忍者ブログ
Admin*Write*Comment
うろほろぞ
[732]  [731]  [730]  [729]  [728]  [727]  [726]  [725]  [724]  [723]  [722
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




 特に何もすることがないので家でごろごろとしていたら、どこからか宅急便が届いた。
 贈り主は風間新太郎。しかもけっこう大きな箱が3つも届いた。どれも、軽くて桐生を呼ぶまでももなく、居間へと俺だけで運ぶ。
「おい、何か風間から届いたぞ」
 宛名は桐生と遥と何故か俺だ。
 品名を見ると「衣類」となっている。何で風間が俺達に服なんて送って来るんだ? と不思議に思っていたら、遥が率先して包みを開けだした。
「わあー! 可愛いーー!」
 中に入っていたのは、黒のワンピースと赤いリボンと黒猫のぬいぐるみとシンプルな靴だ。
 ぬいぐるみは針金か何かが入っているのか、遥の肩に止まらせて固定ができる。
 本当に黒猫が遥の肩に止まっているみたいで、可愛い。
 遥がワンピースを胸元に当ててくるりと回ってみる。サイズはぴったりのようだ。
 どこかで見たことのある服だなー。と思って眺めてたらぴんときた。急いで庭に走って使い込んだホウキを持って来て手渡したら、もう間違いなかった。
「これ、キキじゃねえか!! 魔女の宅急便!」
「本当だー! わかった! 今日ハロウィンだから風間のおじさんからのプレゼントだよ」
 なるほど。さすが、風間。なかなかイキなことする。
 遥のワンピースは素材もなんだかすごくスベスベしたよさそうな奴で、ハロウィンだけでなく、普段着でも着られそうなものだった。気がきいている。
「あ、手紙が入ってる。『みんなで遊びに来て下さい』だって」
「みんな?」
 そういえば俺と桐生にも箱が届いているのだ。桐生は知らない間に箱を向うの部屋に持って行って着替えているようだった。どうもあいつにしてみたら通年の儀式のようだ。
「おい、桐生、何が入っていた」
 隣の部屋をひょっこりと覗くと、そこにはダースベイダーがライトセイバーを構えて不気味な呼吸音を響かせながら立っていた。
「近づくんじゃねえ!!」
 思わずテレビの上に置いてあった赤べこを投げつけそうになる。
 だが、桐生の箱に入っていたのものがその衣装だったようだ。
 ていうか、何の疑問もなくそんな格好をする桐生がよく分からないし、風間も何故こんなものを送って来たのか分からない。
「うわー! おじさん、きまってるねえ」
 俺がこっちに来た間に遥もキキに着替えていた。遥はものすごく可愛いのだが、桐生は真剣、暗黒面だ。
 ライトセイバーをフォン! フォン!! と振り回してカッコつけているが、ここが日本家屋というのを忘れてもらいたくない。
「ねえねえ、伊達のおじさんは開けてみないの?」
 と遥がくいくいズボンの裾を引っ張って来るが、はっきり言って何が入ってるか分かったもんじゃねえし、恥ずかしい仮装とかだったら嫌なので、このまま開けずおくことに決めた。
 その時、ポケットの携帯電話が鳴った。着信は風間からだ。だが、通話に出たのは柏木だった。
「もしもし?」
「ああ。伊達さん? 荷物は届きましたか?」
「届いた。でも、わざわざ確認の――」
「だったら至急それらを身に着けてこっちに来て下さい!! 数か足りねえ!!」
 柏木はものすごく切羽詰った様子で、電話も唐突に切れた。
 一体何なんだ?
 とりあえず、遥と桐生に事情を説明して、車に乗った。
 途中、桐生が話かけてくる。しかし、ダースベイダーのお面をかぶったままなので、話しにくそうだった。
「ダテ、サン(シュコー)。キイテ、クレルカ?(シュコー)」
「いや、聞いてやってもいいけど、お前、話す間だけはそれ外した方がいいんじゃねえか?」
「実は風間の親っさんはこういう仮装パーティーみたいなイベントが好きなんだよ」
「まあ、そうじゃねえとこんなもん送ってこねえよな」
「で、ハロウィンは毎年構成員が仮装で盛り上がるんだが……いつもそこに親っさんの命を狙おうって輩が紛れ込むんだ。俺達はパーティーを成功させるために、その輩を退治しなくちゃならねえ……」
「お前、そんなの俺と遥は関係ねえだろ!? 勝手に人数に入れんなよ!」
「それ以外に、親っさんにお菓子をもらう方法はねえ!」
「そんなことねえだろ! 他の選択肢あるだろ!! 大体そんな危なっかしい場所に遥を巻き込む気がしれねえ!」
「大丈夫だ! 俺が遥と伊達さんを必ず守る! さあ、お菓子をもらいに行こうぜ!」
 桐生はやる気まんまんだし、遥も後部座席で「お菓子v お菓子」と節をつけて歌っている。なんだか引き返せない状況だ。
 嫌だなあと思いつつ風間組到着。しかし外観は特に変わったことはない。
 再びダースベーダーと化す桐生を戦闘に事務所に突入すると、フロアでは、チンピラどもをジェイソンが鉈でぼかぼか殴っていた。背格好からしておそらく新藤だと思うのだが、ジェイソンの仮装が完璧すぎて、ちょっと自信がない。
 しかも新藤は鉈を振るう度に「ヌハァ!」とか「フヌー!!」とか奇声を発するので、すごく気持ち悪い。
「えーと? 新藤か?」
 控えめに声をかけると、新藤はホッケーマスクを上にずらした。やっぱ新藤だった。
「ああ。これは伯父貴に伊達さんに遥さん」
「新藤、今年、お菓子何?」
 桐生もマスクをずらして声をかける。しかし質問間違ってねえか。
「アレです。芸能人のやってる牧場の生キャラメルセット」
「マジで? 遥、よかったなあ」
「わーい! キャラメル! キャラメル!」
 新藤は気絶した構成員達を部屋の隅に片しだした。
「いやあ、今年も風間の親爺を亡き者にしようとする輩が多くて困りますよ。風間の親爺はうちの親父と仲悪いですけど、親に変わりは無いからお守りしなくちゃだしねえ」
「あ? 錦山も来てるのか?」
 だが、風間を嫌ってる錦山にしてみたら、これは暗殺のチャンスの状況なのでは? 新藤だって、錦山に協力して、邪魔者を排斥しただけにすぎないし。
 うわ、大変なところに来てしまった。知ってしまった以上は見過ごせねえ。
「桐生、錦山を探すぞ!」
「ああ、キャラメルを独り占めされるかもしれねえ!」
「エイエイオー!」
 遥が激を入れてくれたので、3人で風間のいるはずのフロアに行く。
 そこにもここにも、雑魚のように幾多の構成員が潰されていた。
「大丈夫かな? 風間のやつ……」
 そう言った瞬間に、観葉植物の陰から人影が飛び出した。桐生に庇われ後ずさる。
「遅かったですね? 桐生の伯父貴……」
「荒瀬?!」
 黒いスーツ、黒いサングラス、黒いネクタイ、黒い靴に二丁拳銃を構える荒瀬。
 いつもと服装が違うが、危険な雰囲気はそのままだ。
 桐生がライトセーバーをヴン! と構える。
「いやいや、俺はここであんたがたと争う気はありませんよ。あくまでも、風間の親爺の命を狙う輩だけをヤってるんです」
 銃をくるくると回す荒瀬。
「さて、ここで問題です! 俺の仮装は誰でしょうか? 正解したら通ってくれて構いません」
 荒瀬が再び銃をビシリと構える。
 桐生が面をいったん外して荒瀬をしげしげ見て言った。
「『あぶない刑事』の舘ひろし!」
「ブー! 伯父貴はもう回答権なし」
「ええ?」
 遥が荒瀬をじっと眺めて応える。
「『リターナー』のときの金城武」
「ブー! お嬢ちゃんももうダメー!」
 二人の目が俺に注目する。気まずい。これは外せない。ダメもとで適当に答える。
「『レザボア・ドッグス』のMr.ホワイト』
「ピンポンピンポン! お通り下さい!」
「ええ? マジかよ? ダメもとだってのに」
「じゃあ、俺は次のチャレンジャーのために隠れます」
 そう言って荒瀬は今度は柱時計の中に隠れだした。どういうしくみかは知らないが、振り子を外してそのスペースに身を縮こまらせて隠れる。今だけこの時計は荒瀬時計になっている。
 とりあえず、風間の無事を確認しなくては、廊下を進み、あともう少しで風間の部屋というところで、一人の剣客がスーツの男と闘っていた。
 よく見ると剣客は錦山だった。もうわけがわからない。
 錦山は髪を一本に束ねてくくり、袴姿で闘っている。男が銃を抜きかけたが、それを柄の部分で殴り落とし、刀の峰で男を殴り倒した。
「錦山さんすごーい!」
 遥が小さく拍手する。
「何だ? 来てたのか?」
 錦山は男をけり倒すと俺達の方を見た。
「堀部安兵衛?」
 と聞くと、
「そ、そんないいモンじゃねーよ! 人斬り以蔵だよ!」
 と答える。峰打ちしてたけど。
「途中柏木さんから電話入って急いで来た」
 と桐生が会話に入って来る。
「ああ。俺らの方が早かったんだな。ったく、毎年毎年まいるよな」
 どうやらこいつらにとってはこれがいつもの行事のようだ。なんだか巻き込まれたのがすごく不本意だ。
「遥、とりあえずお菓子もらって帰るか?」
「そうだね」
 風間の部屋のドアを開けると、風間が背を向けて座っていた。俺達の気配を感じて椅子ごと振り返る。頭には帽子、そして高そうなパイプ。
「地球か……何もかもみな懐かしい……」
 風間は沖田十三の格好をしていた。
 あまりの仮装っぷりに、俺はその場にへたりんでしまったが、桐生と錦山は割りと普通だった。
「親っさん、今年沖田艦長かぁ」
「あん? 去年、999の車掌だったろ? 松本零士でかぶってね?」
「ねえねえ、風間のおじさん何の格好してるの?」
「ああ、遥はわかんねえだろうなあ……とりあえず、菓子でも喰うか?」
 蟻のようにキャラメルに群がる3人。
 何だよ、けっこう錦山も仲よさそうにしてんじゃねえか、心配して損した、とか思ってたら、ふと風間がこちらを見て言った。
「伊達さん? 俺が送った森雪の衣装は着てもらえなかったでんすか?」
「俺、森雪だったのか?……」
 やはり開けなくてよかった。心の底からそう思ったところで錦山がキャラメルをもちゃもちゃ噛みながら言った。
「ふーん。伊達さん森雪か? じゃあ、俺が古代進やろう」
「何ッ!」
「すっこんでな、ジジイ」
「てめえ……錦山……古代君がいつそんな口の聞き方をした?」
 いきなり険悪になる錦山と風間。
 とうか、そこで何故険悪なるのかが理解できない。遥達は食べるだけ食べると遊びだした。
「おじさん、ライトセーバと勝負だー! とうとう!!」
「(シュコーシュコー)」
 結局錦山はもちゃもちゃとキャラメルを食う間ずっと風間にからんでいた。森雪が酸欠で死んだことさえも持ち出していた。
 森雪は関係ねえだろうに。
 ハロウィンってこんな祭りなのだろうか。違う気がして仕方がない。
 でも、生キャラメルはうまかった。
PR
kh * HOME * hh
  • ABOUT
うろほらぞ
Copyright © うろほろぞ All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]