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             『地平線の向こうへ』<8>


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空っぽになった心に、次に生まれたのは悔しさだった。



悔しくて、悔しくて――どうしようもなかった。

自分が、ここまであの男にイカれているのが、はっきりとわかったからだ。
心の貯金箱の底までさらって行って、メリッサの心を空っぽにしてしまったのだ。

けれど、その男は生死不明のまま、10日以上も音沙汰なし。
つまりは、持って行き逃げされてしまったも同然の事態。




…まだ、頭の隅にあの朝の彼の言葉が引っかかっているものの、――今はそれすら、些細なことに思えた。

つまり。


「…アルフレッド!!行きましょう!」
「え」

店に突然飛び込んできたメリッサの言葉に、アルフレッドは驚き、顔を上げる。

「…直接。探しに行きましょう」

言って、彼女は微笑う。

「こうなったらコネでもなんでも使って、世界中探しましょ!」

帰ってこないなら、首根っこ掴んでもつれて帰るわ。
そう言って、彼女は立ち上がった。

「で、でも」
「アルフレッド。私はね貴方と違って、突然のギルト博士からの依頼とか何かで――途中から貴方たちを追いかけることにも慣れてるのよ。当然、探し出す事もね」

あれ、結構大変なんだから。

あっさりと言って、肩をすくめる。
それに、アルフレッドは戸惑ったように目を瞬かせた。





あのあと。
駅の化粧室に入って、顔を洗って化粧を直した。
そうしたら、急に腹が決まってしまったのだ。

探し出して――横っ面に一発、ビンタをお見舞いする。

そもそも、あの朝メリッサはそれをやるべきだったのだ。
やるべき事をしなかったから、食い違って、罷り間違って。…こうなってしまったのだ。



大体、『まずった』って何よ!

思って、彼女は拳を握り締める。
結局、彼は言い訳のひとつもしなかった訳だし。
彼女がいくら彼の事を好きといっても―― 一発くらい張り倒す権利くらいはあると思うのである。


「ハイ、航空券のチケット取ってきたわ。出発は明日一番だから、早起きしてね」
「メリッサ…」

準備の良い事で。彼の予定も聞かない内に彼女はチケットを勝手に取ってきていたのだ。
アルフレッド暫くぽかん、とした顔になっていたが、不意にその顔に微笑みを浮かべる。
…久々に心の底から毀れだした、笑顔。

「なんか…急に逞しくなったよね」
「ええ。いつも「今回は遠慮するわ」って時にも冒険に巻き込んでくれる誰かさんの所為で、すっかりね」

彼女は微笑って悪戯っぽく肩をすくめる。
それに応える様にアルフレッドも目を細め、チケットを受け取った。


「うん…そうだ、そうだね。探しに行こう」


言って、アルフレッドは立ち上がる。






カランカラン。


瞬間、後ろで店のドアベルが鳴った。


「すいません、今店は休業中で――」

それに彼らは同時にドアの方を振り向き――

「…ったく、なんで俺らがこんなとこに来なきゃいけねえんだよ」
「ボスの命令だからねぇ、仕方ないよスラム」
「……」



ドアの前にいたのは、二人の男。
悪く言えばチンピラ風の――よく言っても労務者風の、ガラの良くなさそうな凸凹コンビ。


「なに呆けてやがんだ。ギルトの弟子ども」


どういう理由で。何故ここに居るのか、さっぱりわからないが。
目の前に居るのは、…あの遺跡泥棒、ゼロ卿の部下。スリムとスラムだった。








 
 

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