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ウェディングベル






「サニーちゃんは私のお嫁さんになるんだもんねぇ~」

「ふざけるな貴様、サニーはやらん」


相変わらずと言っていいのか毎度ばかばかしいやりとりがそこにはあった。
同僚たちの、そのばかばかしいやりとりを完全無視してアルベルトはコーヒーを飲む。
まだ幼い子どもを挟んでセルバンテスと樊瑞、2人のばかな大人がばかを言っている。
付き合いきれん。
アルベルトは再びコーヒーに口をつける。

「だってこの前サニーちゃんと約束したんだ、大きくなったら私のお嫁さんになるってね」

「貴様私の目が届かないところでよくも・・・サニーダメだぞこんな男の嫁になっては。私の所にずっといなさい」

どっちもどっちだが樊瑞に娘を預けたのを少し後悔したのは確かだ。
アルベルトはこっそり眉をよせる。

「私のお嫁さんになったら楽しいよ~お金持ちだからお洋服いっぱい買ってあげるし、お菓子も食べ放題だよ。あーでもサニーちゃんが大人になるまで待ちきれないなぁ、そうだ、今私のお嫁さんになってくれるかい?綺麗なウエディングドレスが着れるよ?」

セルバンテス、お前どこまで本気で言っているのか知らんがそれは犯罪だ。確かにBF団は犯罪集団だ、だがその犯罪だけは本当に犯罪だ。

「待て、サニー!今なるのならいっそ私の嫁になりなさい」

樊瑞、貴様もだ、少しはまともな奴だと思っていたのだが物事の分別すら付かぬ男だったのか。

アルベルトは知らずコーヒーカップを持つ右腕に衝撃波を溜め込む。
コーヒーはさざなみを立て始めた。


「じゃあサニーちゃんに決めてもらおうじゃないか。サニーちゃんは私の方がいいよね?」
「いいやサニーは私の方がいいに決まっている、そうだろう?サニー」

2人に覗き込まれる幼い少女は目をぱちくりさせている。
そして満面の笑顔になって元気良くはっきりと答えた。


「サニーはパパのおよめさんになるの!」


アルベルトは口に含んでいたコーヒーを全て噴きだした。
娘の言葉は十傑集「衝撃のアルベルト」を粉砕する強烈なボディブローだった。


「あるべると君?どういうことなのかね?」
「アルベルトお主・・・見損なったぞ・・・」

目の前に迫り来る白い影とピンクの影。
普段のアルベルトなら十傑集総がかりでも望むところだったがボディーブローの余韻深く今は呼吸をするのもままならない。

「パパのおよめさんになるの!」

娘よ、頼むから黙っていてくれ、アルベルトは咳き込みながら心の中で叫ぶ。


「いくら友人の君でもゆるさないよ?」
「人の道を踏み外すとは・・・」

「ええい!馬鹿か貴様ら!!!!」


しかしアルベルトの頭にふとよぎる。いや、よぎってしまった。

娘が
成長して
美しいひとりの女性になって
白いウェディングドレスを着て

自分の横に立つ

そしてふっくらとしたピンク色の唇で
自分に愛の誓いを立てる


その姿は・・・亡き妻によく似た・・・


「うーあーあーあーあーあーあー!!!」

アルベルトは首を横にブンブン振りながら絶叫している。
何かを懸命に吹き飛ばそうとしているらしい。
顔は必死と言っていい形相。そして赤い。


「うっわー想像してるよこの人」
「最低だぞ!アルベルト!!」
「パパのおよめさんになるの!」






BF団にウエディングベルが鳴り響いていた





END








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