感想などありましたら。
2/16(金)
DSでプレイしてたアドバンス版FF5をとりあえずさっとクリアしました。オメガ?秒殺されましたよ?神竜?尻尾巻いて逃げましたが何か。ただいま舐め尽すようにまったり2週目プレイ中、次は本気でぶったおーす。アドバンスのFF5ってバグ無いしバランス良い、やり込みが多くて結構良作
テキストで少しずつ性格や背景を明らかにしていこうかと思っていましたが、一度まとめておかないと自分は忘れたり混乱するので(実際もう混乱してる)改めて【love】における脳内設定を書いておく。とりあえず主要の3人パパ。
・衝撃
自分の立場や自分がどんな人間なのかよくわかっているので娘とは腹にいる時点で親子の縁を切る。BF団の自分を父親にするわけにいかんって我が子を想ってのこと。本当は組織と無関係のままにしておきたかったけど唯一娘を任せられる奥さんが惨劇時に死んじゃって止む無く身請け。自分の血を受け継いで能力者なので(わかっちゃいたけどやっぱ子どもが欲しかった人)一般施設に入れるわけにもいかず、おまけに十傑の娘。バンテスと2人でどーすっかと悩む。でも結局BF団しか選択肢が無く娘には親の因果で組織入りさせてしまったことと能力者にしちゃったことに罪悪感いっぱい。それに自分自身戦い大好きの性(サガ)を持つ人間というのを知っているしいつ死んでもおかしくないことばっかりやってて死ぬこと厭わない。そんなイカレた自分の側に愛しい娘をおけないので樊瑞パパにバトンタッチ。組織入りさせちゃったけど娘にはできることなら思うがままに人生を歩んでくれることを願ってみる(だから「好きにしろ」がお決まりの超放任主義)。ちなみに親子の縁切ったくせに「お父様」と呼ぶのを許しちゃってるのはなんだかんだ言ってこの人は娘からそう呼ばれるのが嬉しいんだと思う、矛盾しているようでも人の親ってそんなもんなんじゃなかろうか。普段は超放任でありながらここぞというときはキッチリ決める仕事人パパ。
・魔王
衝撃がサニーちゃんを自分に預けた理由がいまいちわからない、でもサニーちゃんはほとんど我が子同然に慈しんじゃう。そんなことできる自分にびっくりだよ。サニーちゃんがが能力者で十傑候補になってしまって超複雑、組織の人間であってもいずれ組織とは縁の無い人並みの人生を歩ませる気満々だったので悩んじゃうね。サニーちゃんには基本的に優しいけどちゃんと躾は行える人、悪いことは悪いと叱れる人(衝撃パパも安心ですな)。でもこの人組織にいてもレッドみたいに麻痺しきってるタイプではないので自分は世間一般でいう悪いことをやっているという自覚がありながらにサニーちゃんには悪いことは「ダメ」とか「やってはいけない」と教えている自分はどうよって実は思ってる。まぁBF様のためなら他の連中同様にどんなことでも当然のようにサックリやっちゃいますけど。実父は衝撃だけどサニーちゃんを可愛がり我が手で育てている自負はあるのでたまに強気。ちょっぴり過保護気味なのは溢れる愛情の裏返し。サニーちゃんがいつまでも子どもでは無いことわかっていてもそれでもまだまだ子どもだと思い込みたい40過ぎの男。サニーちゃんにはいつもフルスイング&全力投球パパ。
・眩惑
衝撃と魔王のいずれのタイプでもない第三のパパ。アルベルトの奥さんからほとんど家族同様の扱いをしてもらっていたのでこっそり恩に感じている。そのためサニーちゃんには奥さんのような女性になって欲しいと思ってみたり。組織の人間だし自分の幼少時を考えると我が子を持つ気になれない。でもBF団に入っていつ死ぬともわからない夢も希望も何も残らない生き方してるので(冷静な視点をお持ち)余計にサニーちゃんに愛情と希望をたっぷり託したいと考えてる。プッツン系で快楽主義かつ衝動的に見えて実は一番地に足が着いていたりして(狂人を一回りしてまともに戻ったタイプ)。放任でも過保護でもなくサニーちゃんが自分のような人間になることなくまっすぐ成長して幸せになるまでを見守り、それが生きがいの半分(このあたりの感覚は親としても至極まっとう)を占める。しかし実際は死んじゃったことで十傑に空席ができてしまい候補者のサニーちゃんに周囲(十傑以外の人間と思われ)の期待が強まる皮肉な結果に。サニーちゃんにとって親友恋人父親の三様の属性を持ち合わせる不思議パパ。
頑張れ魔王、他の2人には死亡フラグが立っているんだから。
2/16(金)
DSでプレイしてたアドバンス版FF5をとりあえずさっとクリアしました。オメガ?秒殺されましたよ?神竜?尻尾巻いて逃げましたが何か。ただいま舐め尽すようにまったり2週目プレイ中、次は本気でぶったおーす。アドバンスのFF5ってバグ無いしバランス良い、やり込みが多くて結構良作
テキストで少しずつ性格や背景を明らかにしていこうかと思っていましたが、一度まとめておかないと自分は忘れたり混乱するので(実際もう混乱してる)改めて【love】における脳内設定を書いておく。とりあえず主要の3人パパ。
・衝撃
自分の立場や自分がどんな人間なのかよくわかっているので娘とは腹にいる時点で親子の縁を切る。BF団の自分を父親にするわけにいかんって我が子を想ってのこと。本当は組織と無関係のままにしておきたかったけど唯一娘を任せられる奥さんが惨劇時に死んじゃって止む無く身請け。自分の血を受け継いで能力者なので(わかっちゃいたけどやっぱ子どもが欲しかった人)一般施設に入れるわけにもいかず、おまけに十傑の娘。バンテスと2人でどーすっかと悩む。でも結局BF団しか選択肢が無く娘には親の因果で組織入りさせてしまったことと能力者にしちゃったことに罪悪感いっぱい。それに自分自身戦い大好きの性(サガ)を持つ人間というのを知っているしいつ死んでもおかしくないことばっかりやってて死ぬこと厭わない。そんなイカレた自分の側に愛しい娘をおけないので樊瑞パパにバトンタッチ。組織入りさせちゃったけど娘にはできることなら思うがままに人生を歩んでくれることを願ってみる(だから「好きにしろ」がお決まりの超放任主義)。ちなみに親子の縁切ったくせに「お父様」と呼ぶのを許しちゃってるのはなんだかんだ言ってこの人は娘からそう呼ばれるのが嬉しいんだと思う、矛盾しているようでも人の親ってそんなもんなんじゃなかろうか。普段は超放任でありながらここぞというときはキッチリ決める仕事人パパ。
・魔王
衝撃がサニーちゃんを自分に預けた理由がいまいちわからない、でもサニーちゃんはほとんど我が子同然に慈しんじゃう。そんなことできる自分にびっくりだよ。サニーちゃんがが能力者で十傑候補になってしまって超複雑、組織の人間であってもいずれ組織とは縁の無い人並みの人生を歩ませる気満々だったので悩んじゃうね。サニーちゃんには基本的に優しいけどちゃんと躾は行える人、悪いことは悪いと叱れる人(衝撃パパも安心ですな)。でもこの人組織にいてもレッドみたいに麻痺しきってるタイプではないので自分は世間一般でいう悪いことをやっているという自覚がありながらにサニーちゃんには悪いことは「ダメ」とか「やってはいけない」と教えている自分はどうよって実は思ってる。まぁBF様のためなら他の連中同様にどんなことでも当然のようにサックリやっちゃいますけど。実父は衝撃だけどサニーちゃんを可愛がり我が手で育てている自負はあるのでたまに強気。ちょっぴり過保護気味なのは溢れる愛情の裏返し。サニーちゃんがいつまでも子どもでは無いことわかっていてもそれでもまだまだ子どもだと思い込みたい40過ぎの男。サニーちゃんにはいつもフルスイング&全力投球パパ。
・眩惑
衝撃と魔王のいずれのタイプでもない第三のパパ。アルベルトの奥さんからほとんど家族同様の扱いをしてもらっていたのでこっそり恩に感じている。そのためサニーちゃんには奥さんのような女性になって欲しいと思ってみたり。組織の人間だし自分の幼少時を考えると我が子を持つ気になれない。でもBF団に入っていつ死ぬともわからない夢も希望も何も残らない生き方してるので(冷静な視点をお持ち)余計にサニーちゃんに愛情と希望をたっぷり託したいと考えてる。プッツン系で快楽主義かつ衝動的に見えて実は一番地に足が着いていたりして(狂人を一回りしてまともに戻ったタイプ)。放任でも過保護でもなくサニーちゃんが自分のような人間になることなくまっすぐ成長して幸せになるまでを見守り、それが生きがいの半分(このあたりの感覚は親としても至極まっとう)を占める。しかし実際は死んじゃったことで十傑に空席ができてしまい候補者のサニーちゃんに周囲(十傑以外の人間と思われ)の期待が強まる皮肉な結果に。サニーちゃんにとって親友恋人父親の三様の属性を持ち合わせる不思議パパ。
頑張れ魔王、他の2人には死亡フラグが立っているんだから。
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サニーは成長し、火を使うことを許されキッチンに入ることを許されるようになった。
今年こそあの約束を果たすときがきたと、丁寧に丁寧に、おいしくできますようにと願いを込めながらチョコを作り上げた。
大作に似合うようにと綺麗にラッピングされた緑色の箱を大事に持ち、サニーはセルバンテスの執務室を訪ねた。
「おやサニーちゃん、私になにか用かな?」
「セルバンテスのおじさま、サニーにGR2を貸して欲しいのです」
同じころ、国際警察機構の北京支部ではぼんやりとロボを見ている大作に銀鈴が声をかけていた。
「大作くん」
「あ、銀鈴さん」
銀鈴は笑いながら大作に小さな箱を差し出す。
「チョコよ。今日はバレンタインでしょ」
大作は手を出しかけたが、幼いころの約束を思い出し手を引っ込めた。
「ごめんなさい…ボク、受け取れません…」
そうして銀鈴にサニーとのことを話した。
銀鈴はやはり微笑んであっさりと引き下がった。
「本当に、すみません」
何度も頭を下げる大作をその場に残し、銀鈴が立ち去る。
そこへタイミングよく鉄牛がやってきた。
「お、銀鈴、それなんだ?」
「チョコよ。大作くんにふられたの」
大作にふられたというのも気に入らないが、鉄牛としてはそのチョコの行方も気になる。
「な、なあ、そのチョコな…」
「そうねえ、長官か呉先生にあげるわ」
ふたりの姿が消えてから、ロボがなにかに反応し顔を上げた。
「ロボ、どうしたんだ?」
問いかけた大作はロボの視線の先を見る。そこには
「BF団のロボットだ!」
しかし大作がロボに命令しようとするより先、懐かしい声が聞こえてきた。
「大作くーん!」
夕陽の照り返しがまぶしい丘の上に並んで座り、サニーは自分が一生懸命作ったチョコを大作に差し出した。
「約束どおり、サニーの初めてのチョコよ」
箱を受け取りながら大作は少し照れくさそうに微笑む。
「ボクも…初めてもらうチョコだ」
大作は丁寧に包装を解き、まあるいチョコのひとつをサニーに渡し、自分も口に放り込んだ。
そんなふたりをGR2の上からながめていたセルバンテスが苦笑する。
「やれやれ。アルベルトが知ったらどんな顔をするかな」
今年こそあの約束を果たすときがきたと、丁寧に丁寧に、おいしくできますようにと願いを込めながらチョコを作り上げた。
大作に似合うようにと綺麗にラッピングされた緑色の箱を大事に持ち、サニーはセルバンテスの執務室を訪ねた。
「おやサニーちゃん、私になにか用かな?」
「セルバンテスのおじさま、サニーにGR2を貸して欲しいのです」
同じころ、国際警察機構の北京支部ではぼんやりとロボを見ている大作に銀鈴が声をかけていた。
「大作くん」
「あ、銀鈴さん」
銀鈴は笑いながら大作に小さな箱を差し出す。
「チョコよ。今日はバレンタインでしょ」
大作は手を出しかけたが、幼いころの約束を思い出し手を引っ込めた。
「ごめんなさい…ボク、受け取れません…」
そうして銀鈴にサニーとのことを話した。
銀鈴はやはり微笑んであっさりと引き下がった。
「本当に、すみません」
何度も頭を下げる大作をその場に残し、銀鈴が立ち去る。
そこへタイミングよく鉄牛がやってきた。
「お、銀鈴、それなんだ?」
「チョコよ。大作くんにふられたの」
大作にふられたというのも気に入らないが、鉄牛としてはそのチョコの行方も気になる。
「な、なあ、そのチョコな…」
「そうねえ、長官か呉先生にあげるわ」
ふたりの姿が消えてから、ロボがなにかに反応し顔を上げた。
「ロボ、どうしたんだ?」
問いかけた大作はロボの視線の先を見る。そこには
「BF団のロボットだ!」
しかし大作がロボに命令しようとするより先、懐かしい声が聞こえてきた。
「大作くーん!」
夕陽の照り返しがまぶしい丘の上に並んで座り、サニーは自分が一生懸命作ったチョコを大作に差し出した。
「約束どおり、サニーの初めてのチョコよ」
箱を受け取りながら大作は少し照れくさそうに微笑む。
「ボクも…初めてもらうチョコだ」
大作は丁寧に包装を解き、まあるいチョコのひとつをサニーに渡し、自分も口に放り込んだ。
そんなふたりをGR2の上からながめていたセルバンテスが苦笑する。
「やれやれ。アルベルトが知ったらどんな顔をするかな」
「アルベルト今戻ったか、サニーのチョコは美味かったぞ」
「お嬢ちゃんに「ホワイトデーを楽しみにしていてくれ」と言っておいてくれ」
「おい衝撃の、あのガキに・・・いや何でもない」
「サニーちゃんからバレンタインチョコは貰ったかね?今日は君の屋敷にいるはずだから早く帰ってあげたまえ」
本部に帰還するなりアルベルトは出会う同僚たちから次々と声を掛けられる。
ほとんどの者が娘への賞賛と感謝の言葉を口にする。
----なにがバレンタインだチョコだ
----サニーのやつめくだらんことばかり覚えおって
適当に返事してアルベルトは自分の執務室にこもった。そしてイワンと2人がかりで溜まっていた書類の整理と決済を行うため仕事は深夜にまで及んだ。
「ア、アルベルト様・・・これはもしやサニー様からの・・・」
深夜12時を前に屋敷に戻った二人、そこでイワンが驚いた表情を見せたのは屋敷に戻って必ず通る応接間のテーブルにそれが置いてあったからだ。一つは白い水玉模様が入った黄色い包みに緑のリボン、もう一つは黒い光沢のある包みに真っ赤なリボン。それが娘からのバレンタインチョコであるとアルベルトはすぐにわかった。
----やれやれ、チョコか・・・
深く眉間に皺を寄せたが・・・アルベルトはスーツの上着をソファに放り投げると黄色い包みの方をイワンに投げてよこした。
「どうやらそれが貴様の分だ。今日はもういい、帰れ」
「しかし夜食のご用意を・・・」
「いやいい、このまま寝る。朝は遅く取るから8時に来い、ご苦労だったなイワン」
「はっかしこまりました。サニー様には後ほどお礼を申し上げておきます」
イワンはアルベルトに深々と礼の形をとるとサニーからのチョコを大切そうに持って屋敷を出て行った。
一人屋敷に残ったアルベルトはネクタイを緩めシャワー室へ向かう。
疲れを流してガウンを羽織り、濡れた髪を上質のコットンタオルでふき取りながら再び応接間に足を踏み入れた。自然と視界に入る娘からのバレンタインチョコ。
「・・・・・・・・・・・・」
それを掴み取ると二階にある自分の寝室に向かった。
「な・・・・・・・」
寝室に入った途端アルベルトは目を丸くしてしまった。
サニーがちゃっかり父親の、自分のベッドで眠っていたのだ。
父親たちの帰りを待っていたが昼間の疲れに負けてしまったらしい。
「来客用のベッドがあるだろうに、まったく・・・」
アルベルトは髪を拭いていたタオルとチョコの箱をサイドテーブルに置くと、自分のベッドに眠る我が娘の安らかな寝顔をそっと覗き込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
年を重ねるごとに亡き妻の面影が色濃くなっていく娘。
アルベルトは誰もいないはずの部屋なのに辺りを見回して人の気配が無いのを確認すると、おもむろに眠る娘の柔らかい頬を指の背で撫でる。
じんわりと伝わる娘からの確かな命のぬくもりに彼は心の底から安堵した。
「随分と大勢の男どもに『本命チョコ』とやらを配り歩いたようだな」
娘が女の株を上げることができて実は・・・こっそり嬉しい。
妙に頼もしさを感じてしまい自然と笑みが漏れる。
安らかな眠りから覚まさないよう、そっとロイヤルミルクの柔らかい巻き髪を撫でてやれば長いまつげがわずかに揺れる。
小さな結晶は何の夢を見ているのか幸せな微笑みを返してきた。
「ふ・・・いつのまにかこんな物を私によこす年になったか・・・」
ベッドのサイドテーブルに置いてある娘から貰ったチョコレート。
小さな手で結んだであろう赤いリボンを丁寧にほどいて光沢ある黒い包装紙を静かに開ける。中には真四角のチョコレートが4つ、その一つを彼は口に入れた。
----そういえばあれが私によこしたチョコもこんな味だった
甘ったるいものを好まない彼の好みを母親が知っていたが・・・娘も知っていたらしい
口で溶けるそれは砂糖がほとんど入っていない苦味が強いビターチョコだったが
娘の寝顔を眺めながら味わえば、彼には少々甘すぎた。
END
「お嬢ちゃんに「ホワイトデーを楽しみにしていてくれ」と言っておいてくれ」
「おい衝撃の、あのガキに・・・いや何でもない」
「サニーちゃんからバレンタインチョコは貰ったかね?今日は君の屋敷にいるはずだから早く帰ってあげたまえ」
本部に帰還するなりアルベルトは出会う同僚たちから次々と声を掛けられる。
ほとんどの者が娘への賞賛と感謝の言葉を口にする。
----なにがバレンタインだチョコだ
----サニーのやつめくだらんことばかり覚えおって
適当に返事してアルベルトは自分の執務室にこもった。そしてイワンと2人がかりで溜まっていた書類の整理と決済を行うため仕事は深夜にまで及んだ。
「ア、アルベルト様・・・これはもしやサニー様からの・・・」
深夜12時を前に屋敷に戻った二人、そこでイワンが驚いた表情を見せたのは屋敷に戻って必ず通る応接間のテーブルにそれが置いてあったからだ。一つは白い水玉模様が入った黄色い包みに緑のリボン、もう一つは黒い光沢のある包みに真っ赤なリボン。それが娘からのバレンタインチョコであるとアルベルトはすぐにわかった。
----やれやれ、チョコか・・・
深く眉間に皺を寄せたが・・・アルベルトはスーツの上着をソファに放り投げると黄色い包みの方をイワンに投げてよこした。
「どうやらそれが貴様の分だ。今日はもういい、帰れ」
「しかし夜食のご用意を・・・」
「いやいい、このまま寝る。朝は遅く取るから8時に来い、ご苦労だったなイワン」
「はっかしこまりました。サニー様には後ほどお礼を申し上げておきます」
イワンはアルベルトに深々と礼の形をとるとサニーからのチョコを大切そうに持って屋敷を出て行った。
一人屋敷に残ったアルベルトはネクタイを緩めシャワー室へ向かう。
疲れを流してガウンを羽織り、濡れた髪を上質のコットンタオルでふき取りながら再び応接間に足を踏み入れた。自然と視界に入る娘からのバレンタインチョコ。
「・・・・・・・・・・・・」
それを掴み取ると二階にある自分の寝室に向かった。
「な・・・・・・・」
寝室に入った途端アルベルトは目を丸くしてしまった。
サニーがちゃっかり父親の、自分のベッドで眠っていたのだ。
父親たちの帰りを待っていたが昼間の疲れに負けてしまったらしい。
「来客用のベッドがあるだろうに、まったく・・・」
アルベルトは髪を拭いていたタオルとチョコの箱をサイドテーブルに置くと、自分のベッドに眠る我が娘の安らかな寝顔をそっと覗き込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
年を重ねるごとに亡き妻の面影が色濃くなっていく娘。
アルベルトは誰もいないはずの部屋なのに辺りを見回して人の気配が無いのを確認すると、おもむろに眠る娘の柔らかい頬を指の背で撫でる。
じんわりと伝わる娘からの確かな命のぬくもりに彼は心の底から安堵した。
「随分と大勢の男どもに『本命チョコ』とやらを配り歩いたようだな」
娘が女の株を上げることができて実は・・・こっそり嬉しい。
妙に頼もしさを感じてしまい自然と笑みが漏れる。
安らかな眠りから覚まさないよう、そっとロイヤルミルクの柔らかい巻き髪を撫でてやれば長いまつげがわずかに揺れる。
小さな結晶は何の夢を見ているのか幸せな微笑みを返してきた。
「ふ・・・いつのまにかこんな物を私によこす年になったか・・・」
ベッドのサイドテーブルに置いてある娘から貰ったチョコレート。
小さな手で結んだであろう赤いリボンを丁寧にほどいて光沢ある黒い包装紙を静かに開ける。中には真四角のチョコレートが4つ、その一つを彼は口に入れた。
----そういえばあれが私によこしたチョコもこんな味だった
甘ったるいものを好まない彼の好みを母親が知っていたが・・・娘も知っていたらしい
口で溶けるそれは砂糖がほとんど入っていない苦味が強いビターチョコだったが
娘の寝顔を眺めながら味わえば、彼には少々甘すぎた。
END
「怒鬼様なら先ほどカワラザキ様に誘われて茶室に向かわれました」
怒鬼の執務室に誰もおらずどうしたものかと思っていたらたまたま居合わせた血風連の一人がこう教えてくれた。茶室・・・カワラザキが所有する日本の「茶道」を嗜むための小さな和風の家屋で広大な本部の中庭でも日本風庭園風に造られたその一角に存在する。サニーも何度かそこでカワラザキから様々な「作法」を教えてもらったことがある。
「あ、そうだ。血風連の皆様にもと思ってバレンタインチョコを作ったのですが・・・でも失礼ですが私、皆様がいったい何人いらっしゃるのかわからなくって・・・」
30個で足りなかったら本当にごめんなさい、とサニーは一粒ずつラミネートに包まれ丁寧に黄色のリボンで結ばれたバレンタインチョコを籠から取り出す。中には大粒のアーモンドが入った一口サイズのチョコレート、長方形の粒の上にはハートの模様が入っている仕事の細かさだった。
「な、なななんと・・・バレンタインチョコを我らのような者にまで下さると仰られるのですかサニー様・・・しかも30個もお作りになられて・・・」
「本命チョコ」と聞けば尚更で血風連A(仮名)はサニーから手渡された30個のチョコが入った紙袋を手に、滂沱の涙を流して曇る視界でサニーを見送った。
ちなみにこの後・・・30個の「本命チョコ」を血風連200名(未確認情報)で重軽傷者を多数出すほどの取り合いとなった。でも実際は29個のチョコで、Aが仲間に差し出すよりも先に1個食べたということは彼だけの秘密。
サニーは竹でできたそれが「ししおどし」という名のモノであるとは知らない。
静寂の庭園中「コーン!」と心地よい音が響き渡った。
大人なら身体を小さくしてかがめないと入れない茶室特有の狭い入り口。
サニーも頭を低くして「失礼します」と一言、カワラザキの茶室に潜り込んだ。
「おおサニー。さあせっかくだから、怒鬼から茶をいただきなさい」
「はい」
無骨な武芸者とは思えない繊細な手つきで怒鬼は茶筅(ちゃせん)を扱う。所作にも無駄はなく清浄な空気が彼の周囲に漂うのがわかるほどそれは見事な手前で・・・サニーはその様を何度見るたびにいつか自分も、怒鬼のような茶を人に点てられるようになりたいと密かに思っていた。
心のこもった茶で出迎えてもらいサニーはバレンタインチョコを取り出した。
「あの、この場でチョコは合わないかもしれませんが・・・」
「いや、そんなことはない。茶菓子にいいではないか、のう怒鬼。バレンタインチョコか・・・貰うのはいったい何十年ぶりになるかのう」
身体をゆすってカワラザキは笑いながらサニーから手渡されたチョコを手にする。
それが「本命チョコ」と聞けばおおらかな笑いを彼は返した。
和紙で包まれ赤く染められた麻の紐で結ばれたその中身は真四角のチョコが5つ。
「ふむ・・・」
何も入っていないミルクチョコレートだ、まったく奇をてらわないチョコらしいチョコと言える。しかし返ってあれこれ混ぜなかったためか濃厚なミルクの優しい風味が素直にカワラザキの舌に届いた。年を重ね本質というものを知るに至った彼にとってそれはシンプルだけでは説明できないやはり本質の味。
----サニーに料理を勧めたのは正解だったかもしれん
もちろん花嫁修業の意味も少しは込めていたかもしれないが・・・それよりも豊かな感覚を養うと同時に食べる相手の気持ちを考える心遣い、料理を通じて少しでもサニーに得て欲しいとカワラザキは考えていたのだ。
そしてその結果の味に彼は満足した。
「この味はワシにぴったりだ、ありがとうサニー」
その横で怒鬼は相変わらず無言のままチョコの包みを開いていた。藍染の巾着の中身は楕円形のチョコが4つ、彼は少し珍しげに見つめたあとおもむろに口にした。
「・・・・・・・・・・」
彼にとってチョコは少々不思議な味だったのか確かめるように舌の上で味わっている。中はホワイトとビターとミルクが何層も重なっており味わうごとに様々なチョコが現れる。一粒で二度も三度も美味しい仕組みに怒鬼は目を見開いた。
「美味い」
「・・・・・!」
サニーは初めて聞く怒鬼の言葉に驚いてしまった。
「ははは、怒鬼がそう口にするのだからよっぽどだと言うことじゃよサニー」
「サニー殿、斯様な菓子をかたじけない」
「あ・・・い・・・いいえ!お口に合って本当に良かったです怒鬼様!」
茶室を後にしてサニーは再び本部の大回廊を歩いていた。すると突然床から溶け出すように黒い液体がにじみ出てそれはすぐさま獣の形となった。
「アキレス様!」
黒い獣、アキレスは駆け寄って来たサニーに艶のある身体を猫のように摺り寄せる。十傑集と同格とも言える気高き彼がそんな態度を示すのはサニーくらいかもしれない。
「アキレス様にもチョコをって思っていたんですよ?でも・・・アキレス様はチョコをお食べになられるのかと・・・」
少し申し訳無さそうに一粒のチョコを差し出す。黒いビターチョコの中身はイチゴの甘酸っぱいピューレが入っていてアキレスをイメージしたようだ。アキレスは臭いを嗅ぐ素振りを見せたがあっさりとそれを口に入れた。
満足のいく味だったのかペロリ、とサニーの頬を長い舌で舐めてやる。
「うふふ、アキレス様に喜んでいただけて良かったです!あ、そうだ、あの・・・私ビッグ・ファイア様にもチョコをお渡ししたいのですが・・・まだ一度もお会いしたことが無くて。もしよろしければビッグ・ファイア様にお渡しいただけないでしょうか」
アキレスは小さくうなずくとサニーから手渡された綺麗な水色の包装紙で包まれ、銀色のリボンで巻かれた筒状のケースを口に咥えた。そして足元の影に沈みこむようにアキレスは地面へと溶けていった。
ちなみに中身はホワイトチョコでラムレーズンが入っている。
そのサニーの手作り「本命チョコ」がビッグ・ファイアの口に入ったかどうかは・・・・
「ふう・・・」
サニーは朝からチョコが入った重い籠を持ちながら本部内を歩き回ってさすがに疲れていた。ようやく一息つこうとガラス張りの向こうに中庭が望める大回廊の突き当たりで立ち止まった。側にある休憩用のソファに身を沈めため息を一つ。
「あとは・・・そういえばレッド様はいったいどこにいらっしゃるのかしら。執務室にはおられなかったし、今日は任務の無い日のはずなのに・・・」
いよいよ残るチョコレートは三つ。
言いだしっぺのレッドにイワンと父親のアルベルトの分。
中庭からの温かい日差し、疲れて少しうとうとしかけたその時。
「おい!貴様!チョコだチョコ!!」
「きゃあ!」
気配無しになんと天井からさかさまにぶら下がって現れた赤い仮面の男にサニーは思わず悲鳴を上げてしまった。
「おおこれか、三つも用意するとはなかなか気が利くではないか」
「あ!レッド様っだめです!それはイワンとお父様のぶんで・・・」
「なんだ、そんなのどうでも良いではないか三つとも私によこせ」
「良くありません!もう・・・レッド様のはこれです」
レッドが手渡されたのは顔くらいのサイズはあるだろうか、それはそれは大きなハート型のチョコレートで赤い銀紙に包まれている。甘党のレッドはまずその大きさに満足するが・・・
「ふん、どうせ『魔法』とやらいう便利な能力でホイっと出したのであろう」
「・・・・!そんなこと私はしません!ちゃんと自分で作りました!」
能力の使い方に関しては樊瑞に幼い頃から厳しく言われている。
もっと小さな頃、自分が欲しいモノを『魔法』で生み出そうとして生まれて始めて樊瑞に叩かれた。そしていつもは優しく穏やかな樊瑞に本気で叱られたことをサニーはよく覚えている。
その時はどうして怒られるのかわけがわからなかったが・・・
「っは!どうだなかぁ。そんなこと何とでも言える。実際なんでもかんでも「魔法」で出せるのだから羨ましい話だ」
「そんな・・・」
レッドは腰をかがめ、ニヤニヤしながらサニーを覗き込む。耐えながらも今にも泣き出しそうなサニーの表情が面白いらしい。いつもならここでもう一押しすればあっさりと大泣きするところだったのだが・・・
パチーン!!!
キっとサニーが口を結んで睨んだかと思った瞬間、レッドは思いっきり引っ叩かれてしまった。女、しかも子どもからの平手打ちは生まれて初めてで、おまけにいつも大人しいサニーから受けるとはまったく予想しておらずレッドは一瞬何が起こったのかわからない。
「もうレッド様にはチョコを差し上げません!!それは「義理チョコ」ですからっ」
サニーは言い放つと籠を持って走り去っていった。
頬を腫らせて今だ呆然としているレッドの手にはチョコレート。
それは甘い物好きのレッドのために大きな大きなハート型、そして本人からの要望にきっちりこたえてピーナッツがふんだんに入っていた。
NEXT
怒鬼の執務室に誰もおらずどうしたものかと思っていたらたまたま居合わせた血風連の一人がこう教えてくれた。茶室・・・カワラザキが所有する日本の「茶道」を嗜むための小さな和風の家屋で広大な本部の中庭でも日本風庭園風に造られたその一角に存在する。サニーも何度かそこでカワラザキから様々な「作法」を教えてもらったことがある。
「あ、そうだ。血風連の皆様にもと思ってバレンタインチョコを作ったのですが・・・でも失礼ですが私、皆様がいったい何人いらっしゃるのかわからなくって・・・」
30個で足りなかったら本当にごめんなさい、とサニーは一粒ずつラミネートに包まれ丁寧に黄色のリボンで結ばれたバレンタインチョコを籠から取り出す。中には大粒のアーモンドが入った一口サイズのチョコレート、長方形の粒の上にはハートの模様が入っている仕事の細かさだった。
「な、なななんと・・・バレンタインチョコを我らのような者にまで下さると仰られるのですかサニー様・・・しかも30個もお作りになられて・・・」
「本命チョコ」と聞けば尚更で血風連A(仮名)はサニーから手渡された30個のチョコが入った紙袋を手に、滂沱の涙を流して曇る視界でサニーを見送った。
ちなみにこの後・・・30個の「本命チョコ」を血風連200名(未確認情報)で重軽傷者を多数出すほどの取り合いとなった。でも実際は29個のチョコで、Aが仲間に差し出すよりも先に1個食べたということは彼だけの秘密。
サニーは竹でできたそれが「ししおどし」という名のモノであるとは知らない。
静寂の庭園中「コーン!」と心地よい音が響き渡った。
大人なら身体を小さくしてかがめないと入れない茶室特有の狭い入り口。
サニーも頭を低くして「失礼します」と一言、カワラザキの茶室に潜り込んだ。
「おおサニー。さあせっかくだから、怒鬼から茶をいただきなさい」
「はい」
無骨な武芸者とは思えない繊細な手つきで怒鬼は茶筅(ちゃせん)を扱う。所作にも無駄はなく清浄な空気が彼の周囲に漂うのがわかるほどそれは見事な手前で・・・サニーはその様を何度見るたびにいつか自分も、怒鬼のような茶を人に点てられるようになりたいと密かに思っていた。
心のこもった茶で出迎えてもらいサニーはバレンタインチョコを取り出した。
「あの、この場でチョコは合わないかもしれませんが・・・」
「いや、そんなことはない。茶菓子にいいではないか、のう怒鬼。バレンタインチョコか・・・貰うのはいったい何十年ぶりになるかのう」
身体をゆすってカワラザキは笑いながらサニーから手渡されたチョコを手にする。
それが「本命チョコ」と聞けばおおらかな笑いを彼は返した。
和紙で包まれ赤く染められた麻の紐で結ばれたその中身は真四角のチョコが5つ。
「ふむ・・・」
何も入っていないミルクチョコレートだ、まったく奇をてらわないチョコらしいチョコと言える。しかし返ってあれこれ混ぜなかったためか濃厚なミルクの優しい風味が素直にカワラザキの舌に届いた。年を重ね本質というものを知るに至った彼にとってそれはシンプルだけでは説明できないやはり本質の味。
----サニーに料理を勧めたのは正解だったかもしれん
もちろん花嫁修業の意味も少しは込めていたかもしれないが・・・それよりも豊かな感覚を養うと同時に食べる相手の気持ちを考える心遣い、料理を通じて少しでもサニーに得て欲しいとカワラザキは考えていたのだ。
そしてその結果の味に彼は満足した。
「この味はワシにぴったりだ、ありがとうサニー」
その横で怒鬼は相変わらず無言のままチョコの包みを開いていた。藍染の巾着の中身は楕円形のチョコが4つ、彼は少し珍しげに見つめたあとおもむろに口にした。
「・・・・・・・・・・」
彼にとってチョコは少々不思議な味だったのか確かめるように舌の上で味わっている。中はホワイトとビターとミルクが何層も重なっており味わうごとに様々なチョコが現れる。一粒で二度も三度も美味しい仕組みに怒鬼は目を見開いた。
「美味い」
「・・・・・!」
サニーは初めて聞く怒鬼の言葉に驚いてしまった。
「ははは、怒鬼がそう口にするのだからよっぽどだと言うことじゃよサニー」
「サニー殿、斯様な菓子をかたじけない」
「あ・・・い・・・いいえ!お口に合って本当に良かったです怒鬼様!」
茶室を後にしてサニーは再び本部の大回廊を歩いていた。すると突然床から溶け出すように黒い液体がにじみ出てそれはすぐさま獣の形となった。
「アキレス様!」
黒い獣、アキレスは駆け寄って来たサニーに艶のある身体を猫のように摺り寄せる。十傑集と同格とも言える気高き彼がそんな態度を示すのはサニーくらいかもしれない。
「アキレス様にもチョコをって思っていたんですよ?でも・・・アキレス様はチョコをお食べになられるのかと・・・」
少し申し訳無さそうに一粒のチョコを差し出す。黒いビターチョコの中身はイチゴの甘酸っぱいピューレが入っていてアキレスをイメージしたようだ。アキレスは臭いを嗅ぐ素振りを見せたがあっさりとそれを口に入れた。
満足のいく味だったのかペロリ、とサニーの頬を長い舌で舐めてやる。
「うふふ、アキレス様に喜んでいただけて良かったです!あ、そうだ、あの・・・私ビッグ・ファイア様にもチョコをお渡ししたいのですが・・・まだ一度もお会いしたことが無くて。もしよろしければビッグ・ファイア様にお渡しいただけないでしょうか」
アキレスは小さくうなずくとサニーから手渡された綺麗な水色の包装紙で包まれ、銀色のリボンで巻かれた筒状のケースを口に咥えた。そして足元の影に沈みこむようにアキレスは地面へと溶けていった。
ちなみに中身はホワイトチョコでラムレーズンが入っている。
そのサニーの手作り「本命チョコ」がビッグ・ファイアの口に入ったかどうかは・・・・
「ふう・・・」
サニーは朝からチョコが入った重い籠を持ちながら本部内を歩き回ってさすがに疲れていた。ようやく一息つこうとガラス張りの向こうに中庭が望める大回廊の突き当たりで立ち止まった。側にある休憩用のソファに身を沈めため息を一つ。
「あとは・・・そういえばレッド様はいったいどこにいらっしゃるのかしら。執務室にはおられなかったし、今日は任務の無い日のはずなのに・・・」
いよいよ残るチョコレートは三つ。
言いだしっぺのレッドにイワンと父親のアルベルトの分。
中庭からの温かい日差し、疲れて少しうとうとしかけたその時。
「おい!貴様!チョコだチョコ!!」
「きゃあ!」
気配無しになんと天井からさかさまにぶら下がって現れた赤い仮面の男にサニーは思わず悲鳴を上げてしまった。
「おおこれか、三つも用意するとはなかなか気が利くではないか」
「あ!レッド様っだめです!それはイワンとお父様のぶんで・・・」
「なんだ、そんなのどうでも良いではないか三つとも私によこせ」
「良くありません!もう・・・レッド様のはこれです」
レッドが手渡されたのは顔くらいのサイズはあるだろうか、それはそれは大きなハート型のチョコレートで赤い銀紙に包まれている。甘党のレッドはまずその大きさに満足するが・・・
「ふん、どうせ『魔法』とやらいう便利な能力でホイっと出したのであろう」
「・・・・!そんなこと私はしません!ちゃんと自分で作りました!」
能力の使い方に関しては樊瑞に幼い頃から厳しく言われている。
もっと小さな頃、自分が欲しいモノを『魔法』で生み出そうとして生まれて始めて樊瑞に叩かれた。そしていつもは優しく穏やかな樊瑞に本気で叱られたことをサニーはよく覚えている。
その時はどうして怒られるのかわけがわからなかったが・・・
「っは!どうだなかぁ。そんなこと何とでも言える。実際なんでもかんでも「魔法」で出せるのだから羨ましい話だ」
「そんな・・・」
レッドは腰をかがめ、ニヤニヤしながらサニーを覗き込む。耐えながらも今にも泣き出しそうなサニーの表情が面白いらしい。いつもならここでもう一押しすればあっさりと大泣きするところだったのだが・・・
パチーン!!!
キっとサニーが口を結んで睨んだかと思った瞬間、レッドは思いっきり引っ叩かれてしまった。女、しかも子どもからの平手打ちは生まれて初めてで、おまけにいつも大人しいサニーから受けるとはまったく予想しておらずレッドは一瞬何が起こったのかわからない。
「もうレッド様にはチョコを差し上げません!!それは「義理チョコ」ですからっ」
サニーは言い放つと籠を持って走り去っていった。
頬を腫らせて今だ呆然としているレッドの手にはチョコレート。
それは甘い物好きのレッドのために大きな大きなハート型、そして本人からの要望にきっちりこたえてピーナッツがふんだんに入っていた。
NEXT
サニーが次に向かったのは温室だった。
いつだったかこっそり林檎を失敬しようとした幽鬼の温室。相変わらず中は手入れの行き届いており、あらゆる植物が実を実らせ葉を生い茂らせている。中央の最も日当たりが良い場所に幽鬼が身をかがめてなにやら作業をしていた。
「幽鬼様」
「ん?お嬢ちゃんか、調度良かったイチゴを今収穫していたところだが・・・好きだったろう?一つ食べてみるか?」
「わぁ、大きいイチゴですね」
土で汚れた手の中でみずみずしいイチゴが宝石のように輝いている。側の水道で軽く洗って幽鬼はサニーに手渡してやった。
「良かった、私も幽鬼様にお返しができます」
差し出されたのは萌黄色(もえぎいろ)で同色の刺繍のような模様が薄っすら入った円形のケース、結ばれているのは真っ白なリボン。「いや今手が汚れているから」と遠慮しようとしたが「構いませんよ」とサニーに手渡されたそれを促されるまま開ければ・・・ピンク色のハート型のチョコレートが5つ入っていた。
「今日はバレンタインですから、頑張って手作りしました」
「ふふふ、参ったなお嬢ちゃんから貰えるとは」
しかし食べようにも手が少々汚れている、洗おうかと思ったら先にサニーが中から一つ摘んで幽鬼の口に差し出した。
「まさか・・・ちょ、お嬢ちゃん待っ・・・!」
明らかに「あーん」の体勢に幽鬼は怯んでしまったがサニーは何ら躊躇することなく幽鬼の口に入れてやった。甘酸っぱさを残したイチゴペーストが入ったストロベリーチョコ、イチゴの香りも豊かで手作りの温もり伝わる優しい味わい。
「『本命チョコ』です!」
「ほ・・・ん・・・んんん!!?」
思いがけない発言に幽鬼はうっかりチョコを喉に詰まらせてしまう。
「イチゴ、ありがとうございました」
「ほ・・・本命チョコを食べてしまった・・・」
呆然とする男を残してサニーは温室を駆け抜けていった。
薄暗いワインセラーは幽鬼の温室を抜けたすぐ近く。
酒類が好きなヒィッツカラルドが秘蔵のワインを寝かせている場所で、彼はそこで試飲を楽しんでいた。
「私と一杯やりに来たのかい?」
相変わらずの調子でグラスを片手にサニーを出迎えるヒィッツカラルド。
グラスには赤い色のワインが踊っていた。
「今日はヒィッツカラルド様に手作りのバレンタインチョコをプレゼントしに来ました」
サニーが籠から取り出したのは白い小さな薔薇のコサージュが飾られて、光沢のあるワインレッドの包装紙に包まれた長方形の箱。
「ヒィッツカラルド様はたくさんの女性からチョコを貰われるのでしょう?」
「いやいや、こんな哀れで惨めな男にチョコレートを恵んでくれる慈悲深い女性はお嬢ちゃんただ一人だけだよ」
その言葉にサニーは笑い、ヒィッツカラルドも肩を揺らせて笑う。
丁寧に中身を開けると横に4つ、トリュフチョコが並んでいる。一口食べてみるとトリュフの中でも高級な黒トリュフの欠片が入っているのか非常にリッチな香りが口いっぱいに広がった。
「これはいい、ワインに良く合うチョコだ。私の好みを知っているとは、お嬢ちゃんも男の口説き方を心得ているらしいな、ふふふ。」
「もちろん『本命チョコ』ですよ」
「ははは!本命とは嬉しい。よし、それならお嬢ちゃんがもう少し大きくなったら私と一杯付き合ってくれないか?」
サニーは上機嫌のヒィッツカラルドに「もちろんです」と笑顔で答えた。
ヒィッツカラルドから怒鬼が執務室にいると聞いたので本部内の大回廊を歩いていたら珍しく孔明と樊瑞が肩を並べて歩いていた。しかし孔明が胸をそらせ樊瑞が肩を落としているあたり・・・樊瑞は孔明からチクチクと嫌味か愚痴の攻撃を受けているらしい。
「まったく、もう少し十傑集のリーダーとして威厳と落ち着きが欲しいものですな。あの程度の緊急事態で慌ててもらっては困ります」
「・・・・・・すまん」
「アルベルト殿が速やかに対処してくださったから良かったものの・・・ん?サニー殿、私に何か御用ですかな?」
声をかけていいものか足をとめて悩んでいたら孔明がサニーに気が付いた。
「あの・・・お2人にバレンタインチョコを・・・」
「サニー殿、バレンタインなどと俗なことに時間を割いている場合ではござりませぬぞ。貴女はいみじき十傑集が一人娘、将来は我がBF団の・・・」
「おお!サニー!この私にバレンタインチョコをくれるのか」
喋りが長くなりそうな孔明を喜色満面の樊瑞が押しのける。後見人の勢いに圧されつつもサニーは籠からふたつの箱を取り出しそれぞれに手渡した。
孔明が貰ったのは金刺繍の模様が入った紫色の巾着、中を見ればスティック状のチョコが6本。それぞれの先には金粉が付いている。
「これはサニー殿、貴女がお作りになられたので?」
「はい、孔明様のお口に合えば良いのですが・・・」
相手が手厳しい孔明なのでサニーは孔明がチョコを口にするのを緊張して見ていた。
ポキンと気持ちの良い音を立てて孔明はチョコを食べた。子どもが作る味にまったく期待などしていなかったが・・・ややビターだが苦味が先走らず残る後味はまろやかな甘さで孔明が好むところ。何よりもカカオの香りが前面に押し出され精神的に気持ちがリラックスする。
かなり高級な素材を使っていることくらい彼の舌ならすぐわかる。
しかし単純にそのためで美味しいチョコができたわけではない。
食べる側の人間を想い気遣う意図が見え隠れしているからこそ味わい深い。
「どうだ孔明、サニーが作ったチョコは美味かろう」
「・・・・・・・・・・・・」
押し黙ってしまった孔明。
その横で樊瑞は彼のマントと同じ色のリボンを解いた、小さな藁で編まれた籠はまるで鳥の巣のように細い紙切れが敷かれ、その中に卵のような3つのチョコ。見つめていれば愛しくなるその形を一つ摘んで口に放り込んだ。中は甘いミルクとほろ苦いビターな部分が二層になっており口の中で転がせばそれぞれの味が程よく混ざり合う。
不思議とサニーと共にいた今までの時を思わせる味。
「ううむ・・・とても・・・とても美味しいぞサニー」
上手く言葉にはできないがサニーが自分を想って作ってくれたことはよくわかる。大きな手でサニーの頭を撫でてやると、まだ幼いと実感させるあどけない笑顔を向けてきて樊瑞は目を細めた。
「召し上がってくださってありがとうございました。それでは私はこれで失礼いたします」
丁寧にお辞儀をしてサニーは籠を持ち直して大回廊を左に歩いていった。
「・・・サニー殿にはいずれ十傑集にと思っておりましたが考えが変わりました」
しばらく黙り込んでいた孔明がようやく口を開く。
「そうか、うむ!それがいいぞ孔明。やはりサニーは普通の女の子として・・・」
「いいえ、貴方の次に十傑集リーダーとなっていただきましょう」
「はぁ!?」
ひらり、と白羽扇をそよぐ。
孔明は満足げな笑みを浮かべて去り行くサニーの背中を見送った。
いつだったかこっそり林檎を失敬しようとした幽鬼の温室。相変わらず中は手入れの行き届いており、あらゆる植物が実を実らせ葉を生い茂らせている。中央の最も日当たりが良い場所に幽鬼が身をかがめてなにやら作業をしていた。
「幽鬼様」
「ん?お嬢ちゃんか、調度良かったイチゴを今収穫していたところだが・・・好きだったろう?一つ食べてみるか?」
「わぁ、大きいイチゴですね」
土で汚れた手の中でみずみずしいイチゴが宝石のように輝いている。側の水道で軽く洗って幽鬼はサニーに手渡してやった。
「良かった、私も幽鬼様にお返しができます」
差し出されたのは萌黄色(もえぎいろ)で同色の刺繍のような模様が薄っすら入った円形のケース、結ばれているのは真っ白なリボン。「いや今手が汚れているから」と遠慮しようとしたが「構いませんよ」とサニーに手渡されたそれを促されるまま開ければ・・・ピンク色のハート型のチョコレートが5つ入っていた。
「今日はバレンタインですから、頑張って手作りしました」
「ふふふ、参ったなお嬢ちゃんから貰えるとは」
しかし食べようにも手が少々汚れている、洗おうかと思ったら先にサニーが中から一つ摘んで幽鬼の口に差し出した。
「まさか・・・ちょ、お嬢ちゃん待っ・・・!」
明らかに「あーん」の体勢に幽鬼は怯んでしまったがサニーは何ら躊躇することなく幽鬼の口に入れてやった。甘酸っぱさを残したイチゴペーストが入ったストロベリーチョコ、イチゴの香りも豊かで手作りの温もり伝わる優しい味わい。
「『本命チョコ』です!」
「ほ・・・ん・・・んんん!!?」
思いがけない発言に幽鬼はうっかりチョコを喉に詰まらせてしまう。
「イチゴ、ありがとうございました」
「ほ・・・本命チョコを食べてしまった・・・」
呆然とする男を残してサニーは温室を駆け抜けていった。
薄暗いワインセラーは幽鬼の温室を抜けたすぐ近く。
酒類が好きなヒィッツカラルドが秘蔵のワインを寝かせている場所で、彼はそこで試飲を楽しんでいた。
「私と一杯やりに来たのかい?」
相変わらずの調子でグラスを片手にサニーを出迎えるヒィッツカラルド。
グラスには赤い色のワインが踊っていた。
「今日はヒィッツカラルド様に手作りのバレンタインチョコをプレゼントしに来ました」
サニーが籠から取り出したのは白い小さな薔薇のコサージュが飾られて、光沢のあるワインレッドの包装紙に包まれた長方形の箱。
「ヒィッツカラルド様はたくさんの女性からチョコを貰われるのでしょう?」
「いやいや、こんな哀れで惨めな男にチョコレートを恵んでくれる慈悲深い女性はお嬢ちゃんただ一人だけだよ」
その言葉にサニーは笑い、ヒィッツカラルドも肩を揺らせて笑う。
丁寧に中身を開けると横に4つ、トリュフチョコが並んでいる。一口食べてみるとトリュフの中でも高級な黒トリュフの欠片が入っているのか非常にリッチな香りが口いっぱいに広がった。
「これはいい、ワインに良く合うチョコだ。私の好みを知っているとは、お嬢ちゃんも男の口説き方を心得ているらしいな、ふふふ。」
「もちろん『本命チョコ』ですよ」
「ははは!本命とは嬉しい。よし、それならお嬢ちゃんがもう少し大きくなったら私と一杯付き合ってくれないか?」
サニーは上機嫌のヒィッツカラルドに「もちろんです」と笑顔で答えた。
ヒィッツカラルドから怒鬼が執務室にいると聞いたので本部内の大回廊を歩いていたら珍しく孔明と樊瑞が肩を並べて歩いていた。しかし孔明が胸をそらせ樊瑞が肩を落としているあたり・・・樊瑞は孔明からチクチクと嫌味か愚痴の攻撃を受けているらしい。
「まったく、もう少し十傑集のリーダーとして威厳と落ち着きが欲しいものですな。あの程度の緊急事態で慌ててもらっては困ります」
「・・・・・・すまん」
「アルベルト殿が速やかに対処してくださったから良かったものの・・・ん?サニー殿、私に何か御用ですかな?」
声をかけていいものか足をとめて悩んでいたら孔明がサニーに気が付いた。
「あの・・・お2人にバレンタインチョコを・・・」
「サニー殿、バレンタインなどと俗なことに時間を割いている場合ではござりませぬぞ。貴女はいみじき十傑集が一人娘、将来は我がBF団の・・・」
「おお!サニー!この私にバレンタインチョコをくれるのか」
喋りが長くなりそうな孔明を喜色満面の樊瑞が押しのける。後見人の勢いに圧されつつもサニーは籠からふたつの箱を取り出しそれぞれに手渡した。
孔明が貰ったのは金刺繍の模様が入った紫色の巾着、中を見ればスティック状のチョコが6本。それぞれの先には金粉が付いている。
「これはサニー殿、貴女がお作りになられたので?」
「はい、孔明様のお口に合えば良いのですが・・・」
相手が手厳しい孔明なのでサニーは孔明がチョコを口にするのを緊張して見ていた。
ポキンと気持ちの良い音を立てて孔明はチョコを食べた。子どもが作る味にまったく期待などしていなかったが・・・ややビターだが苦味が先走らず残る後味はまろやかな甘さで孔明が好むところ。何よりもカカオの香りが前面に押し出され精神的に気持ちがリラックスする。
かなり高級な素材を使っていることくらい彼の舌ならすぐわかる。
しかし単純にそのためで美味しいチョコができたわけではない。
食べる側の人間を想い気遣う意図が見え隠れしているからこそ味わい深い。
「どうだ孔明、サニーが作ったチョコは美味かろう」
「・・・・・・・・・・・・」
押し黙ってしまった孔明。
その横で樊瑞は彼のマントと同じ色のリボンを解いた、小さな藁で編まれた籠はまるで鳥の巣のように細い紙切れが敷かれ、その中に卵のような3つのチョコ。見つめていれば愛しくなるその形を一つ摘んで口に放り込んだ。中は甘いミルクとほろ苦いビターな部分が二層になっており口の中で転がせばそれぞれの味が程よく混ざり合う。
不思議とサニーと共にいた今までの時を思わせる味。
「ううむ・・・とても・・・とても美味しいぞサニー」
上手く言葉にはできないがサニーが自分を想って作ってくれたことはよくわかる。大きな手でサニーの頭を撫でてやると、まだ幼いと実感させるあどけない笑顔を向けてきて樊瑞は目を細めた。
「召し上がってくださってありがとうございました。それでは私はこれで失礼いたします」
丁寧にお辞儀をしてサニーは籠を持ち直して大回廊を左に歩いていった。
「・・・サニー殿にはいずれ十傑集にと思っておりましたが考えが変わりました」
しばらく黙り込んでいた孔明がようやく口を開く。
「そうか、うむ!それがいいぞ孔明。やはりサニーは普通の女の子として・・・」
「いいえ、貴方の次に十傑集リーダーとなっていただきましょう」
「はぁ!?」
ひらり、と白羽扇をそよぐ。
孔明は満足げな笑みを浮かべて去り行くサニーの背中を見送った。