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早起きしすぎた早朝に。


ビョルンは今朝、少々早起きしてしまった。
休息の合間の乗っ取った村で雑魚寝するビョルンは、こんな日に、こんな朝焼けも少ししか見えていない時間に起きたことを真っ先に後悔した。
今朝は窓の縁び霜があるほど際立って寒く、まるで凶戦士のキノコを食べた時のような顔で起きたのもそのせいだ。顔のみばっちり見開いて、身体はどうにも凍り付いたように身動きがとれない。どうにもできないので、かれこれ二十分彼はそうしていた。
やっと日が出て来た頃に、身動ぎする音がした。自分は動けないから、やっと誰か起きたのだと、ビョルンは幾分ほぐれた見開いた目を、音の方へ向ける。
朝日に輝く神々しい額、あれはアシェラッドだ。
起き上がった彼は可哀相にも寂しい額に布団を頭に被せ、じっと寒さから耐えている。きっと一番額が冷たいに違いない。


――涙をそそる場面に出くわした――。
しかし彼のことだから、下手に動けば貴重な布きれという名の防寒具を奪われるかもしれない。そう思って息を潜めていると、予想通り向こうに動きがあった。不幸にも標的にされたのはだれか──と見ていれば、彼が近付いたのはトルフィンがいるほうだ。子供の布団を奪うとは流石極悪非道のドS顔だ。ビョルンも子供をだしにしてトールズを殺すネタにした身だから人のことは言えないが、そこは割愛。
まあ、などと感心していると、彼は予想外の動きを見せた。
彼はごく慎重に、いかにもノミの恰好の住処である無精な犬の毛のようなトルフィンの髪に手を入れ、かきまぜ、撫でた。まさに犬を撫でるようにだ。
よほど子供体温とあいまって暖かいのだろう。あのドS顔で、至福の表情をとると言うべきか、とにかくそれだった。


果たしてこの状況をどうすればいいのか。


見てはいけない場面を見てしまったような気が多大にしたビョルンは、とっさに目を背けた。
下手に真面目に早起きなんざするもんじゃねえな、どうせ凍えて声の出ない口で彼は教訓を呟き、最後に夢と思い込むことに決めた光景を今一度見ておこうと目線を戻すと、件の人は自分の脇で屈んで立っている。
「なあ、どうして“早起きなんざするもんじゃねェ”んだ?ビョルンよゥ」
「………聞こえてたのか?」
「おう」
彼は普段のあのドS顔で笑みをたたえて問い質す。
本当に慣れないことはするもんじゃないと、ビョルンはつくづく思うのだった。



終わり
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