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             『地平線の向こうへ』Interval3


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へちゃり。
額に、何か冷たいものが当たった。

真っ暗だ。
…ここは、どこだ??

思って、彼は目を開けた。しかし、開いた目の前はやはり真っ暗で。

「…――」

何度か、瞼をゆっくりと瞬かせる。
視界の中に揺らめきながらも、段々はっきりと光が飛び込んできた。

煤けた石の天井。
見覚えの無い部屋の中に、自分が居るのがわかる。



ここは、一体。

言葉に出したつもりだが、声が掠れ、殆ど音にならない。
同時に、全身がかなりだるい事に気付いた。指一本動かすのも億劫だ。

「…《…~~~?》」

急に、横から声を掛けられる。
しかし、それは英語ではないようで、彼にはさっぱり理解できなかった。

「…英語で、しゃべ…ってくれ」

かすれる喉を叱咤し、彼は声の主にそう訴える。

「《~~~~》」

しかし、聞き取れなかったようで、声の主は彼の顔を覗き込んだ。
黒髪に褐色の肌の小柄な少年だ。黒曜石のような黒い綺麗な瞳。

「英語…」
「《~~?》…In English?」
「…そう、だ」
「英語…なら、すこし、できます。…だいじょうぶ、ですか?」

へちゃり。
また、額の冷たい感触が動く。
どうやら、水にぬらしたタオルを載せられていたようだ。少年はタオルを取り、彼ににっこりと微笑みかける。
少年には敵意が無いらしい。それに気付いて、彼はほっと息をついた。

「…ここは」

呟き、身を起こそうとする。しかし、次の瞬間、額と左肩に鈍い痛みが走った。
「うごかないで下さい。怪我、してます。3日、寝てた」
「…っつ」
「僕、カシムいいます…ここ、チエリ村。あなた、飛行機、堕ちた」

彼を押し留め、カシムは慌ててその身体を支える。

「ごめんなさい、ここ、病院、違います。十分な治療、できませんでした」
「いや…」
「でも、先生に診てもらいました。ドクター・タラール、立派なお医者様。だから、大丈夫」

片言で、しかし彼を安心させようと一生懸命喋る少年に、彼は弱々しいながらも微笑を返す。
するとカシムは嬉しそうな顔になった。

「…お前が、助けてくれたのか?カシム」
「はい、そうです。僕と、ドクター・タラールです。谷に飛行機が、落ちた」
「ありがとう、な」



しかし――3日?

思って、彼は息をつく。

あの日、嵐に巻き込まれて。予想外の横殴りの突風に煽られて操縦が効かなくなって。
頭を殴られるようながくん、という衝撃のあと、目の前が真っ暗になって。

…本当、自分は悪運が強いらしい。


とにかく、ボストンに連絡を取らねば。
砂嵐でよく判らなかったが――途切れ途切れの無線の向こうでは、皆心配していた。

「…ケティの…飛行機の無線」
「え?」
「…無線壊れてなきゃ、あれで連絡を…それか街で、電報かなにか…皆に」

――瞬間それを聞き、カシムは顔を強張らせた。

「…」
「おい…?」

それに、少年は辛そうに俯く。そして――言った。

「ごめんなさい…」
「…カシム?」

「…貴方、帰れない」

少年の言葉に、モンタナは息を呑んだ。

カシムは泣きそうな表情で彼の手を取る。
震える、小さな手。


「…貴方はここから出られない。――…ここは、チエリ村だから」




 
 

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