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紫煙



城の居室で暖炉の火がぱちぱちと音を立てていた。
戸が開かれ冷気と共に人の入ってくる気配がする。
同時に辺りに漂う甘い香り。

「ここは禁煙だぞ。」
ゆっくりとソファーから体を起こしながら、城の主は訪問者をたしなめた。
「まぁそう固いことを言うな、樊瑞。」
訪問者は城の主の言など気に留める様子もなく、紫煙をくぐらせている。

樊瑞は眉をひそめ、己の膝で寝息を立てている幼子に目を移した。
「アルベルト、お主が来るというので先ほどまで起きて待っていたのだが…。」
「任務では仕方あるまい。」
中年が二人、すやすや眠る幼子を見つめてため息をつく。
その姿は育児で悩む夫婦のようで、もし眩惑がこの場にいれば後々まで笑いの種にされたであろう。

アルベルトは一応すまないと思っているようで、手には土産を提げていた。
ごま卵というそれは、如何にも帰る直前駅で買いましたという代物で、
元貴族のアルベルトには似つかわしいものではない。
今回の任務はアルベルト単独のもの。
とするとこの土産はアルベルト自身が買ってきたものに違いなかった。
幼い娘サニーのために。

― 釣りはとっておけと言って店員を困惑させはせなんだか。
買い物をするアルベルトの様子を想像し、樊瑞はなんとも可笑しくなった。

「笑うな」
考えが顔に出ていたらしい。
「ところで最近十傑入りしたあの若造、あいつが持っている煙管、あれはお前が以前使っていたものではないのか。」
気に障ったらしく、台の上に土産を放り投げるとアルベルトは話題を変えた。
「ああ・・・あれは儂にはもう必要ないのでな。」
思わぬ問いに少し間を置き、やがて遠くを見やるようにして樊瑞は答えた。

― あれはどれくらい前の事だったか。



雨が、
激しい雨が降っていた。
戯れに降りた下界。

肉の焦げる臭い、うめき声、この世のものとは思われぬその光景。
世界は火に包まれ、次に雨が降った。憎しみと悲しみの雨。

絶望。

それ以上この状況にあう言葉が果たしてあるだろうか。
愕然と立ちつくす己に好々爺が手をさしのべてきた。
共に来るか、と。

連れて行かれた先はBFの御前。
戦慄いた。足が震え、全身から噴き出す汗。
なんという圧倒的存在。ひれ伏さずにはおられない。
深々と下げた頭はこの御方の前では二度とあげられはしないだろう。
― すべては我らのビッグファイアのために。
この御方ならあの炎に勝てるに違いない。
それは希望として胸に宿り、いまだ燃え続ける。

それからは任務に明け暮れる日々。
二仙山仕込みの仙術を使うことに躊躇いはなかった。
この力で世界を変えられる、いや変えてみせると、そう思っていたのだ。
若かった。
己の目的以外何も見えぬほどに。

好々爺は十傑集と呼ばれるBF団幹部のリーダーで、名をカワラザキといった。
そのカワラザキの爺様の推挙によって、十傑の末席に加わるのにそう時間はかからなかった。
まだ二十歳にも満たぬ身ゆえ、若造、若輩者と侮られぬよう煙管を持った。
煙草ははじめ不味いとしか思われなかったが、時期に慣れると意地を張った。
無理をするなとカワラザキの爺様には笑われた。
ほぼ同時期に十傑入りした者達にもやはり笑われた。
白い布を纏った胡散臭い男と、葉巻をくわえたいけ好かない男。

これが若き日のセルバンテスとアルベルトであるのだが、初めの印象はすこぶる悪い。
莫迦にされているような気がした。いきがっている仙道風情と。
いや、実際莫迦にしていたに違いない。そういう連中だ。
そういう質なのだとわかってからは、腹立たしくもなくなった。
今では笑い話と言えるかもしれない。

しかしこの第一印象の悪さが払拭されたのは、随分経ってからである。
きっかけはアルベルトが幼いサニーを自分に預けたことだった。
自分に初めて出来た守るべきもの。それから自然と肩の力が抜けていった。
目の前あるのは自分を必要とする小さな二つの赤い瞳。

煙管はもう必要なかった。

それからしばらく引き出しの奥にしまい込んでいた煙管。
それがこの間、異例の人事でいきなり十傑入りした若者を見た時、図らずも昔の自分を思い出した。
若者の、肩肘を張り、侮られまいとする態度は、まさに昔の自分そのものだった。
何やら懐かしく、肩入れしてやりたい気分になり、煙管を取り出し、祝いだと言って残月という若者に手渡した。
残月がマスクの下でどんな表情をしたのかはわからない。
困惑か、喜びか、はたまた―
だが、満更でもないらしく、煙管は残月によって磨かれ今も彼の手にあった。
奴は伸びる。直感だが、外れはしないだろう。
そう、志半ばで逝かぬ限りは。
残月の煙管があの時の煙管だと分かる者はもう十傑でも数名しかいない。
アルベルトはその中の一人だ。
それほどに年月は流れ、血もまた流れていた。



と、膝で寝ていたサニーが急にむずがり出した。
「それ見たことか。お主が葉巻など吸うからだ。」
そう言うが早いか、樊瑞はサニーを抱きかかえ、煙の充満した部屋から出ていった。
寝室へ寝かせに行ったらしい。
「まったくマメなことだ。」
これ見よがしに紫煙を吐きながらアルベルトはあたりを見回した。



― 住まいはその者を映し出す鏡とはよく言ったもの。
部屋には暖かみというようなものが漂い、城全体を覆っていた。
自分の凍るような居城とはひどく印象が違う。

扈三娘に死なれてサニーをどうするかと考えた時、なぜか樊瑞の顔が浮かんだ。
樊瑞の第一印象はくそまじめでお堅い仙道だった。
肌が合うとは思われず敬遠していたのだが、いざという時浮かんだのは盟友の顔ではなく、
この仙道の顔だった。
さして興味があったわけではない。
ただこの男は信頼がおける、そういう確信めいたものがあった。
娘を預けた関係上話すようになりうち解けた格好だ。
面白そうだと盟友も加わって、最近は三人で酒を飲む事もある程で。
子どもが好きな樊瑞はサニーを自分に娘のように可愛がり、サニーは素直でまっすぐな娘に育っている。
その性格がBF団の任務に向くかどうかは別の話であるが、子育てとしてみれば成功ではないだろうか。
サニーは年々扈三娘に似てくる。自らと繋がるものは赤い瞳くらいのもの。
しかし強力な力は幼いながら明白だった。
その力をあの狸が放って置くはずがない。狼の牙さえも利用する喰えぬ狸の謀。
化かし化かされ気づけばいつも藪の中。

言わばここはつかの間の夢の城。
そしてどうやら夢の終わりは近いらしい。操り人形とともに事はすでに動き出した。
だが今は、あの幼子の小さな夢が少しでも長く続く事を祈っておこう。
幸い、外は一面白銀世界。
狼も狸も春になるまでは、ねぐらで大人しくしていよう。



「待たせたな。」
そう言い帰ってきた樊瑞の手には酒とつまみ。
久しぶりに一杯やろうというのだ。幸い二人とも明日は一日空いていた。

―雪を見ながら酒に興じるのも悪くはない
―が、
「たまにはお前も一本どうだ。」
そう言ってアルベルトは葉巻を差し出した。
サニーの大好きな「おじ様」も近頃はいろいろストレスが溜まるらしく、
「サニーには秘密だぞ。」
と念を押し、ありがたく葉巻を受け取った。
「今日くらいはよかろう、どうせもうこの部屋ではお前が吸おうと吸うまいと大して変わらん。」
天井を見れば、確かにアルベルトの言うことはもっともで、樊瑞はうまそうに紫煙をくぐらせた。

翌日、目を覚ましたサニーがまず始めにしたことは換気であったそうである。
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魔女の城




― 戦い始めてからもうどれくらいになるのか。
相手が倒れない。
それはひどく珍しいことだった。
この衝撃波に耐えられるのは国警では九大天王くらいのものかと思っていた。
相手の能力とこちらの能力、その相性もあるかもしれない。
放った衝撃波を太刀で打ち消され、思わず眉をひそめる。
ここで殺らなければ、こちらが殺られる。
相手が傷の痛みでバランスを崩す、その一瞬。
横腹めがけ衝撃波を叩き込む。

と、それをも剣で凌ぎきられた。

― 殺すには惜しい腕だ。
だが、容赦はしない。もう一度は防げまい。これで終わる。

その瞬間肩に当たる飛礫。
― 銭
邪魔が入った。
マントをはためかせ佇む人影。次期リーダー殿のお出ましか。


アルベルトの様子を見に来てみれば、そこには自身の見知った顔。
今は敵同士だが、昔弟弟子と共に、懇意であったその人物。
樊瑞は、この人物の気高さが好きであった。
― どんな経緯で国警にいるかは知らないが、元は相当な名家の子女のはず。
縁を切っていたとしても、圧力くらいにはなるだろう。それは我々の利となること。
そう考えアルベルトに、人質としてBF団支部につれて帰るよう説く。


アルベルトはそんな樊瑞を愚かと思いつつ、一丈青扈三娘に目を移す。
― これだけの猛者、なかなか出会えんな。それがしかも女とは。
珍しく自分以外に興味を持った。
その強さと気高さに。
ただ、それだけの事。



BF団支部の一室に入れられた扈三娘は、「殺せ」という言葉以外口にしなくなった。
今回の戦いでBF側も痛手を被った。死んだ者も少なくない。
国警への負の感情。それがここにいる扈三娘に注がれている。
一触即発。
樊瑞はその中で奔走していた。
国警との交渉と、BF団の感情緩和。扈三娘の説得。
傍から見れば何の事はない。
なんとかしてこの人物を助けたいのだとよくわかる。
しかし当の本人は気づいていない。
ただBFの利を思い奔走している。
鈍い男だった。自身の秘めた気持ちにすら気づけない。
だからこそ簡単に揺らぐ事もない。
主に対する絶対的な、盲目的とも言える信頼と信仰。それが樊瑞という男にはあった。
これがカワラザキが樊瑞を次期リーダーに推す理由であった。

そんな樊瑞の様子を離れた場所から見ている人影が二つ。

「さすが、次期リーダー殿よ。」

可笑しそうに笑うセルバンテス。
なぁ、と話をふられた相手、アルベルトは浮かぬ顔で、
それを見とめたセルバンテスはさらに笑う。
「何が可笑しい。」
気に障ったらしい。

― 何が だって?

「君が素直じゃないからさ。」
そう言って笑うと、
もうこれ以上話す事はないという風に、葉巻を口に銜え顔を逸らしてしまった。
「しかし、まぁめずらしい事もあったもんだ。」
なおも話を続けようとするセルバンテスを残し、アルベルトは歩き出す。
―やれやれ嫌われたかな?
セルバンテスも後を追い、香だけをそこに残し、闇に消えた。



「馬鹿な・・・っ」
樊瑞は慌てた。
一丈青扈三娘の姿がない。
争った跡もない。
そもそも自分が目を離したのはほんの一瞬の事で。
しかし次の瞬間、そこにあるべき姿は消えていた。
逃げ出せるわけはない。
では、誰かが連れ出したのか。
自分と警備の目を盗み侵入し、且つ人一人を連れ出す事が出来る人間。
つまりは―

「十傑集か。」
樊瑞の背中を嫌な汗が伝う。

「そっとしといてやんなよ。今頃二人でお楽しみさ」
ふいに背後から気配が現われる。漂う独特の甘い香り。
「貴様か眩惑・・・」
「私は捕らわれの姫を逃がしただけ。おとぎの国の魔法使いというわけさ。」
くすくすと、さも可笑しそうに笑いながら、

― 姫が君を選ばなくて残念だったねぇ。

そう耳元で囁くと、眩惑使いは闇に溶けた。
明かりの中には混世魔王ただ一人。



一丈青扈三娘がBF団側についた。
十傑集衝撃のアルベルトの妻に収まり、二人には子もいるらしい。

そんな噂がBF団で囁かれるようになった頃、樊瑞は正式に十傑集のリーダーとなっていた。
国警からは、扈三娘の事で再三非難を受けたが、
どうにもならない。
またどうにかする気もない。
あるのは扈三娘が自分の元を去った、その事実のみ。

噂では、アルベルトは生まれた子供と縁を切ったという。
その裏にどんな理由があろうとも、自分には到底出来ぬ事。
自分の子ならば、抱き上げ、頬を摺り寄せ、手元に置いておきたい。
そう思うのが親というものではないのか。
アルベルトと自分では違いすぎる。
そして扈三娘は、そんなアルベルトを選んだ。

彼女は と、ふと思う。

彼女は縁を切った事をどう思っているのだろう。

聞いてみたい気がした。
聞いてどうにかなるわけでもないのに。
声だけでも聞きたいというのは、やはり未練だろうか。
耳に残っているのは「殺せ」と迫る彼女の叫び。

「酷いものだ。」
皮肉な笑みが漏れる。
― 失って初めて気づくとはよく言ったもの。



と、突然部屋の扉が開かれ、我に返る。
珍しい客だった。
そこ立っていたのはアルベルトで、その腕には幼子が抱かれている。
彼が任務の報告以外で樊瑞の城を訪れたことは終ぞない。
その彼が今目の前に立っている。
突然の訪問の理由が任務の報告のわけはなく、抱えているのは噂の子供らしかった。

訪問者の意図を図りかねていると、向こうからこう切り出した。
「扈三娘が死んだ。」
それはまるでいつもの挨拶か何かのようだった。
訃報というものは、なぜいつもこう突然なのか。

「そうか。」
― 死んだ、と。
その言葉に、現実が伴わない。そこにあるのはただ虚無のみ。
そんな樊瑞の様子に気を止める事なく、アルベルトはさらに言葉を継ぐ。
「こいつの面倒をお前に見て欲しい。」
アルベルトは幼子を示し、そして言った。

「っつ・・・何を・・・」

― この男は、一体何を言っている。
目の前がくらりと回る。
この子は、扈三娘の子で、自分の子ではないか。
気まぐれに奪った者が、その形見はいらぬとでも言うのか。
しかもその形見を奪われたこの自分に託すなど。
正気の沙汰とは、思えない。

アルベルトは続ける。
「死に際、扈三娘にこいつの事を頼まれた。だが、わしは子供が苦手でな。」
言いながら、抱えていた幼子をそっと床に下ろし、自分から離れるよう促す。

この男は不器用だ。
それは短からぬ付き合いで知っている。
この男の感情の表現はいつも激しい。
それが生まれ持った性か作り上げられたものかはわからない。
その凶暴な感情は衝撃の二つ名そのままに、研ぎ澄まされた刃のように人の心や体を容易に切り裂いてしまう。
愛情の表現の仕方なぞ知る由もない。
そんな自分には、子を育てる資格も価値もありはしないと思っているのだろう。


― だが
― それでも
「お前は父親だろう。」

そう言うが早いか、
樊瑞は、アルベルトの顔めがけ、思い切り拳を叩き込んだ。
鈍い音が部屋に響いて、そして消えた。

夕闇迫る中、訪れる沈黙。
日暮の音だけが部屋に響く。
鎮魂歌に相応しい、もの悲しくも優しい音色。

ふと、視線を感じ目をやれば、自分を見つめる瞳が二つ。
その瞳の主は、ただじっと殴られた父と殴った自分を見つめていた。
父親譲りの赤い瞳で、泣きもせず、怯えもせず、
ただじっと。


― それでも
切れた唇を拭いながらアルベルトが口を開く。
「それでも、頼む。」
搾り出すような声。

そこにあるのは、強く深い赤の瞳。
その瞳はまっすぐ樊瑞だけ見ている。
瞳の中で行き交い暴れる様々な感情の渦。
樊瑞はその中に一瞬悲しみの色を垣間見た。
― この男、悲しくないわけではないらしい。
その事に少し安堵する。
しかし愛していたとはこの男、口が裂けても言いはすまい。
普段ならこんな姿すらも、決して人には見せぬ男だ。
その男が真剣に頼んでいた。小さな瞳も健気にそれに倣っている。
そこまで思いをめぐらせて、

― 頷くしかないではないか。

樊瑞は結論を出した。
「後見人、そんな立場でいいなら引き受けよう。」
そう言った。
父親なんぞになれはしない。
この幼子の父親は一人きり。
二人を結ぶ赤い瞳。

「礼を言う。」
そう言い、アルベルトは幼子を置き、立ち去った。
部屋には樊瑞と幼子が残される。



「主、名はなんと言う?」
「サニー」
赤い瞳の幼子は、静かに、しかしはっきり自分の名を言った。
赤い瞳に決意を込めて。

「おいで、サニー」
名を呼び、その胸に抱きしめる。
あたたかい幼子の体。
そのぬくもりは、なれぬせいかむず痒い。
この感覚に戸惑うあの不器用な男を想像し、樊瑞はくくっと笑う。
その様子を赤い瞳が不思議そうに見上げてくる。

扈三娘、この子は強いな。
さすが、君らの子だよ。
今日からは、儂がこの子を守る城になろう。

そう決意して、樊瑞は赤い瞳の幼子をもう一度優しく抱きしめた。


この日、赤い瞳の幼い姫は、自分の城を手に入れた。
難攻不落のその城は姫のため、一層守りを堅くする。

その影に潜むは、姫を手放した騎士の姿。

人知れず、夕闇の中微笑む魔法使い。




おとぎ話をしてあげようか?
それとも魔法をかけようか?

― でも決して末永く幸せになんて祈ってはいけないよ?
食べられてしまうから。
まぼろしは君が堕ちてくるのを、口をあけて待っている。
誰もサニーにそれを告げなかった。
サニーも何ひとつ尋ねなかった。
その時を見ていた訳ではない。それでも分かったのだ―――


日の光が眩しくて、サニーは俯いた。
足元の草原に咲く花もどこかで歌う小鳥の声にも、何も感じない。
晴れ渡る空を吹く穏やかな風も―――全てが遠いもののように感じられるのだった。
覚束ない足取りで木陰に辿り着き、ぼんやりと佇む。
どれぐらいそうしていたのか分からない。
「サニー」
深くて静かな声がした。
「おじ様」
振り返ったサニーは樊瑞の表情を見て、上手く笑うのに失敗したと悟る。
「…泣いていたのか」
「いいえ」
サニーは顔を上げた。
「泣いてはおりませんわ、おじ様」
だからそんな傷ましいものを見る目でみられるのは辛い、とサニーは思う。
「そうか…」
「はい」
悲しいのだろうか。悲しむべきなのだろうかとサニーは躊躇う。
―――父は笑っていたのに?
「サニー」
「何でしょう、おじ様」
サニーには自分が今どんな顔をしているのかが分からない。
「…良いのだぞ」
樊瑞は見詰めるサニーの前で片膝をついた。
「儂の前では―――泣いても良いのだぞ」
大きくて温かい手が頬に触れ、その余りの変わりなさにサニーは思わず微笑んでいた。
「サニー」
ゆっくりと抱き締められて、サニーは目を見開いた。少し息苦しい程の力。拒むでもなく、応えるでもなく、立ち尽くしながら肩越しの空を見詰める。綺麗だと思った―――他人事のように。
「…泣きません」
声は震えなかった。
「…そうか」
「はい」
この人は優しい。この広い胸は温かくて、まるで―――
思いがけない唐突さで、サニーの視界が滲んだ。
ああ、と樊瑞は溜息をつく。
「悲しい…空だな」
サニーは答えなかった。
晴れ渡る空に吹く穏やかな風。それのどこが悲しいのだろうか。
そう思うのに涙が零れるのがなぜなのか、それだけが分からなかった。
「料理はできた方が絶対に良い」

そう言ったのはカワラザキ。



包丁を持てるようになった年齢になったので早い花嫁修業というわけでもないがたしなみの一つとしてサニーに料理のイロハを教えるよう樊瑞に勧めたのであった。当然樊瑞は料理などできない、そこでカワラザキが「あの男に任せればいい」とイワンを推挙したので彼に任せることにした。

そのためサニーは最近イワンと一緒にアルベルトの屋敷の厨房に立つようになった。

ちなみに、実の親であるアルベルトは「好きにしろ」の一言で済ませ、縁を切った娘が我が屋敷に出入りするようになったことに対して、それ以上何も言わなかった。




---話はそれる

イワンはアルベルトの部下であるB級エージェント。
部下といっても部下の領分を超えてアルベルト個人の身辺サポートも兼ねている。
本来BF団では「個人の私兵」は固く禁じている。派閥による内紛や反乱、また一枚岩でなければならない組織内の二次勢力形成を恐れたからである。そのためこのイワンの扱いは問題視されるかと思われた・・・が。

しかし彼は私兵というわけでもなく、またアルベルト自身イワンを「私兵」という意味で扱っているわけでもない。そもそも彼は「私兵」などを必要とする男でもなかったからだ。そんなアルベルトの性格を誰もがよく知っているからこそ、特に問題になるわけもなくBF団でも暗黙の了解のうちに「衝撃お気に入りのB級」という形になっていた。

このイワン、なかなか器用な男で本来の複雑な機械・機器類を容易く扱う優れた能力でB級の座であるのだが、ピアノは弾けるしどこで覚えたのかバーテンダーよろしくシェイカーも振れるらしい。そして料理はプロ級、いやそのままホテルのシェフとなってもおかしくない腕前。貴族の出である舌の肥えたアルベルトを満足させる男でもある。さらに

「私ごときB級が十傑集であられますアルベルト様のお側で使っていただけるだけでも・・・」

と、本来の性格なのか目上に対して非常に腰が低い。そして自分を良くわきまえ誠実に、忠実に主人に尽くす。いわばアルベルトという男にとって最も最適な部下とも言える。

---本題。



B級からすれば雲の上の存在でもある大幹部の十傑集、しかもそのリーダーたる男からの直接の頼みでイワンは当初は困惑していた。アルベルトの娘に料理指導ということだが、あくまでもB級エージェントである自分よりもBF団内の料理番に・・・と恐る恐る言ってみたが十傑集リーダーに「任務の合間だけでいい、頼む」と頭を下げられてしまった。





サニーは野菜の単純なカットならできるようになった。
味付けを教わってシンプルなスープも作れるようになる。
それをたまに私邸へと戻ってくるアルベルトの食卓に出してみた・・・

「サニー様が作られたスープです」

アルベルトは何も言わず黙々とスープを口にする。
特に感想は述べない。

「アルベルト様はご不満がある時だけその旨を仰られます、きっとお口に合うのですよ」

イワンは何も言わないアルベルトに不安げな顔になったサニーに苦笑まじりに言った。




そうして数週間後。




「イワン、わたしオムレツを作りたいの、作り方教えて欲しい・・・」

そう言いだしたのは卵を綺麗に割れるようになってからだった。

「オムレツは簡単そうに見えますが、とても難しいのですよ?」

「・・・でも作れるようになりたいの」

イワンは卵料理が、とくにシンプルなオムレツがアルベルトの好物であることを思い出す。サニーは以前、セルバンテスからそのことを聞いて(『食事の風景』参照)知っていたのだった。

「わかりました・・・でも本当に難しいのですよ?頑張れますか?サニー様」

「うん・・・じゃなかった、はい、がんばるわ。ありがとうイワン」


その日からサニーの猛特訓が始まった。
積み重なる卵の殻。
味付けはイワンに教えてもらったとおり。
難関はオムレツの「焼き」だった。

焦げ付いたり、硬すぎたり、ボロボロに崩れたり。

サニーはイワンの言う「とても難しい」の意味がよくわかった。
簡単そうに思えたのに、作れば作るほどその難しさを実感していく。
それでも何とか「それなりのカタチのオムレツ」を作ってみた。

「うーん・・・たぶんアルベルト様はお口になされないでしょう」

「・・・・・・・」

カタチはそれなりでもいびつで色にムラがあり、そしてへたれていた。
サニーは俯いていたが再び卵に手を伸ばした。




1ヶ月が経った頃、ようやくイワンからお墨付きをもらえるオムレツを作れるようになった。


「ここまでよく上手にオムレツを作れるようになりましたね、ご立派です」

イワンはサニーが作ったオムレツを食べ強く頷く。
ふっくらとした卵のボリューム、バターとの滑らかな舌触り。
100点満点とは言わなくても、それはアルベルトのいる食卓に出せるくらいには十分な出来ばえだった。

「今夜はセルバンテス様もご一緒になるそうです、サニー様のオムレツをお2人に食べていただきましょう」

サニーは俄然やる気が湧いてきたのか満面笑顔になってエプロンを腰に結んだ。そして手馴れた手つきで自分とイワンの分も含め4つのオムレツを作り出す。それは今まで何度も何度も何度も練習したおかげで、4つとも同じ綺麗な形の黄金色のオムレツだった。





「いやーサニーちゃんの手料理を食べられる日が来るなんてねぇ、ついこの前までこんなに小さかったのにサニーちゃんも大きくなったということかな、はははは」

セルバンテスはニコニコしながら食前酒のワインを口にする。
囲まれる食卓に並べられ行くサニーの自信作のオムレツ。

「おお!これサニーちゃんが作ったのかね?凄いよオムレツはとっても難しいって聞いたけど随分と練習したんじゃないのかい?レストランでもこんなに綺麗なオムレツは出ないよ?とっても美味しそうだ」

嬉しい感想を口にしてくれるセルバンテス、サニーは少し得意な気持ちになる。
しかしアルベルトの表情を覗うが変わらずいつもの仏頂面があり、ワインを飲むばかりで先ほどからずっと無言のまま。

「いただきまーす!」

真っ先にセルバンテスはオムレツにパクついて「美味しい」を連呼。
セルバンテスの皿はあっという間に綺麗になった。

そしてアルベルトはというと・・・黙々とオムレツを口に運んでいる。
サニーはドキドキしながら父親が何か言ってくれるのではないかと期待してみていたが・・・彼は半分ほど食べてフォークとナイフを置いてしまった。

「・・・・・塩が足りん、ひとつまみほどだ」

そう言って半分残したまま席を立ち奥の書斎へ引っ込んでしまった。
サニーの瞳からボロボロと涙がこぼれる。

「サ、サニー様・・・」
「ひっどいやつだなアルベルトは、サニーちゃんが一生懸命作ったのに・・・」

声をあげて泣くサニーに2人はオロオロするばかりだった。




少し落ち着いてサニーは2人に囲まれて厨房にいる。

「しかし、おかしいですね、味付けはいつも私が作るものと同じのはず。アルベルト様にご不満は無いはずなのですが・・・」

「私も結構グルメなんだけど、サニーちゃんのオムレツはとてもおいしかったけどねぇ、彼は歳で味覚がおかしくなっちゃったんじゃないのかね」

同い年であるはずのセルバンテスがカラカラと笑う。

「・・・そ、それはわかりかねますが味だけお言葉があるということは『焼き』自体に問題はないはずですし・・・サニー様?」

サニーは再び卵を手に取っていた。

「わたし、言われたとおりもう一度作る」

父親譲りの意志の強さが発揮されたのかサニーはへこたれてはいなかった。
一回大きく深呼吸してから手慣れた手つきで卵を割る。そしてイワン直伝の味付けに・・・アルベルトの注文どおり塩をひとつまみ。慎重にバターが溶けたフライパンに流し込み、大きなフライパンをヨイショとひっくり返す。

2人が目を見開く前で新たに作り直されたオムレツは、見た目にはさっきのと何ら変わりは無い。まさしく黄金色の輝くオムレツ。

「お父様の所へ持っていくわ」

心配そうに見送るしかできない2人だった。





一度大きく深呼吸。
オムレツを落さないように慎重に左手でアルベルトのいる書斎の扉をノックする。
「入れ」と一言聞こえ、恐る恐る中に入るとアルベルトは机に向っていた。

「言われたとおり・・・塩をひとつまみ加えました・・・その・・・」

鋭い目つきを前におずおずと作り直したオムレツを差し出す。
アルベルトは何も言わずそれを受け取りフォークだけで口にした。

「・・・・・・・」

サニーはダメ出しが出れば再び作り直す気でここにいる。
何度でも作り直す気でここにいる。

しかし、結局何も言われないまま皿は綺麗になった。

「あ・・・・」

サニーは父親の顔を思わず見る。
アルベルトは真っ直ぐサニーの目を見て



「いいか、この味をよく覚えておけ」



そう言ったきり机に向きなおした。






厨房で待っていた2人に笑顔で綺麗になった皿を見せる。

「いやーサニーちゃん、やったじゃないか」
「サニー様、安心いたしました!」

2人から頭を撫でられながら綺麗になった皿を見てサニーは最高の気分だった。

「しかしいつもの味であるのに、何の不満があったんだろうねアルベルトは」
「さあ・・・サニー様をお試しになられたのでは?」
「そうかね~そんなことする男じゃないと思うよ?」
「それでは・・・」
「うーん・・・サニーちゃん申し訳無いのだけどもう一度作ってもらえないかな」

サニーは頷いてオムレツをつくる、塩をひとつまみ加えた味のオムレツを。

それを半分づつイワンとセルバンテスはフォークで食べた。
味を噛み締めるように、そして確かめるように。
イワンは首をかしげる。
セルバンテスも首をかしげる。
しかしどこかで食べた事のある味だった、それもすいぶん昔のような気がする。
セルバンテスは目を閉じオムレツの味の記憶をたどる。



「ああ、なるほどね」

目を開けセルバンテスは笑う。








「これ、サニーちゃんのお母さんの味だよ」







END











花冠





茶番だと、両陣営の人間が感じていた。
エキスパートと十傑衆の婚姻など―茶番以外の何ものでもあるまい。
それでも祝福しようという態度を見せた国警側はともかく、BF団側の不満は全て花嫁の後見人である樊端に集まった。
十傑衆の中には面白がって無責任に煽る者(当然、某仮面の忍者)もあったが、策士をはじめとした大抵の者はこの婚姻に対し否定的、更に云えばぶち壊そうという動きも少なくなかった。結局それがなされなかったのは、他ならぬBF様が妙にこの婚姻に乗り気であったからだ。多分、ほとんど睡眠装置の中で過ごす身には貴重な娯楽なのだろう。
ほとんどの十傑衆はこの件に関し口を閉ざしていたが、懐疑的であることに違いはなかった。
花嫁は...サニー・ザ・マジシャンは沈黙を守っていた。
そして―
樊端は。
安堵、していた。
いや、花婿が国警の人間であることについではない。けしてない。そうとも、サニー直々の願いでなければどうして許そうか、国警は敵ではないか。
サニーが結婚する、そのことについてである。
樊端は知っていた。
おのが娘ほどの年齢でしかないこの少女が、いつからか何より掛け替えのない存在となっていたことを。
それが―その愛しいという感情が、しかしサニーを一人の女性と見てのものであったことを。
そうして。
おそらくは、サニーもまた、同じだけの熱量で自分に好意を抱いているだろうことを。
それは。
それは駄目だと思ったのだ。
大体、自分は老い先短く、少女にはまだまだ広い未来がある。
だから。サニーが結婚すると云い出した時、何を思うよりまず安堵したのだ。
まさか、相手があの草間大作とは思ってもみなかったが。
だが、草間大作の父親は元々BF団で働いていた人物、あの当時同じ年頃の子供が周囲にいなかったサニーにとっては格好の遊び相手だったであろうことは想像に難くない。それなら旧知の仲というのも頷ける。そして。
考えてみればサニーの母親は元々国警側の人間である。親子二代に渡って因果なことだと残月が云った。
それでもいい。
サニーが幸せであるなら。
けれど。



「誓えません」
きっぱりと、草間大作は云ってのけた。
「な...ッ!?」
思わず席を立つ。困惑と怒りとがない交ぜとなった樊端に、しかし草間大作は微笑んだ。
「誓えません。忘れられないひとがいるから」
何を、今更、国警側からもBF団側からも声があがる。野次が飛ぶ。中にはだから止すべきだったんだなんて声もある。孔明が横目に睨んでくる。樊端は針のむしろを体感した。
BF様だけが、全て分かっているように笑んでいた。サニーと草間大作と、全く同質の笑みだった。
そう、これは。
確信犯の笑みだ。
「でも、それは同じことなんです」
とにかく何か云ってやろうと口を開きかけた樊端に向かって、草間大作はなおも続ける。
「同じ?」
ひたり、と見据えられて居心地が悪いことこの上ない。
「はい。同じです。―僕たちは、契約したんです」
ふいに、場違いな言葉が飛び出した。

けいやく したんです

契約。何を。おそらく自分の予想は当たっているのだろうなと樊端は思った。それから、当たっていてほしくないとも思った。
「でも、駄目だった。それだけのことです」
さあ行って、と草間大作が微笑う。
「駄目だよ、サニーちゃん。君は、まだ遅くないんだから、ね?」
その一瞬、酷くかなしげな顔で。僕は今更だったからと笑うから、むかしに大切なものを失くしたのだと知れた。
ありがとう、ごめんなさいとサニーが涙を零す。
その背を草間大作がそっと押す。
そうして―
サニーと。
樊端の。
視線が交わる。
「おじさま」
あぁ。
いけない。
いけないと、思ったから。縁談を持ち込むつもりで、そうしてサニーに先手を取られたのだった。
そう。
樊端は多分、自分の手で縁談を進めずに済んだことにも安堵したのである。
サニーが歩を進める。
樊端は動けない。少女が目の前に立ち見上げてきてなお動けないままだった。
「おじさま」
ふいに。
いたずら気に微笑んだサニーが。
いきなり手をひいて駆け出したので。
樊端はもつれる足で転びそうになりながら、慌てて後を追った。
まったく不器用な男だとため息を吐いたのは誰だったか。





ようやく息を継いだのはちょっとした土手。この辺りの地理が全く分からないが、帰りはどうすればいいのだろう。...否。帰れるのだろうか、あんな騒ぎを起こしておいて(実質的には騒ぎを起こしたのは草間大作なのだが)。
少なくとも孔明にちくちくちくちく厭味を云われることは決定したと云っていい。樊端はため息を吐いた。気が重い。
「これで全部おじゃんですわね」
何処か楽しげにさえ少女が云う。はっとした。そうだ。サニーは。
「サニー」
「なんですか?」
いたずらっぽく微笑む少女に、
「戻りなさい」
云った。
今なら、後戻りもできるから。
戻れるなんて、自分は思ってもいないのに。
云った。
本気で、云った。
「嫌です」
「しかしだな、サニー。儂はお前の...」
なおも云い募ろうとした樊端は、しかし。
「ほんとうに、わたくしのためを思うのでしたら、おじさま」
あまりにも真摯な眼差しに、一瞬、言葉をなくした。その手を、とって。
「手を、放さないでくださいまし」
微笑んだ、姿が。
いっそ、神々しいほどで。
思わず抱き寄せた体は羽根みたいに軽く、どこへなりと飛んでいってしまいそうで、素直に愛おしいと思った。
「ああ」
そうか。
自分からその手を放すことなど出来なかったのだと―否。その手を放したくなどなかったのだと、樊端は気付いてしまった。
「そうだな」
抱きしめる腕に少しだけ力をこめた。
どうしてか。
こんなにも愛おしいと、思うのだろう。
最初で最後の恋なのだと、多分、はじめから知っていた。
「ベールを。落としてきてしまったな」
「あら本当。でもおじさま、それならいいことがありますわ」
云うが早いか、真っ白なドレスで土手に座り込んで。
借り物が汚れると青くなる樊端には構わず、シロツメクサを摘み始めた。
「ああ...花冠か」
なつかしい。
いつかは自分が作ってやった。
白い冠を花嫁のベールになぞらえて、ままごとをした。
あの春の庭から、一体どこまで来てしまったのだろう。いくら後悔してもしたりない。
それでも。
ほかの何より、後悔するというなら、つないだ手を放してしまった未来だから。
シロツメクサを摘んで指輪を作った。
金より銀より、宝石よりも。大切なものは。
白い、小さな手。
「サニー、手を出しなさい」
はい、と差し出されたその細い指に、急ごしらえの指輪をはめる。
「その、なんだ。今はこんなものしかないのだが」
いいえ、サニーが首をふる。
「いいえ、十分すぎるほどですわ」
きれいな、なみだ が。つと少女の頬を流れた。
腹でも痛いのかと慌てれば、おじさまは本当におじさまですわねと意味不明の返事。何となくなくむすっとする。
流れた涙はそのままに、少女がころころと笑う。
「拗ねないでくださいまし、それが悪いと云っているのではありませんわ」
ええ、むしろ、そんなあなただからこそわたくしは、と微笑むから、ああ勝てるわけなどないのだこの少女には。
「ほらおじさま、花冠ができましたわ」
頭上に掲げられた白い花冠。
あの日のベールが、今ここにある。
「おじさま。ままごとをいたしましょう?」
考えることは同じ、か。
同じ。それだけの長さを、共有してきたのだから。
誰が何と云おうと、共にいた時間が長すぎた。離れることなど、今更できるわけがない。
だから。
「そうだな」
祝福などなくていい。
誰の理解がなくてもいい。
ただ。
生涯をただ一人の上に縛り付けるためのままごとを。

命つきるまでこの者を愛することを、
「誓います」



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