『夢終庵二号店』ひかげやもり様から相互記念にいただきました!!
真桐ですよ…!感動しすぎて震えが止まりませんよどうしよう!
償いの方法
桐生は懇親の力を込めて真島の顔面に拳を叩きつけた。
どちらかというと華奢な体つきの真島はたやすく吹っ飛ぶが、またすぐ復活して抱きついてくる。
そんな不毛なやりとりが、真島のマンションでさっきから続いていた。
「兄さん!!料理中は抱きついてこないで下さいと何回言えばわかるんですか!!」
魚を捌いていた包丁を握ると、桐生はまだ床に転がった真島を睨みつける。
この男なら刺しても死なない気がするが、掃除が面倒くさい。
だが真島は桐生の気も知らず、殴られた鼻を押さえながらけらけらと笑った。
「そやかて、桐生ちゃんがあんまりかわええ格好しとんのやもん。それで抱きつかんかったら男ちゃうわ」
「…普通の男は、男相手に抱きつきませんけどね」
呆れた桐生に、真島はやはり笑う。
だが、真島の言い分も正しかったりするのだ。
今桐生が着ているエプロンは真っ白でフリルのついた、甘いデザインのものだった。これは、真島が用意したもの。
「そんなかわええ格好…怪我してみるのもんやで」
嬉しそうな真島に桐生は赤面してエプロンを見下ろした。
桐生が真島の家で、しかも真島の選んだエプロンをつけている理由は…一週間ほど前に遡る。
その日も真島は桐生に挑み、返り討ちにあった。
けれどそれはもう毎度のことなので、倒れて動かなくなった真島を捨てて、桐生は帰っていった。
だが、その後がいつもと違っていたのだ。
怪我をしてもすぐさま治るのが真島。
全治三ヶ月と言われても三日で復活してくるのが真島。
それが丸三日間、運ばれた病院で意識を取り戻さなかった。
四日目の朝、あっさりと目覚めた真島だっだ、退院を許されたのは今日で。
しかも、右腕が見事に折られていた。
やった本人である桐生も真島が昏睡状態であるときは死ぬほど心配をし、意識を取り戻してからは怪我を心配し、右腕の骨折は自分の事のように落ち込んだ。
そして、その時、せめて腕が治るまで身の回りの世話をすると言ったのだ。
「だ、だけどやっぱりこれは…!」
真っ赤になってエプロンを脱ごうとする桐生に、真島は慌てて止めに入る。
せめて、もう少しこの役得を味わっておきたい。
「わかった!!もう何もせぇへんから!!な!?」
「……ほんとですか?」
名残惜しいが、真島はガクガク頷いた。
「おう!それより、はよう桐生ちゃんの手料理が食べたいな~」
桐生は真島の笑みにいぶかしげな目を向けていたが…また、まな板の魚と向かいあった。
魚は捌くというよりも、解剖されたに近い状態になっているが、真島は桐生の隣でそれを楽しそうに見ていた。
できた料理はみんな見てくれは悪かったが、真島がついていたため味の方は問題無さそうだった。
テーブルに並んだ食事を前に二人は向かい合わせに座り…真島が機嫌良く口を開ける。
「あーん」
「………俺が、ですか?」
「当たり前やん。ワシ、いま箸持たれへんもん」
ギプスで固められた腕を振られては、桐生が断れるはずもなく。
大きくため息をつきながら、箸をとった。
「どうぞ」
差し出される一口ぶんのおかず。
しかし真島は口を開かなかった。
さっきはあんなに大きく口を開いていたくせに…と、桐生は小さく毒づいた。
「…………あーん」
「あーんvv」
なんだか、犬相手に餌付けしている気分だった。
真島からすればこれは「新婚さん」の行為なのだが…桐生はわざと気付かないよう努めた。
「次はそっち」
「はいはい、これですね」
きっと、
「一緒に風呂入ろか!!」
とか言って強制的に風呂場に連れて行かれたり、
「頭あろて欲しいなー」
と我が儘を言われたり、
「よっしゃ!!ほな寝よか!!」
…と、ベットに引きずり込まれ、抱き締められ、脱がされそうになるのに抵抗しながら一晩明かす事にならなければ。
桐生も真島の世話がまんざらでもなかった。
真島のマンションから桐生が逃げ出すのは、次の日の早朝の事だった。
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