07-02-17 02:56
[感謝の渡し物(龍が如く)]
(桐生・遥・伊達・沙耶)
―その日になった。
ある人はその日を知っていて結果を待ち望んでいたり、
ある人はその日を知っていながら知らない振りをしていたり…
はたまた本当に忘れてた者もいるものだ
当の本人も忘れていた。
渡される前は。
感謝の渡し物
「あ…」と遥は小さく呟いた。
デパートで今日の食材を桐生と一緒に買っていた途中だった。
「遥、どうした?」と桐生は遥を見る。
「ううん、なんでもないよ」
忘れてた…今日はバレンタインデーだった…。
桐生の後ろには大きなピンク色のハートの看板。
そこには大きく
「2/14バレンタインデー」
と書かれていた。
あいにく本人は気付いて居ないようだ。
「おじさん」
「ん?なんだ?」
「…欲しい物があるの」
「何だ、何が欲しいんだ?」
どうしたんだ?急にそわそわして…と桐生は不思議に思う。
「おじさんには内緒!」
「え!?」
遥の急な攻撃に驚く。
内緒だなんて…本当にどうしたんだ?
段々桐生は内緒の件よりも遥自身に心配する。
こういうのは男の俺にはどうしようも出来ない。
「私一人で買いに行くからおじさんは先に会計済まして待ってて!」
と本人も言う。
「大丈夫なのか?」
と遥に聞きながら千円を渡す。
…千円で遥の欲しい物…買えるのか?
ふとそう思った。
「ごめんね、おじさん、有り難う!」
遥の笑顔に微笑みながら不安を残しつつ、その場を離れた。
「よかったぁ~」
遥は少しづつ小さくなっていく桐生の背中を見て安堵の息を吐いた。
どうせなら桐生を驚かせたい。
いつもお世話になっている感謝として―…
とそこまで考えて我に返った。
「そうだ…手づくりはできないや…」
桐生は遥と過ごす為離れた時は殆ど無い。
作る時間が無いとわかると、出来上がっている物を渡して驚かすしかないのかな…と考えた時だった。
「うーん…ビターはお父さんには似合わないかな…」
と聞き覚えのある声がする。
「沙耶お姉ちゃん!」
「ん?あれ?遥ちゃん?」
と今時な感じの服を着た女性―沙耶―が気付いた。
桐生の良き相棒である伊達真の娘だ。
離婚して離れたらしいのだが遥と桐生が共に暮らす時に伊達と沙耶も共に暮らし始めたという。
「こんな所で会えるなんてね!」沙耶が遥の頭を撫でる。
「沙耶お姉ちゃんも、チョコを?」
「うん、今年は手づくりにするつもりなんだ」と言う。
「一緒に作らない?」
「え!?いいの?」
「いいのいいの!調度お父さんに居なくなってもらう口実できるし!」
「多分今頃桐生さんと一緒なんじゃないかな?」
「はぁー…」
喫煙室でひそかに溜息をしたつもりだったが周りに目線を集めてしまった。
気まずい中、また考えるのは遥の謎の行動の原因ばかり。
なんで一人で買い物なんか…?
「どうしたんだ…遥ぁ…」
「よぉ、やけにうなだれてるじゃねえか」
懐かしい声がする
「…伊達さん!」
「おう、久しぶりだな」
服は変わっているがやはり雰囲気は変わらないものだ。
「桐生、俺も多分、お前と同じ気持ちだ」
よいしょ、と桐生の隣に腰掛ける。
「伊達さんも?」
「沙耶も同じく一人で買い物に行っちまったんだ。しかもその前なんか『お父さん、ネクタイとか欲しいのある?』とか急に言うんだ。なんだかさっぱりだ…刑事やめたこと怒ってやがんのかな…就職しろとか…」
「まさか、娘さん、嬉しそうだったじゃないか」
「だけどよお」
二人でそんな話をしてる時に伊達の携帯に電話がかかってきた。
「ん、あぁどうした?…おぉ…わかった」
伊達は電話を切るとまた落ち込んだようにどかりと座った。
「娘さんか?」
と桐生が聞く。
「あぁ、どうやら遥と一緒らしい。部屋で何かするからしばらく二人でぶらぶらしてろ、だと…」
今度は二人で肩を落とす。
そして同時に溜息と
『どうしたんだ…』
と呟いた。
二人が甘い感謝のチョコレートを貰うのは、何時間か先の事…
[感謝の渡し物(龍が如く)]
(桐生・遥・伊達・沙耶)
―その日になった。
ある人はその日を知っていて結果を待ち望んでいたり、
ある人はその日を知っていながら知らない振りをしていたり…
はたまた本当に忘れてた者もいるものだ
当の本人も忘れていた。
渡される前は。
感謝の渡し物
「あ…」と遥は小さく呟いた。
デパートで今日の食材を桐生と一緒に買っていた途中だった。
「遥、どうした?」と桐生は遥を見る。
「ううん、なんでもないよ」
忘れてた…今日はバレンタインデーだった…。
桐生の後ろには大きなピンク色のハートの看板。
そこには大きく
「2/14バレンタインデー」
と書かれていた。
あいにく本人は気付いて居ないようだ。
「おじさん」
「ん?なんだ?」
「…欲しい物があるの」
「何だ、何が欲しいんだ?」
どうしたんだ?急にそわそわして…と桐生は不思議に思う。
「おじさんには内緒!」
「え!?」
遥の急な攻撃に驚く。
内緒だなんて…本当にどうしたんだ?
段々桐生は内緒の件よりも遥自身に心配する。
こういうのは男の俺にはどうしようも出来ない。
「私一人で買いに行くからおじさんは先に会計済まして待ってて!」
と本人も言う。
「大丈夫なのか?」
と遥に聞きながら千円を渡す。
…千円で遥の欲しい物…買えるのか?
ふとそう思った。
「ごめんね、おじさん、有り難う!」
遥の笑顔に微笑みながら不安を残しつつ、その場を離れた。
「よかったぁ~」
遥は少しづつ小さくなっていく桐生の背中を見て安堵の息を吐いた。
どうせなら桐生を驚かせたい。
いつもお世話になっている感謝として―…
とそこまで考えて我に返った。
「そうだ…手づくりはできないや…」
桐生は遥と過ごす為離れた時は殆ど無い。
作る時間が無いとわかると、出来上がっている物を渡して驚かすしかないのかな…と考えた時だった。
「うーん…ビターはお父さんには似合わないかな…」
と聞き覚えのある声がする。
「沙耶お姉ちゃん!」
「ん?あれ?遥ちゃん?」
と今時な感じの服を着た女性―沙耶―が気付いた。
桐生の良き相棒である伊達真の娘だ。
離婚して離れたらしいのだが遥と桐生が共に暮らす時に伊達と沙耶も共に暮らし始めたという。
「こんな所で会えるなんてね!」沙耶が遥の頭を撫でる。
「沙耶お姉ちゃんも、チョコを?」
「うん、今年は手づくりにするつもりなんだ」と言う。
「一緒に作らない?」
「え!?いいの?」
「いいのいいの!調度お父さんに居なくなってもらう口実できるし!」
「多分今頃桐生さんと一緒なんじゃないかな?」
「はぁー…」
喫煙室でひそかに溜息をしたつもりだったが周りに目線を集めてしまった。
気まずい中、また考えるのは遥の謎の行動の原因ばかり。
なんで一人で買い物なんか…?
「どうしたんだ…遥ぁ…」
「よぉ、やけにうなだれてるじゃねえか」
懐かしい声がする
「…伊達さん!」
「おう、久しぶりだな」
服は変わっているがやはり雰囲気は変わらないものだ。
「桐生、俺も多分、お前と同じ気持ちだ」
よいしょ、と桐生の隣に腰掛ける。
「伊達さんも?」
「沙耶も同じく一人で買い物に行っちまったんだ。しかもその前なんか『お父さん、ネクタイとか欲しいのある?』とか急に言うんだ。なんだかさっぱりだ…刑事やめたこと怒ってやがんのかな…就職しろとか…」
「まさか、娘さん、嬉しそうだったじゃないか」
「だけどよお」
二人でそんな話をしてる時に伊達の携帯に電話がかかってきた。
「ん、あぁどうした?…おぉ…わかった」
伊達は電話を切るとまた落ち込んだようにどかりと座った。
「娘さんか?」
と桐生が聞く。
「あぁ、どうやら遥と一緒らしい。部屋で何かするからしばらく二人でぶらぶらしてろ、だと…」
今度は二人で肩を落とす。
そして同時に溜息と
『どうしたんだ…』
と呟いた。
二人が甘い感謝のチョコレートを貰うのは、何時間か先の事…
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