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ねずみ色のヴェールで覆われた部屋。

  カ  チ  カ  チ

時計が時間を刻む音。



  カ  タ  カ  タ

キィを打ち込む音。



  カ  ラ  ン

氷がぶつかり合う音。



  ハ  ァ

女のため息。
















「ねぇ。」
「…」
「ねぇってば!」
後ろのソファーでうずくまっている女を振り返りもせず、男は言う。
「…五月蝿ぇな。なんだ?」



  カ  タ  カ  タ

キィを打ち込む音。



「いい女が悲しげにため息付いてるんだから、優しい声かけなさいよぅ!」
「いい女ぁ?一体どこにいるってんだ?」



  シ  ュ  ボ

炎が燃える。



「あんたの目、節穴?良く見なさいよぅ。」
「ふん、ジャジャ馬の間違いじゃねぇの?」



  ゆ  ら  り

煙が空を舞う。



「…アンタむかつく。」
「へへへ、ありがとよ。俺にとっては最高の誉め言葉だぜ?」
心底愉快そうな声で男は答える。
「ぶぅ。」
女は頬を膨らませた。



  ぴ  ちゃ  ん

雫が落ちる音。










「つまんないから遊んでよぅ。」
「俺は仕事をしてる。」



  カ  ラ  ン

氷がぶつかり合う音。



「じゃ、仕事止めて遊んで。」
「お前なぁ…。」



  キ  ュ  ル

椅子が回転する。



男は腕を組み女のほうに体を向けた。
「暇なら家に帰ればいいだろう。天野にでも構ってもらえ。」
女は非難がましく男に目を向けた。
「今日はマーヤは周防兄とデートで、家にいないんだもん。」



  み  し  り

ソファーがきしむ。



「人の恋路を邪魔するヤツぁ、馬に蹴られて死ぬらしいぜ?」
「アタシは邪魔なんてしませんよぅだ。」
口を尖らせる女。
「ま、確かにお前みたいなジャジャ馬は蹴りを入れる役が精一杯だろうな。
…その勢いで俺の邪魔もしないでほしいもんだ。」
男はまたパソコンに向かう。
「むぅぅ。」
女はソファーの上に転がった。





  ビュ  オ  ォ  ウ

夜の呻き声。


「避けてみな!」
「あぁ??」



  ピュ  イ  ン

風を切る音。



「何いってんだ、せり…」
女の声に、男は振り返ろうとする。



  ポ  コン

命中。



「イテッ!」
何かが男の額に当る。
間髪おかず、女は投げ続ける。
「指弾だ指弾だ指弾だ~~~!」



  ポ コン  ポ  コン    ボ  コン


命中。

命中。

クリティカル。



「ああもう!痛ぇな!一体何投げて…」
男は女が自分に投げて来たものの一つを拾い上げた。
「ああー!俺のスーツのボタンじゃねぇか!おま、なんて事…!」
女はツンとそっぽを向き、横目で男を睨む。
「ほらぁ、アタシってばジャジャ馬だし?言うことなんか聞かないし?
他人の迷惑なんか顧みないのよねぇ~。」
そしてにっこりと笑った。

「ザマァミロ。」

男はただ口をパクパクさせ、
「こンの…ジャジャ馬!」
天を仰ぎ、足を組替え、額に手を当てた。



  ボ  ー  ン  ボ  ー  ン 

短針と長針が再会を喜び、12回、祝砲を鳴らす。






「アンタさ。」
「なんだ。」

女は楽しそうに男に話し掛ける。
デスクに向かう男は少しふてたように答える。




「アタシのことさんざんジャジャ馬って言うけれど。」

女は男の髪を指で弄ぶ。
男はパソコンのキィを叩く。




「言う事聞かない、どうしようもナイ暴れ馬はね。」

女は男に寄りかかる。
男は椅子に深くもたれかかる。




「ただ馴らそうとしたってダメなのよ。」

女は男の正面に回る。
男は女に向き直る。




「たまには馬の主張も聞いてあげないと、イジケちゃうんだから。」
「ふん、そうか。」

女は男の膝の上に身を移す。
男は女の腰に手を回す。




「あ、信じてないんだ。」
「まぁな。」

女の目が見開く。
男は口元を歪める。




「信じなさいよぅ。」
「俺はな、証拠のない事柄は一切信じねぇタチなんだ。」

女は自分を抱える男を見下ろす。
男は抱き上げた女を見上げる。




「本当、嫌な男ねぇ。」
「へへっ。」

女は頬を膨らます。
男は女の輪郭をなでる。




「じゃーさー。」
「?」

男の首筋に女が近づく。
女の唇に男の髪が触れる。




「信じてくれたら。」

女の手が男の肩から胸を伝い、腹を滑り、さらに下へ落ちてゆく。




「アンタに。」

女のしなやかな白い指先が、男の雄をなぞった。
男の喉がぴくりと仰け反る。


そして、仰け反った耳に吐息をかけるように。
男の耳元で響いたのは、女の甘く囁く声。




「最高のロデオ、披露してあげるわ――。」



「どう、信じる気になった?」
女は微笑む。

「…どうだかな。」
男はそっけなく答える。
だが、サングラス越しのその瞳はわずかに細くなった。




「ふふっ。」

女の体が離れる。
男の手が解ける。




「もう、邪魔しないわよぅ。」
女は男の膝から立ち上った。
「あっちで、大人しくしててあげる。」



  パタ  パ   タ

軽い足音。



男の脇をすり抜け、先ほど自分の居たソファーを通り越す。
女の目の前には、扉。



  カ  チャ  リ

ゆっくりと、開かれた。



「お仕事、ガンバッテ?」
女の姿は奥の部屋へ続く暗闇に融け消えた。




  パ  タ  ン




部屋に残されたものは、男。




ねずみ色のヴェールで覆われた部屋。














  カ  チ  カ  チ

時計が時間を刻む音。



  カ  タ  カ  タ

キィを打ち込む音。



  カ  ラ  ン

氷がぶつかり合う音。



  ク  ク  ク

男の押し殺した笑い声。



  ギ  ィ  イ

椅子がきしむ。










カツカツカツ




ガチャ




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