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うろほろぞ
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uuu
※注意※
以下はマジカズ(真島×桐生)前提の、龍桐若しくは大桐妄想捏造文です。
前半はさほどではないですが、後半(Read More以降)に結構な成人指定文章
(一部SM)が含まれます。
読後の誤字・脱字以外についてのクレームに関しましては、状況により
お受けいたしかねる場合がありますので、以上ご了承の上、お読み下さいませ。





<龍を抱く 本文>



 その若さと外見からは意外そうに思われるが、親譲りなのか、極道としての仁義を過ぎるほどに弁えた男だった。
熱いそれを叩いて鍛え上げた鋭利な刃物の如く、冷酷そうに見えてその実熱い、非情かと思えば存外情には厚く、さほどに軽はずみな行動をとるわけでもない。一見しただけでは理解しがたいと思われる行動の理由も、本人の中ではきっちり筋を通して行われていることも少なくはなく、多少周囲に影響を及ぼす程度の勝手な行動をとることがあっても、「本人の立場上有り得る我が侭」程度に留め、決して組の上にまで事が及ばぬ程度に収めてきていた。
 それ故に、親を始めとする身近な幹部からは「仕方のないやっちゃ」と苦笑して過ごされる枠を解りきった上で、欲望渦巻く、広いようで狭いこの世界を生き延びてきた。





 噂にはずっと聞いていた、「伝説の龍」と呼ばれる男の存在。
 その龍を語る言葉にはいつも、「言うほどの者ではない」という軽侮や、「あの若さであれほどとは……」という畏怖、そしてほんの僅かな羨望が見え隠れしていて、それほどに語られる男とは果たしてどんな人間なのだろうと、長いこと疑問に、そして興味深くその存在を思っていた。


 初めて出会った瞬間、自分に向けられた深く強い眼差しに、一瞬で捕らえられた。
 深く、深く。表情以上に本人の感情を豊かに映し出す瞳。
 口の端を僅かに持ち上げる、皮肉にならないぎりぎりのラインを保った微笑み。

 ……そして自分に差し出された、暖かな掌。



 当時自分が受けた衝撃は、その後も決して消え去ることは無く、間近で再びあの眼差しを見、彼自身の言葉で、低く深いその声音で己の名を呼ばれる存在になろうと、そう自らに誓ったあの日の出会い。


 --当の本人はもう記憶さえしていまい。


 あの日願ったように近くへ寄ることが出来、彼の名を当然の如く呼び、また彼に己の名を呼ばせた瞬間、己の身の裡へ湧き起こった歓喜は、筆舌に尽くしがたいほど。
 あの小さな自分が、漸く彼に認識される存在足り得たのだと、これまでの己の努力が報われた瞬間でもあった。

 邪気のない単なる憧憬は、成長するに従って欲望となり、やがては独占という名の所有欲に変わる。

 ただ近くで彼と再び相まみえることがあるなら、と願った気持ちは、彼の名を呼ぶ機会に恵まれ、存在を認識されて近くに寄ることが出来た途端、願いは一瞬にして膨れ上がり、次はその存在自体を己のものとすべく求めてしまうようになった。
 だが、そんな自分を周囲は責められはしまい。同じように、彼の龍に魅入られ、それに彼の龍を滅ぼそうと試みたり、または一見して大人しい彼の龍を操るべく、調子に乗って近付き過ぎたが故にその逆鱗に触れ、命を落としていった男達を見れば、彼に惹かれるのが自分だけではないと証明することにもなるのだから。

 あれほどの強さを持ちながら、あれほど慕われる存在でありながら、何故か彼は自分の周囲にひとを容れたがらず、ほんの僅かな許された存在だけが彼のパーソナルスペースへ入ることを許される。それでも、全くの無防備で接することの出来る人間がどれほどかと言えば、恐らく片手にも満たないと断言できる---そう、彼は何故か、皮膚を接するほど近くへ決してひとを寄せ付けなかった。
 その理由は後に知れた。
 彼の心の中に、神聖にして不可侵、不滅にして永遠の存在があることが知れ---彼らのことを語る度、言葉には言い表せない表情を浮かべることがあって、今は失われたにせよ、愛しい存在を語ることで、何故こんなにも傷つくのかと不思議でならなかった。
 けれど、彼がまた失うことを恐れる余り、ひとを寄せ付けたがらぬのだと知った瞬間、無理矢理にでもその垣根を乗り越え、一番近くまで近づいてやろうと思った。
 決して失われることのない存在として、一番近くであの眼差しを見、名を呼んでやろうと。



 --一度そう思ってしまうと、この欲を抑えることは出来なかった。



 
 一旦その懐に入り得て、簡単に見過ごし、滅ぼせぬほどに心許した存在に成った以上、彼の隙を伺う機会など幾らでもあって。酒の強い彼には珍しくその酒量を過ごしたある日、無防備に眠る彼を見つめた途端、彼を手に入れようとする欲が躯の奥から灼熱のように吹き出し、気付けばその四肢を拘束し、自由を奪っていた。
 有り得ぬ身体の不自由さに目覚めて抵抗する彼を力ずくで押さえつけ、卑怯者の己に相応しく、前から彼の目を見つめたまま貫くなど到底出来ずに、さほどの慣らしもせずやおら背後から挿し貫く。皮膚の冷たさからは信じられぬほど熱く、溶かされそうな彼の内部に入って動き出した瞬間、びくりと全身をわななかせて反応した様子で悟った--否、悟らざるを得なかった。


 --彼を抱いたのは、自分が初めてではない。……彼は、同性に抱かれるのが初めてではない。


 龍を喰らい尽くしたくて、涎を垂らしながら猛る己の雄を狭隘な最奥に捻り込んだあの時、彼の全身に小さく走った震えと、満ちるように零れた吐息は、間違いなく「その味」を知る快楽に彩られたものだったから。
 --不思議と、悔しくはなかった。彼を欲しがり、求め、手に入れようとした人間が自分だけではないことを知ったから。彼に対して欲情することが決して間違いではないと、ひとを惹き付け、誘い込まずには居れぬ彼という存在を欲しくて堪らない人間が自分の他にも居る--ましてこの龍がそれを受け入れることがあると解ったのだ、何ほどに悔しいことがあるか、と。
 こみあげる劣情と歓喜の渦に巻かれ、自分を抑えきれぬまま彼の躰を貫き、揺すり立て幾度も欲を放つ。剥き出しにされた彼の背の龍が、内部から揺さぶられる度妖しく誘うように揺れて、いつしかその眼光から目が離せなくなっていた。
 真っ正面から彼の眼差しを受けられず、背けたはずの裏側では彼の化身が、己の隙を決して見逃すまいと見張っている。


 --逃れられない。


 彼を真正面から見据えられないのに、その背に負うものからでさえ目を背けることができない。
 己が背に負うおなじ文身が、触れ合った皮膚を通して化学反応でも起こしているかのように、焼け付くほど熱く応えている。


 彼は、内部の弱い粘膜を滴るような灼熱で擦られ、抉られるように貫かれながら、自分を犯す男の名を時には窘めるように、そして縋るように、荒い吐息混じりの声で幾度も呼び--やがて達した。



 その後、名を聞きたいが為更に回数を重ねて彼を貫き、気を失わせた後、己にも訪れた体力の限界から泥のように眠った翌朝、目覚めれば既に隣に彼の姿は無かった。酔いも冷め、一時的な熱も去り冷静になった頭で自己嫌悪に押し潰されそうになりながら、小さな自嘲の溜息を漏らして起き上がると、投げ出したままの携帯電話が着信を伝えて震えた。
 遣り場のない苛立ちを押し殺しながら、かけてきた相手の名など確認する暇もなく、通話ボタンを押してその震えを止める。

『……桐生だ』
「あんた……!」

 驚愕するこちらの様子など気にも留めず、彼は一方的に口を開いた。

『いいか、二度は言わねぇ。良く聞け。
 俺は、誰のものでもねぇし、誰のものにもならねぇ。……手に入れたければ、最後まで生き残れ。
 話は……それからだ』
「今、何て……きりゅ」
『じゃあな』

 呼び掛ける己の声が届く間もなく、通話が途切れる。
 今の会話が嘘では無かったのを確認するように、幾度も、幾度も着信履歴を辿ったが、あれは間違いなく彼本人の携帯電話からかかってきたもので、耳奥に残る声が、昨夜何度も自分の名を呼んだあの音が、記憶に焼き付いて離れない。



 
 先ほどは決して出来なかったけれど、今ほど正面から彼の目を見つめたまま抱きたいと思ったことは無かった。




 --もう一度、あの龍を我が手に。


---------

「……で、ちゃぁんと言うてやったんか? 桐生ちゃん」
 桐生の手首に残る、ベルトで戒められて擦れた跡をべろりと舐め上げながら、真島が問う。
「言い、ました……。俺は誰のものでも無いし、……誰のものにもならねぇ、と……」
「で、他には?」
 舐めた後ちいさく歯を立て、更にその先の答えを促した。
「最後まで、生き残れ、と……」
「はい、よぉ出来ました。ええ子やなぁ、桐生ちゃんは」
 真島が子供を褒めるように、桐生の頭を撫でる。……今日の明け方近くまで桐生がされて居たのと全く同じように、彼を背後から貫きながら。
「兄、さん……っ、も、ぅ……!」
 深夜から明け方にかけて幾度も貫かれた桐生の躰は、快楽に対して鋭敏になりすぎるほどの反応をしているのに、真島は敢えて逐情を許さず、桐生の雄の根本を指で押さえ、容易な吐精を不可能にしていた。



 --明け方、自分を抱いた男が漸く眠りについた気配に、桐生は躰中に散る残滓やその痕跡の何もかもを洗い流さずに気力だけで立ち上がり、連れ込まれた部屋を後にした。遥には昨夜のうちに早くは戻らぬ旨を伝えてあったため、彼女自身は孤児院で過ごすと決めて出かけたようだったが、このままの姿ではアパートに戻るわけにも行かず、そっと気配を消して訪れたはずのセレナで、何故か当然の如く待ち受けていた真島に発見されたのだ。
「おーおー、相当ヤラれたようやなぁ、桐生ちゃん。オスの匂いがぷんぷんするでぇ?」
「兄さん……!」
 自分に関しては殊の外勘の鋭い真島のこと、全てを隠し通すことなど不可能だとは思っていたが、まさか直後の現場で捉えられるとは思っても居らず、桐生は一瞬で己の全身から血が音を立てて引くのが解った。
 抵抗する気力は既に無く、体力さえも尽きかけた桐生がその場に崩れ落ちたとき、手袋を外し血の通う暖かな真島の手が自分を支え、抱き上げて3人掛けのソファに寝かされる。
「兄さん、何でここに……」
「わしが桐生ちゃんのことで解らんことがあるわけないやろが。……どうせシャワーも浴びんと戻って来たんやろ? 躰拭いたるから、服、脱ぎぃや」
 あくまでも穏和に、優しく語りかけるような素振りでいながらも、笑いの欠片すら浮かばぬ真島の目に、桐生は抵抗を諦め、大人しくシャツを脱いだ。如何に桐生が背を向けていようとも、真島の目が一分の隙も見逃すまいと自分の一挙手を見つめているのが解る。明らかに情事の痕と解る小さな鬱血や歯形、そして手首に残る拘束の跡までも、凍てつくような真島の眼光に晒され、桐生の全身に小さく震えが走る。
「そんなに怯えんといてもええよ、桐生ちゃん。……叱ったりせぇへんから」
「……っ!!」
 離れているとばかり思っていた真島の声が突如耳元で囁かれ、桐生の首筋が総毛立つ。
「この擦り跡見る限り、穏便に、ちゃぁんと抱かれた訳じゃないようやし……流石にこのまんまじゃ戻れんわなぁ。遥ちゃんに見つかったら、何言われるか解ったもんやない」
 体温に近い、温めの湯で絞ったタオルを桐生の首筋にあてながら、真島は吐息と共に耳元で囁く。その吐息の孕む熱が、逐情の余韻醒めやらぬ今の自分にとって、どれ程神経を刺激するのか解りきった上で。
 幾度もタオルを絞り、収めると言うよりも寧ろ快楽を引き出されるように背中を拭かれ、「ほな、湯換えてくるわ」と立ち上がりかけた真島へ、喘ぐように桐生が乞うた。
「兄さん、後は…自分で、やります、から…っ…」
「遠慮せんでもええやないか。今更、やろ?」
 止めようとする手を簡単に振り払われ、更には指先でトラウザーズの裾を引っ張りつつ告げられた言葉に、桐生は自らの失策を悟る。
「それよか、下の方がもっとヤバいやろ、桐生ちゃん。……脱ぎ?」


 --桐生は僅かに逡巡を見せたものの、それ以上の抵抗は、最早無いに等しかった。


 俯せられ、腰だけを高く上げる屈辱的な体勢を強いられて、凌辱の後も生々しい桐生の秘部が真島の眼前に晒される。猛る欲望そのままに貫かれたそこは腫れ上がるように赤く充血し、最奥からは白濁がとろりと糸を引くように零れ出していた。
「こらエラいことになっとんなぁ。さぞかしベタついて気持ち悪かったやろに、なして黙っとったん?」 
「兄さ、ん…っ……!」
 後孔の周囲をそっと撫でるように指先で触れると、桐生のそこがびくりと蠢く。その動きに誘われるように、内部に放たれた男の精がぐぷりと溢れた。真島はそのぬめりを借りるように指先を湿らせると、ゆっくり、探るように桐生の最奥へと、長い己の指を挿し入れる。
「ぅ、あ……!」
 びくびくと全身を戦慄かせ、桐生の内部が生き物のようにうねって真島の指先を捕らえる。本来ならば異物を排出しようとするその動きが、何故か奥へ奥へと導かれるように思えて、桐生の躰をこれ程までに慣らした自分の執念を思い、真島は皮肉な笑いを浮かべた。
「あかんなぁ、ぐじゃぐじゃやで。こんなん放っといたら間違いなく躰おかしなるしな……しゃあないからこのまま掻き出したるわ」 
「兄さん、もう、止め…っ……!」
 端から桐生の答えを容れる気などなく、真島は独りごちるようにそう呟くと、それまで探るばかりだった指先を掻き出すような動きに変える。桐生の内部で動かすたび真島の指先へねっとりと絡み付いてくる白濁が、桐生を抱いた男の、彼に対する強い執着をそのままの熱さで知らせて来るようで。
「こぉんなハラ一杯になるほどぶち込まれて、可哀想になぁ。……出されるばっかで、桐生ちゃんはまだ出し足りないやろに」
 最奥に触れられ、内部を真島の指先で刺激されて、ある種不完全燃焼に近かった桐生の躰へ再び悦楽の火が灯る。相手のペースで、内部から擦られ追い上げられた躰は、桐生の雄としての開放を幾度か許しはしたものの、それは容器一杯になった液体が溢れ出るような放出の仕方ばかりで、堪えに堪えた果て、漸く許された開放の快楽からはほど遠いものでしか無かった。
「うぁ、あ、兄さん……、止め、…っ…!」
 既に桐生の雄は再び熱を孕んでその頭を擡げ、先端から間違いなく愉悦の証を滲ませている。以前から真島の手で幾度も触れられ、自分でするよりも馴染んだそのリズムで擦られることを覚えた桐生の躰は、いま真島がその手で数回扱きさえすれば、容易にその熱を吐き出すであろうほどに昂っていた。
「駄目や。中身ぜぇんぶ出したらんと、綺麗になれへんやろ。別にわしは他人の出したもんなんか残ってても平気やけどな、それじゃ桐生ちゃんが辛くなるばっかしやろが。そんなんわししたないわ。つまらへん」 
 内部を探り、触れるほどに解る昨夜の行為。「桐生を抱く」のではなく、「欲望の赴くまま龍を汚し、引きずり降ろして手に入れる」ために犯す。自分の欲求を遂げ、想いをぶつけるのに必死で、桐生の躰のことなど思い遣る暇もなかったであろう情事の痕跡ばかりが目に付いて、真島は桐生の躰を苛んだ相手に対し微かな腹立ちを覚えた。
「さぁて、出すで桐生ちゃん、力抜きぃや」
 そう声を掛けて、弛緩するどころか緊張でより力の籠もる桐生の内部を、真島はうっすら微笑みさえ浮かべながら無理矢理指を引き抜き、下に当てたタオルで掻き出した白濁を受け止める。
「く……! ……っは、あ、あぁ!!」
 タオルを折りなおし、綺麗な面で桐生の背中から太腿の裏まで拭き直すと、真島は替えのタオルを熱めの湯に湿らせて、ひっそりと欲情して張り詰める桐生の雄に押し当て、両手で包み込んだ。
「う、あああぁぁ!!」
 過敏になった粘膜に、突然人肌以上の熱を当てられ、桐生の膝がガクガクと揺れる。その衝撃でも桐生の雄が開放されることは無く、一瞬何が起きたのか解らない状態で、桐生は哀願するように真島を振り仰ぐ。
「兄さん……。もう、許し……」
「何をや? 桐生ちゃん。わしはぜぇんぜん怒ってへん言うとるやろが。……何をそんなに許されたがっとん?」
「……っ……!」
 真島の手での開放を求めて桐生の躰は疼くものの、散々苛まれた筈の現状では、それを素直に口に出すことが流石に憚られて。 
「出したいか、挿れられたいかで迷っとんの? ……で、恥ずかしゅうて言いたない、と」
「…………」
「ほんま解り易い子ォやなあ、桐生ちゃんは。ま、今回はおねだりせぇへんでもしたるよ。散々苛められて辛い思いしたやろからなぁ。 いっつも通りにわしの挿れて、扱いて達かしたるわ、安心し。
 ……せやけどな」
 それまで優しく労るようだった真島の声音が、一瞬にして変化し、熱を保ったままだった桐生の雄の先端を強い調子で撫でる。
「一体どっちにヤラれて来たん? 教えぇや」
「ひ、ぁ…っ…!!」
 決して開放には至らせず、指の腹で桐生が一番弱い先端の部分を擦りながら、真島はもう片方の手でびくびくと震える雄の根本をぐっと押さえ込んだ。
「あ、あぁっ! や、兄さ、ん…! 兄さんっ……!」
 その暴力的な愛撫から逃れたくて、桐生は拒むように頭を振る。きゅっと寄せられた眉根に苦痛だけでない明らかな快楽の色が見えて、真島は揶揄するように笑った。
「ほんまは嫌やないやろ、桐生ちゃん。やぁさしく、気持ちようしたるから、素直に言ぃ……?」
「……っ、く…、う……!」
「どぉせ桐生ちゃんをこうまで出来るヤツなんて、堂島のオヤジのガキか、関西のパツキンのどっちかやろ? ……言うてみぃや、別に奴らの命ァ奪りになんぞ行かへんから」
 現東城会5代目代行と、元堂島組組長との間に生まれた一粒種。不動明王を背に負う、いずれは堂島組の二代目を目される男--堂島大吾。そして、その背に負う黄龍故にか、おなじ龍の魂を持つ桐生をライバル視し、死闘を繰り広げてきた関西近江連合代表の、血の繋がらぬ一人息子、郷田龍司。
 その二人が、桐生に対し容易ならざる執着を持っていることは既に真島の耳にも届いており、また何故か、桐生もこの二人に対しては己に近いものを感じてでもいるのか、今まで周囲にいた人間とは比較にならぬほど心を許し、傍に居ることを認めている節がある。
(--だからオマエは甘いと、あれほど言うたのに)
 近いものを感じて心を許すのは良いが、こうして望まぬ形で裏切られ、傷つくのは桐生本人だと以前から幾度も繰り返し教えた筈だ。自分に対して向けられる感情には恐ろしく無頓着な桐生が、ああやって二人を許し受け入れれば受け入れるほど、あの若造共は付け上がり、もっと多くを求め欲して桐生へ食らいついてくることなど、真島には容易に予想できる展開だった。
「……で、どっちなん? 桐生ちゃん、教えぇや」
 追い詰められて脈打つ桐生の雄の先端を、優しくさするようにゆぅるりと撫で上げて、真島は答えを促す。その射るような視線を向けられた桐生はとうとう逃げきれぬことを悟ったのか、観念するように目を閉じ、真島の耳元へ唇を寄せた。
「……   、に……」
「……ほぅか」
 小さく、掠れるような声で吐息混じりに桐生が告げた名を上手く聞き取ることは出来なかったが、それがどちらのものであろうと、今更真島にはどうでも良かった。二人のうちどちらかが桐生を手に入れるために動き出し、勢いとはいえそれを成し遂げたということ。そして、桐生もその相手を誰か認識した上で、抵抗及ばずとはいえ受け入れたという現実がそこにある。ならば、騙し討ちにも似た形で奪われた桐生という存在を、出し抜かれた方がこの先大人しく指を咥えて見ていることなどあるだろうか? 

(----答えは否、や)

「展開が読めるなら、悪い方へ転がる前にきっちりぜぇんぶ教えたるのが、理性あるオトナの役目やからなぁ……。さぁて、どう料理したろか」
 今回はいち早く気付き、直ぐさま後処理に回れはしたものの、この先も運良く同じ展開が迎えられるとは限らない。どんなに僅かな隙であっても、虎視眈々と桐生を狙うあの若造二人を相手にしては、流石の真島自身も完全に手が回しきれる自信は無くて。
(大人しく待つのはわしの性に合わんしなぁ。……いっそわざと隙見せて、返り討ちにしたろか)
 相手の出方を伺いながら反撃する防御戦は自分の得意とするところではない。一番得意なのは攻撃、しかも奇襲戦であるならば、執るべき作戦は唯一つ--「罠」だ。
「よし、決ィめた。……なぁ、桐生ちゃん」
 指先で、掌で相変わらず桐生を翻弄しながら、真島の脳内は恐ろしいほどに冷え切って冴え渡り、この先あの二人に対する策で渦巻いている。 
「ぁ、あ……。兄、さん……?」
 突然愛撫の手を止められて、桐生の潤んだ瞳がうっすらと開かれる。
「今からソイツに電話したり。『欲しかったら、生き残れ』ってなぁ」
「っ、あ……あ…!」
「今回は一人やったけど、いつまたもう片っぽにも狙われるかしれん。一番最後に桐生ちゃんがわしんトコへ戻って来るのはよぉ解っとるがな、流石にやられっ放しは腹立つからなぁ、ちぃっとばかし仕掛けたらんと。『大人しくお前のモンにはならん』て言うたればええんや。
 ……協力したって?」
 言葉と共に、真島は先ほどから桐生を欲しがっていきり立つ己を彼の後孔近くに押し当て、ゆるゆると動かしながらその熱と存在を主張する。
「っ、く……、……っ」
「欲しいんやろ? おねだりせんでも挿れたるさかい、電話しぃや、桐生ちゃん」
 桐生の根本を戒める指へ更に力を込め、それまで雄の先端を撫でていたほうの指先で、真島は充血してぷくりと尖った胸の突起を摘み、擦り上げた。
「っあ、ああぁ!」
「相変わらずオンナノコみたいにココが弱いんやなぁ、桐生ちゃんは。……可愛いで。
 さ、もっと気持ち良ぅして達かせたるから、言ぃや?」
「兄……さ、ん……」
「ん?」
「……携帯、を……」
「せやな、今渡したる。ちょっと待っとき」
 桐生の背に、下半身に触れていた真島の躰が離れ、一時的に雄の戒めも解かれる。漸く熱の通った其処に、じわりと滲むように先走りが現れた。今すぐにでも己の両手で擦り扱き吐き出したいと願うけれど、そうしたら最後、真島が満足するまで何をされるか知れたものではなく、そんな恐ろしい賭に出られるほど、今の桐生には気力も体力の欠片さえも残ってはいなかった。



 --そして、通話が終わるか終わらぬその瞬間、桐生が待ち望んだ真島の雄が最奥に訪れ、その灼熱が身を焦がすように桐生の内部を責め立てる。
「っあ、アッ、アアァァ!」
 桐生の内部へ僅かに残ったものと、真島の雄が零した先走りでぐちゅぐちゅと音を立てながら、桐生の後孔が真島の雄を飲み込んでゆく。背中の龍を舌でなぞられ、その存在を小さく主張する乳首を捏ねられてなお放出は許されず、桐生の根元は戒められたまま。
「兄さん、も、……ぅ……!」
 律動する腰の動きに合わせて内部を抉られ、真島の先端が桐生の前立腺を擦り立てる。声も出せぬほど強いその快楽に、桐生の全身が解放を求めてびくびくと脈打った。
「……せやなぁ。ご用も終わったし、今回はこの辺で許したるわ。……達ってえぇで」
 優しくそう声を掛けると、真島は根本の戒めを解き、掌と指先全てで桐生の雄を擦り扱いて桐生の吐精を促す。真島の両手が桐生の雄に触れて新たな快楽を生む度に、腰の奥、真島の雄が揺すり立てる其処から、願っていた逐情の熱が呼び覚まされぐいぐいと上がって来るようで。
「っあ、あああ! 兄さん、……兄さ、ん…っ……!!」
「達きや、桐生ちゃん。……目一杯イイ思いして達きやァ!」
 昂ぶらされ、幾度も塞き止められた快楽の波は、高く激しい勢いそのままに桐生の全身を包み、解放へと押し流していった。
 




 --吐精と同時に気を失うようにして落ちた桐生の意識が漸く戻ったのは、それから四半日近くが経過した昼過ぎのことだった。
 荒れ狂うような情欲の嵐は既に過ぎ去り、真島は眠る桐生の躰を再び清め直したらしく、桐生自身はいつの間にか真新しい下着までも纏わされ、ソファに横たえられていた。
「……兄さん……?」
「あぁ桐生ちゃん、目ぇ覚めたんか。……ご気分はどや?」
「まだ、怠い…です……」
「そらそや。あんだけヤラれたのにもう体力戻っとったら、どんな化けモンやねんな」
 真島は笑いながら、機嫌良さそうにくしゃくしゃと桐生の頭を撫でる。……その手がいつもの黒革のグローブに包まれているのを見やり、桐生は自分が気を失う前、真島の目にあった狂気の陰がすっかり身を潜めてしまい、いつも通りの彼に戻っていることに気付いた。
「散々啼いたから喉乾いたやろ。……飲むか?」
 鈍痛の走る躰を無理矢理起こして、桐生は真島から渡されたミネラルウォーターのペットボトルに口をつける。ほんの僅か冷やされただけの水が殊の外美味いと感じるのは、それほどまでに喉が渇いているせいだろうかと桐生は思う。ペットボトルの半分以上を一気に飲み干し、桐生は重い躰を再びソファへ横たえると、真島がその傍へやってきて、桐生が飲み込みきれず零した水の跡をそっと唇で辿った。
「……しっかし、不動明王に黄龍とは、またエラいもんから好かれたもんや、桐生ちゃんも」
「兄さん……何を、言って……?」
 真島の言う言葉の意味が解らず、桐生が訝しげに眉を寄せ真島を見上げる。
「倶利迦羅竜王、って知っとるか? 不動明王の化身としての竜王のことや」
「……倶利伽羅、竜王?」
 全く聞き慣れぬ音の羅列に、桐生の頭が微かに振られた。
「倶利迦羅竜王ちゅうのはな、岩上で火炎に包まれた竜が剣に巻きついて、それを呑もうとする様で表される、不動明王の化身のことや。要は不動明王と龍は同じもの、っちゅう概念で出来た神様のことやな。
 まあこの場合の龍は黒竜やけど、竜は龍に等しく、また不動明王も竜の化身ちゅうことで、要は三つの等しいもんが、それぞれ姿を変えたと言うこともできる訳で……結局は同じものを表してるっちゅうコトになるわけや」
「不動明王と等しい、龍……」
 --その名を聞いて思い出すのは、それぞれを背に抱くあの二人の姿。それはつまり、彼らは自分と等しく、また自分は彼らに同じ意味を持つ存在と言う意味で。
「せや。あのガキら、桐生ちゃんを理想か何かと勘違いして、オマエを倒すか、手に入れるかすれば何かに成れるような気ィがしてんのやろな。えらいこと必死になっとるけど、結局不動明王も龍も同じものっちゅう観点から見れば、自分の尻尾追ってぐるぐる回る犬とおんなしことやっとる訳や。……おもろいなぁ?」
「……俺が、あいつらと同じで、あいつらもまた俺とおなじものだと、……そういう事、ですか」
「意味だけを拾えば、っちゅうことや。本来なら黄龍が皇帝を示す存在やけどな、あの二人の中では桐生ちゃんの「龍」を別格と捉えて、おんなし者同士、お互い自分を追っかけて必死こいて戦っとる訳や。--なかなか難儀なもんやと思わんか?」
 嘗て失われた己の半身を追い求めるかのように、己と同一の存在を追い、捕らえようとして必死になっている二人。--それはまるで、惹かれ合う恋人同士のように堅く、強い絆で結ばれているようにさえ見えて。
「……あの二人、気付いてねぇって訳ですか」
「おぅ。自分らが戦っとる相手は、所詮自分の影やっちゅうことやなあ。ほんま難儀なガキばっかしや。『堂島の龍』の名がそんなにも欲しいらしいわ。
 ……ま、近いからこそ取り入れたい、一つの完全なものになりたいっちゅうのも解らんでもないが、ましてそれが桐生ちゃんなら、尚更なのかも知れんなぁ」
「近過ぎると、却って解らねえもんなんだなぁ……」
 桐生が長嘆して呟くと、真島の手がそっと伸びてきて頭に触れ、よしよしと労るように撫でられる。
「まぁ気にせんでええよ、桐生ちゃん。……それよか、遥ちゃん迎えに行くまでまだ時間あるんやろ。起こしたるから、もう少し寝とき」
 真島にされる行為の中で実は桐生が一番喜ぶそれは、また密やかな欲を呼び起こす色を持ったもので、桐生は照れるように目を伏せ、ソファに突っ伏した。
「は、い……」
 ……その後少しして聞こえてきた安らかな寝息は、桐生が現在、苦しい過去の夢に苛まれていない事を知らせていて。
「……あんまいい夢見られる訳でもないんやしな。ゆっくり休みや、桐生ちゃん」
 強い意志を秘めたその瞳が、再び開かれるその僅かな間だけでも。何よりも彼が辛い夢を見ないためには、躰にそんな余裕さえないほど追い詰めて啼かせるのが一番だと真島は知っているから。
 --けれど、この自虐と自傷癖の強い龍を啼かせて安らかな眠りに誘うのは、さほど楽な作業ではないというのに、それを知らぬ二人の若造が真島から桐生を奪うべくやってこようとしている。


 誰のものでもあり、また誰のものでもなく。
 龍は龍以外のものたり得ず、また他と交わることもない。


「さぁて、大人しく譲る訳にもいかんし、そんな義理もないしなぁ。
 桐生ちゃんへ所有権振りかざす意味がないことに、あのガキらがいつ気付くか」


 唯一孤高の龍を抱くには、龍自らがそれを望まぬ限り不可能であり、つまりは抱いた時点で龍に受け入れられたも同じで、さもなくは降りて来る事すら無いという事を、あの二人はまだ気付く由もない。
 その事実に果たして彼らがいつ気付くのか。
「優しく教えてやる筋合いもなし、罠仕掛けて解らせるしかないやろなぁ……」


 安らかな寝息を立てて眠る桐生の、かたちの良い耳に唇を落としながら真島は呟く。


「--でもなぁ、この龍殺るんはわしだけやで。命ァ奪って、全部の血ィ飲み干して一つになったるわ。
 一人残すような野暮はせえへんから安心しぃや。なぁ、桐生ちゃん……?」


                             <了>



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