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aaa


「駄目やわー。嘗めとんの?」

         バサッ・・!

「ッ!」
 投げつけられたそれに思わず目を瞑る。それは宙を舞う紙、それは彼が苦労して作り上げた資料の一部だ。
「ほんまお前、こういう仕事苦手やな」
「・・すみません」
「謝ってすむんやったら、警察いらんで?」
「すみま・・せん」
 体を使う仕事は構わない、何も考えずにすむから。だがこの手の仕事はどうにも苦手で、だけどどうしてかここ最近ずっと。命じられる仕事はこの手のものばかり。
「とりあえずできるまでやり直しや・・まぁもう俺等帰るけど・・・なー?」
 後ろに立つ部下たちに声をかければ頷く声とニヤニヤと笑う声が混ざって聞こえる。彼らもまた、こんな自分を面白がってるに違いない、助けてくれたことなんて、一度もないのだから。
「・・・はい」
 拾い集めた紙を握り締めながらデスクに戻る。握り締めた紙はもう使い物にならない、新しくコピーしなおそうと、パソコンの画面へ彼は目を向けた。

 ポーン。

「っ!!」
 ディスプレイに現れる、一通の新着メール。差出人欄は空白、でも彼はその相手が誰で、どういったものわかっていた。心のまま正直に言えば、そのまま削除してしまいたい。
「・・・・」
 でも、心とは裏腹に手は恐る恐るマウスに伸び、カーソルが動き指をカチカチと、二回動かした。








     ―――五分後、ここで。







「・・・・」
 五分、部屋から誰もいなくなってからきっかり五分。桐生の目の前には広がるやり直した書類。だがこんなことをしたって無駄なのはわかっている、そう思うせいか作業は全くといっていいほど、捗らなかった。

「桐生、ちゃーん」

「ッ・・・!?」
 ため息をついたのと、己の名前を呼ばれ首筋に冷たい手が回ってきたのはほぼ同じ瞬間。驚きのあまりに思わず上ずった声を出して、その手の主へと視線を向ける。
「マジ、まさ・・・」
「んな他人行儀なこと言わんといてや・・・もうここには、俺とお前しかおらんねんで?」
「・・・」
「ほんま、さっきは堪忍やったわ」
「・・・」
「あいつ等の手前、ああでも言わんとあかんかってん」
 掴み所のない、真意のわからない謝罪の言葉と共に、肉の削ぎ落とされたような骨ばった手が首から顎へと伸びては撫でられる。言葉にできない感覚に、ただ狂わんばかりの鼓動を鳴らす心臓を押さえつけようと目を瞑る。
「兄、さ・・ん」
「んー・・?」
「ど、して・・」
「だって、桐生ちゃんほんまこういうデスクワーク苦手やねんもん。せやから、余計にやらせとうなんねや」
「・・・っぁ」


「そうしたらこうやって、仕置きと勉強の言い訳が作れるやろ?」


 顎まで伸びた手が、するりとスーツの中へと消えていく。シャツの上を這うまるで蛇のような手、指が胸に触れて抓ればシャツ越しでも痛みと痺れを感じて、声を挙げる。
「ィ、や・・ッ!」「大丈夫やって。俺の言う通りにしてたら、間違いないから」
「――っ・・・!」
「だから桐生ちゃんはこのままでええねんで?ずーっと、俺と一緒におりや?」
 本当は、逃げ出したい。こんな場所からこんな男から、上の命さえなければ。けれど身体は慣れに正直で、敏感な場所を触られれば直ぐに反応する。それがまた悔しくてたまらない、でも逃げられない、五時以降の残業。
「ぁ・・ぅんッ」



「ほら頑張りらんと。明日も残業することになるで?」



 蹂躙される身体。
 けれど目の前には、終わりのない仕事の山が詰まれたまま、今日も、また。











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