」

銀色に輝くオイルダラーの個人所有の高速飛空挺、機内の窓にサニーはべったり張り付いて、眼下のオーシャンブルーに目を輝かせる。その様子に目を細めるセルバンテスと・・・

「セルバンテスあと何時間で到着するのだ」

待ちきれないレッドがサニーの頭上に顔を覗かせ

「おいレッド、こっちへ来てポーカーしないか」

背後ではヒィッツカラルドがトランプを切り、テーブルを挟んでの向かい側に残月とカワラザキ。さらに・・・再奥のリクライニングに深く座って新聞を読むアルベルト、その横にアイマスクを被り昼寝の真っ最中の幽鬼。コーヒーとドリンクが乗ったワゴンを押し歩いているのはイワン。怒鬼の対面には十常寺が将棋の相手をして樊瑞はその対局を眺めている。つまり・・・10人全員がこの飛空挺に搭乗していた。

たまには南の島も悪くない、セルバンテスに誘われるがまま彼らもまた羽を伸ばすべく3日間のバカンスである。

「ポーカー?ふん、ババ抜きならやってやってもよい」

「ば・・ば・・・・なんだそれは?」

「いいねぇババ抜き、サニーちゃんも一緒にやろうか」

「はい!」


あの超特大スイカはシートベルトをしっかり締めて、最後部で鎮座している。


サニーに大切な思い出を作るべく飛空挺は暖かい方へと飛んでいった。










いくつか浮かぶ島々の中でも最も美しい砂浜を有する小島、北側は店が立ち並びストリートと砂浜は観光客で溢れかえっているが、反対の彼らがいる南側は自然が残され砂浜にはまったく人気が無い。

「とりあえずここから見える端っこから端っこまで私のところだから、好きにしてくれたまえ。」

持ち主のセルバンテスが言う端っこは砂浜による地平線と海の水平線、軽く十数キロはあるだろうか。そこがオイルダラーのプライベートビーチであり、サニーは雑誌でしか目にしたことが無い本当の空の青さと海の輝き、そして目に眩しいくらいの砂浜の白さに感激し

「ああサニー!走ると危ないぞ!」

まるで小鹿のように飛び出して、無垢な砂浜に無遠慮な足跡を付け出した。
いつもは大人しいサニーが見せる年相応の子どもらしい振る舞い、それが彼にとって意外に映ったのか樊瑞の目は丸い。

「どうだい、本部じゃあ滅多にお目にかかれないと思うけど、サニーちゃんは本来あれがあるべき姿なんだろう」

「・・・・・・・・」

大人たちの目の前で少女によって美しく荒らされる砂浜。

南の陽光がロイヤルミルクティの髪に金の祝福を与えている。

背に羽が無いだけの天使に樊瑞は眩しげに目を細めた。

しかし、その姿に喜びを感じるはずなのに・・・自分のような犯罪に手を染める人間が侵してはならない、侵せない領域にサニーがいるような気がして彼の胸に例えようも無い寂しさが・・・

「どうしたのかね樊瑞?」

「・・・ん?ああいやなんでも無い。せっかくの休暇だサニーも我々も存分に楽しもう」

思いがけず生まれた気持ちを無理やり奥に押し込んでマントを脱ぎ捨てる樊瑞、その背後でアルベルトがやはり遥か遠くを見るように自分の娘を見つめていた。


「ここは私がもってる会社の子会社が経営しているショップなのだよ」
「ふむ、こうして見るにセンスはなかなか良いな」
「ベーシックから流行りまで、きっちり押さえてある」

「おい・・・お主らはよくこんなところで平気な顔していられるな」


島の北側、観光客相手の店が立ち並ぶ通り、中でもここ女性用を主力とした水着ショップは雑誌や観光MAPにも載る有名な店らしくカップルを中心とした客で賑わっていた。

「樊瑞何を顔を赤くしている、熱でもあるのか?」

面白げに鼻先で笑うヒィツカラルドにムっとするが、正直なところ頭が熱い。水着といってもほとんど女性の下着売り場と変わらない雰囲気、店内はカップルか女性ばかりで中年男性はまずいない。店員ですら美女といって良い女性ばかりで、慣れてない彼は緊張してしまう。
しかも・・・目の前にはきわどいデザインのビキニ、やたら胸がでかいグラマラスなマネキンが身につけている豹柄のそれは小さな布面積で『かろうじて』隠しているくらいギリギリ・・・見るつもりは無いが勝手に視界に入ってしまい樊瑞は居たたまれなくて仕方が無かった。

「熱など無いわ!ただこういう場には慣れておらん・・・だけだっ」

「仙人様には刺激がお強いか、やれやれ・・・」

ヒィッツカラルドは肩をすくめて首を振る。
ちなみに和風を意識した孔雀柄の派手なアロハシャツは前を留めず素肌に一枚、麻が混じった8分丈パンツの足元には最新ブランドでどこで手に入れたのか未発売のビーチサンダルをさらりと履きこなすヒィッツカラルド。盛大に跳ね上げている髪を珍しくプラチナの止め具でまとめた姿はこのまま夜の町に繰り出しても遜色ない。

「無理して付いてこなくても、我々がサニーに見合う水着を選ぶと言っただろう」

二の腕を見せ付けるノースリーブの白パーカーにフードを目深に被った残月は幅広の濃い色のサングラス、白いラインが走るネイビーブルーのジャージに足元は有名スポーツブランドのビーチサンダル。若いが故に着こなせるスタイルと言える。

「新しい水着がやってくるのをサニーちゃんは楽しみにしてホテルで待ってるものねぇ、サニーちゃんが喜ぶ顔を我々に取られたくないのだろ?うふふ」

人が悪い笑みを浮かべて樊瑞を覗き込むのはセルバンテスで、褐色の肌に映える淡い桃色のアロハシャツは値が張るビンテージ物、生成り地のハーフパンツにやたら薄っぺらいビーチサンダル。目には黄色を帯びたサングラスで彼がOFFの時に愛用しているもの。頭にパナマ帽を被ればバカンスを楽しむ紳士の出来上がり。

そう、いつぞやのオペラ以来の3人組である。

対して樊瑞は説明するほどの格好ではない。
ここへ来るまでに量販店で購入した黒のTシャツにハーパンツそしてサンダル、以上。日本円で1万でお釣りが来る、家計に優しい着こなしで髪を一つに束ねたごく普通の40代の男だ。

「ちょ、何故私だけ適当な扱い・・・・いやいやべ・・・別にそんな!私はただお主らがサニーにこんなポロリもあり得る恥知らずな水着をを着せるのでは無いかと心配なだけだ!」

マネキンの腰をひっつかんで3人の目の前に堂々突きつける。
大きな声とポロリといきそうな勢いで。

「恥知らずって・・・こっちが恥かしいなぁもう・・・」
「樊瑞・・・悪いがちょっと離れてくれ、仲間だと思われたくない」
「ポロリって相手はお嬢ちゃんだぞ?我々をなんだと思っている、お前と一緒にするな」

「いや、その・・・・・・・・・・・・」

4人は、店内にいる人間全員の視線を痛いほど身に受けていた。




相変わらずそわそわしている樊瑞を放って3人はあれこれと子供用の水着を物色しはじめる。モノがモノなだけに下手すれば危ない集団に見えなくもないが、この3人は店員ですら頬を染めるモデルばりの出で立ちのお陰でこの店に居ても不思議と違和感を感じさせず彼らはすっかりなじんでいた。

「まぁ・・・娘さんにでしたか。それならこちら先ほど入荷したばかりの水着でございますがいかがですか?」

セルバンテスたっての希望により彼の娘にという扱いで水着を選んでいる。

「おーカワイイねぇ、この元気な色のストライプカラーが気に入ったなぁ。きっと私の娘に似合うに違いないよ」
「ふむ、確かに。ビキニタイプであっても子どもらしさを大切にし、尚且つ活動的な印象を与える色が好ましい」
「南の太陽の下でこそ相応しい水着だろう、肩紐のビーズ玉のアクセントも悪くない」

満場一致になりかけたが、隅っこから異議を唱える者が一名。

「待て待て、ビキニなどサニーには早かろう。だいたい女子がヘソを出すなどもっての他!!・・・ビキニでなくってこういったフツーのやつでよかろうフツーのやつで」

身を乗り出して主張するその手には無地の色気の無い競泳用・・・。

「あのね、プールで50m泳ぎに来ているわけじゃあないのだよ?」
「サニーがガッカリする顔が目に浮かぶ」
「まずありえない」

「ぐ・・・・・・・・・・」

鋭い却下のまえにあえなく撃沈、それ以上反論できず目の前で3人組は2枚目、3枚目の水着を選び始めた。

「あ、それいいねぇ水玉模様のタンキニ。腰のリボンがかわいいなぁ」
「そうなんだ、しかし黒地に白も良いが・・・このピンクも捨てがたい」
「それよりこの真っ白なホルターネックはどうだ、これなら無地の方がイケるだろう」

「まぁ皆様お目が高い、いずれも当店一押しでございますわ」

店員の賛辞が後押ししてそれぞれが気に入った水着を購入しようとした時・・・

「ちょっとすまんが・・・」

「はい?何でございましょうか」

樊瑞がいたって真面目な顔をして女性店員に声をかけた。

「その。あれは置いてないのか?」

「は・・・あれ・・・?」

「うむ。あれだ」












「さあサニーちゃん水着だよ~」

「わぁ!」

女心くすぐる水着が整然と特注クローゼットに飾られている。サニーも樊瑞に内緒で雑誌で勉強しているのでそれが流行をきっちりおさえたセンスの良いものであることは一目瞭然。いずれも早く着て見たいとワクワクする水着だ。

「本当にありがとうございます、こんなにたくさん・・・」

「休みは3日もあるのだ、気の向くまま着替えて好きなのを着なさい」

「さあ早速着てくれないか?そして海へ行こうお嬢ちゃん」

「はいっ」

3人に促され、サニーはまずストライプカラーのビキニを手にとって奥の部屋へと着替えに行こうとしたが・・・

「あの・・・樊瑞のおじ様・・・お顔どうなさったのですか?」

「ああ、樊瑞なら大丈夫。ちょっとそこでつまづいて頭を電柱にぶつけてダンプに軽く跳ねられただけだから。さあサニーちゃんはお着替えしようね~」

「・・・??」

部屋に入ったサニーに笑顔を送りパタン・・・とセルバンテスが扉をしめる。

「まったく・・・サニーちゃんがいなくて本当に良かったよ」
「前から怪しいとは思っていたが・・・」
「真の犯罪者だな」

「ちょっと待て!!なぜスクール水着が犯罪なのだ・・・もっともスタンダードであろうが納得いかん!!」

顔の右側を盛大に腫らせた樊瑞。
十傑集、しかも3人からぶっ飛ばされた痕は少なくともダンプに軽く跳ねられたダメージとは思えない。

「あの時の店員の顔と来たら・・・あああ!恥ずかしいっ」
「貴様の口からその単語が出た時点で犯罪になる」
「まだあの豹柄の方がマシだ」

「???????」




そんな4人の男どもとは関係なく

水着を身に着けたサニーは姿見の前で嬉しそうにポーズをキメていた。





ちょっとセクシーな感じにキメてみたのは少女だけの『ヒ・ミ・ツ』・・・だった。










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うん、まぁいろいろとすみません(特に魔王FANの方)







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