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ある朝、アシェラッドはトルフィンを探していました。
さあこれから北進と思っていたのですが、行軍の行く手にどうやら野盗の一団がいるらしく、いつものようにトルフィンを便利に使って邪魔者を蹴散らすつもりでした。
本当にトルフィンは営業社員における携帯電話のように便利な存在です。
「おーい、トルフィーン」
 犬を呼ぶように両手でメガホンを作って呼んでみました。トルフィンは出てきません。
「トルフィーン!おいしいごはんだよー」
「トルフィーン!散歩だよー」
 いろいろと台詞を変えてみましたがやはり姿を見せません。五回目ぐらいの呼びかけで「はーい」と誰かが野太い声でふざけたので、もう呼ぶのはやめました。
「とうとう、あいつ逃げたかな。」
 アシェラッドはふむ、と興味なさげに禿頭を掻きました。
「いや、今のタイミングはおかしいな」
 荒ぶる猛者が集く(すだく)傭兵団に加わり、負けても負けても負けても負けても諦めず目をらんらんとさせて決闘を申し込んでいたあのトルフィンが、特に状況が変わったところがあるでもなし、このタイミングで逃げ出すのはおかしいのです。
 そう、傭兵団の状況にさしてかわったところはありません。
では変わったとしたら、トルフィンに何かあったのでしょうか。 昨日までみたところ、特に変わったところはないように思えたのですが。 アシェラッドは駐屯地の外れまで来て川を見ながらうーん、と首を傾げました。 そのときがさ、と草が揺れる音がしたのです。

 川べりに、蒲の穂で身を隠すようにして小柄な背中がうずくまっていました。
ああ、なんだここにいたのか、とアシェラッドは思いました。長いクソだな、とも思いました。
「おい、トルフィン、仕事…」
 と声をかけるとトルフィンはびくっと身体を揺らしました。でも、こちらを向きませんでした。
「後で聞く」
 それだけ言って彼はそこを動かないのでした。トルフィンが無愛想なのはいつものことですが、このときはその無愛想さも少し違って見えました。
「わかった。すぐこいよ」
 アシェラッドは回れ右しました。と、見せかけて、そおっと蒲の穂を掻き分けトルフィンに近づき肩をがしっとつかんだのです。
「うわあああ」
 珍しくトルフィンが慌てふためいて身をくねらせました。
「お前、こんなところで、センズリなんかしてんじゃねえーよ」
 はねのけられて痛む手を押さえながらもアシェラッドはくっくっくと、馬鹿にしたように笑いました。
「違う!そんなの、してない、したこともない」
 トルフィンは何かをあせって隠しながらアシェラッドにし、し、と追い払うしぐさをしました。 そんなことをしてもこのおじさんには逆効果です。
「何隠したんだ、ん?」
 アシェラッドはトルフィンの後ろに手を回し、彼がつかんでるものを取り上げようとしました。
「くっ…」
 トルフィンは足でアシェラッドの腹をけると、それを川に放り投げてしまいました。 よほど見られたくなかったようです。
 しかしそれはうまく川の流れに乗らず、よどみに嵌って水草にひっかかりました。
「下着?」
 アシェラッドは逃げようとするトルフィンの襟を捕まえたまま目を凝らしました。
「川で下着洗ってたのか」
「……」
「今、生装備か、お前」
 はっはっは、とアシェラッドは笑いました。行軍に着替えなどもって行きません。必要になったらその場その場で略奪するだけです。
「どうしたんだ、この年でおねしょしたわけでもあるまい。むしろお前の年ならきっと別の…」
「うわああああ」
 それ以上いうな、とばかりトルフィンは大声を出しました。アシェラッドはこの錯乱した子犬のような少年を少し可愛いなと思い始めました。
「いい夢でも見たのか、そうだろ」
 アシェラッドはトルフィンを摘み上げてうれしそうです。 トルフィンは顔を真っ赤にしていましたが、無理にぶっきらぼうな表情をつくると「違う」と答えます。そして何かを思い出したのか、威嚇するように精一杯の意地悪な笑みで
「ある意味、いい夢だが、お前の考えてるような夢とは違う」
 その瞳の殺意に気づいたアシェラッドは、おや、とでもいうように眉を開き、トルフィンに続きを促します。「殺したんだ、お前を」
「ほう」
「お前を殺す夢を見た」
「せめて夢だけでも勝ちたいものな」
「正夢だ。一撃のイメージは掴んだからな」
 口角をあげて毒づきますが、襟は猫のようにつかまれたままのトルフィンです。
「そうか、トルフィン」
アシェラッドはトルフィンに顔を近づけて年季の入った冷笑を見せました。
「お前は俺の夢を見て、夢精したんだな」
「聞き違いをするな、お前の死体だ」
せっかくの強がりも、この総領の前では氷解してしまいます。次の瞬間、トルフィンの視界が一回転しました。気づくと地面にうつぶせに押し付けられているのでした。
「な、何を…」
トルフィンは逃れようとしましたが、後ろ手に絡め取られて、動くことができません。ふと、自分の尻が外気に触れる感じがしました。気づくとズボンを下ろされているのです。何が起きるのかわからず、トルフィンは頭を打ったわけでもないのに目がちかちかしました。蚯蚓のように身体をくねらせて抵抗する少年を押さえつけながら、その中年は教え諭します。
「夢精は、自慰がきちんと出来てないからしてしまうんだ」
いちいち、下着を捨てていてはキリがないだろう。そんなことをアシェラッドは言ったような気がしますが、トルフィンはまったくパニックになっていて答えられません。
「俺がお前に方法を教えてやるよ」
アシェラッドは自分のズボンのベルトをはずそうとしましたが、すぐに思い直して、蒲の穂をひとつぶちっと折り取りました。
「この後、お前には仕事をしてもらうからな。今日はこれで我慢してやる」
 これからお前は俺を殺す事じゃなくて犯されることを思い出しながらズったらいいじゃないか。 下品なことを言いながら、アシェラッドの手に持ったものがトルフィンの尾?骨にぴたぴたとあてがわれました。



「殲滅してきた…」
トルフィンが汗だくの血まみれになりながら帰って来、傭兵たちは「待ちかねたぜ」とばかり進軍の準備を始めました。一方、アシェラッドは少し不服そうに
「ちょっと時間がかかったじゃないか」と口を窄めました。
「貴様、誰のせいで…っ」
「わかった、わかった。決闘してやるよ、今度」
 アシェラッドはトルフィンを宥めすかすと、「それともあっちのほうがいいか」といらんことを言ってまたトルフィンの激昂を買うのでした。
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