白い木材で作られたテラス。
ベランダ越しに見えるのは、秋色に色づく木々たち。
麓の山は次第に紅く染まろうかというところ。
湖はそれを湛え、きらめいている。
庭の草木は夏の熱気からようやく解放され、
これから迎える実りの季節に己が身をしならせている。
樊瑞はサニーと共に、ある邸に来ていた。
サニーとのバカンスには、十分すぎるほど贅沢な邸。
わずかばかりしかない休暇を使って、少し遅い夏休みを楽しむ・・・という筋書き。
庭の手入れは事前に部下に任せておいた。
数年は使われていなかったであろうこの邸は、
部下達の苦心により、もとの美しさを取り戻すにいたる。
いや、むしろサニーが気に入るよう細心の注意を払ってリフォームした邸は、
重厚な雰囲気を伴って、樊瑞とサニーを迎えてくれた。
もう少なくとも三日は滞在しているが、
サニーは特に庭に植えつけてある白いブランコがお気に入りで、
数人のお目付け役と共に、風にゆられていた。
樊瑞もそれに付き合い、共に風にゆられたり、
美しい風景の見えるテラスでお茶を楽しんだり、
滅多にない休暇を、十分に楽しんでいた。
サニーのはしゃぎ様は、それはもう見ているこちらが心配するほどで、
樊瑞は、――多少は罪滅ぼしが出来たか。と、満足するに至っている。
今日はブランコにも飽きたのか、
サニーは「お絵かきをする」と言ってテラスまで樊瑞をつれて来た。
景色は爽やかな秋空から慕情を誘う夕暮れへ移行する途中。
西の空には、哀愁漂う空色と鮮やかな橙のグラデーション。
昼前にたっぷりと遊んだサニーは、疲れたのか短い午睡を楽しみ、
起きた後お目付け役とともに少々のお勉強をした。
時刻は多少遅くなったが、まだディナーには早い時間帯。
――そういえば、アレはいつ買ってやったものだったか・・・。
もうとうに記憶の隅に追いやられ、遠い存在になったものを、
楽しそうに眺めるサニー。
その近くには、何も描かれていない白い画用紙。
それは、ろくに構ってやれない分少しでも気持ちが伝わればと、
まだサニーが三つ四つの頃プレゼントした、色鉛筆。
ブラウンの木目調の箱に、百の色たち。
幼い子にこんなに色目が必要かね?と白いクフィーヤの男には笑われたが・・・。
「おじさま、サニーはまよっていますの。」
舌足らずの声でそう言う。
もう三年は使っている色鉛筆は、長さがふそろいになっている。
その色の鍵盤をなぞりながら、サニーは溜息をついた。
「おじさまのおすがたは、もうすでにたくさんかいていますし・・・。」
この幼いながらも樊瑞を思い遣るサニーは、
逢えないかわり、とばかりに頻繁に樊瑞の姿を描いた絵をプレゼントしていた。
会えるときにまとめてもらうこともあれば、
樊瑞の机の上に、部下が置いてくれている時もあった。
――今日はわしの姿ではなく、この景色を描くといい。サニーも気に入っただろう?
言った途端、サニーは思案顔を一変し、
穏やかな波をたたせている湖と秋の山々にむかって、
お気に入りの色鉛筆を、―その身丈にあわないほど大きな箱を持ち、
ベランダの柵のほうへパタパタと走っていった。
お目付け役たちがあわてて後につく。
そしてふと止まると、
「おじさま!わたくしみずうみへいってまいりますわ!」
この小さな芸術家は、他の者に絵を描いている姿を見られるのを極端に嫌う。
樊瑞も例外ではなかった。
一回、描いている途中に話しかけたことがあったが、それはひどい剣幕で怒られた。
みちゃだめですのと、耳元で大声で言われたときには、
さすがの樊瑞もショックで、この世の終わりかと思うくらい落ち込んだものだった。
後から部下にサニーがそういう性質だと聞いたが、
今でも思い出してはショックを受ける。
サニーは部下に柵の扉を開けてもらい、湖へ絵描きに向かっていく。
途中、樊瑞の方にふりむいて、手をおおきく振ってきたのだが、
あとはもういい場所をみつけて絵描きに熱中しだした。
ここのテラスからでもサニーは目に届く。
それに、お目付け役たちがあれこれと世話を焼いてくれているよう。
――そろそろ休憩するとしよう。
ディナーまで、あと1時間ほどある。
秋の夕暮れは釣瓶落とし・・・だが。
日に染まって紅く変貌する山や湖は、
さぞや小さい芸術家を感動させることだろう。
樊瑞はマントを外し、傍にあった椅子にかけた。
いつもは鮮やかなピンクが、
心なしか穏やかに見える。
テラスから戻って、樊瑞はゆったりとしたソファーに沈んでいた。
ここはテラスの隣というだけあって、
外の景色を切り取って見ることの出来るくらい、大きな部屋であり、
この場所ならば、サニーが帰ってきてもすぐに出迎えてやれる。
全体的に白い家具調の中、
大柄な紺色のスーツ姿がソファーに座っている姿はどこか可笑しい。
もともと殺伐とした雰囲気の中にいる事が多い樊瑞としては、
こういった安らかな時間、面映くなる。
――もといる時間が荒みすぎているのだ・・・。
そう自分に言い聞かすも、
やはり血が騒ぐ場所の方が落ち着くというのは、
これも一種の宿命というものなのか。
サニーを預かった時も、
自分はこういった場所に慣れない性質であるため戸惑った。
だが、戸惑いながらも精一杯育てて来たこの数年で、大分マシになったというもの。
育児は己をも成長させてくれるというが、まさにその通り。
――サニーはいい子に育ってくれている・・・。
身を粉にして働く身としては、あまり構ってやれないにも関わらず、
思いやりのある子に育ってくれて、感慨も深い。
――混世魔王という二つ名も、返上してもらわねばなりませんなぁ・・・。
思い出す。
白いゆらめき。
人を人とも思わぬ、氷の声。
たまたま机の上においてあった絵を取り上げながら、策士は言った。
サニーと一緒に暮らし始めてから、眩惑氏や爺様に揶揄されたことはあったが、
ここまで嫌味に聞こえた台詞は、後にも先にも策士が発した言葉以外無いに等しい。
策士自ら十傑集がリーダーである樊瑞に、
「頼み事」を聞き入れてくれるよう請いに来たのは、
まだ日差しの強い、残暑の事。
外気温は日中三十度を超え、時には四十度に近づこうか、という日もある。
もちろん基地内は空調が効いている。
しかし、外の茹だる様な暑さは、
細やかな神経を持つ策士にとって不快極まりないらしい。
移動手段は影ではあるが、
外に出、
それも樊瑞に会う為に、
わざわざ地球の裏側の基地へ出向くという事実が、
嫌味の一つも言ってやらねば気がすまない原因らしい。
だが、樊瑞はそこには触れずに、
「策士自らわしの許へ来るとは・・・」
それほどまでに重大な禍が起こったか?
リーダーであるが故、子煩悩だと暗に皮肉った発言は聞き流す。
それよりも、今は事態の明瞭化が先決・・・。
策士は樊瑞の切り替えの早さに、多少訝んだが、今はそれどころではない。
「実は。」
策士らしく、理路整然と、分かりやすく、だが真実は掴ませない様に、話し出した。
――北欧の基地が国警の手によって暴かれ、制圧されたらしい。
だがその情報はすでにこちらに伝わっていたので、別段慌てなかった。
樊瑞は問う。
「問題は――・・・、」
問題は、その基地の性質。
BF団は下は地下奥深く、上は月面と、いたる所に基地を持っている。
今回制圧された基地は、確か。
「あの基地は、確かサニーが教育を受けにいっていたな。」
「左様。」
いま樊瑞がいる基地は、外気温との差が著しい。
幼いサニーが滞在するには、あまりにも弊害があると判断した樊瑞は、
サニーをお目付け役に預け、しばらく他国の屋敷へ住まわせていた。
幼い子が屋敷住まいではつまらないだろうと、
避暑をかねて・・・と誘ってくれたのは眩惑のセルバンテス。
また暫く逢えなくなるな、と思うと多少暗くはなったが、
同じ十傑集が付くとあってはそうそう無碍に断るわけにはいかなかった。
北欧の基地は小規模なもので、しかも守りは堅固。
それも重なって、・・・油断していた。
だが。
「サニーの安否はすでに知れている。今はもう、眩惑のセルバンテスと共に脱出し、今は中東にいるはずだが?」
「ええ、セルバンテス殿の別荘におります。サニー殿の身に危険は及んでおりません。ご安心を。ただ・・・――問題は。」
あの基地の、教育機関。
BF団の支部には、次世代を担う子供をBF団寄りの思想を持って育成する機関が併設されている。
まだ実験段階ではあるが、着実に実績を積んでいた。
いたる支部で、似たような機関はあったのだが、本年度をもって正式にBF団教育機関として統一。
教育にムラは致し方ないことかもしれないが、
それでもビッグファイア様への忠誠を誓わせるには、
ムラが無いほうが良いに決まっている。
――サニー殿の教育は、樊瑞殿手ずからしておられるのか?
そう尋ねられたのは数年前。
珍しく策士の方から話しかけてきたと思えば、
いつもは気にも留めていないはずのサニーの事。
今まで策士の会話に幼子の事など一切なかったし、
樊瑞もあえて触れなかった。
だが、策士がこう尋ねてきたからには、
――何かあるに違いない。
幼子をこの策士の毒牙にかけるわけには行かないと、
ますますもって親として自覚を持ち始めた樊瑞は身構えた。
しかし、
今までとは内容が違っていた。
・・・策士は、サニーに幼児教育を施すよう、樊瑞に忠告した本人である。
それもあって、セルバンテスに―教育研究が進んだ北欧はどうかい?と聞かれた時、
不承不承肯いたのだった。
それに、「世界征服を策謀するBF団」・・・なのだ。
資金は潤沢にあるとはいえ、人材は沸いて溢れる泉のようはいかない。
BF団同士の婚姻で生まれた子供、また、世界中にいる孤児――・・・。
BF団で教育を受けている者たちが、
あの基地には沢山ではないが、
それでもいた。
――いくら制圧されたからといって、国警はみすみす生け捕った人質を殺したりはしないはず・・・。
何らかの利になると見て、必ずや誘き出す餌にされること間違いなし。
「――・・・では、その者たちの救出にあたれ、と?」
「まさか。」
そんなことをして何の得になるのか。
馬鹿馬鹿しい。
策士は薄ら笑う。
「基地にいた子供たちはすべて国警に”保護”されてると、報告がありました。
――もしかすると国警の特殊能力者が、教育的洗脳の浅い子供の思考を探り、BF団の教育方法を知るやもしれません。
特に北欧基地は教育に力をいれてましたのでな、知られては困る情報も、僅かながらにあるのです。」
――そこで、国警に”保護”されている子供達を、すべて処理していただきたい。
淡々と、策士は言葉を紡ぐ。
――それに。
「国警の能力者は、子供に再洗脳を施し、利用してくるやも知れません。
優秀な人材を失うのは惜しいですが・・・。
――新たな敵が生まれてしまっては困りますので。」
「頼み事」をしているのは孔明であるというのに、不遜な態度。
それがまるで当然といったような体。
ここで樊瑞が一笑にふしてしまえば、
孔明の計画にほんの少しでも砂礫をいれることが出来ようが、
――すべてビッグファイア様の御意志にございますれば。
暗に、訴えてくる。
作戦が失敗するということは、我らが当主にも負荷がかかるという事。
一個人の私怨などで、
この当主代理である策士の頼みごとなど、
断れるはずが無い。
樊瑞は言う。
「このわしを頼る、という事は、それほどに急を要することなのだな。」
「――いかにも。」
「して、報酬は。」
「・・・サニー殿とバカンスを楽しむ程度の休暇ならばご用意できます。」
十傑集の休暇など、無い訳ではないが、
報酬として貰わなければ、
過労死という言葉をしらない策士が、
勝手に作戦をたててしまう。
「・・・ほう、そなたにしてはやけに気が利くな。」
珍しく意地の悪い笑みを返す樊瑞が癪に障ったのか、
孔明は羽扇でそれ以上の会話を拒み、
「委細お任せしましたぞ、樊瑞殿。」
あとは影に飲み込まれて、
樊瑞一人が残されるのみ。
「樊瑞様、そろそろディナーのお時間でございます。」
この邸の執事がそう伝えに来て、はっと眼が覚めた。
どうやら睡んでいたらしい。
サニーが隣に座って、
「おじさま、おつかれでございますの?」
心配そうに擦り寄ってくる。
いつの間にやら薄いグラデーションだった空が濃い橙色に覆われ、
今沈まんとする夕日の光が部屋を明るくしている。
白に反射して一層眩しい橙の光が、サニーの髪を明るくしていた。
「・・・大丈夫だ、サニー。さ、ディナーにしようか。」
「はいっ」
サニーの頭の上に手をのせ、髪をすく。
ソファーから立ち、ゆっくりと背伸びをする。
どうやら疲れが出たようだ。
「サニーはきょう、いっぱいえをかきましたの!おじさまにもあとでおみせしますわ!」
「・・・そうか、それは楽しみだ。」
はやくはやく、と食事の間へせかされた。
もうバカンスはそれほど長くないと感づいたのか、
サニーはいっそう甘えて、
食事のあとも樊瑞を独り占めしていた。
樊瑞はめったに甘えてこないこの少女に、肉親の情愛というものを感じていた。
初めはあんなに戸惑ったのに、今ではこの少女が全てになりつつある。
――まったく皮肉なことだ。
樊瑞は思う。
たかだか子供四、五十人。
国警が制圧しているとはいえ、十傑集がリーダーを煩わせるほどの任務ではない。
これは当て付けだ。
せいぜい情に流されるなと、言いたかったのだろう。
ものの数秒で終わった。
――もし、サニーが人質となっていたら・・・。
セルバンテスがあの基地に避暑へ誘ったのは偶然だろうが、
もとはあの策士が幼児教育をせよと言ってきたのだから。
――油断するな、と釘を刺したかったのか。
それとも。
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――一体なにをやっているのか・・・。
レッドカーペットのしかれている回廊で、
孔明は呆れていた。
季節は十月。
滅多に基地の外へ出ない孔明ですら、
街が賑わっているのがわかる。
もとより、主に外部で働く十傑集が、その余韻を持ち帰っては、
色々と議論しているのを聞いて、
孔明はここに来る前から、うすうす勘付いてはいた。
しかし、自分にはまったくもって関係のないことで、
そして仕事もそこそこに、世間の催し事などに浮き足立つ十傑に、
半ば諦観した。
――どうしてこうも盛り上がっているのか。
孔明はふと思う。
昨年は、この時期に何もなかったはず。
いつものように黙々と頭脳を酷使した記憶しかない。
そもそも、孔明の頭脳が何かを「忘れる」といったような機能を持ち合わせていない。
何もかも全てが、この1.5㎏の脂質の中。
そんな頭脳が、昨年は何もなかったと告げている。
――記憶違いなど。
あるわけがない。
孔明は記憶を積み上げる。
そしてすぐに結論が出た。
瀟洒な屋敷にぴたりと合う、猫足のゆったりとしたソファの上に、
今日の主催者・・・樊瑞と、
――サニー・ザ・マジシャン・・・。
サニーはまだ幼いはず・・・。
だが、どうやら今日はサニーが主賓のようで、
小さな黒い衣装に身を包み、先のとがった帽子と、身の丈に合うように作られたのであろう古風な箒を握っている。
孔明はサニーにまだ一度も会ったことがなかったが、
話には聞いていた。
「Trick or treat !」
可愛らしい舌足らずな声で、周りの客に駆け寄るサニー。
今夜はどうやら無礼講で、十傑集の補佐役や、優秀な部下達がこの屋敷に招待されているようだった。
そして全員が、仮装していた。
さすがに十傑の部下であるため、同じ十傑の一人、衝撃のアルベルトたる娘には恐縮していたが・・・。
孔明はちらと視線を動かす。
客が多く、ざわめきが周りを支配していた為、力が抜けて、
思わず溜息をついた。
勿論、羽扇で顔を隠すことを忘れない。
――何故こんなことに・・・。
作戦が一段落つき、少しばかり仮眠をとろうと、ちかくの寝所に赴こうとドアを開いたところ、
・・・・この屋敷につながっていたのだ。
さすがの孔明の頭脳でも、現実が認識出来ずに、ドアを一回閉め直し、そしてまた開いてみたのだが、・・・無意味だった。
何度開けても、孔明を案内するよう言付かったのであろう執事が、「お待ちしておりました。」と機械のように繰り返す。
孔明はそれでも諦めきれずに、ほかに3つ別の部屋へつながるドアがあって、そのどれもを開けてはみたものの、あけたドア全てが屋敷に繋がっていた。
こうなっては窓から逃げるしか・・・と決意しかけたが、
生憎基地は高層ビルで、孔明は断念せざるを得なかった。
策士・孔明に、こんな悪質で性質の悪いことをするのは十傑の中でも限られている。
恐らくは、白いクフィーヤを身に纏う、冗句の類が好きな男だろう。
孔明は再度溜息をつく。
今日の主役には今のところ見付かっておらず、なるべく遠くにと、孔明は高い天井まで届き
そうな窓の下に避難した。
外を見ると、日はとうに沈んで、星達がうっすらと自己主張をはじめている。
屋敷の庭の電灯が、周りの木々を闇から救っている。
辺りをうかがうと、十傑はどうやらサニーを引き止めて、何やかんやとお菓子をプレゼントしている。
中には、仲間内に性質の悪い悪戯を仕掛けている者もいた。
サニーは手持ちの籠がいっぱいになったようで、嬉しそうに微笑んで十傑一人ひとりに挨拶した。
――くだらない。
眉根が自然と寄る。
不機嫌な顔は羽扇で隠れて見えないだろうが、
そもそも何故策士である自分がこのような和気藹々とした場にいなければならないのか。
――不自然にもほどがある。
周りの客は孔明の姿かたちを知らない者が多いようだ。
あまりにも出不精、そして陰険な噂が広まって、孔明の容姿など上級エージェントであっても関わりがなければ知らない者が多い。
それが幸いしてか、この屋敷についてから執事に案内されるまで、一切話しかけられもしなかった。
――十傑に、知られる前に、
羽扇を握る手に自然と力が込められ、窓から離れる。
――早々にこの場を離れたい・・・。
だが、
足を進めようとした瞬間、
「・・・!」
赤い瞳とかち合った。
――この男も、この場に居たのか。
意外に思う。
スーツはいつもの仕立てを着用しているが、上に黒いマントを羽織っている。
――しかも仮装までしているとは・・・。
そんな男だったか?
顔の半分は羽扇で隠しているため、疑問は相手に伝わらないと思うが、
赤い瞳の持ち主・・・サニーの実の親である衝撃のアルベルトは、
至極嫌そうな顔をして、孔明を睨み付けた。
孔明と同じようにこうした雰囲気が苦手と見えて、人の少ない窓辺の椅子に腰掛けていたようだ。
孔明は早々に立ち去りたい身、
アルベルトの視線をさらりと受け流して、
椅子の傍を通り過ぎようと踏み出した時、引き止められた。
「おお、策士殿!トリックオアトリート!」
白いクフィーヤは相変わらずだが、中身は包帯で巻かれている眩惑のセルバンテスが意気揚々に孔明の肩に手をかけてきた。
「離していただきたい。私は帰りますので。」
羽扇でぴしゃりと手をはたくが、セルバンテスはものともしない。
「アルベルト、出不精な策士もわざわざ来てくれたんだ。もっとこのお祭りに参加してはどうだい?」
セルバンテスは包帯で巻いた手をひらひらさせて、不機嫌なアルベルトを一層不機嫌にした。
「・・・わしは、貴様と樊瑞に謀られてここに連れて来られたんだぞ!」
怒号があたりに響くが、周りの喧騒が勝って、サニーたちの居る広場には伝わってないようだった。
セルバンテスはアルベルトの怒号などには慣れているが、この場の雰囲気を壊されては、と思ったのか、多少穏やかな笑みを残して、
「まぁまぁ、君が天邪鬼だって事はとうにわかりきってるからね。」
――策士殿もこの男を使うには気を揉むだろう?
爽やかに笑いながら、肩にかかっていた腕を離した。
「ところで策士殿。」
白いクフィーヤが隙間から入ってきた風にたなびいて、一層優雅にみせる。
セルバンテスは孔明にむかって、何とも意地の悪い笑みを向けた。
孔明は悪い予感がして、「失礼。」とこの場を退去しようと試みたが、その前に切り出された。
「この不遜で天邪鬼な衝撃のアルベルトでさえ仮装しているのだよ?・・・この場に居るには、君の服装は残念ながら不適切だと思うのだが・・・。」
――もちろん、君だって謀られてこの場に来たことは重々承知しているよ。
ニヤニヤと、笑みが止まらないのか、セルバンテスは隠すことを諦め、孔明を舐めまわすように見た。
「でね、この衣装は実をいうとサニーちゃん直々に選んでくれたんだよ。十傑集だけなんだけどね。あんな幼い子がだよ。涙が出そうだと思わないかい?」
自分の衣装を指して、そういう。
セルバンテスはアルベルトの方ににやりと視線を向けたが、アルベルトは気恥ずかしいのか、ふん、と相手にしない。
なるべく早く、この場を立ち去りたい孔明としては、相手が悪すぎた。
というより、運がなかった。
セルバンテスの後ろでは、不機嫌を抑えるためか、アルベルトが煙草をのんでいる。
この舌を使って、逃げおおせるなど孔明には可能なはずだが、
――動けない。
もしや、眩惑術を使われたのではあるまいか、と危惧するほど、セルバンテスの瞳は強かった。
否、強いというより、好奇心が混ざったような、少年のような若々しい光を帯びている。
孔明は、謀られた自分の甘さを恥じ、今日ばかりは・・・と諦めようとしたが、
「で、君は十傑ではないけれど、サニーちゃんが特別に選んでくれたんだ。はい、これ。」
手渡されたのは、
鈴のついた細身の首輪と、白い猫耳だった。
おまけに、ふかふかの尻尾までついていた。
・・・孔明は、さすがに孔明は、
「ふざけないで下さい!」
羽扇でそれをすべて叩き落とした。
わずかばかりに目が怒りで潤んでいる。
セルバンテスは手馴れたものか、
余裕で笑っている。というより、・・・爆笑している。
アルベルトといえば、普段扱き使われている己の身を思い出してか、「ざまぁみろ」とでも
言わんばかりに赤い瞳が訴えてくる。
「策士殿は手厳しいなぁ!せっかくサニーちゃんが選んでくれたのにねぇ。」
――ねぇアルベルト?
孔明はその場で初めて、盟友といわれる所以を見た気がした。
――いつか謀殺してやる。
孔明は興奮したのを無理矢理落ち着かせようと、必死になっていた。
「レッドが黒で、策士殿が白らしいよ。・・・樊瑞に何を吹き込まれたのか、サニーちゃんは感受性が強いねぇ。」
あはは、とクフィーヤを優雅に捌きながら、アルベルトの隣に座る。
アルベルトは多少の鬱憤が晴れたのか、すこし機嫌が直ったようだった。
周りの喧騒はそろそろと収まってきて、
幼いサニーを気遣ってか、今日の催しは9時までと執事が言っていた。
残りの時間は30分もない。
アルベルトの煙草の煙が、孔明の鼻を突く。
「策士殿、時間もあと少ししかない。・・・つけてはどうだい?」
もったいないし。
と、床下を指差す。そこには叩き落とした首輪と猫耳と尻尾が。
「結構です。」
また怒りで感情が飲み込まれそうになるが、ぐっと堪える。
・・・すると、後ろからちょいちょいと、スーツが引っ張られた気がした。
――何だ?
振り向くと、黒き小さな魔女・・・サニー・ザ・マジシャンがそこに立っていた。
「は、はじめまして、策士さま。わたくしはサニーと申します。」
ぺこり、と可愛らしくお辞儀する。
幼いながら、礼儀作法はしっかりとみについているようだった。
「あの、策士さま、その、お気に召しませんでしたか・・・?」
そっと俯いて、自分が見繕った仮想用の品を、拾い上げる。
「ひどいよねぇ、サニーちゃんがせっかく選んでくれたっていうのに!・・・お父様だって着てくれたのにねぇ。」
ふん、とサニーから目を離すアルベルト。
煙草がそろそろなくなってきているが、気づいていない。
――サニーはお父様が来て下さったでも、とっても嬉しい一日だったのに、さらに策士さままでお越し下さって、本当に嬉しかったのです。
少し小さな声で、かすかに聞こえる程度の声で、そういう。
――策士さままで、仮装していただくなんて、その、サニーはわがままでしょうか・・・。
一生懸命選んだのです!と訴えてくる。
セルバンテスはこの状況をものすごく楽しんでいる。
そうだよねぇ。やら、サニーちゃんはわがままなんかじゃないよ。やらいらぬ合いの手をいれてくる。
アルベルトはアルベルトで、策士がしてやられているのが自分の娘だということに少しばかり面白みを感じているよう。
孔明は進退窮まる。
――四面楚歌とは、このことか・・・。
遠い目を、したくなった。
そのあと、ハロウィーンパーティーは無事に9時お開きとなり、
満面の笑みのサニーと、疲れきった策士を同時に見れる機会となった。
策士の謀殺リストに、
新たにサニー・ザ・マジシャンが加わったのは言うまでもない。
□01□ 秘密の味<樊瑞とサニー>
□01□ 秘密の味
「好きな・・・食べ物。」
ふむ、とうなずく。
目の前には幼い養い子。
しろいテラスの真ん中で、尋ねられた言葉を反芻する。
樊瑞は困った。
正直、食べ物など胃に入れば皆同じもの、と思っているし、
どちらかというと、自分は美食家ではない。
養い子と一緒に暮らし始めてからは、
それこそ神経質なまでに、カロリー摂取量から食品添加物の有無、着色料、保存料などの危険性を考慮し、さまざまなシェフを雇い入れ、すべてサニーのためになるように、気を使ってはきたものの。
・・・さて、どうしたものか。
自分の事となると、一向鈍くなるのが、樊瑞の生まれながらの性質。
まぁ、あえて言うなら辛口の酒とそれにあう肴は好きだが、
子供にそんなこと言えるはずもなく。
「好きな食べ物は?」
と、幼い子に聞かれて、
すぐさま答えられない自分が恥ずかしくなった。
作戦実行時など、
食べ物に気を使っている余裕などない時の方が多いし、
さらに、
幼い子に言っても分からないような、
特殊な食べ物であるとか、
珍味などは好きなのだが・・・。
樊瑞はどう答えるか迷った。
まだ小さいサニーには、包丁を握らせたことはない。
周りには優秀なシェフやパティシエがいるし、
何より父親の部下であるイワンが、
これもまたとても優秀なコックなのである。
サニーはイワンがとてもお気に入りで、
特にイワンの作ったザッハトルテが大好物のようで、
・・・チョコにチョコを重ねたような、あんな糖質や脂質の多いケーキは健康上良くない。
と、何度もイワンに言っては見たものの、
サニーが落ち込んだときや、何かご褒美をやっていいときに、
秘密で作ってやっているようだ。
少女はまた秘密が好きだから、
そのチョコの濃厚な味と、
秘密というスパイスが絡まって、
より一層サニーのザッハトルテ好きが強まっている。
そんなことをつらつらと思いながら、
それでもまだ、
自分の「好きな食べ物」が、
思い浮かばない。
「わしは・・・うぅん、そうだな・・・」
視線が泳ぐ。
幼い子は、
言い渋っている樊瑞を見て、
少しばかり怪訝な顔。
さっきまで目をきらきらと輝かせて、
とても楽しそうにしていた顔から一変、
樊瑞が困った顔をしているのが悲しいのか、
サニーはほんの少し俯いている。
「あの、おじさま・・・?」
聞き取れるか取れぬかの小さな声でそう尋ねられると、
さすがに樊瑞は居た堪れなくなってきた。
「うむ、わしはサニーと一緒に食べるものなら何でも好きだが・・・」
その場しのぎに言う。
我ながら上手く言ったものよ、
とその時は思った。
だが。
サニーは暫く思案して、
そして先ほどまでの気鬱な顔もどこへやら、
ぱああっ、と顔を明るくすると、
「じゃあ、ザッハトルテにします!」
笑顔でそう言った。
――何が?
と聞き返そうかと思ったが、
時すでに遅し。
目の前には空席が。
なんにせよ、
好きなものを聞いてきたということは、
それを作ってくれるに違いない。
そして「サニーと一緒にたべるものならなんでもいい」とまで言った。
そこまで言っておきながら、
樊瑞は、
後悔した。
ザッハトルテ。
ウィーンの菓子職人フランツ・ザッハが作り出した、
世界で最も有名なチョコレートケーキ。
簡単に言うと、甘い。
そしてデコレーションに、生クリームが付く。
どちらかと言うと、苦手な部類。
美食家ではない樊瑞は、
食べ物に好き嫌いがあるわけではないし、
甘いものが食べれないわけではないのだが、
さすがに、
――限度が、ある。
・・・サニーが作ってくれるのだろうな、あれは。
きっとイワンにでも聞いて。
いつも何事にも真剣に取り組むサニーの事だ。
一生懸命作ってくれるだろう。
・・・全部食べなければ、悲しむだろうな・・・。
甘い甘い、
秘密の味を。
樊瑞はめずらしく、
額を手で覆い、
天を仰いだ。
陽光が注ぐ、
爽やかな冬空だった。
『我らのビッグファイアのために!』
「…ん?」
いつもの忠誠のポーズをとりながら、樊瑞は違和感を感じ首をかしげた。
「どうした」
アルベルトが訝しげに樊瑞を見る。
「いや、今…」
なにか聞こえなかったか、と続けようとした樊瑞の言葉をさえぎるように、
舌足らずなかわいらしい声が男たちの耳に響いた。
「われらのびっぐふぁいあのためにー」
ちょこんとソファに座ったサニーが、小さな手をまっすぐに上げて、
ビッグファイアへの忠誠のポーズをとっていた。
「サ、サニー!?」
そこにいた男たち、サニーの父である衝撃のアルベルト、後見人の混世魔王樊瑞、
アルベルトの盟友である眩惑のセルバンテスは固まった。
「おい樊瑞、もうこんなことまで教えてるのか」
アルベルトが複雑な顔をして娘を見る。
サニーは父には似ても似つかぬかわいらしい顔で微笑んだ。
「いや、儂もまだそこまでは…」
確かに、サニーはいずれ能力を磨いてBF団の一員となる運命である。
しかし、こんな分別もつかない年から強制的に教え込もうとは思っていない。
父の、そして我々の背中を見てサニーが自分からBFへの忠誠を誓うようになればいい。
樊瑞はそんな風に思っていた。そしてそうなるのが自然だと。
だが、まだ意味も分からぬとはいえ我らの首領に忠誠を誓うのは喜ばしいことだ。
樊瑞がサニーを誇らしい気持ちで見つめていると、横から白い塊がサニーに飛びついた。
「サニーちゃん!!君はなーんて素晴らしいんだー!!きっとビッグファイア様もお喜びだよ!」
セルバンテスが大げさな身振りでサニーの前に跪く。
サニーは大好きなおじ様から褒められたことに気をよくして、ソファの上をはねながら
「ビッグファイアのために」を繰り返している。
アルベルトは呆れたように言った。
「我等が言っているのを真似しているだけだろう、あまり本気にするな」
「そうかも知れないけど、この年ですごいじゃないか!君ね、親なんだから自分の娘の成長を喜びたまえよ」
セルバンテスはそういってアルベルトをたしなめる。
樊瑞もそれには同意見だった。
「そうだぞアルベルト。貴様、サニーがひとりでボタンを留められるようになったのも
フォークを使えるようになったのも知らんだろう。サニーは日々成長している。
いくら儂に預けたとはいえもう少し気にかけてやったらどうだ」
樊瑞は普段どおり威厳を持って意見したつもりだったが、内容が内容なだけに逆に滑稽だった。
アルベルトがうんざりした顔になり、セルバンテスは必死で笑いをこらえている。
樊瑞は気づかないのか、「真面目に聞け!」と一喝した。
「あ、そうだ魔王よ、カメラはないのかね?」
笑いの発作がおさまったセルバンテスが樊瑞に尋ねる。
「カメラ?そんなものどうするのだ」
「だって、サニーちゃんがはじめて我らのビッグファイアに忠誠を誓ったんだよ。そんな貴重な瞬間を残しておかない手はないじゃないか」
それを聞いた樊瑞はまるで雷に打たれたような顔になった。
「むう…そういわれればその通り…くそう…3日前サニーが初めてひとりで顔を洗えたところも撮っておくべきであった…!!なんという不覚!!」
本気で悔しがる樊瑞。その姿はすでに後見人ではなく、完全にサニーのパパである。
一方サニーの実のパパであるアルベルトはわれ関せず、と葉巻をくゆらせている。
そんな二人を尻目に、セルバンテスはカメラを持ってくるように指示を出していた。
「さあ、皆さんお撮りしますよ」
オロシャのイワンがカメラを構えると小さな小さなサニーを囲んで3人の屈強な男たちがカメラを睨み付ける。
「…あの…皆さん、もう少し表情を和らげていただけると…」
これでは記念写真というにはあまりにも恐ろしいものが撮れてしまう…とイワンがおそるおそる進言する。
「うるさい、貴様我々に意見する気か。さっさとシャッターを押せ!」
「ちょっと待て!やはりサニーを抱き上げた方がいいのではないのか」
「うーん、でも子供を抱いて忠誠誓ってもねー」
「そ、そうか。よしサニー頑張るのだぞ!この樊瑞がついておる!」
「いいから早くしろ!何で儂がこんなことに付き合っておるのだ」
「サニーちゃんのはじめての記念写真だからねー、うまく撮らないと君、わかってるよね」
脅しともとれるようなセルバンテスの言葉に背筋を凍らせながらイワンは何とかピントをあわせた。
「で、では皆さん、一斉にお願い致します!」
『我らのビッグファイアのために!』
その写真は今でもサニーの宝物のひとつである。
アーンでわたわたしている魔王ですがこれがほっぺにチューだとどうだろう。
眩惑はサニーちゃんのほっぺやおでこにチューくらいする男だと思う。当然挨拶代わりであるし親愛の念を込めてだ。サニーもそうかーこういう挨拶の仕方もあるんだーってある日突然魔王のほっぺに不意打ちチューするんだよ。「ささささささにーぃいいい???」椅子から転げ落ちるという期待に沿ったリアクションをしてくれた魔王は顔を真っ赤にさせて口をあんぐり。「な、なにを?」「セルバンテスのおじ様が親しい人にする挨拶だよって」いや挨拶ってサニー魔王のおじさんちょっとビックリドキドキだよ。ほっぺに残る柔らかい感触が四十路独身オヤジには刺激が強すぎるよ今夜寝れないよ「さ、サニーいいかこの挨拶は・・・その・・・私には良いが決して他の連中には・・・」ってもうサニーいねぇし(笑)魔王が血相を変えて探しているその頃サニーちゃんは幽鬼のおにーさんにチューだよ「お嬢ちゃんこりゃまたどこでこんなことを知ったんだ?」聞けば眩惑が発端らしく納得する幽鬼「魔王の胃に穴が開くな」と去り行くサニーの背を見ながらため息。チューの洗礼はカワラザキに十常寺に・・・そしてレッドに。レッドは「何してんだお前は」と言いつつ微妙に照れてるんだよ。ヒィッツのおにーさんは「これは光栄だな」と言ってお返しに手の甲にチュー。怒鬼のおにーさんはいきなりのチューにびっくりだけど真顔だ、魔王が見れば「将来自分の嫁にしようと確信した顔だ」と思うかもしれないが(笑)。どんどんサニーのチューが広まっている状態に半泣きの魔王。そしてサニーは残月のおにーさんにチュー。残月ちょっとびっくり。「セルバンテスのおじ様に教わった挨拶です」「ふむ、なるほどでは・・・」ってお返しにサニーにおでこチュー。運悪く居合わせた魔王が真っ白。うわああああ私の可愛いサニーが覆面男の餌食にいいいいいい!!!9割妄想捏造の魔王ビジョンでは愛しい娘を強引に抱き寄せてチューする変態覆面男になってんだと思う。首根っこをガクガクさせられるし先日のアーンの一件から目の敵にされて迷惑な残月「だから子ども相手にどうするというのだこの私が!貴様と一緒にするな!」って子ども相手にどうこうし兼ねない魔王を蹴りだすよ(笑)痛恨の一撃をくらった魔王が気づけばサニーの姿が無い。大慌てで探せばついにお父さんのほっぺにチュー。ちなみにアルベルトはきっと無表情で娘の好きにさせると思う。「あああ私だけのチューのはずが・・・」膝をつく魔王、そしてアルベルトはため息をついて無邪気な娘に一言「いいかサニーこの挨拶は他の連中にしてもよいが・・・樊瑞にだけはしてはいかん」なんだかんだ言って一番娘想いの衝撃の人でした。
うん、ごめん。魔王がどんどんおかしい人になっていってるね。わかってる、わかってるけどこっちの方が面白くって(笑)
それでは18歳サニーとついにゴールイン(結婚)する魔王の話だとどうだろう。パパと眩惑、素晴らしい人が死亡したというのを無視して三人が健在ということで話を妄想。
思えばあまりにもたくさんの出来事があった、そしてそれのほとんどが自分にとって幸せに感じることばかり。その幸せをくれたこの少女と今日この日誓いを立てて生涯の伴侶とする。樊瑞はまるで夢のようなこの現実に心は浮かれ、身の置き所がなく控え室でずっとそわそわしてんの。「おじ様・・・いいえ樊瑞様どうですか?」ようやく現れた真っ白な花嫁姿のサニーに言葉が出るはずもなく、育て上げた父としてそして愛する一人の男としての眼差しで見つめるんだよ「サニー本当に私でよいのか?」「はい」魔王超幸せ。今から掻っ攫って愛の巣にお持ち帰りしたいくらいだ。でも花嫁の背後に控える義父さんが「サニーを泣かせるようなことがあれば・・・わかっているだろうな」とてつもなく目がマジだ。泣かせるつもりは毛頭ないが泣かせなくとも2、3回は殺されそうな気がする。「は・・・はいわかっています・・・」「そうだよ?私もいるからね、サニーちゃんを泣かせちゃ・・・駄目だよ?」眩惑笑ってるけどやっぱり目が怖い。「はは・・・」魔王ちょっと先行き不安。そこへ他の連中もやってくるよ。「サニーや良かったなぁ、樊瑞に大切にされるのだぞ」「はいお爺様」カワラザキの後ろには怒鬼に引き連れられた血風連は全員号泣、女神様が魔王のものになるなんて!いまだ納得できないサニー親衛隊。「お嬢ちゃんおめでとう、魔王と喧嘩したら私の所に逃げ込めばいい」「うふふありがとうございます幽鬼様」さすが幽鬼、きっと何回かお世話になると思うよ(笑)。ヒィッツカラルドは「魔王のものになるのはもったいない、お嬢ちゃん今からでも遅くは無い私を選ばないかね?」とかいって笑いながら抱き寄せるねこの男「くぉら!貴様っ人の花嫁に気安く触るなっ」危ない男から慌ててひっぺがす魔王。さあ、もう少しで式が始まる、そして2人は晴れて夫婦になるんだ・・・そして幸せな家庭を築き、子どもをたくさん作って・・・絵に描いた妄想にうっとりしていたら「サニー!迎えに来たぞっ」ご登場したのは真っ白いタキシード着た白昼の人。覆面?今日は濃い色のメガネだけで思いっきり素顔だよ髪だってばっちりキメてオールバックだよ「残月様!」って抱き寄せられていた魔王の胸から離れて残月に飛び込むサニー「え?サニー??」「遅れてすまなかった、さあ私とともに行こう」「はい」思いっきり見つめあう2人ヤベェ!様になってる(笑)「ちょ・・・え??」目が点の魔王を他所に「いやぁ良かった良かった」「残月なら納得だ」「娘をたのむ」「サニー殿おめでとうございます」祝福ムードの皆さん「え??サニー!待て待て!今から私と」「ごめんなさいおじ様、私残月様と一緒になります」「そういうことだ、安心しろ樊瑞。サニーは私が責任持って幸せにしてやる」といってお姫様抱っこしてサニーを掻っ攫う白昼の人。独り残された魔王の救いといえばこれが夢オチだっていうことだけでした。
あちゃー。
さて、いじられ役がすっかり板についた魔王ですがもうちょっと話を。
「うわああサニー!!」ってガバァと起き上がればベッドの上。良かったあれは夢だったんだ、可愛いサニーがあの覆面男のものになるなんて悪夢以外の何者でもない(勝手に悪夢にだされて残月いい迷惑)、魔王は嫌な汗をかきながらちょっと安堵。サニーは私の・・・いやよそう、そういう想いはサニーのためにならない、あくまでもサニーが自分の意志でもって幸せを掴めばそれで良いではないか。私は父代わりとしてその姿を見届けられれば・・・それが私の幸せなのだ・・・。変態からまともな方向に修正して魔王は朝食をとるべく食卓の場へ「あ、おはようございます!おじ様」「サニー・・・」サニーちゃん白いエプロンつけて朝食の準備、その姿は朝日をあびて眩しいよ「今日は私が作ったんですよ、どうぞ召し上がれ、うふふ」テーブルの上には湯気が昇る野菜スープにベーコンエッグ、手作りクロワッサンにシーザーサラダ「これを全部サニーが作ったのか?」「はい」そうか・・・確実にサニーは成長しているのだな、そしていずれは一緒になった男のためにこうして朝食を作ってやるのか・・・「・・・・・」「おじ様?どうなさいました?」嬉しいけど少し寂しい気持ちになって湯気を見つめちゃう魔王、18歳の花嫁姿の夢を思い浮かべて隣に立つのはきっと自分以外の男だろうと心の隅で確信してみたり「ふふふ・・・サニーもいつか花嫁となり私のもとから離れるのだなと思ってな、寂しいものだ」「そんなおじ様、まだずっと先のことですよ。それに・・・私がお嫁さんになれるかどうかも・・・」「何を言う、きっとなれる。私は・・・なって欲しいと思っている・・・」サニーをまっすぐに見つめて素直な気持ちを告白する後見人。サニーを幸せにできる男なら誰でもいいのだ、初めて腕に抱いた時のあの笑顔を失わせることのない男であるならば・・・「あの・・・スープが冷めてしまいますわ」「うむ、そうだな、それでは頂くとしよう」穏やかな空気が流れる二人きりの朝食。魔王はあと何回この朝食をとることができるのだろうかと考えてみたけどそんな考えもすぐに奥に追いやってごちそうさま「うむ、美味しかった、ふふふまたサニーの朝食をごちそうになりたいものだ」笑って退室する魔王「私は・・・おじさまのためなら朝食をこれからもずっと・・・」でもサニーがやっとつぶやいた言葉は聞こえないのでした。
救いの手を差し伸べてみた話。
眩惑はサニーちゃんのほっぺやおでこにチューくらいする男だと思う。当然挨拶代わりであるし親愛の念を込めてだ。サニーもそうかーこういう挨拶の仕方もあるんだーってある日突然魔王のほっぺに不意打ちチューするんだよ。「ささささささにーぃいいい???」椅子から転げ落ちるという期待に沿ったリアクションをしてくれた魔王は顔を真っ赤にさせて口をあんぐり。「な、なにを?」「セルバンテスのおじ様が親しい人にする挨拶だよって」いや挨拶ってサニー魔王のおじさんちょっとビックリドキドキだよ。ほっぺに残る柔らかい感触が四十路独身オヤジには刺激が強すぎるよ今夜寝れないよ「さ、サニーいいかこの挨拶は・・・その・・・私には良いが決して他の連中には・・・」ってもうサニーいねぇし(笑)魔王が血相を変えて探しているその頃サニーちゃんは幽鬼のおにーさんにチューだよ「お嬢ちゃんこりゃまたどこでこんなことを知ったんだ?」聞けば眩惑が発端らしく納得する幽鬼「魔王の胃に穴が開くな」と去り行くサニーの背を見ながらため息。チューの洗礼はカワラザキに十常寺に・・・そしてレッドに。レッドは「何してんだお前は」と言いつつ微妙に照れてるんだよ。ヒィッツのおにーさんは「これは光栄だな」と言ってお返しに手の甲にチュー。怒鬼のおにーさんはいきなりのチューにびっくりだけど真顔だ、魔王が見れば「将来自分の嫁にしようと確信した顔だ」と思うかもしれないが(笑)。どんどんサニーのチューが広まっている状態に半泣きの魔王。そしてサニーは残月のおにーさんにチュー。残月ちょっとびっくり。「セルバンテスのおじ様に教わった挨拶です」「ふむ、なるほどでは・・・」ってお返しにサニーにおでこチュー。運悪く居合わせた魔王が真っ白。うわああああ私の可愛いサニーが覆面男の餌食にいいいいいい!!!9割妄想捏造の魔王ビジョンでは愛しい娘を強引に抱き寄せてチューする変態覆面男になってんだと思う。首根っこをガクガクさせられるし先日のアーンの一件から目の敵にされて迷惑な残月「だから子ども相手にどうするというのだこの私が!貴様と一緒にするな!」って子ども相手にどうこうし兼ねない魔王を蹴りだすよ(笑)痛恨の一撃をくらった魔王が気づけばサニーの姿が無い。大慌てで探せばついにお父さんのほっぺにチュー。ちなみにアルベルトはきっと無表情で娘の好きにさせると思う。「あああ私だけのチューのはずが・・・」膝をつく魔王、そしてアルベルトはため息をついて無邪気な娘に一言「いいかサニーこの挨拶は他の連中にしてもよいが・・・樊瑞にだけはしてはいかん」なんだかんだ言って一番娘想いの衝撃の人でした。
うん、ごめん。魔王がどんどんおかしい人になっていってるね。わかってる、わかってるけどこっちの方が面白くって(笑)
それでは18歳サニーとついにゴールイン(結婚)する魔王の話だとどうだろう。パパと眩惑、素晴らしい人が死亡したというのを無視して三人が健在ということで話を妄想。
思えばあまりにもたくさんの出来事があった、そしてそれのほとんどが自分にとって幸せに感じることばかり。その幸せをくれたこの少女と今日この日誓いを立てて生涯の伴侶とする。樊瑞はまるで夢のようなこの現実に心は浮かれ、身の置き所がなく控え室でずっとそわそわしてんの。「おじ様・・・いいえ樊瑞様どうですか?」ようやく現れた真っ白な花嫁姿のサニーに言葉が出るはずもなく、育て上げた父としてそして愛する一人の男としての眼差しで見つめるんだよ「サニー本当に私でよいのか?」「はい」魔王超幸せ。今から掻っ攫って愛の巣にお持ち帰りしたいくらいだ。でも花嫁の背後に控える義父さんが「サニーを泣かせるようなことがあれば・・・わかっているだろうな」とてつもなく目がマジだ。泣かせるつもりは毛頭ないが泣かせなくとも2、3回は殺されそうな気がする。「は・・・はいわかっています・・・」「そうだよ?私もいるからね、サニーちゃんを泣かせちゃ・・・駄目だよ?」眩惑笑ってるけどやっぱり目が怖い。「はは・・・」魔王ちょっと先行き不安。そこへ他の連中もやってくるよ。「サニーや良かったなぁ、樊瑞に大切にされるのだぞ」「はいお爺様」カワラザキの後ろには怒鬼に引き連れられた血風連は全員号泣、女神様が魔王のものになるなんて!いまだ納得できないサニー親衛隊。「お嬢ちゃんおめでとう、魔王と喧嘩したら私の所に逃げ込めばいい」「うふふありがとうございます幽鬼様」さすが幽鬼、きっと何回かお世話になると思うよ(笑)。ヒィッツカラルドは「魔王のものになるのはもったいない、お嬢ちゃん今からでも遅くは無い私を選ばないかね?」とかいって笑いながら抱き寄せるねこの男「くぉら!貴様っ人の花嫁に気安く触るなっ」危ない男から慌ててひっぺがす魔王。さあ、もう少しで式が始まる、そして2人は晴れて夫婦になるんだ・・・そして幸せな家庭を築き、子どもをたくさん作って・・・絵に描いた妄想にうっとりしていたら「サニー!迎えに来たぞっ」ご登場したのは真っ白いタキシード着た白昼の人。覆面?今日は濃い色のメガネだけで思いっきり素顔だよ髪だってばっちりキメてオールバックだよ「残月様!」って抱き寄せられていた魔王の胸から離れて残月に飛び込むサニー「え?サニー??」「遅れてすまなかった、さあ私とともに行こう」「はい」思いっきり見つめあう2人ヤベェ!様になってる(笑)「ちょ・・・え??」目が点の魔王を他所に「いやぁ良かった良かった」「残月なら納得だ」「娘をたのむ」「サニー殿おめでとうございます」祝福ムードの皆さん「え??サニー!待て待て!今から私と」「ごめんなさいおじ様、私残月様と一緒になります」「そういうことだ、安心しろ樊瑞。サニーは私が責任持って幸せにしてやる」といってお姫様抱っこしてサニーを掻っ攫う白昼の人。独り残された魔王の救いといえばこれが夢オチだっていうことだけでした。
あちゃー。
さて、いじられ役がすっかり板についた魔王ですがもうちょっと話を。
「うわああサニー!!」ってガバァと起き上がればベッドの上。良かったあれは夢だったんだ、可愛いサニーがあの覆面男のものになるなんて悪夢以外の何者でもない(勝手に悪夢にだされて残月いい迷惑)、魔王は嫌な汗をかきながらちょっと安堵。サニーは私の・・・いやよそう、そういう想いはサニーのためにならない、あくまでもサニーが自分の意志でもって幸せを掴めばそれで良いではないか。私は父代わりとしてその姿を見届けられれば・・・それが私の幸せなのだ・・・。変態からまともな方向に修正して魔王は朝食をとるべく食卓の場へ「あ、おはようございます!おじ様」「サニー・・・」サニーちゃん白いエプロンつけて朝食の準備、その姿は朝日をあびて眩しいよ「今日は私が作ったんですよ、どうぞ召し上がれ、うふふ」テーブルの上には湯気が昇る野菜スープにベーコンエッグ、手作りクロワッサンにシーザーサラダ「これを全部サニーが作ったのか?」「はい」そうか・・・確実にサニーは成長しているのだな、そしていずれは一緒になった男のためにこうして朝食を作ってやるのか・・・「・・・・・」「おじ様?どうなさいました?」嬉しいけど少し寂しい気持ちになって湯気を見つめちゃう魔王、18歳の花嫁姿の夢を思い浮かべて隣に立つのはきっと自分以外の男だろうと心の隅で確信してみたり「ふふふ・・・サニーもいつか花嫁となり私のもとから離れるのだなと思ってな、寂しいものだ」「そんなおじ様、まだずっと先のことですよ。それに・・・私がお嫁さんになれるかどうかも・・・」「何を言う、きっとなれる。私は・・・なって欲しいと思っている・・・」サニーをまっすぐに見つめて素直な気持ちを告白する後見人。サニーを幸せにできる男なら誰でもいいのだ、初めて腕に抱いた時のあの笑顔を失わせることのない男であるならば・・・「あの・・・スープが冷めてしまいますわ」「うむ、そうだな、それでは頂くとしよう」穏やかな空気が流れる二人きりの朝食。魔王はあと何回この朝食をとることができるのだろうかと考えてみたけどそんな考えもすぐに奥に追いやってごちそうさま「うむ、美味しかった、ふふふまたサニーの朝食をごちそうになりたいものだ」笑って退室する魔王「私は・・・おじさまのためなら朝食をこれからもずっと・・・」でもサニーがやっとつぶやいた言葉は聞こえないのでした。
救いの手を差し伸べてみた話。