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poison and candy






BF団本部。

十傑集マスク・ザ・レッドは中庭で同僚であるセルバンテスが幼子を抱きかかえ笑っているのを見る。テーブル付きの椅子に腰掛けて2人とも声を上げて笑っている。

彼は、レッドはヒィッツカラルドと同様に十傑集内では「異端」ではあった。しかしその本質はまったく異なる。やはり彼も殺傷事を楽しむ部類の人間だった、彼の場合それを自分自身の喜びであり誇りにすら感じている。また染み付いた習慣のように人を殺すのに迷いが無い。朝起きて顔を洗うように喉を裂いて、歯を磨くように切り刻む。彼は容赦が無い、そして女、子ども、関係なく無慈悲だった。ビッグ・ファイアの名の下においては他の十傑もやはり同様に無慈悲である、しかし無慈悲の十傑の中でも完璧な無慈悲と言っていい。レッドはいわゆる「生粋」だった。


レッドは2人に近づきセルバンテスの向い側にどっかりと座る。

「お仕事終わったのかね、ご苦労様」

「ああ」

「どうした?何か用かね」

「私がここにいてはいかぬのか?」

「いいや、どうぞどうぞ」

セルバンテスは子どもに相変わらず笑顔をむけている。

「いいよね、子どもは」

「好かぬ」

「そうかい?」

「無力なくせに庇護される、とるに足らないつまらぬ生き物だ」

「可愛いじゃないか」

「ふん、可愛いなどという形容は相手を惑わし油断させるだけのものでしかない」

「レッド君らしい発想だ」

「それに「可愛い」などと思うということはそいつが自分より劣っていると感じるからこそだ。強い物に対して「可愛い」などとは思わぬだろう。下に見て蔑んでいる証拠だ、どうだ、否定できまい」

「やれやれ・・・」

「セルバンテス、貴様はなぜ子どもが好きなのだ。ああ、お得意の『眩惑』とやらが子ども相手ならばたやすいものだからだろう?何もわかっていない愚か者だから口先三寸であっさり騙せる」

「レッド君に言わせれば確かにそうかもしれんね」

肩をすくめてセルバンテスは笑う。

「その子どもは衝撃の娘というだけでここにいるのだろう?ふん、大そうなご身分だ。ろくな能力もないくせに穀潰しめ」

「いいんだよね~サニーちゃんは能力なんか無くったって笑っててくれればね~」

「くだらん」

鼻を鳴らして2人を見下す。
人1人殺せもしない子ども、それをあやす大人。くだらない。
そして自分をここまで「完璧に育て上げた」大人たちは素晴らしい。
自分に血をすする喜びを与えてくれ、誇りを教えてくれた、感謝すらしている。

セルバンテスのクフィーヤの下から発信音が鳴った。

「緊急任務か、困ったな、他は出払っててサニーちゃんを預ける者がいない」

「私が見てやってもよいが?」

レッドの意味ありげな笑みにセルバンテスはいぶかしむ。
目元は彼のコードネームの由来でもある赤いマスクで覆われてはいるが面相は端整といえる。それを少し歪ませるように薄く笑っている。

「子どもは嫌いじゃなかったのかね」

「嫌いだ、でも見ていてやるよ。なに、殺しはしない」

セルバンテスは躊躇したが任務に赴かなければならない、一番預けたくない相手だが「頼んだよ」の一言を言い残し白い旋風と化して消えた。



自分の膝下程度の大きさの子どもはテーブルの上に置かれてセルバンテスにもらったのか飴玉を舐めている。

私が貴様の歳の頃には毒を舐めさせられていたものだ。
おかげでほとんど毒など効かない便利な体になったのだ。
それを貴様は甘い飴玉か、馬鹿が。

ビッグ・ファイアに忠誠と命を捧げ、破壊と殺戮をもたらす者となる、貴様の父親もそう考えて娘をここに置いているはずだ。そしてだから貴様はここにいるのだ。
きょとんとした顔で自分を見る子ども。何もわかっちゃいない馬鹿面だ。レッドはそう思う。

くないを1本取り出す。
先端は鋭く尖り、赤黒い色に染まっている。
レッドは子どもの手をとり握らせる。

「ほお、似合うじゃないか、さすが「衝撃の子」といったところか?くはははははっ」

腹をそらせ高く声を上げて笑う。
さっきの「仕事」で敵の首を貫いたくないだ。
何人かは知らない、とりあえずたくさんだったかもしれない。
それをこの子どもは何も知らないでおもちゃのように握っている。
なんとも愉快だ。

「いいか?突くだけなら確実に急所を狙え。そして突いてから捻れば空気が入って敵は静かに死ぬ、覚えておけ、そしてそれを体に刻み込め」

子どもの反応を無視してレッドはさらに目の前に様ざまな武器を広げる。
武器といってもそれは「暗器」。戦いに振るうと同時に命を闇に沈める武器。
手裏剣は一種類じゃない、そして奇妙に捻じ曲がった鋲もあれば円月形の刃もある。
そしてそのいずれも赤黒く染まっている。

「ひとつ好きなのを選べ、貴様にくれてやろう」

レッドは楽しいと思う。自分もこうして自分の武器を決めたのだ。
子どもはくないを握ったまま「暗器」を物色している。

いいぞ、いいぞぅ、そうだ、選べ。
貴様の道がそこにある。喜びと誇りに満ちた道だ。
何もしらない愚かな貴様にこの私が示してやろう。


しかし子どもは何も選ぶ事はなかった。
そしてそれは突然だった、子どもの赤い瞳が光ったかと思うと目の前に飴玉が現れた。
何も存在していない空間からである。
レッドは目を見張った。
外部からの力の脈動はまったく感じられなかった。
それどころか明らかに子どもからその脈動が感じられたからだ。
子どもは自分の力にまったく実感が無いのか飴玉を不思議そうに見ている。

やはりこの子どもは父親の血を受け継いでいる「能力者」だ。
しかもなんだこの力は、まるで魔法だ。
この子どもにこんな力があるなどと知らないし聞いていない。
ということはあの父親も他の連中も、そして孔明も知らないのではないのか?
自分が第一発見者だ。
これはいい。
面白いことになってきた。


レッドの端整な顔は笑みで歪んでいく。


孔明か樊瑞・・・いや孔明に今すぐこの事を伝えれば専用の教育を施すに違いない。
今から能力を鍛え上げればさぞかし強力な力を扱えるだろう。
新たな戦力の誕生だ、しかも有望株だ。
将来は父親と同じく十傑集に連なってビッグ・ファイアの名の下に命を刈るのだ。


レッドの端整な顔は裂くような笑みでどんどん歪んでいく。


そして自分のように幼子の頃から仕込むのだ。
飴玉を取り上げて毒を舐めさせよう。
刃を持たせ振るわせよう。
血飛沫をあびてその味を覚えさせよう。
肉を裂く喜びを体に刻みこませよう。
そうだ、闇に産声をあげさせるのだ。

喜びと誇りに体が震え上がる、最高だ。

そうだ、最高だ。


最高・・・だ。



レッドは体は燃えるように熱いのにすでに冷め切っていた瞳を子どもに向ける。
取るに足らないつまならい生き物だ。
何も知らない愚か者だ。
そしてその愚か者は赤黒いくないを握り締めたまま飴玉を舐めていた。


自分が舐めたかった甘い飴玉を・・・舐めていた。













それから半年後、サニーは孔明が設けた能力者養成の特別カリキュラムを1日15分程度受けることになった。それは先日孔明自身がサニーの能力の発現を確認したからだった。


「しかし衝撃の娘にあのような力があったとは、やはり血か」

カワラザキはひとりごちる。
その言葉に樊瑞はいつになく複雑な表情をつくり唸る。
セルバンテスはいつもの笑みも浮かべず酷く冷静だった。
アルベルトは眉ひとつ動かさず無表情である。

「ああレッド、知っていたかサニーには能力があるらしい」

カワラザキの言葉をレッドは興味無げに「知らんな」の一言で流した。



そして闇に産声を上げた者は闇に消えていった。








END








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