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うろほろぞ
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「ふう…」
長年愛用している革張りの椅子に座った途端、樊瑞はため息をついた。
ここのところ、とにかく会議が多いのである。
大掛かりな作戦が幾つも同時にスタートした為もあるとはいえ、雁首そろえて話し合いばかりで時間を浪費しても良いものか。
現場の最高責任者である十傑集リーダーの樊瑞はそう思う。
十傑集はBF団の最高幹部であり、かつ全員が超A級のエージェントである。
役目は様々だが、常に第一線で作戦の遂行に当たっていてメンバーが全てそろうことは稀だった。
その為、本部のこういった会議(多くは策士の一人舞台であるが)の内容をまとめ、全員に伝えるのもリーダーたる樊瑞の仕事なのである。
「…これでは使い走りではないか…」
おもわず本音が出る。
もともと頭より体を動かしている方が性にあっているはずの自分が、会議だ書類だと官吏の真似事など勤まるはずもない。
こうなったらカワラザキに申し出て、リーダーなぞやめてしまおうか…
しかし、現在のメンバーを思い浮かべると躊躇してしまう。
十常寺は知性では申し分ないが、個性的すぎてリーダーには不向きだ。
幽鬼は人を束ねるタイプではなし、残月はなかなか見所はあるが新参故、難しい。
レッドと怒鬼に至っては、話し合いの前に血を見るだろうし…
「…」
結局自分しかいないのか。
いつものように其処に思い至って、ついでにいまいましい策士の顔を思い浮かべてしまう。
『樊瑞殿、これは我等のビッグファイア様の御意志ですぞ』
「やかましい!!」
思わず目の前の机に拳をたたきつけると、「きゃっ!」と小さな悲鳴が聞こえた。
「サ、サニー…」
戸口にいつの間にかサニーが立っており、心配そうな眼差しで樊瑞を見つめている。
「すみません…お呼びしたのですが、お返事が無くて…」
「いやいいのだ。すまん、考え事をしていたものでな」
樊瑞は可愛がっている少女を怖がらせてしまったことを後悔しながら、その場を取り繕った。
「おじ様、お帰りなさいませ」
しかしサニーは気にした様子も無くにっこりと微笑むと樊瑞のもとに駆け寄ってその手をとり、いつものように帰宅を迎えた。
「ああ、ただいまサニー」
サニーの笑顔をみて、樊瑞は心が温かくなった。
思わずサニーを抱えあげて、軽く抱きしめる。
「おじ様…?」
サニーは少し驚いたように身を引いたが、すぐにおとなしくなり、樊瑞の首に手を回す。
「おじ様、お疲れですの?」
「ん?いや、大丈夫だ。本部のいかつい面々の顔ばかり見ておると、サニーがあんまり可愛くて、ついな」
樊瑞がそう言って笑うと、サニーは頬を赤くして答える。
「いやですわおじ様ったら」
そんな他愛もないやりとりが、樊瑞の心を癒してくれる。
しかしこんな平和も長くは続かないだろう。
だが、いまはまだ、いいではないか…。
甘いことだと思いながらも、樊瑞はつかの間の幸せに浸るのだった。


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 覚えているのはその背中だけ。

 振り向くことのない背中。

 さしのべられることのない手。

 かけられることのない言葉。

 彼の中に私は存在していない。

「そんなことはない」

 嘘よ。

 嘘よ、おじさま。それは優しい嘘。

 彼の目は私をうつさない。

 好きも嫌いもない。

 無関心。

 それは・・・・・・なによりも哀しい。

 自分の存在が否定されているのだから。

 それでも。

 彼は私の父で。

 私が此処に在るのは。

 ・・・・・・彼のせいなのだ。







 父が消息を絶った。

 あまりに不可解なその消え方に、まわりは騒然としていた。

「アルベルトに何かあれば、お前にわかる。だがまだなにも感じないということは、彼は無事ということだ。そうだな?サニー」

 私に、というよりは自らに言い聞かせるような彼の言葉。

 そして彼は私が頷くことによりほっとする。

 でも。

 私が頷いたのは、彼を安心させるため。

 本当は・・・・・・確証なんて無い。

 確かに私と父はテレパシーで繋がっている。

 でもそれは、一方通行。

 私の回線はいつもオープン。送信も受信も、自分の意志ではコントロールできない。

 だが父は。

 ・・・・・・いつでもその回線を切ることができる。

 父の声なんて聞こえない。

 父が・・・・・・私を呼ぶことなんて無い。

 一度も。そう、一度も。

 父の声が聞こえたのはたった一度だけ。

 一年前のあの日あの時。

 身を引き裂かれるような悲痛な精神の声。

 父の精神にふれた一瞬。

 最初で・・・・・・そしておそらく最後の。

 あの日以来、父はいっそう遠くなった。

 その姿が、霞んで見えなくなるほどに。





 私はまだ子どもで。だから誰も教えてくれない。

 何が起きたのかを。何が起きているのかを。何が起ころうとしているのかを。

 父が何をしたかなんて知らない。

 父が何を考えているかなんてわからない。

 何も知らない。何もわからない。

 それでも。

 彼は私の父で。私のたった一人の肉親で。

 通じあえるのは、一緒に過ごした時間の長さでも、交わした言葉の数でもなく、この体に流れる血のためで。

「お父様・・・・・・」

 父の声を聞くことはできない。

 でも。

 父には私の声が聞こえるだろうか。

「お父様」

 私には何もできない。ただここで祈るだけ。

 優しい言葉もいらない。さしだされる手もいらない。

 ただ。

 此処にいて。

 私はただ祈った。

 胸の内に広がって消えない不安から、逃げるかのように。

 心のどこかで、その不安が的中することを知りながらも、それに気づかぬふりをして。

 ただ。

 祈る。













 窓からさし込む暖かい春の陽ざし。

 軽くはためくカーテンの向こう側には、愛し子の眠るゆりかごが見えて。

 こじんまりとしているけれど、それでもずっと望んでいた情景。

 ずっと欲しいと願いつつ、でも決して手に入らないものと諦めていたもの。

 願ったのはほんの小さな幸せ。

 小さくても、愛する人に囲まれた、暖かな家庭。

 生まれたときから、それは叶わぬ夢だとわかっていた。

 それが許される境遇でも、認められる環境でもないと幼いころから身にしみてわかっていた。

 目も眩むほどの華やかな暮らし。

 それと引き替えに、お互いの関係は凍てつくほど冷たい。

 誰もが本心を仮面の下に隠して生きている。

 私が生まれたのはそんな偽りに満ちた場所だった。

 小さくていい。華やかでなくていい。

 ただ、日溜まりの暖かさが欲しい。

 かなわぬことと諦めつつも、でも心の奥底でずっと望んできた幸せの情景。

 それが今・・・・・・ここにある。

 穏やかで優しい空間。

 あと一つ。

 あと一つのピースさえ揃えば。

 この幸せは完璧なものとなるのだけれど。

「それは・・・・・・贅沢というものかしらね」

 欠けているピース。

 足りない幸せのひとかけら。

 そう、ここには。

 ・・・・・・彼の姿がない。

 ここに彼さえいれば。

 もう他に望むことなんてない。

 でもそれは本当に、望むべくもないこと。

 得られないと思っていた幸せを、もうこれだけ手にしたのだから。

「それ以上望むのは、罰が当たるというものね」

 窓からさし込む陽ざしに手をかざす。

 穏やかな春の光に、薬指にはめられた指輪がきらりと光った。

 シンプルな、それでいて美しく輝くプラチナリング。

 今、私と彼を繋ぐのはこの小さな指輪だけ。

 あの日、指にはめられたこのリングを見て彼は、なんだこれはというように眉をしかめたけれど・・・・・・はずしはしなかった。

「まだ持っていてくれているかしら」

 私が彼にあげたただ一つのもの。

 こんな不確かなもので、彼を縛れるなんて思っていない。

 ただ一つくらい、証が欲しかったのだ。

 彼と過ごした日々の証が。

 彼はまだこの指輪のことを覚えているだろうか。

 気にもとめずに、もうどこかにやってしまっただろうか。

 それともいつも側にいるあの男が捨ててしまっただろうか。

 何の障壁もなく傍らに在れるあの男が妬ましくないといったら嘘になる。

 でも、私にも彼にできないことができる。

「あらあら、お目覚め?」

 眠っていた娘が起きたようだ。ゆりかごの中でもぞもぞと動く気配がする。

「おはよう。サニー」

 手を伸ばして、ぷにぷにとした頬をちょんとつつく。生後間もない赤子の肌はびっくりするほど柔らかい。

 きゃっきゃっと赤子もその小さな手を伸ばして私の指を掴む。

 大きく開かれた瞳は・・・・・・彼と同じ真紅の色をしていて。

 この娘が間違いなく彼の血をひいていることを物語っている。

 そう・・・・・・私にはこの娘がいる。

 この娘が私と彼とを繋ぐなによりの絆。

「あなた、お祖母様似ね」

 髪の色は私と同じ栗色だが、顔立ちは彼の母親を彷彿とさせるものがあった。

 彼の母親。「紅い魔女」。

 幼いころに二、三度会ったことがあるだけだが、美しい人だったと記憶している。

 黒く長い髪に強い意志の光を秘めた真紅の瞳。

 娘が生まれたとき、彼女の名をもらうことに何の躊躇いも感じなかった。

 むしろそれがごく当たり前のことのように、自然に娘をその名で呼んでいた。

「サニー」

 呼ばれたのが自分の名だと、もうわかるのだろうか。

 祖母と同じく強い魔力を秘めた娘。

 この娘はどんな生涯をおくるのだろう。

 国際警察機構とBF団。

 どちらの組織も強力な能力者は喉から手がでるほど欲している。存在が知られれば必ず組織の手が伸びてくるだろう。

 そうなれば、どちらに転んでも平穏な生活など望めない。

 それでも。

「きっと誰もが振り返るような美人になるわよ」

 諦めさせたくない。

 小さくても幸せを、その小さな手に掴むことはできるのだと。

 教えてあげたい。

 そして私にも。






 ・・・・・・幸せをちょうだい。






 暖かい春の光につつまれた、小さいけれど優しい家庭。

 初めて得た幸せな情景。

 この幸せが泡沫の夢のようにいつ消えるかわからないものであっても。

 ずっと陽の下で暮らしていけたらと。

 それだけを願った。
























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 なんだかとってもわけわからないほどオリジナルですが、説明するのももう面倒になってきたので(オイ)謎は謎のままということで・・・・・・
 どうやら彼女は生まれたばかりの娘を連れて逃避行中のようです。娘を超能力者集団に入れたくない一心からのようですが。でも結局はオヤジに引き取られて、悪の組織入りなんですな(笑)。






 ある日、衝撃のアルベルトは突然姿を消した。

 一両日後には帰ってきたのだが・・・・・・その時彼は一人ではなかった。











「アルベルト!」

「お主いったい今までどこに・・・・・・」

 前日から行方不明だったアルベルトの帰還の知らせをうけて飛んできたセルバンテスと樊瑞は、その理由を問いただそうとして・・・・・・絶句した。

 アルベルトの腕に、ある意味彼に最も似つかわしくないものが抱かれていたからだ。

 アルベルトは・・・・・・一人の赤ん坊をその腕に抱いていた。

 アルベルトは無表情だったが、その赤ん坊は何が楽しいのか、きゃっきゃっと声をあげていた。

「ア、アルベルト・・・・・・その子はいったい・・・・・・、え?」

「やる」

 一瞬出迎えた二人を見比べるとアルベルトは、つかつかと樊瑞の方に近づき、ぽん、とその赤ん坊を樊瑞に手渡して、そのまま歩き去ってしまった。

「え、あ、ちょっ、ちょっと、ちょっと待て!アルベルト!!わっ」

「おい、アルベルト!!」

 セルバンテスも呆気にとられたように赤ん坊を眺めていたが、身軽な彼は我に返るとすぐにアルベルトの後を追った。

 樊瑞も後を追いたかったが・・・・・・慣れない赤ん坊が腕の中にいるせいで、その場から身動きがとれなかった。

「・・・・・・そうだ」

 アルベルトは少しいったところで立ち止まり、わずかに振り返って付け加えた。

「そいつを泣かすなよ。・・・・・・泣かれるとうるさいからな」

「泣かすなって・・・・・・おい、アルベルト!この子はいったい・・・・・・えっ」

「ふぇ・・・・・・」

 樊瑞の大声に驚いたのか、早速泣き出しそうになった赤ん坊に樊瑞はあわてた。

「よ、よしよし」

 見よう見まねであやしてみる。

 その間にアルベルトの姿は見えなくなっていた。

 ・・・・・・結局そのまま樊瑞は、その赤ん坊サニーを育てる羽目になってしまったのである。






 サニーがアルベルトの娘だとわかったのもだいぶ後なら、そのサニーとアルベルトが強力なテレパシーでつながれているとわかったのはもっと後だった。

 アルベルトが「泣かれるとうるさい」と言った理由は、サニーが泣くと、どんなに遠くにいても、テレパシーでその波動がアルベルトに伝わってきてしまうんだそうな。












 後日談

セル(かなり恨めしそうに)「なんで私に預けてくれなかったんだ?私ならサニーを立派なレディに育て上げるのに」

アル「・・・・・・最初にお前らを見たとき、サニーが樊瑞の方がいいと言った」

セル「~~~~」

 サニーの人を見る目は確かなようで(笑)。

 その後清楚可憐に成長したサニーに「おじさま♪」と呼ばれている樊瑞を、柱の陰で歯ぎしりしながら見ているセルバンテスが目撃されたとかされないとか。

 そしてそのことと、樊瑞の胃に穴をあける陰湿な嫌がらせが増えたことに何か関係があるのかは・・・・・・










 「なぁにぃーッ、サニーが急病だと!?樊瑞!」
 「ああ、いま十常寺が診ているが・・・かなり悪いようだ」
 衝撃のアルベルトはおのれの不注意を呪った。カウントダウンを控えた「地球静止作戦」に没頭するあまり、家庭をほとんど顧みなかった報いが、こんな形で訪れるとは。
 「どうなのだ、十常寺」
 「東洋医学を極めし本職、古今未曾有の奇病なり。薬石功なく病膏肓(やまいこうこう=手のほどこしようがない)、余命は半日ああ無常・・・」
 「貴様、それでも十傑集かぁーーーッ!」
 やり場のない怒りに任せて、アルベルトは十常寺の首をしめあげた。無意識の内に、全身から衝撃波が放射される。
 「しょ、衝撃大人、起死回生の秘策あり。登雲山の頂き近く、独角竜の巣窟に・・・げほ」
 アルベルトは手を離した。樊瑞が何かを思い出したように腕を組む。
 「独角竜の生き血か!あの秘薬ならば、この症状にも効くかも知れぬ。だが、あと半日ではとても・・・アルベルト?」
 彼の姿は、すでに病室から消えていた。

 登雲山の怪物たちとの熾烈な戦いで受けた負傷と疲労をものともせず、音速をはるかに超えた速度で、アルベルトは走り続けた。その手には、竜の生き血を密封したフラスコがしっかりと握られている。集中力を少しでも維持するために、好物の葉巻は口にしていない。
 不意に視界が暗くなる。巨大な人型の影がアルベルトをはるか上空から見下ろしていた。
 「ワシを超える速度の物体といえば、あやつしかおらぬ。ちィッ、こんな時に・・・!」
 「ジャイアント・ロボ、急速降下!逃がさないぞ!BF団!!」
 衝撃波を撃ち尽していたアルベルトは、なすすべもなく巨大な手に捕らえられた。アルベルトは覚悟を決めた。国際警察機構の本部に連行されたらすぐ、体内の全エネルギーを放出して自爆する。私情に溺れて任務を忘れたBF団員の、最後のけじめとして。
 ロボから降ろされた場所を見て、アルベルトは思わず叫んだ。
 「小僧!どういうことだ!?ここは・・・」
 ワシらのアジトの近所ではないか、とは、さすがに口に出せなかった。
 「載宗さんから緊急通信があったんです。『オレたちには子供がいないからな』だって・・・どういうことなんだろ?」
 飛び去って行くロボのシルエットに、載宗の人なつっこい笑顔がオーバーラップした。
 「フン、いらぬ真似をしおって・・・」

 生き血を投与されて数分後に、サニーは目を覚ました。
 「パパ!あ、樊瑞のおじさま・・・。おじさま、父はいないのですか?」
 久しぶりの娘の声を背中で聞きながら、アルベルトは病院を出た。夕日を見上げて、これも久しぶりの葉巻に火をつける。
 「ワシも甘くなったと思うか?なあ、おまえ・・・」
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