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ooo



 体がふらふらするのが分かる。
 飲み過ぎた。
 余り思考が働かない頭を押さえながら羽目を外した事を桐生は大いに後悔した。


 少し気が緩んだだけ


 今日は東城会の幹部らで集まり酒を呑みながら話をしていた。桐生は堅気なのだ
 が呼ばれ、幹部らに奨められるがまま浴びるように酒を呑んだ。
 なぜ集まったかは覚えていないが、そんな事は今どうでもよく、無事家に帰れる
 のかだけ考えていた。

 足が覚束ない。
 酒は飲んでも飲まれるなとは言うが、今の自分はまさに飲まれたといっても過言
 では無いだろう。
 桐生はそんな自分を笑った。

 酒に弱い訳ではなく、寧ろ強い筈。
 けれどこうなるまで酔ったのは桐生の真面目な性格のせいでもある。
 当分酒は飲まない、と自分のなかで誓った。
 桐生は今この状態で人込みの中を行くのは危険、そう判断し、人通りの少ない路
 地裏へ足を進める。

 しかし絡んでくる輩はやはりいた。
 相手は四人。恰好から見て、ただのゴロツキだろう。
 けれど足はふらつき、眩暈さえ感じる。こんな状態で勝てるのだろうか。
 桐生は一瞬逃げる事を考えたが、逃げる事ができる状態では無いとすぐ諦めた。
 思考を精一杯巡らせど、考えは浮かばない。
 そんな桐生を見て怯えているとゴロツキは勘違いしたらしく、下品な笑いをしな
 がら殴り掛かってきた。

 結果は、勝った。
 けれどもう立ち上がれる程の力は桐生には残っていない。
 いつもは訳無いのだが、やはり状況が悪かった。
 桐生は壁を背に地面へずるずると座り込み、意識を手放す。


 喉を冷たい何かが流れる。自然と喉が動き、それを飲む。
 どれくらい経ったのだろうか。
 少し体をよじれば、ふわ、とした心地よい感覚。
 桐生はそのまま寝返りをうった。

 地面に倒れた筈なのだが、こんな心地よい地面があったとは。
 いや、アスファルトの地面にこんな場所がある訳が無い。
 ついに天に召されたか。桐生は笑えねえ、と自嘲した。

 ギシ、と耳元で軋むような音がして、そこが沈んだ気がした。
 すると、自分の意思ではないのに体を優しく仰向けにされた。
 肩あたりに温かい何かが触れている。
 死んだあとにも感覚というのは消えないのかと思った。
 そういえば一度も目を開いていない。
 死んだ後はどんな世界にいるのか、きっと自分は地獄だろう。
 いや、これは地獄や天国ではない。桐生はゆっくりと目を開いた。

 目の前には見覚えのある顔があった。

 「真島の兄さん…!?」
 「おお、起きたか桐生チャン!」

 にっ、という効果音がつきそうな程の笑顔で顔を覗き込むのは、今は自分と同じ
 堅気になった真島であった。
 真島は状況が把握できず、困惑の色を浮かべる桐生から離れ、ベッドの淵に座る。

 「…これはどういう事なんでしょうか」
 「どういう事も糞もあるかい。たまたま街ぶらついとったら桐生チャンが倒れて
 るんやもん、ビックリしたわ」

 どうやら桐生は真島に幸いにも見つけられ、ここまで運ばれたらしい。
 桐生は申し訳無さそうな顔をしながら謝罪すると、真島は半身を起こした桐生を
 ベッドに押し付ける。

 「…真島の兄さん」
 「なんや」
 「遥が家で待ってます」
 「心配せんでも、ワシが電話しておいたわ。これからは呑みすぎんようにやって。
 強い嬢ちゃんやなぁ」

 真島は桐生の肩を押さえつけながら笑う。
 そんな様子を見て、桐生は小さく溜息をついた。

 「あ、今溜息ついたやろ!酷いわァ桐生チャン、ワシがこうして助けてあげたゆ
 うのにそないな態度でええの?」
 「…それは、」
 「恩を仇で返すっちゅうのはまさにこの事やな…ワシ今凄いショックやわ」
 「……」

 桐生は酷く落胆した態度を見せる真島を見て、もう一度溜息をつく。
 そして退いて下さいと言う。真島はええよもう、と素直に退いた。

 「ホンマにありえへん…桐生チャンの…」

 真島が言い終わる前に、桐生は真島のジャケットを自分の方へ引き、言葉を紡い
 でいた唇を己の唇で塞いだ。
 軽く触れただけで、すぐさま顔を離す。

 「…これで良いですか」

 そんな桐生の行動に真島は一瞬静止し、その後万円の笑みをいっぱいに浮かべた。

 「やっぱ桐生チャン好きやわ、愛しとるで」

 唇を何度も合わせながらベッドへ押し倒す。
 桐生は今夜は帰れないな、と心の中で呟き真島の背に腕を回した。








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